うめ屋


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 出来心

退屈なデスクワークのほんの合間。書き損じてしまった書類を丸めて捨てようとして。
しかしロイは伸ばした手を止めて考える事しばし、くるりとその書類をひっくり返すと、その裏紙にとペンを走らせた。
そしてペンを止めると、ロイは自ら書いた文字に目を落とす。
「・・・うん。良いんじゃないか? うん、うん、なかなかしっくりくるじゃないか」
なんて、自画自賛。満足気に頷いたりして。
「何がですか?」
「うん? それはだな、私の未来の・・って、中尉!?」
慌ててロイは手元のその落書きを両手で隠す。そんなロイの様子にリザは不審の目を向けた。
「また、どうせろくでもない事をなさっていたんでしょう。何を隠されたんですか?」
「な、何でもない!何でもないぞっ」
否定すればする程、怪しく見えてしまうのは日頃の行い故か。
リザはロイを真正面から睨みつけると、
「見せて下さい」
「だ、ダメだ!」
「見せて下さい!」
「だから、無理だ!」
「み・せ・な・さ・い」
「あっ!」
鷹の目の迫力に一瞬呑まれたロイの隙をついて。リザはロイの手からその紙を奪い取った。
「ち、違うんだ。中尉。これはほんの出来心で・・・」
はたして。その紙にはロイの筆跡でこう書かれていた。
リザ・マスタングと。

その後、すぐに顔を真っ赤に染めたリザが仕事中に何をしているんですか! とロイを叱り付けたが、いまいち迫力にかけたという。


酔っ払いの戯言

私と彼――2人きりで飲む。特に機会が多い訳ではないが、まったく無いという訳ではないそんな酒の席での事。
私と一緒だと酒が進むと言い出し、案外酒に強いはずの彼が酔っ払って潰れるのはいつもの事で。
今日も彼は行きつけのバーのカウンターに突っ伏している。
放っていく訳にもいかなくて、私はマスターに冷たい水を頼むと大佐に差し出した。
「大佐、水です。飲めますか?」
「う~ん……」
肩を揺すってみるが、相変わらず彼は突っ伏した姿勢のままで。あーとかうーとか意味を成さない言葉を発している。
「・・・大佐?」
「う~ん、結婚してくれ・・・リザ・・・」
彼の口からこぼれた言葉に私は一瞬胸が締め付けられる思いがした。
それは私と2人きりの時、彼が酔っ払って潰れると必ず言う戯言。それはきっと大佐自身も知らない戯言。
私はいつもその戯言を聞かないふりをしている。私はそんな言葉は聞いていない――と。そうでもしなければ、私は彼の側に――彼の副官ではいられないから。
けれど。
私はそれをいつまで酔っ払いの戯言だと片付けられるのか。・・・実を言えば自信がない。本当はいつだってそれを本気だと勘違いしたい自分がいるのだから。
「ほら、大佐。帰りますよ」
そして、私は今日も素知らぬふりをする。


臆病者のプロポーズ

彼女と2人きりで飲む。珍しい事だが、まったく無いという訳ではないそんな酒の席での事。
彼女がいると私は油断――というか安心してしまうのだろう。いつも必ず彼女より先に酔い潰れてしまう。
すると優しい彼女はかいがいしく私の介抱をしてくれる。
実を言えばそんな風に私は彼女に世話を焼かれたいのかもしれないな。
「大佐、水です。飲めますか?」
「う~ん……」
優しく肩を揺する彼女は心配そうに眉を寄せている。突っ伏した姿勢のままそんな彼女の顔をちらりと横目で盗み見て。
・・・可愛いな。
なんて酔いの回った頭で私は呑気に思った。いつだって私を心配してくれて、いつだって私の世話を焼いてくれる・・・可愛い可愛い彼女。
そんな彼女を見ていると、私は我慢出来なくなる――許されない事だと判っていても、どうして口にしたくなってしまうのだ。
「・・・大佐?」
「う~ん、結婚してくれ・・・リザ・・・」
酔った勢いを装ってしか言えないプロポーズ。それを彼女はいつもどう思っているのか・・・怖くて問詰めた事はないが。
彼女自身、その事について言及した事は今までに1度もなかった。・・・きっと、ただの酔っ払いの戯言だと思っているのだろう。
――実は私は酔ってなどいなくて、このプロポーズはいつも本気なんだと伝えたら――彼女はどんな顔をするだろか。
・・・言える訳はない――今は。
「ほら、大佐。帰りますよ」
だから私は今日も繰り返すのだ――酔った勢いでしか言えない臆病者のプロポーズを。





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by netzeth | 2011-08-25 21:02 | Comments(0)