うめ屋


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 合コンって何ですか

「大佐、今日私合コンなんで早く上がらせて貰っていいですか?・・・何ですかお茶なんか吹いたりして。もういいお歳何ですから少し落ち着きを持って下さいね。え? 落ち着くのは私の方? どういう意味ですか。私はいつも落ち着いてますが。合コンが何か知っているのかって? もちろんです、馬鹿にしないで下さい・・・と言いたいところですが、実は誘われたはいいんですがよく知らなかったんですよね。それで、ファルマン准尉に尋ねてみましたところ、『男女が食事やお酒などを飲みながらゲームや会話をしたりして親睦を深めるためのレクリエーションプログラム』だと伺いました。・・・何ですか、その微妙な表情は。これ、間違ってるんですか?・・・間違ってはいないが? なんです? もう、言いたい事があるならはっきりおっしゃって下さい!・・・え? 誰に誘われたかですか? ハボック少尉とカタリナ少尉ですよ。2人で合コンを主催しているそうなんですが、どうしてもメンツが足りないと、とても困っているようでしたので。・・・そういえば、レベッカ――カタリナ少尉が言っていたんですけど、合コンは戦場だっていうんです。どういう意味何でしょう?・・・バーゲンセールみたいなものかしら・・・どちらが手強いと思います?・・・大佐? どうしました? なんだかスゴく疲れた顔をしてらっしゃいますけど。・・・ところで大佐は合コンに参加したご経験は? え? 無い? 本当だって・・・そんなに言い張らなくても。別に疑ってませんよ。そうではなくて、一体どんな服装で行ったら良いのか相談したかったのですが。戦場などと言うからには動き易い服装がベストかと思われたのですが、ハボック少尉は絶対にスカートであるべきだと言うんです。それもなるべく丈の短い物が良いらしいです。あ、それから出来るだけ胸元が開いた服ならなお良いとか・・・大佐はどう思われます? 大佐? マスタング大佐?  発火布をはめてどちらへ?」

その夜のハボック&カタリナ主宰東方司令部内合コンには、主催にもかかわらず何故か欠席したハボック少尉に替わり、ロイ・マスタング大佐が出席していたという。


 一撃必殺

ロイ・マスタング少年は進退窮まっていた。目の前にある、どす黒い色をし、ごぼごぼと怪しい気泡が浮き出している液体。臭ってくるのは今まで嗅いだ事も無いような異臭で。
「これ何?」
「お薬です!」
・・・判ってはいた。風邪で寝込む自分にリザがお盆に乗せてこの、この世の物とは思えない代物持ってきた時から薄々は。
だが、それでも。人間一縷の望みにかけてみたいと思う時があるのだ。この薬を今から自分が飲むのだという現実を受け入れたくは無かった。
だが、現実は非情である。それはロイ・マスタング少年を容易に追い詰めていく。
「お父さんが私が風邪を引いた時に作ってくれたお薬なんです。自然の薬草を煎じてあってとても良く効くんですよ! 今日はお父さんが居ないから私が作りました。・・・見た目はちょっとうまく出来なかったけど・・・効き目は大丈夫だと思うんです」
知っている。師匠がその薬を作った時に自分も手伝ったから。そして、薬の材料の薬草を集めるのがとても大変だということも。師匠と一緒にロイも散々探し回ったのだから。
「これを飲めば風邪なんか一撃必殺です!」
・・・なんか自分の方が一撃必殺されてしまいそうなんだが。
けれども。薬の効能を信じて疑わず、キラキラしたまなざしを自分に向けてくるリザに飲みたくないなどと言えるだろうか? いや、言える訳がない。
ましてや、手のひらや膝小僧に絆創膏を貼っているリザに気付いてしまったら。そう、この薬を煎じるために必要な薬草は崖に生えていたり、手を切る草の生い茂っている茂みにあったりして採取するのは一苦労なのだ。自分でその薬草を取りに行った経験があるロイにはそれを集めてくる大変さを一番良く知っていた。それを・・・自分より何歳も年下の可愛い女の子が傷だらけになりながら作ってくれた薬をいくら飲んだら余計に具合が悪くなりそう――ぶっちゃけ死にそうでも、飲めないとは絶対に言えない。人して――男として。
ロイは覚悟を決めた。
「あ、ありがとう、リザ」
そして、少女にニッコリと笑顔を向けると、ロイはその薬を一気に飲み干したのだった。

