うめ屋


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by netzeth
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小さな冒険者

※ロイアイの子供ネタ。苦手な方注意。SS『風薫る日に』と設定的に繋がってます。



片手に妹、片手に子犬。
背中のリュックにはお菓子をいっぱいに詰め込んで、僕は冒険に出かけた。


いつもお母さんに手を引かれて歩く道は同じ道なのにいつもと違って見えた。僕は一生懸命にその時のことを思い出す。家を出て、大きな木が植えられた通りをまっすぐ。その中でも一番大きな木、枝がバサバサっていっぱいある木の曲がり角を右に曲がってまたまっすぐ。お庭が綺麗な赤い屋根のおうちのそのもっと向こう。そこがいつもお母さんが僕たちをつれて行ってくれる公園だ。
間違ってないと思うけど、子供(と犬)だけで行くのははじめてだから僕はちょっと心配になった。公園に行くときは必ずお母さんかお父さんが一緒だったから。
迷わないでいけるかな?
でも、もし迷っても誰かにきけばいいよね。そう、思って僕はキョロキョロと周りをみたけど歩いている人はいなかった。
くあっと腕の中のブラックタイガー号があくびをする。つられて妹もあくびをした。
「おにーちゃん、まだ……?」
「まだしゅっぱつしたばっかりだろ」
眠そうに妹が目をこすっている。
今日はすごくすごく早くに起きたから、眠いんだろう。そういう僕だって眠い。でも、お母さんとお父さんが起きる前にでかけなきゃいけなかったから、しかたがないんだ。
お休みの日のお父さんは寝坊助だけど、お母さんはとても早起きだ。だから、僕たちは今日のために昨日はとても早くに眠ったんだ。今夜は夜更かししないでいい子ねって、お母さんが誉めてくれたくらいだ。
そのおかげで僕たちはとても早起きが出来た。用意していたリュックをもっておうちをこっそり出て行ってもお母さん達に気づかれなかった。けど、とっても朝早いから誰もいない。僕はなんだか心細くなって、妹とタイガー号をぎゅっとした。
子供だけでおうちを出てはいけないってお母さんによく言われていたけど、僕たちは今日それをやぶってしまったんだ。でも、それはしょうがないんだ。
「おにーちゃん、おなかすいた……」
「さっきキャンディーをあげただろ。虫歯になっちゃうぞ」
不安になっている僕がバカみたいに妹はマイペースだ。よくお母さんが妹はお父さんそっくりだって言っているけど、そうなのかな?
妹のきんいろの髪はお母さんそっくりだと思うんだけど。そして、僕の黒髪のほうがお父さんそっくりだ。お母さんはよくそう言いながら撫でてくれる。お母さんの優しい笑顔を思い出すとまた僕は心細い気分になってしまった。ほんとうはこのままおうちに戻りたい。でも、今日はダメなんだ。お母さんとお父さんのために。
「ほら、いくよ」
「あい……」
僕の手を握ったままちょっと眠りかけてたらしい妹がへんじをする。(立ったまま眠るなんてすごくきようだ)僕らは朝のだれもいないみちを二人で歩き出した。


