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リリィおまけ 小さな嫉妬

「みい」
小さな白いふわふわした子猫が、執務室のソファーの上をよちよちと歩いている。ソファーの凹凸に躓きそうになったその小さな身体を、大きな手がさっとすくい上げた。
ロイがそのまま己の膝の上に子猫乗せて、指の背で優しく耳の後ろを撫でてやると、また、
「みい」
と小さく鳴いて、子猫は手に小さな身体を擦り付けてきた。
「そうか、嬉しいか。リリィ」
その可愛らしい様子に顔を綻ばせる。
「失礼します……大佐。口元が弛んでらっしゃいますよ。……ヒューズ中佐を笑えませんね」
「中尉。そ、そんなにだらしない顔してたか?」
「ええ」
部屋に入ってきたリザが笑いをこらえながら指摘すると、万年親バカと一緒にされたロイはいささか憮然として、己の顔をペタペタと触った。
放って置けずに拾って面倒をみてやって早一週間。どうも情が移ってしまったらしい。だが、途中に不幸な誤解をもたらしたりと何やかんやといろいろな事があったこの小さなレディとの日々も今日でお終いだった。
「それで、いつ来るんだ?」
「夕方に」
「そうか」
子猫の貰い手が決まったのだ。
人の良さそうな老夫婦という事だ。今日の夕刻、引き取りに来るらしい。元々ロイには子猫の面倒をみている暇などなかったし、喜ばしい事なのだが、どうしても一抹の寂しさは拭えない。
「……可愛いがって貰うんだぞ」
抱き上げて頬擦りすると、子猫はまるで言葉を理解したかのようにみいと返事をした。
「大佐。そろそろ会議のお時間ですよ」
「……そうか。じゃあなリリィ」
名残惜しげに子猫をそっとソファーに降ろし、ロイはリザに後を頼むと部屋を出ていった。
主のいなくなった部屋にみいと儚げな子猫の声だけが響いた。リザは先ほどまでロイがいたソファーに腰掛けると、おいでと子猫に手を差し延べた。
子猫はよちよちとやってくる。
「リリィさんがこんなに可愛い子だったなんてね」
つい先日執務室であった事を思い返してリザは苦笑する。その後、ロイにこの小さな子猫を紹介され誤解は解けた訳だが……リザはリリィと戯れていたロイの表情を思い出す。あれはめったに見せない素のままの彼の笑顔だ。普段厳しい軍社会で生きている彼が纏っている仮面の下の笑顔。
リザだってあまり見た事がないのに。
「あなたが女性でなくても……私はあなたに嫉妬してしまいそうよ?」
子猫の喉を撫でてやりながらリザは小さく笑ったのだった。




【おまけのおまけ】


「何故リリィなんですか?」
「綺麗な白い毛が百合の花みたいだろ? だからリリィだ。良い名前だろう」
「そうですか? 少し安直過ぎやしませんか。そうですね……私だったらホワ」
「いや、いいっ。いいってっ! 君のネーミングセンスが良いのは分かったからっ」
(聞きたくないっ)




END
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by netzeth | 2010-05-05 17:57 | Comments(0)