ちなみにその後。ロイの熱はあっという間に下がり、リザを喜ばせたが・・・その代わり更に腹痛で三日寝込んだ。だが、それでも少年の顔には満足げな笑みが浮かんでいたという・・・。


 無意識の誘惑

変なところでこだわる癖のある彼。そんなのどちらでもいいと思える事を彼は絶対におざなりにはしない。1度こうと決めたら自分が納得するまで追求する――それが彼の錬金術師としての性なのか、はたまた彼自身の生まれ持った性質なのかは定かではないが、とにかく今日も彼はそのこだわりを爆発させていた。
「それ・・・私に付けさせてくれ」
「え?」
さっきからじーっと、私の身仕度を無言で眺めていた彼が突然そんな事を言い出した。
ちょっと気取ったレストランでの食事を約束していた私と彼。
彼は約束の時間より少々早く私の部屋へ姿を見せると、まだ支度が終わっていない私を待つと称してソファーに腰を下ろしていたのだが。
「あの・・・これですか?」
私は今まさに首にかけようとしていたペンダントを彼に掲げて見せた。
「そう、それ」
彼は大真面目な顔で頷いてくる。
私は彼の意図が読み取れなくて少々困惑した。
繊細な銀の台座にパールが一粒ついたペンダント。これは彼が私にとプレゼントしてくれたものだ。
シンプルなそれを私は密かに気に入っており、彼と会う時にはいつも身に着けていた。
彼にとっても別に今更珍しいものではないはずだけれども。
訝しく思いながらも、手を差し出した彼にそのペンダントを渡すと、彼はペンダントの止め具の辺りを興味深げに観察し始めた。
「へえ~この部分こうなっていたのか・・・」
「別に珍しくもないでしょう?」
「いや、今までじっくり見た事が無かったからな。私自身はペンダントは付けないし。今度自分で練成するための参考にしようと思ってね・・・もちろん君に贈るためだぞ」
アジャスターの金具をいじりながら、彼は私に片目瞑ってみせた。
別に聞いてませんけどと余計な一言を付け加える彼に私はぴしゃりと言ってやりながらも内心呆れる。
珍しく大人しいから何を考えているのかと思っていたら・・・そんな事を考えていたのか。
この人の考える事はときどき良く判らない。
「さ、付けるぞ」
立ち上がった彼は私の正面に立つと、首もとに手を回す。
「ちょっ、大佐。後ろから付ければ・・・」
「ほら、ジッとしていたまえ」
問答無用で私を黙らせた彼はペンダントを付ける作業に集中し始める。
「む・・・なかなか上手くいかないもんだな・・・」
真剣な顔でそんな呟きを漏らして。
・・・顔が、近い。
この距離を経験した事が無い訳じゃないのに、私の鼓動は早くなっていった。
そんな私の動揺にも気付かずに、大佐は相変わらず私の首元に手を回してペンダント付けに四苦八苦している。
「どうなっているんだ・・・?」
と、いきなり彼は私の首の後ろを覗きこんで。下ろしていた髪のせいで見えにくかったのか、さっと片手で髪を横へと流した。
「ひゃっ」
その感触に私は思わず小さく声を上げてしまう。
慌てて、口を噤むがもう遅い。
ニヤリと笑った彼が私の顔を覗きこんでいた。
「・・・意識した?」
判っていて聞くなんて本当に質が悪い!
赤らんだ頬を俯いて隠しながら、私はもう二度と彼にペンダントを付けさせるものかと思うのだった。




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by netzeth | 2011-07-20 21:22 | Comments(0)