うめ屋


ロイアイメインのテキストサイト 
by netzeth
プロフィールを見る
画像一覧

Perfume of love

仕事帰りに偶然会った彼女から香る、妖しくも官能的な香りに私はヒドく動揺した。
彼女が非番だったため、今日一日顔を見る事が出来ずに、落ち着かずに過ごしていた私は当初、彼女に遭遇したこの幸運を喜んでいた。だがその浮かれた気分も、うっすらと彼女から発せられる香水の匂いに気付いた瞬間あっという間に霧散してしまった。
普段の彼女はあまり化粧っ気もなくて、ましてや香水なんて代物とは無縁だと思っていたのに。
けれども今はプライベート。軍務についてる時にはしていなくても、私的な時間にはこういった女性らしい事もしているのかもしれない――そう納得して、そこで私は自分があえて目をつぶって考えないようにしていた可能性に気付く。
そう――こんな官能的ないかにも男を誘う香水を付けて、彼女は何処に行って来たのか・・・或いは行く途中なのか、と。
今日非番だった彼女。もちろんただの上司でしかない私が彼女の私的な時間の使い方まで、拘束する事は出来ない――が、男としての私はこの事態を放って置く事は出来なかったようだ。
今日の仕事の状況などの話を軽くして、それでは、と別れようとした彼女の腕を私は反射的に掴んでいた。
「大佐?」
怪訝そうな表情を向ける彼女に、私は内心の動揺を隠した顔で告げる。
「中尉、夕食はまだかね? ・・・どうだろう、これから一緒に」
彼女は、少し驚いたような顔したが、やがてコクンと頷いた。
――どうやらこの後の予定は入っていないらしい。では、既に約束を終えた後か?ホッとしたのも束の間、疑念が首をもたげてくる。どうしたのだろうか。今日の私は少しおかしい。
いつもと違う彼女に私の心は掻き乱されているようだった。


彼女と二人きりの楽しい食事――いつもだったら浮き足立つ様なこの状況下でも、私の心は晴れなかった。
とりとめのない会話の最中にも、香ってくる彼女の香り。それを嗅ぐ度に、私は焦る気持ちを抑えきれない。
いつもルージュさえまともにつけない飾り気のない彼女が、何故突然香水の香りなど身に纏っているのだろう。
自発的に買い求めて・・・とは考え難い。・・・もしや、誰かからの贈り物だろうか?律義な彼女の事だ、いくら普段から馴染みのないものでも、人から贈られた物なら使ってみるのではないだろうか。そう――例えば、当の贈った相手に会う時などは。
やはり今日はその相手と会っていたのだろうか・・・くそっ、一体どんな奴何だ?
「大佐?」
いつの間にか1人で歯噛みしている私を、彼女が見つめていた。
「どうしたんです、さっきから。お食事が進んでないようですが・・・」
具合でも悪いのですか?と心配そうに眉を寄せた彼女。
確かにさっきから私の思考はぐるぐると堂々巡りを繰り返していて、料理などそっちのけだった。
何でもない。と慌てて取り繕うと良かったと安心した顔を見せる。
――こういう表情もいちいち可愛いから困る。
だが、こんな彼女の顔を独り占めした者がいるかもしれないのだ。その事実に私は愕然とし――そして、俄かに私の中に沸き上がってきたのは強烈な独占欲だった。


私と彼女の関係は上司と部下、それ以上でもそれ以下でもない――表面上は。
実際の二人は因縁浅からぬ仲であり・・・私が彼女へと向ける感情は複雑過ぎてもう、自分自身でも分からないものとなり果てていた――そうやってぐずぐずしていた結果がこれだ。何処の誰とも分からない馬の骨に大事な彼女を持っていかれようとしている。今までずっと触れずにいたというのに、そうなって初めて身勝手な想いが私を支配していた。
――彼女は私の物だ。誰にも渡さない。
不思議なものだ。ほんの少し前までは考えもしなかったこの想いが、たかが香水の香りだけでこんなにも強く呼び起こされたのだから。
食事を終えた私達は互いに互いを送ると主張しあい、どちらも譲らず、妥協案として互いの自宅への分かれ道まで一緒に帰るという選択をし、夜の街を歩いている。
プライベートでも私の一歩後ろを歩く彼女の気配を背中で感じながら、私はゆっくりと歩を進めていた。
相変わらず彼女からは、男を惑わす甘い花の様な香りがする。
他の女から香るのであれば好ましく思ったかもしれないその香りが、彼女からするのを私は忌々しく思った。
今すぐにこの香りを消してやりたい。
物騒な考えが浮かんだ所で、私達は分かれ道に辿り着いた。
彼女はここが終点とばかりに、私の方を見て、
「では、私はこれで。・・・気をつけてお帰り下さいね」
軽く会釈をすると、彼女の家に続く道へと足を向けようとする。
――ここは終点ではない。今から始まるのだ。
私は彼女の腕を掴んだ。驚く彼女を無視して、そのまま彼女を引き寄せて、腕の中に彼女を閉じ込めた。
「た、大佐? 何をっ・・・」
「私の部屋に寄っていかないか」
耳元で囁く様に言うと、彼女の肩がピクンっと震えた。
抱き寄せた思ったより華奢な身体が、強張っているのが分かった。その緊張をほぐすように、
「・・・茶くらいしか出せないが・・・」
少しおどけて言うと、彼女身体から力が抜けたのが分かった。
むろん、夜にいい歳をした男の部屋を訪れる意味をこれまたいい歳の彼女が知らないとは思わない。
彼女の逡巡はもっともだろう。私は彼女の選択をただ静かに待った。やがて、
「・・・はい」
彼女は頬を紅くして小さく頷いた。
「そうか」
私は彼女を腕の中から解放すると、そのまま彼女の片手を握り締めて彼女を導く様に歩き出す。遠慮がちについて来る彼女からは、相変わらずあの香り。
――困った。この香りがする間は彼女に優しく出来そうもない。
相変わらず私の独占欲を刺激するその香りを嗅ぎながら、私は心の中で呟いたのだった。
仕方ない・・・私の箍を外したその香水を恨むんだな。リザ。


「ねえ、リザ!」
「何? レベッカ」
「あれ、どうだった?」
「あれって?」
「やーね、あれよ! あれ。この前あげたでしょう? “これで男のハートを鷲掴み! 気になるあの人を速攻GET☆愛のフレグランスシリーズ・薔薇の香り”よ!」
「ああ・・・あれ・・・」
「そうそう」
「貰った日にあなたにつけてもらって以来使ってないわ」
「えっ、何で? 気に入らなかった?」
「だってあれ・・・」
「何?」
「ううん・・・何でもない」
「何よう~気になるじゃない!」
「何でもないってば」

(・・・だってあれ・・・効き目あり過ぎよ!!)




END
**************************

この話、当初はマスタングが暴走して、リザたんにいや~んうふふな事をいろいろしながら尋問するとゆーアダルティーな展開でした。慌てて軌道修正をかけて辛うじて健全?にもっていった・・・。
[PR]
by netzeth | 2010-10-16 01:44 | Comments(2)
Commented by 長月15 at 2012-06-03 12:00 x
いやーんうふふなところも読みたいです!是非とも!
Commented by うめこ(管理人) at 2012-06-03 22:20 x
>長月15 様
再びのコメントありがとうございますー!やはりいや~んうふふは大事な部分ですよねv私も我慢できず、実はオフ本で(サイトでは無理でしたので;)いや~ん、うふふなところを書いてしまっているのです(笑)読みたいと言って下さってありがとうございました。嬉しいです(^^)