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by netzeth
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 化粧

開いたと思った次の瞬間、扉は無常にもバタンと音を立てて閉まっていた。私は慌てて彼女の部屋の扉を叩く。
「おい! なんで閉めるんだね!?」
「貴方だったからです!」
「なっ! それはヒドくないかね!なんで私だと閉めるんだ!」
「と、とにかく少しそこで待っていて下さい! 私にだっていろいろ準備というものがあるんです!」
そう言われて待つこと10分。
「お待たせしました」
ようやく顔を見せた彼女は最初に見た時となんら変化は無かった。招かれた部屋の中もいつもと同じくきちんと整理整頓されていて、別に急いで片付けた形跡などはない。
「なあ、君はさっきいろいろ準備があるって言っていたが・・・別に何も変わっていないようだが」
待たされた10分がどうにも納得がいかなくて、私はリザに訊いてみた。
「・・・お気付きになりませんか」
こちらを見つめるリザの顔は何となく不満そうで。私は改めて彼女を上から下まで眺めてみるが・・・。
「え~と、着替えた?」
「違いますっ、・・・もう、いいです」
ぷいと横を向いてしまったリザに私は慌てる。せっかく恋人の家を訪ねたというのに、来た早々機嫌をそこねてしまうのはいただけない。
「ま、待ってくれ。さっき扉の前で私が君を見たのはほんの一瞬の事だ。分からないのは無理もないだろう?」
私の必死の言い分に一応納得してくれたのか、リザはこちらを向いてくれた。
「で? さっきと今と何が違うんだ?」
改めて聞くとリザは少し恥ずかしそうに俯きながら、
「・・・先ほどは、その・・・化粧をしていなかったんです」
「・・・つまり、すっぴんだったって事か?」
「はい」
そう言われて私はリザの顔をマジマジと見つめてみるが、やはり最初に見た時と変化があるように思えなかった。
「・・・君、化粧しても全然変わらないな」
「それは私なんか化粧してもしなくても大差ないという事ですか」
思わずポロリとこぼれた言葉にリザが固い声を出す。再び彼女の機嫌が斜めに傾きかけているのを感じとった私は自分の失言を後悔するが、もう遅い。
「ええ、ええ、どうせ私なんてお化粧したって変化ありませんよ」
「違うっ、そうじゃなくて、君は素顔でも十分美しいって意味で・・・」
「やっぱり化粧しても同じって事でしょう?・・・誰のためにこんな面倒な事してると・・・もう、知りません!」
「なあ、おいっ、リザあ~~」
その日、彼女が機嫌をなおしてくれるまで、私が待たされた10分より長くかかったのは言うまでもない。


 錬金術バカ

朝から本を片手にヒトの家にやってきた彼は、私が何を言っても「あー」とか「うー」とか生返事。
古本屋を何軒もはしごしてようやく見つけたとか言う錬金術書に夢中で、お気に入りのソファーを陣取って黙々と読書を続けている。
まったく、本を読むだけなら自分の家ですれば良いのに。何しに来たんだか。
最初のうちは私も掃除や洗濯なんかで忙しくて、そんな彼を放っておいたのだけど、すべき事を全て済ませてしまうと、何だか手持ちぶさたになってしまった。
だから、お茶なんて用意してしまって、ついでにお茶菓子まで付けて。彼の前に置いてみたけど、大佐は無反応。試しにお茶が入りましたと言ってみるけど、「ああ」とやっぱり生返事が返ってくるだけで。
仕方ないので私は彼の隣りに座って1人でお茶を啜る。
いつもとなんら変わらない休日の過ごし方であるはずなのに、どうしてかスゴくつまらない。
・・・分かっている、きっと私は大佐に構って欲しいのだ。
普段大佐にくっついて来られると、うっとおしいだの暑苦しいだの言っている私が、いざ自分のこととなるとこんな風に思うなんてどうかしてるわ。
でも、錬金術に夢中になっている彼の真剣な顔も嫌いじゃないのよね。
そんな事言ったら調子に乗るから、絶対に言ってやらないけど。
しばらく大佐の横顔を眺めていたら彼は急にパタンと本を閉じて、
「そんなに私の顔が好きかね」
にやりと笑う。
その意地悪そうな顔! ほらね、やっぱり調子に乗るんだから!


 釣り

「なあ、リザ・・・」
私は先ほどからそっぽを向いたままの愛しの恋人に話かける。
相変わらず彼女はつーんとして私と口をきいてくれないどころか、顔を合わせてくれようともしない。
私はふうっとため息をつくが、仕方がない。元を正せば私の自業自得。彼女がこうなった原因は私にあるのだ。
休日を利用して彼女の部屋を訪れた私は、探し回って遂に見つけた錬金術書をどうしても読みたくて、彼女を長時間放置という、恋人としてあるまじき事をしでかしてしまったのである。
・・・本なら自分の家で読めば良いって? まったくその通りだが、彼女がいると落ち着くんだよ。会話がなくたって、側にいてくれるだけで安らげるんだ。
だが、彼女はそうは思ってくれなかったようで。
無理もない・・・せっかく2人きりなのに、恋人が自分より本に夢中だなんて怒って当たり前だよな。
それでも彼女は怒りもせず、根気よく私の側にいてくれたのだが。
・・・それをからかってしまったのが1番まずかった。だってなあ?あんまり私の事をジイッと見てるから可愛くてつい・・・。
結果、彼女は本格的にヘソを曲げてしまったのだ。
慌てた私は今さらながら彼女のご機嫌とりをしているのである。が、状況は芳しくない。ここはそろそろ奥の手を使うしかないか・・・。
「なあ、リザ。そろそろ機嫌を直してくれないか?・・・君の好きなシャロンのショートケーキを買ってくるから」
「・・・・・」
リザは無言だったが、彼女の肩の辺りがピクリと反応したのを私は見逃さなかった。
「もちろん南部産苺使用のスペシャルショートだよ? あれは直ぐに売り切れてしまう人気のケーキだが、何、私はシャロンには顔がきくんだ。電話を一本入れておけば必ず手に入る」
ピクピクっ。
更に彼女が反応する。よし、後ひと押しか。
「今だったら期間限定でチョコクリームVer.も出ているんだよな~」
「ワンホール・・・」
「え?」
「もちろんワンホールですよね?」
「・・・もちろんだとも」
私が大きく頷くと、くるりとこちらを向いたリザはようやく笑顔を見せてくれた。

さて、一時間後。私の買ってきたケーキを食べて、ようやく彼女の機嫌は上向きになったのである。
「良いですか、大佐。いつもいつも食べ物で釣れると思ったら大間違いですからね」
「・・・口に生クリームを付けて言われても説得力ないんだが・・・」




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by netzeth | 2011-03-09 21:06 | Comments(2)
Commented by KAITO at 2011-03-15 01:42 x
こんにちは,快斗です!

あぁ,本当にかわいすぎる!
マスタングめ,リザたんは大事にしなければいけないんだよ!
Commented by うめこ(管理人) at 2011-03-15 21:21 x
こんにちは!快斗さま。いつもコメントありがとうございます。
とても励まされます☆
増田はリザさんを末永く大事にすると思いますvv