うめ屋


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 かくれんぼ Ver.リザ

「やられたわ!」
大人しく真面目に仕事をしていると思って、お茶でも淹れてあげようかなどと仏心を出したのが間違いだった。ほんの一時目を離した隙に、あの人は執務室の机の前から煙の様に姿を消していた。
私はすぐさま執務室を飛び出した。そして、司令部中の心当たりを手当たり次第に探していく。
彼のお気に入りの昼寝スポットである中庭の木陰、資料室の一番奥の棚の前、そしていつも彼がおしゃべりに興じている事務の女の子達のいる受付。
その何処にも彼の姿は見当たらなかった。
が、私は迷う事無く最後にとある場所へと向かった。

立ち入り禁止の看板がくっついたロープを跨いで私は扉を開ける。途端に顔に強い風を受けて、前髪が跳ね上がった。
はたして、何もないその屋上の広いスペースの端っこに探し人は座っていた。
「やあ、さすが中尉だな。すぐに見つかってしまった」
彼――大佐は私の姿を認めると悪びれる事なくそう言って肩を竦めた。
「君は探し物の名人だからな」
楽しげに笑う彼を私はねめつけた。
――冗談じゃない。わざと見つかる様にしているくせに。
幼い頃、彼は私と良く一緒に遊んでくれた。兄弟もいなければ、近所に家もなく、よって同年代の友達もいなかった私のために彼は遊び相手になってくれたのだ。いろいろな遊びに付き合ってくれた彼だったが、あれはそう、初めて隠れんぼをした時の事だ。私が鬼になり、彼が隠れた。ところがいくら探しても私は彼を見つけられなくて。途方に暮れたまだ幼かった私は、一人の寂しさと、隠れんぼという遊びを上手くこなせなかった情けさと、そして彼を探し回った疲れとで泣いてしまったのだ。
わんわん泣いているところに慌てた彼がやってきたのを良く覚えている。
それ以来、隠れんぼをする時は彼は必ず自らの痕跡を残す様になった。
私が彼を見失わない様に。私が彼を見つけられる様に。
その癖はこうして大人になった今でも変わっていないようで。
彼と同じくいつも中庭の木陰で昼寝をしているハヤテ号が居なかったのと、受付の女の子達の証言で私は大佐がここにいる事を推理した。案の定、彼の膝の上には中庭で気持ち良く寝ていたところを大佐に連れて来られたらしいハヤテ号が寝ぼけ眼で乗っている。
私はさっさと彼からハヤテ号を取り返すと、クルリと背を向けた。
「早く戻って来て下さいね。……せっかく淹れたお茶が冷めますから」
そのまま振り返らずに私は屋上を後にする。……結局彼が何度脱走しようと怒る事が出来ないのは、ちゃんと自分はここだど教えてくれるから――必ず最後には私に見つけさせてくれるからなのかもしれない。
それは――彼と私だけの隠れんぼ。


 かくれんぼ Ver.ロイ

君は隠れんぼが好きだった。その小さな身体で隠れてしまうと、探すのも一苦労で。私は鬼になるとよく君を探し回ったものだった。そうすると待ち疲れた君は大抵眠ってしまっていて。……発見した君を抱き上げてベッドまで運ぶのは私の仕事だった。
だから、君が脱走したと聞いた時、私はずいぶんと慌てたんだ。もちろん君はもうあの頃の様に小さな子供ではない、立派なレディだ。もう、狭い棚の中や物置の箱の中なんかに隠れていやしないだろう。
でも、三つ子の魂百までと言うじゃないか。君が大人になっても隠れんぼの(隠れる方の)名人じゃないなんて保証は何処にある? もちろん、君が脱走…いや言い方が悪いな。気分転換の休憩を取りたくなるほど仕事をサボっていた私が悪いんだ。だが……考えてもみたまえ、君が居なければ仕事は余計に進まないんだぞ?
私は君を探し回った。そりゃあもう、司令部中の隅から隅まで。君のお気に入りの花壇がある中庭も、ストレス解消しに行く射撃場も、果ては女子ロッカー(もちろん自分で入ってはいないからな、見て貰ったんだ)まで。君は何処を探しても見つからなくて……私は途方に暮れた。
幼い頃も、こんな風に君を探し回って、でも見つからなくて、私は困り果てたものだった。そんな時、君はいつも灯台下暗し。案外近くに居たりするんだ。私は回れ右をすると、君を探しに出た執務室へと戻って来た。
すると。
主の居ないはずの机の前に誰か座っている。
「中尉?」
何故か居なくなったはずのホークアイ中尉が私の椅子に座って眠っていた。
私の口許はいつの間にか弛んでいた。
――彼女はちっとも変わらない。
上手く隠れていても結局は私の側を離れる事が出来ないところとか。
その少女の頃と変わらない寝顔をしばし眺めて、私は自らの上着を脱ぐと彼女にかけてやり――そして、起きた彼女に叱られない様にと残っていた書類に目を通し始めたのだった。


 Sheep

「どうしたんスか大佐? すげえクマが出来てますよ」
「ああ…最近どうも眠れなくてな」
「なんだ、じゃあ俺がとっておきの方法教えますよ。これをやれば一発で眠れますよ!」
「ほお…どんな方法だ?」
「それはですねえ……羊を数えるんス! そうすれば効果覿面で……いてっ。何で殴るんスか!」
「うるさい! お前がくだらない事を言うからだ! 何を言い出すかと思えば羊を数えろだと? 私は子供か!」
「騙されたと思って試してみて下さいよー。こういうのって、使い古されている分逆に効果があるもん何スから」
「だいたい、こんな科学的根拠も無い方法で眠れる訳がないだろう」
「でも、科学的根拠も無い割に無くならないって事はそれなりに有効な手段だって事じゃ無いスか?」
「……う~む、一理あるか……」
「そうッスよー。あ、もし羊が気に入らないなら、大佐の好きなもんに変えてみたらどうですか。犬でも猫でも。俺も子供の頃、好きな食べ物とかでやってたんス」
「……好きなものか…」

「あ、大佐! どうですか、眠れ……てはいなそうですね…すげえクマ…あの方法試してみなかったんですか?」
「いや……やってはみたんだが……」
「が?」
「羊の代りに中尉を数えたらな……全然眠れなく…むしろ興奮して余計に……」
「……な、何やってるんスか! 普通動物とかでしょ!」
「良いか!?  ミニスカ中尉が一人水着の中尉で二人、下着の中尉が三人……眠れる訳なかろう!!」
「何威張ってるんですか……でも、それ良いですね! 今度俺もやってみようかなーボインなお姉ちゃんで」
「中尉はダメだぞ!」
「なっ、そんなの俺の自由でしょーが! 俺の妄想なんスからっ」
「ダメだ! 許さん! 例え妄想でも許さんぞ!」

わあわあぎゃあぎゃあ同期の頭の悪い同僚と騒ぐ己の上官を眺めながら、ひょっとしたら同じくらい、いやそれ以上に馬鹿なのかもしれない――とブレダは(これが自分がついて行こうとしている男だとは思いたくは無かったが)思ったのだった。




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by netzeth | 2011-11-15 01:31 | Comments(0)