うめ屋


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by netzeth
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2. リザはロイをデートに誘った

「彼はダメよ!」
リザは悲鳴のような声を上げた。
そこはすでにリザの部屋である。
あの後、すぐに二人?は戻ってきたのだ。
帰ってきて早々に、リザは姿は見えないがそこにいるであろう女性に切実に訴えた。
(どうして!? 私、彼が良いの! リザ、彼と知り合いみたいだったじゃない、好都合でしょ!?)
すぐに女性――シェリーの声が返ってくる。
「どうしてって・・・、とにかくっ、彼はダメなの!」
自分でもよく判らなかったが、ロイだけは嫌なのだ。
(彼こそ私の理想の人よ! ハンサムだし・・・紳士だったし・・・おまけに錬金術師みたいだったし! 私あんなに素敵な錬金術師の男性初めてなの・・・)
ロイを思ってうっとりと紡ぎだされる言葉に、リザはなんだかムズムズする。
ロイの事を誰よりも知っているリザからしてみると、褒め過ぎという気がしてならない。
「シェリー、あの人はあなたが言うほど素敵な人じゃないわ。すぐに仕事はサボるし、片づけもできないし、雨の日は無能だし・・・」
何とか思い直して貰おうと、リザはシェリーを説得するが、
(嫌よ! 私はあの人に決めたの!! 私、あの人とデート出来なければずっとリザのところにいるから!)
もう、ほとんど脅しである。
一体どうしたらいいの・・・?
途方にくれながら、リザは不覚にも泣きそうになった。
自分はロイにデートを申し込まねばならいのだ。・・・想像しただけで、恥ずかしくて死にそうだ。
ロイならば訳を話せば協力してくれるかもしれなかったが・・・、リザはロイをこんな事に巻き込みたくは無かったし、何より、シェリーが嫌だと言っている。
無理にデートして貰うのは嫌なのだそうだ。
「判ったわ・・・なんとかしてみるから・・・」
はんばやけっぱちの思いで、リザはシェリーに約束したのだった。


次の日、ひたすら暗い表情で、リザは司令部に出勤していた。
外せない首のペンダントはなんとか服の下に隠したものの、相変わらずシェリーはリザに憑りついたままである。軍部では頼むから黙っていて欲しいと言いつけたおかげか、朝から彼女は大人しかったが。それも、彼に会うまでの事だった。
「おはよう、中尉」
(きゃあーー! ロイ様!)
いつの間にか様付けである。
ロイの顔を見た途端に約束を忘れて騒ぎだしたシェリーに、
「ちょっと、黙っててちょうだい」
小声で注意する。
「中尉?」
そんなリザの様子を不思議そうな顔でロイが見ていたのに、リザは慌てて笑って誤魔化した。
「な、なんでもないんです、大佐。おはようございます」
「ああ」
そのままいつものように、リザはロイの一日のスケジュールを読み上げる。今日は比較的忙しくもなく、朝から余裕のあるスケジュールであった。
そして、それが終わると、リザは彼女らしからぬ様子でちらりちらりとロイの様子を伺った。
何やら言いたい事がある・・・そんな様子のリザに気づいたロイが、
「ん? 何だね? まだ何かあるのか?」
「あの・・・仕事中に私事で恐縮なのですが・・・早くなんとかしないと私も仕事に差し障りがあると申しますか・・・すごく困っているといいますか・・・」
「? なんだね? はっきり言わないとは君らしくないな。まだ就業時間前だろう。私事だろうがかまわん、言ってみたまえ」
「はい・・・」
リザは意を決して切り出した。
「もし、良かったら・・・私の向かいに座って食事を食べたり、隣を歩いたり、買い物したり、公園にいったり、パフェとか食べてくれませんか?」
「へ・・・?」
ちなみにパフェうんぬんというのはシェリーの希望である。
「それってつまり・・・デ」
「あああああ! 違います! そんなんじゃなくてっ、私はその・・ただ・・・」
どうしてもデートしてくれとストレートにリザは言えず口ごもった。
・・・どうしよう、もう、穴があったら入りたい・・・。
耳まで真っ赤になりながらリザは俯いた。ロイの顔をまともに見られない。いつもがみがみとうるさい副官が突然デートしてくれなんて言い出して彼は呆れているんじゃないだろうか? ただでさえ、彼はプレイボーイと言われている女性関係の達人なのだ。自分のような者からの誘いなど鼻で笑われるかも・・・。
不安にリザはぎゅっと目を閉じた。
「いいとも! いつにする? 君は次の非番はいつだ? ええと・・・あ、来週か。じゃあここを私も非番を入れてだな・・・」
しかし、リザの心配などは杞憂のようで。
ロイは上機嫌に手帳を取り出して、予定の確認を始めた。言葉の一つ一つが踊っているようだった。
「待ち合わせは何時にする? 場所は・・・時計台でいいかな?」
そして次々に予定を決めていく。
あまりにもとんとん拍子に事が進んでリザはホッとしながらも、少々唖然としてしまう。
・・・こんなにうまくいっていいのだろうか?
けれども、本気で嬉しそうなロイを見ると、リザも悪い気はしないから不思議なものだ。
自分とのデートをそんなに喜んでくれるなんて・・・。
だからこそ、このデートが実は憑りついた幽霊を何とかするためのものだという事実が、リザには少し後ろめたかった。


そして、約束の日はあっと言う間にやってきて。
リザは少し緊張しながらも、待ち合わせの場所にへと向かった。彼につり合うようにおしゃれにも気合いを入れた。うるさいシェリーの注文にも全部答えて、彼女のこれまた理想のデートルックとやらにリザは身を包んでいた。
シフォンのふんわりしたブラウスに、白いフレアースカート、少し高めのヒール。そして首からはあの赤いペンダント・・・準備は完璧なはずだ。
後はデート本番をばっちりこなして、さっさとこのわがまま幽霊に自分から離れて貰うのだ。
よしと気合いを入れてリザは時計台広場へと足を踏み入れた。
既に時計台の下には、ロイの姿があった。
リザも時間よりだいぶ早めに来たつもりであったのだが。慌ててリザはロイの元へと駆け寄った。
「大佐!」
「やあ、中尉」
リザの呼びかけに答えるようにロイが手をあげた。
途端にシェリーが今日も素敵だなんだと騒ぎだしたが、リザは綺麗にそれを無視した。
ロイの前で彼女としゃべるわけにはいかない。
「すいません、お待たせしてしまったみたいで」
「いや、早く来すぎた私が悪いんだ。・・・そんなことより・・・似合っているなその格好。可愛いよ」
さらりとそんなセリフが出てくるロイにリザは関心してしまった。さすがにデートし慣れているだけの事はある。
真正面から可愛いなどと言われて少し動揺しながらも、リザはもう、誉めてもなんにも出ませんよ? とロイに笑いかけた。

――こうして、波乱のデートは幕を開けたのである。



続く
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3.リザは彼女のわがままをきいた

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by netzeth | 2011-06-05 00:00 | Comments(0)