うめ屋


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by netzeth
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誘惑

軽いノック後に開いた扉のその先に居たのは、だぶだぶのロングセーターを一枚身に纏ったしどけない格好をした己の副官だった。
「大佐ぁ~?」
呂律の回らない舌足らずの口調で私を見上げてくる彼女。瞬間、私の思考は停止した。
太ももの半ば程までしかない裾の先に見える白い脚が眩しい。女性特有のほっそりとした骨格にしかし、しっかりとむっちりとした肉が乗っており、きっとその弾力は素晴らしいに違いない。見てはいけないと思いながらも、私の視線はその魅惑的な太ももに釘付けになってしまった。
――こんな格好でお出迎えとは不意打ちにも程があるというのものだ。


今夜私が中尉の家を訪れたのは、珍しく彼女の方からお誘いがあったからだった。
「美味しそうなワインをお祖父さまから頂いたので、ご一緒にいかがですか?」
かすかに笑みを浮かべて尋ねてくる彼女からのお誘いを断る理由などこれっぽっちもなく。逆にこれは彼女のOKサインなのだろうか……と私は年甲斐もなく緊張してしまった。
先に言っておくが彼女と私は清い仲である……まだ。
だが、お互いの部屋に上がり込むくらいには親しくはしている。それはもう普通の成人した男女の基準からしてみれば付き合っていると捉えていい関係かもしれないが、実はキスどころか手も握った事はない。
東方の種馬と呼ばれたこのロイ・マスタングが、だ。我ながらびっくりな純情さである。
故に今回の誘いがこの曖昧な関係から一歩先へと進むためのきっかけになれば…なんて私は秘かに期待していたのであるが、のっけからの彼女の先制パンチにそんな私の可愛い下心は霧散してしまった。
「遅いれすよ~もう、あんあり遅いから先にはじめちゃいましたよ~?」
真っ赤な顔にトロンとした瞳の彼女は片手に持っていたワイングラスをブンブンと私に見せつける様に振ってみせた。部屋の奥には高級そうなワインボトルが見える。遠目にもその量が半分以上減っている事が確認できた。
……どうした。一体彼女に何が起こった。
正直ここまで酒癖が悪いとは知らなんだ。一緒に飲んだ事がないわけではないが、いつも彼女は遠慮してたいした酒量を飲んではいなかったのだ。
「ほら~大佐も早くきれくらさい~」
ぐいぐいと私を部屋の中へと引っ張っていく中尉に私は逆らうこともできずされるがまま、連れられていく。
リビングに置かれたソファーに私をむりやり腰掛けさせると中尉はテーブルに置いてあった、私用と思われるワイングラスにドバドバと躊躇なくワインを注いだ。
「大佐もどうぞ~このワインすごくおいしいんれすよ?」
「あ、ああ……」
彼女とワインを楽しんであわよくばいい雰囲気に……なんて考えていたのだが、今の私はワインどころではなく、受け取ったグラスに口をつける気も起きなかった。
なにしろ、隣に腰掛ける中尉の太ももが気になって仕方がない。座った事により、セーターの裾が捲り上がってさっきより露出が増えている。白くてすべすべしてそうで、きっと頬ずりしたら気持ち良いんだろうなーなんて私の煩悩を刺激するその罪作りな太もも。なんかもう、これだけ近くに、目の前にあるんだから、うっかりおさわりしても良いんではないか? なんて魔が差したような考えに囚われそうになって、私はいかんいかんと自分を戒めた。
……このままでは非常にまずい。
「な、なあ……中尉。その……し、した…は、履かないの……か?」
その太ももが隠れてしまうのは非常に惜しい事ではあるが、このままでは理性が負けてしまうと、私は彼女に進言を試みる。すると中尉からはあっさりと返事が返えってきた。
「履いてましたよ~?」
「へ?」
「今夜は~大佐がくるから~サービスしようと思って~スカート履いたんですけろ~暑くなって脱いじゃいました~」
……なんて、ことだ。酔っているせいで口が滑りすぎているぞ、中尉。……何を言っているのか分かっているのか? 私のためにスカート履きました、とか。なんだその可愛い行動は! しかもサービス通り越してるし!
