うめ屋


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by netzeth
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 指先

「痛っ・・・!」
「どうした?」
執務室にて、書類の確認作業をしていたリザが突然声をあげた。
「いえ・・・何でもありません」
「何でも無いという事はないだろう」
ロイは立ち上がってリザに近付く。すると明らかに右手をかばっているような仕草が目についた。
「見せたまえ」
グイと手首を捕まえればリザは観念したようだった。
「・・・切ってしまったみたいで」
見れば右手の人差し指にうっすらと赤が見えた。
傷は見た目より深かったらしく、指の先から血が染み出して赤い玉となる。その血があふれて流れ落ちそうになって、
「いかんな」
次の瞬間ロイはリザの指をぱくりと咥えてしまった。
「なっ・・・! 大佐!」
「ひゃんだ?」
「やっ! そのまま喋らないで・・・は、離して下さい!」
リザの抵抗空しくロイは指を離してくれない。おまけにペロリと指の先を舌で舐め始める。
「や、ちょっと・・・大佐!!」
それからたっぷりとリザの指を舐めたロイはようやく指を解放した。
「何をするんですか!」
「何って・・・消毒」
「唾液にそんな効果ありません! 第一、血なんか汚いです」
「汚くないさ、君の血なら」
むしろ甘かったと言い切るロイにリザは頬が熱くなる。
「何言ってるんですかっ! もうっ」
「ははは、感じた?」
「知りません!」


 うたた寝 Ver.ロイ

キッチンから漂ってくる良い匂いでロイの意識は覚醒した。
どうやらうたた寝をしていたらしい。
見回すとそこは自宅のリビングだった。
明るい色の壁紙、新しい家具類、暖かい色合いのカーペット。全て彼女との生活のために用意したもの。
時計を見るともう、夕食時。ずいぶん寝ていようだ。
キッチンから己を呼ぶ声がする。夕食が出来たのだろうか。立ち上がろうとして、ロイはふと悪戯を思い付いた。このまま寝たふりをしていよう。そして、彼女が起こしにきたら驚かせてやろう。
彼女のびっくりした顔はきっと可愛いだろう。
目をつむって狸寝入りを決め込む。しばらくすると彼女が近付いて来る気配がした。
パタパタと可愛いらしいスリッパの音が目の前で止まって。
さあ今だ、とロイが動くより早く、愛しい妻が自分の耳元で囁いた。
「ロイ、起きて・・・」
そこでロイの意識は再び覚醒した。
慌てて周りを見渡せば、そこは見慣れた執務室。愛しい妻なんかもちろんいない。代わりに己の副官がそばに立っていて自分を見つめていた。
「もう一度言ってくれ!」
「何がですか?」
「な、名前! 呼んだだろっ! 今っ」
「何の事ですか? 夢でも見ていたのでは?」
「夢? ・・・何だ夢か・・・」
「そんな事より。さあ、早く続きをお願いします」
厳しい顔つきで書類を差し出すリザには、夢の中の甘い余韻なんかこれっぽっちも無くて、ロイはため息をついた。
やはり、あの光景は夢だったのか。それにしても最後の囁きだけはやけにリアルだった気がしたが。
コーヒーを淹れてきますと部屋を後にするリザの後ろ姿を眺めながら、どうすればあの夢の中の光景が現実になるだろうかとロイは考えていた。


 うたた寝 Ver.リザ

どうしてくれようか。
目の前に広がる光景を見て、リザはため息をついた。
いつものロイの執務室。今日は逃亡もせずに真面目に仕事をしていると思いきや、覗きに来てみればこれである。
ロイは机に突っ伏して堂々と寝ていた。
これが仕事の疲れで止むなく・・・などの理由なら見逃してやるリザなのだが、昨日、一昨日とサボって仕事がたまってしまったのは自業自得であるため、同情の余地は一切ない。
さて、どうやって起こそうか・・・。
銃の一つも突き付けてやれば起きるだろうか。けれども、それは前に1度使った手だ。ロイの事だ、同じ方法は効かないと思った方がいいだろう。
既に、普通に起こすという選択肢はリザにはなかった。
何故なら、うっかりでなく自分の意志で寝ているロイはちょっとやそっとの事では起きないのだ。
以前その事について苦言を申し立てたらば、
「では、お姫様のキスで起してくれたまえ。それならばすぐ目覚めるぞ」
と馬鹿なセリフが返ってきた。
本当にキスで起してやったらどんな顔をするだろうか?
そんな悪戯心が一瞬浮かんだが、すぐに頭をブンブンと振って自分の考えを否定する。
私まで何を馬鹿な事を考えてるのかしら・・・。
馬鹿な事を言う上司のそばにいるから毒されてしまったのかもしれない。
全てはロイのせいだ。それに、第一キスしようにも彼は顔を突っ伏して寝ているのだから、どうしようもない。
しばし考えて、リザはある事を思いつく。
その顔には悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。突っ伏して寝ているロイにそっと近付くと、
「ロイ、起きて・・・」
その耳元で吐息と共に囁いた。
その瞬間、ロイはガバリと身を起した。傍らに立つリザを見上げると、
「もう一度言ってくれ!」
「何がですか?」
「な、名前! 呼んだだろっ! 今っ」
「何の事ですか? 夢でも見ていたのでは?」
「夢? ・・・何だ夢か・・・」
「そんな事より。さあ、早く続きをお願いします」
書類を目の前に差し出して促せば、ロイはため息をついて大人しく書類に目を通し始める。だが、まだいまいち納得のいっていない表情だ。
そんなロイを見てリザはこっそり笑う。
・・・真面目に仕事をするなら、もう一度呼んであげてもいいかなと考えながら、リザはロイにコーヒーを淹れてやるべく部屋を後にした。




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by netzeth | 2011-01-12 21:10 | Comments(0)