うめ屋


ロイアイメインのテキストサイト 
by netzeth
プロフィールを見る
画像一覧

拍手お礼ログ 7

 シャンプー

「中尉!」
別に呼んでもいないのに勝手にひとの部屋にやって来た上官は、やはり許可してもいないのに勝手にシャワーを浴び始め、挙げ句の果てにバスルームから私を呼び付けた。
気付かないふりをしてやろうかとも思ったけれど、一応上官だし、何か緊急事態が起こったりしていたら困るので私は仕方なくドアごしに返事をする。
「どうかなさいましたか?」
「どうかなさいましただよ、中尉! 重大事件だ!」
「だから、どうしたんです?」
「シャンプーが無い!」
「・・・」
重大事件なんて言うから何事かと思えば。
「すまないがシャンプーを取ってくれないか?」
「ありませんよ」
「へ?」
大佐が間抜けな声を出す。
「うちにはシャンプーはございません」
「本当に?」
「本当に」
「・・・じゃあ君は何で髪を洗ってるんだ?」
「足元に置いてあるじゃないですか」
「何が?」
「石鹸が」
「・・・・・」
長い沈黙。
やはり石鹸で髪を洗うのは変わっているのかしら?以前、レベッカに話した時も同じ反応だったわね、確か。
「石鹸じゃダメだ!」
大佐の憤慨した声が聞こえる。そうですね、大佐の髪サラサラですもんね、いつも。石鹸だときっとギシギシしちゃいますよね。
「私は髪から同じ匂い☆がやりたいんだ! 石鹸の匂いじゃ弱いだろう!?」
「はい?」
「だからっ、私は君と同じシャンプーを使って髪から同じ匂いをさせて、噂になりたいんだ!」
「・・・」
「まったく!シャンプーくらい使いなさい。今度私の使ってるシャンプーを持ってきてやるから。それで髪を洗いたまえ」
石鹸で髪を洗っている事を怒られたけれど・・・なんか違う気がする。
私は釈然としなかったが、結局このわがままな上官には敵わないという事だけは何となく分かったのだった。


 冬の朝

カーテンの隙間からかすかに差し込む光でリザは目を覚ました。
冬の朝の空気はぴんと張り詰めた糸の様に鋭くて冷たい。
くるまっている毛布の中は暖かかったけれど、部屋の中だというのに吐く息は白かった。
早く起きて服を着よう・・・起き上がり、ベッドから抜け出そうとしたところで、グイッと腰を掴まれて引き戻された。
「大佐!」
抗議の声をあげる。
視線の先には眠そうに欠伸をするロイの姿。
再びベッドの中で抱き込まれたリザは何とか腰に絡み付く腕を外そうともがく。
「こら、大人しくしたまえ。寒いだろう」
「だから早く起きて、服を着たいんです」
「服を着るまでの間が寒いじゃないか」
いつもコートをしっかり羽織っているこの男は案外寒がりで、冬になるとこうしてくっついてきてリザを困らせる。今朝の寒さにまたその悪い癖が出た様だ。
「なあ・・・ここで一緒に暮らそう」
「はあ?」
「この暖かいベッドの中で暮らす・・・私はそう決めた!」
「何を馬鹿な事を言ってるんですか、ほら、離して下さい」
「嫌だ」
ロイはますます強くリザを抱き込んでしまう。
「まだ早いじゃないか。今日は非番なんだし・・・良いだろう?」
甘える様にリザの髪に鼻先を埋めてくる男に、とうとうリザは降参した。
「少しだけですよ」
もうしばらくして、お腹が減ってくれば嫌でもベッドから出るだろうと、リザはロイの好きにさせてやる事にする。
ロイは満足げに笑うとリザをしっかりと抱き締めて目を閉じる。
そして暖かなロイの胸に寄り添いながら、もう少しだけこの贅沢な時間を甘受する事をリザは自分に許すのだった。


 大佐の枕は良い枕

出勤して朝一番に見た己の上官は、首が不自然に変な方向に向いていた。まるで首をかしげているみたいな。
ふざけているのかしら?
「何してらっしゃるんです? それ」
とりあえず聞いてみる。
「・・・寝違えた」
「はあ・・・」
返ってきた答えに、私は反応に困って思わず適当な返事をしてしまった。
だって、東方司令部の司令官で国家錬金術師でイシュヴァールの英雄とまで呼ばれたひとが寝違えたって・・・。
「枕が合わないみたいでな」
そんな私の様子を気にする事もなく、大佐は事も無げに続ける。
「最近買い換えたばかりなんだが、どうもしっくりこなくてな。ここ最近良く眠れなくて疲れもとれんし、今日はとうとうこの様だ」
「それは・・・ご愁傷様ですね」
「ああ。だから・・・君、膝枕してくれないか?」
「ええ・・・って、はい?」
今このひと何て言った?気のせいかしら膝枕って聞こえた気がしたけど。そんな訳ないわよね。きっと膝・真っ暗の聞き違いよね。ところで膝・真っ暗って何かしら?
軍部のしかも指令室で聞くにはふさわしくないワードに、一瞬私はそんな事を考えた。
「ひ・ざ・ま・く・らだよ、中尉」
ああ、やっぱり聞き違いじゃなかったのね・・・。せっかく逃避していた私の思考を大佐は容赦なく引き戻す。
「何で私がそんな事しなくてはならないんですか」
「いいか? 私が寝不足のままだと仕事の効率は悪くなる。君がお望みの書類処理も進まんだろう。君は私の副官だ。君の仕事は何だ? 私の仕事の補佐、つまり私がいかに快適に仕事を進められるかを考える必要がある。君が膝枕をしてくれれば私の寝不足は解消されて疲れも回復、仕事もスムーズに進む・・・という訳だ。理解したかね?」
「・・・・・」
言わんとする事は理解したが、納得は出来ない・・・というかしたくない。何、真っ昼間から堂々とセクハラしようとしてるの、このひと。
「ほら、早く。中尉!」
「・・・・・」

「・・・で、やってあげてる訳なんスか?」
「そうなの」
「・・・いくら仕事のためだからって、断ってもいい事ってあると思うっスよ・・・」
ソファーで美人副官の太ももに頭を乗せて惰眠を貪る男を半眼で眺めながらハボックはため息を吐いた。
朝っぱらからこんな光景を見せつけられる部下の身にもなってほしいものである。
(でも、オレが同じ事を言っても絶対してくれないんだろうな・・・)
何だかんだ言いつつロイには甘いリザが上官の髪を撫でているのを見やり、ハボックは再びため息を吐くのだった。




*************************
[PR]
by netzeth | 2011-02-09 20:57 | Comments(0)