うめ屋


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by netzeth
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エピローグ

しばらくの間、ぼうっとリザはその場に佇んでいた。シェリーが消えてしまった今となっては、ここ数日間の出来事がまるで夢の様にも感じられる。
・・・だって、幽霊に憑りつかれていたなんて。
今思い返しても、不思議な体験だった。
リザは改めて手の中のペンダントを見つめた。
外灯に照らされて、赤い宝石は鈍い色の光を跳ね返すばかり。そこにはもう、シェリーがいたという何の痕跡も残されていない様に思えた。
「中尉ー!」
遠くから己を呼ぶ声がしたのはその時の事であった。その声はどんどん近付いてくる。
ロイの声だ。
「あっ、いけない・・・」
リザは自分がどういう状況でロイを置いてきてしまったのか思い出した。
今更ながら、その時の情景が蘇ってくる。
途端にポッと顔が熱くなり、リザは両手で頬を覆った。
・・・どうしよう・・・私・・・。
ロイになんて言えば良いのか。改めて自分がロイとキスをしようとしていた事実が思い起こされて、リザは恥ずかしさにその場を逃げ出したくなった。
しかし、リザがそれを実行に移す前に。
「中尉!!」
ロイがリザを見つけた。彼は息を切らしながら駆け寄ってくる。
「大佐・・・あの、私・・・」
「待ってくれ、まずは私に言わせてくれ。・・・すまなかった」
「え・・・」
まさか謝られるとは思っていなかったリザは驚いてロイの顔を見返した。
「君の嫌がる事をするつもりは無かったんだ。・・・今日の君は・・・何というか、その、積極的だったから。・・・少し調子に乗ってしまったようだ・・・だが、決して軽い気持ちでした訳じゃない。それだけは信じてくれ」
リザを見つめるロイの瞳は真剣だった。そこに嘘はない。
シェリーの声が脳裏に蘇る。
――あなたはあの人がとても好きなのね・・・彼もあなたの事・・・。
本当にそうなのかしら? だとしたら私は――もう少し自分に素直になってもいいのかもしれない・・・。
「・・・大佐。謝って頂く必要はありません。先ほどの事は・・・嫌だったわけではないんです・・・ただ・・・少し、驚いてしまっただけで・・・」
はにかんだ笑みを浮かべてリザはロイを見つめ返した。リザの言葉にロイも安堵の笑みを見せる。
「そうか・・・」
「はい。・・・それより大佐、お腹空きませんか?・・・私、もうペコペコなんです。よろしかったら、これから夕食に行きませんか?」
ロイには結果的に悪い事をしてしまった。今日一日、リザの都合で彼を振り回してしまったのだから。そのお詫びの気持ちもこめてリザは自分からロイを誘った。
自分の気持ちはまだ良く判らなかったけれども。
ここからが本当にロイとの2人きりのデートだ。
それを、今は素直に楽しもうと思った。
リザからのお誘いに、ロイの顔が明るくなる。
「あ、ああ。もちろん! 何が食べたい?」
「お任せします」
「そうか。なら美味い店があるんだ。一度君を連れて行きたいと思って・・・」
リザはその手に持っていたペンダントをそっとポケットへとしまった。
詳しい事は聞きそびれてしまったから、調べても判らないかもしれないけれども、いつか彼女――シェリーのお墓にこのペンダントを返しに行きたい。
母の形見だと言っていたから、きっと彼女も喜んでくれるだろう。その時はロイと二人で行けたら良い・・・そんな事を思う。
彼女のおかげで自分は新たな気持ちでロイと向き合う事が出来そうだったから。
「さ、行くか。中尉」
「はい、大佐」
そして二人はごく自然な動きで再び腕を組むと歩き出す。その姿はやがて夜の街へと消えて行った。




END
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◆あとがきみたいなもの◆
これにて「わがまま幽霊」は完結です。ここまで読んで下さった方々どうもありがとうございました!
元々はオフ様のネタの一つとしてあったお話ですが、このお話のリザたんは純情なので大人向け要素もなく。ならオンラインで・・・とロイアイの日企画用に練りました。コンセプトはリザたんの受難。
今回のお話の幽霊シェリーは善人でしたが、悪人に体を乗っとられて・・・みたいなシリアスVer.も当初は考えていたり。そちらはロイが居なくなったリザたんを探す・・・というお話。そっちのコンセプトはリザたん探して三千里でした(笑)なんだかんだでボツになりましたが。
さて、今年もロイアイの日企画、なんとか最期までやりきる事が出来ました。それもひとえに皆様のおかげだと思います。改めて御礼申し上げます。ありがとうございました!

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by netzeth | 2011-06-11 00:00 | Comments(0)