彼女がほら、あれ~と指さした先には彼女が脱ぎ捨てただろうスカートが落ちている。彼女の趣味からしたら、若干短めに感じるそのスカート丈は中尉が本当に私を意識してスカートを履いてくれたというのがまるわかりで、私の男心を非常に擽るのであるが、しかし問題はそこではなかった。
脱ぎ捨てられたスカートの上に、さも当然の様に無造作に乗っている布切れ。それに私の全神経は集中した。
あれは……もしかして、いや、もしかしなくても、いや、そんなわけはない。だが……どうみても。
私の思考回路は千々に乱れた。
たった一枚のその小さな物体が私を更なる混乱へと陥れたのだ。
――パンツだよな、あれ?
いや、女性が使う言葉でいえば、ショーツ。さらには少しいかがわしい男向けの言葉で言えばパンティー。ああっ、とにかく女性用の下着が中尉が脱いだスカートの上に置かれていて、しかもきっちりと畳んでとかでなく、その、いかにも今脱ぎました~みたいな格好で落ちているのである。その光景が示す事実に私は慄然とする。
――は、履いてないのか!? ちゅーい!!
「どうしたんれすか~?」
いや、君がどうしたんだ? だ!
可愛く小首を傾げる彼女から全力で視線を逸らしながら、私は天を仰いだ。いかん。ダメだ。考えるな! ロイ・マスタング! 彼女を直視できん。今彼女を見てしまったら、私の煩悩は光の速さで履いてない彼女の姿を妄想してしまう事だろう。
それは非常に危険である。いかん、いい歳して鼻血が出そうだ……。
そりゃあ、今日こそは彼女といい雰囲気に……なんて当初は考えてはいたが、いきなりそんな所まで関係を進めようなどとは私は思ってはいなかった。私はそこまで性急じゃない。ただでさえ男に免疫のなさそうな彼女であるから、少しづつ関係を進めていこう……としていたのに。
このままではそんな私の固い意志は脆くも崩れ落ちそうで、私はジャケットを脱ぐと彼女の下半身に巻き付けた。これ以上は目の毒だ。
「なにをするんですかあ~大佐ぁ~?」
「頼むからそれを付けといてくれ……。じゃないと私は手を出してしまいそうなんだ……」
「出さないんれすか~?」
ぷうっと不満そうに頬を膨らせる彼女に、私はもうお手上げだった。
――この天然魔性め!
酔った女に手を出すのは私の主義に反する。ましてや、相手が彼女であり、初めてであるならば、なおさら、だ。酔ったいきおいでなんてのは不本意なのだ。
だが、今夜の私は非常に崖っぷちに立たされている。
夜はまだ始まったばかりである。はたして、私は無事に自分の主義を曲げる事なく、紳士を貫き通せるのか。履いてない彼女相手にどこまで我慢ができるのか。
――敗色濃厚なこの勝負の行方は誰にも分からないのであった。




END
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by netzeth | 2012-03-31 14:31 | Comments(4)
Commented at 2012-04-01 08:54 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by うめこ(管理人) at 2012-04-01 21:25 x
>さえこ様
コメントありがとうございます!
このような履いてないwお話でもお楽しみ頂けたかと思うと嬉しいです(^^)年度末に土日とか重なると大変ですよね…。お忙しい事とと思いますが、またどうぞご都合のよろしい時にでも息抜きにぜひぜひいらして下さいませ☆
それでは。
Commented by ますたんだ at 2012-04-11 10:38 x
リザちゃんがあんまりにも可愛くて魅力的で魅惑的過ぎて、ロイが非常に可愛くて気の毒で羨ましく感じました。ロイは一晩理性で頑張り通せるのでしょうか?
Commented by うめこ(管理人) at 2012-04-11 21:06 x
>ますたんだ様
コメントありがとうございます(^^)
リザさんの凶悪な可愛さの前では、ロイの理性も風前のともし火かと思われますww頑張れ……ないかもしれませんねw
拙作のリザ&ロイを可愛いと言って頂けて大変嬉しかったです♪
嬉しいお言葉をありがとうございました!