うめ屋


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by netzeth
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不器用な恋

「ふう・・・」
広げていたファイルをそのままテーブルの上に置いて、リザは小さく息を吐いた。そのままグンと伸びをする。凝り固まっていた肩の辺りをほぐすと、長時間同じ姿勢でいた疲れがとれていく気がした。
常日頃からワーカーホリックなどと言われているリザといえど、仕事を家に持ち込むのは出来るだけ避けたい事態ではあった。家にいる時くらいゆっくり寛ぎたいと思う。しかし今日はそうも言ってはいられず、提出期限が迫っている報告書の資料を持ち帰って、まとめていた所だった。
最近立て続けに起こった事件を数件リザは担当していた。それに加えてリザにはロイの副官としての仕事もある。普段からサボりがちな上官のおもりをしながらの業務は流石のリザにも手があまったのである。
まったく・・・。
リザは今日も彼女の居ぬ間に執務室を抜け出して、資料室で昼寝をしていた己の上官の顔を思い浮かべた。
その呑気な寝顔を晒す上官の頭に銃口を押しつけて、連行したのは自分だ。リザの怒りを感じとったのかその後のロイは素晴らしい処理能力を発揮し、何とか残業は免れたのだが。
・・・やれば出来るくせに。
いつも真面目に職務に励んでくれれば、今日の様に銃で脅して・・・なんて乱暴な手段もとらずに済むし、リザも仕事を家に持ち込む事もないのだ。
しかし、それもロイなりの処世術だと理解しているリザはその事について強くは言えなかったりする。
サボりがちで副官に尻を叩かれなければ仕事をしない不真面目な男、仕事よりデートを優先する軟派な男――これらはロイが被っている数々の仮面の一つなのだ。ロイの足元をすくおうと考える輩達を油断させるため・・・そして、ロイが上に行くための。
もっとも、リザが仕事を家に持ち帰っている――なんてロイが知ったら、彼はきっとその態度を改めてしまうだろう。リザに負担をかけまいと真面目に仕事をするようになるかもしれない。本当のロイは・・・リザの好きなロイはそういう優しい人間だ。もちろん、その事を良く知っているリザは、言うつもりは無かったが。
ふとテーブルの下に置かれた仕事用のバッグが目に入る。
リザはそのバッグの脇のポケットから一枚の写真を取り出した。
黒髪の若い男がキラキラした衣装を着て、やたらカメラ目線でポーズを決めている。
ジェレミー・ウィバーと書かれたその写真をしばし眺めて。
「何よ、全然似てないじゃない」
リザはその写真を放り出す。写真はテーブルに広げてあったファイルの上に落ちた。
ロイに似ている――という司令部の女の子達の言葉に好奇心がそそられて、つい手を伸ばしてしまったのだが。改めてじっくりと見てみても、やっぱり似ているとはリザには思えなかった。
そりゃあ、サラサラしたストレートの黒髪と切れ長の涼しげな瞳などは多少は共通点があると言っていいかもしれないが。
ロイの瞳の色はもっと深い綺麗な黒だし、体格だって彼はこんなに貧弱じゃない。それに何より彼自身が纏う空気――雰囲気といおうか、それが全然違う。
彼は――ロイはこんなになよなよした空気の持ち主ではない。
写真越しといえどリザにはそれが判って・・・多少どころかだいぶ落胆する。
別にこんな紛い物で自分の心を満足させようとした訳ではない。けれど彼に少しでも似ているなら・・・とその写真に期待していたのも確かだ。
「もう・・・私何やってるのかしら」
ジェレミー・ウィバーのサイン入りブロマイドを見つめながらリザはポツリと呟いた。
素直に好きな彼の写真も持てない不器用な恋。
「今度イーストシティに来るのよね・・・」
見に行ってみようかしら・・・。
声も似ているという話を思い出しながら、リザは1人物思いに耽るのだった。




END
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by netzeth | 2011-03-24 21:03 | Comments(0)