公園にはちゃんと迷わずに着くことが出来た。朝早いからあまり人はいない。ときどきワンちゃんのお散歩をしている人がいるくらいだ。
子供だけでいる僕らが珍しいのか、みんな僕たちに話しかけてくる。
「朝早くから偉いねえ、ワンちゃんのお散歩?」
「お母さんとお父さんは一緒じゃないの?」
僕は一生懸命に答えた。
お母さんとお父さんは風邪を引いちゃったから、家にはおじいちゃんが来ていて、でもおじいちゃんは腰が痛いから、お散歩はムリで僕が妹と一緒にしているって。隣で、妹がなの!って僕と一緒に答えてる。
みんな僕の話を聞くと大変だね、偉いね、ってなっとくして頭を撫でてくれた。
だから、嘘の話をしたのがすこし悪い気がしたけど、妹はうまくいったね、おにーちゃんって笑ってる。よく、妹はしょうらいおーものになるってお父さんもハボックも言うのだけど、それを見て僕もそう思った。
それから僕らは公園の奥の奥にあるアザレアの茂みに囲まれたベンチに向かった。リュックを置いてからタイガー号を放してやると、さっそく妹はタイガー号と遊んでいる。僕はリュックからもってきたボールをさがすと妹に投げてあげた。
そして、よいしょとベンチに座る。見上げるといつの間にかお日さまがずいぶんと高い場所にあった。知らないあいだにとても時間が過ぎていたのかな。
お父さんとお母さんはもう、起きたかな。お手紙も読んでくれたかな。
僕はそんなことを考えはじめて、またちょっと心配になってくる。だって、お手紙を読んでくれないとどうして僕らが二人でこっそりおうちを出てきたのかわからない。
今日がお父さんとお母さんの結婚記念日だって、聞いたのはすこし前のことだ。僕は結婚記念日って何のことかよく知らなかったけど、その話をしてくれたハボックが言うには、お誕生日と同じくらい大事な日らしい。
……つまりお父さんとお母さんのお誕生日が一緒にくるくらいすごいのかな。そう、理解した僕はとてもじゅうだいなことに気がついた。じゃあ、二人にプレゼントをあげないといけないよね? だってお誕生日と同じくらいすごく大事な日だもん。
僕はすごくすごく悩んだんだ。お父さんとお母さん二人の大事な日だから、お父さんとお母さん二人が喜ぶプレゼントじゃないといけない。でも、僕にはそれがむずかしくて、ぜんぜん考えつかなかった。だから、悩んだ僕はハボックにきいてみたんだ。
ハボックはお父さんによくバカって言われてるけど、でも僕より大きいし、きっと僕よりいっぱいいろんなことを思いつくかなって。
そうしたら、ハボックハこう言ったんだ。
「そりゃあ、いちばんのプレゼントは二人きりでラブラブに過ごせる時間じゃないかな~。あの二人、恋人時代とか無いようなもんだしなあ。たまには夫婦水入らずでのんびり……ってね」
……おっと、いけねえ、余計なこと言っちゃったな。もちろんジュニア達が元気でいることが二人はいちばん嬉しいッスよ。最後にそう言って、ハボックはポンポンと僕の頭を撫でてくれたけど、ハボックの言葉は僕の耳には入ってなかった。
僕の頭のなかにはラブラブと二人っきりって言葉がぐるぐる回っていたからだ。ふーふ、水いらずって意味はよく分からなかったけども、二人っきりでラブラブは分かる。とっても仲良しってことだ。
お父さんはお母さんによく叱られているけど、でも二人はとても仲良しさんだと思う。お母さんに怒られたている時のお父さんは嬉しそうだから。でも、仲良しだけど、もっと仲良くするには二人っきりじゃないとダメ、なんだ。それがラブラブって意味だと思う。お母さんはいつもおうちにいて、お父さんはお仕事に行くけど、でもお休みの時はおうちにいる。そういう時は僕らと遊んでくれるけど、(そして、僕もそれがとっても大好きだけど)でも、それじゃあ二人っきりじゃあない。ゆっくりふーふみずいらずでラブラブじゃないだ。だから、お父さんとお母さんに結婚記念日はラブラブして貰いたくて僕たちは計画をたてたんだ。
その日は朝から僕と妹は二人で公園に遊びに行く。タイガー号も連れていくし、お菓子もいっぱい持ったから夕方まで二人でよい子で遊んでいられる。もちろん、お父さんとお母さんには二人で遊びに行って夕方にはかえりますってお手紙を書いた。だから、ぜんぜん大丈夫なんだ。
……お手紙を読んでお父さんとお母さん、今頃ラブラブしているかなあ?
「おにーちゃん、おなかすいた! なの!」
タイガー号と一緒に泥んこになった妹が僕のところに戻ってきた。あ~あ、女の子なのに妹はちょっとがさつだ。
「じゃあ、お菓子を食べようか。でもその前に、ちゃんと手を洗わないとダメだよ」
「は~い!」
僕らは水場にいくと、一緒に手を洗った。服で手を拭こうとする妹を止めて、僕は持ってきたタオルでその手を拭いてやる。こういう風に妹の世話をすると、よくお父さんにお母さんにそっくりだって言われるんだ。
僕たちは双子だから同じ歳だけど、でも僕はお兄ちゃんだからしっかりしないといけないんだ。
「えへへ……おいしいね! おいしいね!」
「ほら、口のまわりにいっぱいついてるよ」
二人で手をつないでベンチに戻った僕たちは一緒にお菓子を食べた。
今日は朝もお昼もお菓子だ。妹はそれがすごく嬉しいらしくてにこにこしてる。いつも食べすぎってお母さんに怒られているから。でも、お菓子はすぐに無くなってしまって。
「……つまんなーい」
最初は子供だけの冒険だって、わくわくしていたくせに妹はもう飽きてしまったらしい。地面についてない足をぶらぶらさせて、妹は頬をふくらませてる。
「まだおうちに帰っちゃダメかなあ?」
「ダメに決まってるだろ。まだお昼にもなってないよ」
「ぶう」
……もう、仕方がないなあ。今日はお母さんとお父さんのためにおうちを出てきたのに。
むくれて不機嫌そうな顔をしていた妹だったけど、そのうちたいくつ過ぎて眠くなってきたみたい。こてんって僕に寄りかかって寝息をたてはじめた。
そんな妹を見てたら僕も眠くなってくる。こんなところで寝ちゃダメだった思うのに、目を開けていられない。タイガー号も僕らの足下で丸くなっている。そして、僕はいつのまにか眠ってしまったんだ。


