うめ屋


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おじたんと私

訪問の約束も無く訪れたせいで、生憎と主人は留守だった。ならば、とすぐに失礼しようとした私を引き止めたのは奴自慢の妻であった。
「マースはすぐに戻ると思うから、お茶でも飲んで待っていて? 何のおもてなしもしないでマスタングさんを帰したなんてマースが知ったら、私は叱られてしまうわ」
そんな言葉に甘えて、彼女が出してくれたクッキーに舌鼓を打っていたらば、呼び鈴が鳴り、グレイシアは部屋を出ていってしまった。
後に残されたのは私とクッキーと紅茶と、そして奴の幼い娘。
「あのね! あのね! ロイおじたん!」
ちなみに当初、エリシアは私の事をお兄ちゃんと呼んでいたのだが、悪意を持ってヒューズがおじさんと呼ぶように教育したのだ。
私はというと、おじさんと呼ばれるのは誠に遺憾であったが、かといってお兄ちゃんも自分の童顔が幼女にも認定されてしまったようで少々抵抗があるのである。
「ないしょのお話してあげる!」
「内緒のお話?」
「うん! エリシアねー、おとなりのサム君とーおむかいのジョン君におよめさんになってっていわれたのー!」
「そうか、エリシアはもてもてだな」
「うん! もてもてなのー!」
「でも、エリシア。パパには今のお話は絶対に言ってはいけないよ?」
「どうして?」
「……ないしょのお話なんだろう?」
「……うん! そうだね!」
素直に頷いてくれたエリシアに私は心からホッとした。
……奴に知れたら、サム君とジョン君の命が危ない。
「ねーねーロイおじたんもないしょのおはなしして?」
「私もかい?」
「うん。エリシアがしたからおじたんもするの! とーかこーかんっていうんだよ」
私は思わず苦笑してしまう。一体どこでそんな言葉を覚えてくるのやら。
「判ったよ。その代わりこれはおじさんとエリシアだけの秘密だよ? ないしょのお話だからね」
「うん、ないしょだね」
「……おじさんはね、リザお姉さんが好きなんだ」
エリシアは一瞬びっくりした顔をして、その可愛いおめめを一杯に見開いていた。けれども、すぐにお星様のように瞳をキラキラとさせる。
「ロイおじたん、リザおねーさんをおよめさんにするのね?」
「……そうだね」
そう、いつか、必ず。
「リザおねーさんのおよめさん! エリシアみたい! ロイおじたん、はやくリザおねーさんをおよめさんにしてね!」
「おじさん、がんばるよ」
――いつか、君が大人になるまでにはその姿を見せてやれれば良いのだが。
その言葉は飲み込んで、私はエリシアの頭を優しく撫でてやったのだった。


餌付け

「ねーリザ、あんたどういうきっかけでマスタング大佐と付き合う様になったのよう」
「なあに? 藪から棒に」
「良いじゃない、教えなさいよー! 減るもんじゃなし。今後のいい男捕獲計画の参考にするんだから」
「何よ、それ?……別に特別な事は何もないわよ」
「嘘をつきなさい。そんなんでこのレベッカさんを誤魔化せると思ってる訳?」
「本当よ。嘘なんてついて無いわ。ただ……」
「ただ?」
「大佐は昔から私によくチョコレートとかアメとかくれたのよね…」
「へえー…」
「ううん、それだけじゃないわ。苺のショートケーキとか、プリンとかシュークリームとか……」
「へ、へえ?」
「アップルパイにモンブラン、フルーツタルト……」
「なんか甘い物ばっかね」
「あら、甘い物だけじゃないわ。フライドチキンにフィッシュ&チップスにクラブハウスサンドウィッチ……」
「…………」
「あ、話が逸れたわね。えーと、なんか気がついたら付き合ってたのよ」
レベッカは、あんたそれ、たんに餌付けされたんじゃ……? とは今後の二人の関係のために言わないでおいた。


リボンと貴方

寝ている貴方を見ていたら、何故かとてもうずうずしてしまって。私は我慢できずに引き出しから例のものを取り出した。
「……ほら、やっぱり良く似合う」
彼の柔らかな黒い毛を一筋掬って結んだ赤いリボン。やっぱり、黒毛には赤が良く似合う。あまりにお似合いで可愛らしいので、私はどんどん調子に乗ってしまった。
チークは桃色。アイシャドウをふんわりと乗せて。流石に閉じているまつ毛にビューラーとマスカラは難しくて諦めた。
出来上がった力作に私は満足する。よし、後は……。
「さっきから、一体何をしているんだ?」
せっかく最後の仕上げに取りかかろうとしたのに、貴方は目を覚ましてしまって。私は最後の仕上げをしぶしぶ諦めると代わりに素敵になった貴方の姿を見せてあげる。
向けられた手鏡の中の自分をのぞき込んだ貴方は、
「なんて事をしてくれたんだ……」
と、げっそりとした顔。せっかく私が腕を振るったというのにどうもご不満らしい。
「私は化粧だけは二度としないと決めていたんだ……」
「あら? ご経験がおありに?」
私の指摘には答えずに、貴方は早く落としたいと洗面台へと向かおうとする。
「せっかくうまくできたのに……」
自分でするより、素敵にできた気がするのに。
「後はルージュで完璧だったんですよ?」
「なら、分けてくれ」
言うやいなやのキス。
甘く濃厚に貴方は私の唇を奪った。
頭の奥が痺れるような、熱いキス。
「……今日の君の唇はずいぶん美味しそうだと思っていたんだ」
くいと指で自分の唇に移った色を確認した貴方は、私を見てにっこり笑う。
「この方法なら化粧も大歓迎なんだが」
色を移した貴方の唇はピンク色で。
やだ、ほんとに美味しそう。
そして、私は貴方の首に手を回すと、仕返しにそのピンク色に噛みついてやったのだった。




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by netzeth | 2012-01-05 23:27 | Comments(0)