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by netzeth
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ハニートラップ

イーストシティの繁華街入口。適当な路肩に車を停めて、ハボックは車を降りると車体に寄り掛かりつつ、煙草に火をつけた。車内は禁煙だからだ。誰も見てはいないが、バレると後が面倒だ。
ふーと白い煙を吐き出して、ハボックは華やかな繁華街の通りを眺めやった。
夜の帳が降りて久しい時間だというのに、そこは明るいネオンが花の様に咲き誇り、蝶の如く着飾った女性達が飛び回って行き交う男達に誘いの文句を投げかけ……夜の街特有の一種独特な空間を作り出している。
一人ぽっかりとその空間から浮いているハボックは今、デート後のロイの迎えという恐ろしく嫌な役目を仰せ使っていた。
待ち合わせ場所で待機していると夜風が身に染みる。こちとら最近彼女にフラれたばかりの寂しい独り者だ。何が悲しくて女とイチャつく上司なんか迎えに来なくてはならないんだろーか。
もちろんロイのデートが、情報収集の隠れ蓑だという事をハボックは理解していた。今日もロイはとある将軍の収賄の情報を得るべく、この繁華街に繰り出しているのである――が理解はしていても感情は別である。例え情報収集だろうが綺麗なお姉ちゃんと楽しくデートには変わりないのだ。
しばらくすると一軒の店から一組の男女が出てきて、近付いて来るのが見えた。
男は洒落たスーツを着こなして、白いマフラーを肩にかけているのがいかにも伊達男といった風情。女はそんな男の腕をしっかりと掴み、しなだれかかる様に寄り添っている。胸元の大きく開いたミニのワンピースに赤いピンヒール。同じく赤い唇がやけに色っぽく見えた。
我らが上司様のご登場である。
煙草を足で踏み消してハボックはダレていた姿勢を正した。そんなハボックの存在を無視して、女がロイに甘える様にすり寄っている。
「ねえ~ロイさん? 私、今日はアフター空いてるの。ね?いいでしょ」
豊かな胸をロイの腕に押し付けて女は砂糖菓子の様な甘い声を出した。くっきりとした谷間が強調されていて、思わずハボックはゴクリと唾を飲む。
「私……ロイさんなら……OKよ?」
――何がだ。
心の中で突っ込みながらそろそろ自分の存在を思い出してくれないかな……とハボックが思い始めた頃。
「すまない。今日はこれから仕事なんだ」
肩を竦めたロイがクイとハボックの方を示す、ニヘラ~と笑ってお姉ちゃんにひらひらと手を降ったが無視された。
「え~~つまんなーい!」
「すまないね」
ロイはやんわりと女の腕から抜け出して、極上の(営業)スマイルを見せた。
「今度会う時は必ず」
「約束よ?」
そう言うと女はロイの首に腕を巻き付けてキスをねだった。それをおでこにする事で別れの挨拶にしつつ、ロイはさっさと車に乗り込んでしまう。慌ててハボックも運転席に乗り込み車を発進させた。

「いや~さすがっスね」
「何がだ」
いかにも疲れたといわんばかりの態度で、ネクタイを緩めて渋面を浮かべたロイが不機嫌そうに返事をよこす。
「何がって。あの子っスよ。可愛い子じゃないっスか~あんな子に誘われたら俺だったら……」
だらしない顔で何かを想像しているハボックに、ロイはますます渋面を浮かべた。
「そんなんだからお前は駄目なんだ」
「だって、あの子胸も大きかったし……」
「このおっぱい星人め。いいか、真に重要なのは太も……ごほんっ、まあ、いい」
いいか。とロイはまるで訓示を垂れる時の様な表情になって。
「男たるもの女の色香に惑わされる様でどうする。ましてやこれは情報収集なんだぞ。逆に手玉に取るくらいでなければな」
そう言うと、腕組みをして、
「エイダは駄目だな。あれは何も知らん。メッサースミスのお気に入りというから期待していたんだがな……」
エイダというのは先程のボインのかわいこちゃんだ。メッサースミスは件の将軍。
「エイダがもう少し頭の回る女ならこちらに取り込んで、情報を探らせるのもありだったが……あれは頭は空っぽだ。まったく使えん」
あのボインのかわい子ちゃんに対して、そんな事を考えていたとは……ハボックは内心脱帽していた。確かに外見に百パーセント惑わされる自分ではロイの様な諜報活動は無理だろう。改めてロイの女方面の手腕には感心する。
「仕方ない。例のパーティーに潜り込むか……」
一人感心するハボックを余所に、ロイは気乗りしない様子で呟いた。