よく知っている声がして、僕は目を少しだけ開けた。そこはとても暖かい場所だった。ゆらゆらと揺れているのが、なんだか気持ちよくてまた眠ってしまいたくなる。
「見つかって良かったです……あの手紙を見た時は心臓が止まるかと思いました」
「……ああ。私もだ」
お母さんとお父さんの声だ。お父さんの声の方が近くで聞こえるから、僕はお父さんの背中におんぶされているのかな?
「あんなに子供だけで家の外に出てはいけないって言っていたのに。もっとちゃんと言い聞かせないと……」
「まあ、そんなに目くじらを立てるな」
「でもっ!」
「ほら、声が大きいよ、リザ。子供達が目を覚ましてしまう」
お母さんが僕の顔をのぞき込むようにみたので、僕はあわてて眠ったふりをした。妹はお母さんがだっこしているみたいだった。お母さんの後ろにハヤテ号とタイガー号がいる。
「……それに、子供達を怒ってはいけないよ。ハボックが言っていたじゃないか。私達の結婚記念日のために私達を二人きりにしてくれようとしたんじゃないかって」
「それについてはハボック大尉に風穴をあけてしまいたくなりましたけどね」
「……まあ、勘弁してやれ。やつも子供達に変なことを言ってしまったと謝っていたじゃないか。まあ、この子達に何かあれば炭にしてやっていたところだが……」
「ハボックは悪くないよ!」
お父さんが低い声でそんなことを言ったので、僕はびっくりして思わず声をあげていた。歩いていたお父さんとお母さんがぴたりと止まった。二人は僕の方を見ている。
「ハボックは悪くないよ。僕らがいたら、せっかく結婚記念日なのにお父さんとお母さんがラブラブできないから、だから……少しだけおうちの外に出てようって思って……」
僕は一生懸命にお父さんとお母さんに言った。二人はびっくりしたみたいに目を丸くしていたけど、でもすぐにお父さんはくしゃって顔を曲げて笑った。
「そうか。ありがとうな、お兄ちゃん。でもな、それはぜんぜん違うんだぞ?」
「え?」
何が、違うんだろ? お父さんの言うことがよく分からなくて、僕は首を傾げた。
「……お父さんとお母さんはおまえ達がいるからこそ、ラブラブできるんだ。おまえ達がいなかったら、ラブラブできないんだぞ? なあ、リザ?」
「そうよ。……だから、もうこんなことしてはダメよ。すっごく心配したんですからね」
お父さんとお母さんが僕をじっとみてくる。お父さんは笑っていて、お母さんの顔はちょっと怒っている。やっぱりお父さんの言うことは僕にはよく分からなかったけど、でも、なんだかすごく嬉しい気がした。
「うん、ごめんなさい」
僕が謝ると、近寄ってきたお母さんが頭を撫でてくれた。その時だ、お母さんの腕の中にいた妹がぱっちりと目を開いた。そして、すぐに叫ぶ。
「おなかすいた! なの!」
僕らは顔見合わせると、みんなで大笑いした。……妹は本当におーものだと思う。
「そうか。じゃあ、早く帰ってごはんにしようか。今日はごちそうだぞ?」
お父さんがそう言うと、妹がきゃきゃっと喜んだ。そのとたん僕のおなかもぐうと鳴る。やっぱりお菓子よりお母さんのごはんがいいや。


そして僕らはみんなで一緒におうちに帰る。いつの間にか空は夕焼け色に染まっていて。こうして、僕たちの冒険はあっさりと終わってしまったけど、僕にはそれがぜんぜん残念じゃなかった。子供だけでの冒険も楽しかったけど、やっぱり僕はお父さんとお母さんと一緒がいいな、って思ったんだ。




END
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by netzeth | 2012-12-22 22:55 | Comments(0)