「大佐~迎えに来ましたよー」
今日も今日とて運転手をしているハボックである。
今日はロイが予てから動向を探っている将軍が出席するというパーティーで、情報収集である。
ロイの自宅まで迎えに来るように言われていたハボックがドアを叩いて呼び掛けると、程なくしてタキシードに身を包んだロイが顔を出した。いつもは無造作に降ろしている髪もオールバックに整えてある。男の目から見ても憎いくらいに決まっている。
……こういう所が女性に受ける所以だろうか……。思わず己を省みるハボックだった。
そして、ロイを乗せて車はパーティー会場へ向うかと思いきや、ロイの指示でとあるアパートへと寄っていた。
リザのアパートである。当初は一人で出席する予定だったロイだったが、一人より二人の方が動けるという事と護衛を主張したリザにより、急遽彼女も参加する事になったのだ。
「中尉?  迎えに来たぞ。準備できたか?」
ロイが部屋のドアをノックすると、ウォンっという聞き慣れた犬の声と共にリザの声が聞こえた。
「はい! わざわざ申し訳ありません」
すぐにドアが開き、リザが出てくる。
「お待たせしました……」
「全然待ってないっスよ」
「ハボック少尉もご苦労様。お酒が入ると思うから、悪いけど帰りもお願いね」
「了解っす」
「……あの大佐?」
リザが現れてからというもの、無言のロイを訝しんだリザがロイの顔を覗きこもうとした。それをロイはものすごい速さで顔を逸らして避ける。
「……大佐?  あの……早く参りませんと……」
戸惑いを隠し切れないリザにロイはガバッと顔を上げると、
「き、君は何て格好をしているんだね!」
顔を真っ赤に染めて叫んだ。
『は?』
リザとハボックの声が重なった。
目が点状態の二人を無視して更にロイは言い募る。
「そ、そんなに露出の多い服なんて許さん! 絶対駄目だ!」
露出が多い?  何処が?
リザの着ているドレスはハイネックの上品な黒のタイトスカートタイプである。決して派手では無いが元々スタイルの良いリザの肢体を際立たせていた。ノースリーブで肩は剥き出しだが、今はストールを羽織っているし、唯一の露出と言えばスカートのスリットから覗く脚くらいだ。が、それだって膝上十センチもないくらいの大人しいものだ。
露出というならこの前のエイダちゃんの方がよっぽどスゴかった。谷間も無ければ、太もももほとんど出て無いよなあ……。とハボックは横目でリザを観察しながら思う。しかし、ロイは物凄い剣幕でリザに詰め寄っている。
「着替えてきたまえ!」
「そ、そんな事急に言われましても困ります……時間も無いんですよ!」
「とにかく、駄目だったら駄目だっ」
なおも耳まで真っ赤にして言い張るロイを見ながら。ハボックはここでぼんやりと納得した。
あーなるほど……。
ロイ・マスタング大佐を色香に惑わせる女性は世界でただ一人。リザ・ホークアイ中尉だけなのだと。
わあわあぎゃあぎゃあと目の前で繰り広げられるやり取りを半分諦めの境地で眺めながら、ハボックは煙草に火を点けた。





END
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by netzeth | 2010-07-09 21:12 | Comments(2)
Commented by カイト at 2011-02-05 14:42 x
前回もコメントさせていただきました!カイトと申します。
大佐…リザ…
この二人はもう神ですよね!
いつも楽しく読ませて貰っています!

実は俺もロイアイ書いてるんですよ。
勿論健全ですよ(^-^)/
Commented by うめこ(管理人) at 2011-02-05 21:19 x
カイト様こんばんは、再びコメント頂きありがとうございます。
いつも読んで頂いているとのこと・・・本当に感激です。
カイト様もロイアイを書いているのですね、頑張ってロイアイ界を盛り上げていきましょう☆