うめ屋


ロイアイメインのテキストサイト 
by netzeth
プロフィールを見る
画像一覧

拍手お礼ログ 21

嫌がらせ?

「グラマン閣下!」
「なあに? リザちゃん」
「司令部では名前呼びちゃん付け禁止です!」
「んもう~ホークアイ中尉は固いよね~ね? マスタング君」
「いえ、私の口からは何とも……」
「それよりも、これは何ですか!」
「何って…見合い写真だね」
「みっ!? 見合い写真!?」
「んふふ…マスタング君気になっちゃう感じい?」
「い、いえ…それは…」
「もう! 見合い写真はどーでもいいんです!!」
「……じゃあ何が不満なの?」
「見合い写真の中に大佐の写真を混ぜて置くのは止めて下さい! 毎度毎度…嫌がらせですか!?」
「い、嫌がらせって中尉…私の写真の立場は…?」
「またまたあ…そんな事言っちゃって…ワシ知ってるもんね~」
「……何をですか」
「マスタング君の写真だけ大事に取ってあるの。……他のはみ~んな捨てちゃった癖にさ」
「そ、それは…!」
「……本当か? 中尉」
「ち、違うんです! そんなんじゃないんです、大佐! ただちょっと写真映りが良かったから…手元に置いておきたくて……」
「何も違わないよ? リザちゃん……」


猫舌

マスタング大佐は実は猫舌である。
熱い物を出されると顔をしかめるのを知っている。
だけど負けず嫌いのカッコ付けだから、フーフーする姿は軟弱だ! という己の信念により、熱いのを我慢して口にしていたりする。
後で火傷した舌を痛そうに出していたのも目撃した。
だから、そんなに自分でフーフーするのが嫌なのなら、と私は思って。
ある日、軍の食堂で大佐が食べようとしていた熱々グラタンをフーフーしてあげたのだ。マカロニをフォークに刺して。そしたら大佐は顔を赤くして口をパクパクさせていた。
気のせいか周囲がざわめいていた気がする。
大佐が何をするんだ! 君は! とわめくから、これも副官の勤めですって返した。
すると大佐は二の句が告げなかったらしく、口をポカンと空けたので、私はそこにフォークを突っ込んだ。
それ以来マスタング大佐の猫舌と、フーフー副官の名前が司令部中に知れ渡ったのけれども。
私、何かまずい事したかしら?


花束を彼に

珍しく日が高いうちに仕事を終えたリザは、久しぶりに市場でも覗いて帰ろうかとイーストシティで最も賑わう区画へと足を伸ばしていた。
足にじゃれつく様に歩く子犬を諫めながら、露店が連なる通りをゆっくりと歩いていく。頬に当たる秋の風は優しい温度をしていて、ついつい長居をしてしまい、気がつけば辺りは薄ぼんやりとした青色の闇に包まれつつあった。次々に灯った明かりが市場を照らしていて、その活気は衰える事は無かったが、そろそろ帰ろうかなとリザは足を止めた。
「キャウん…」
すると跳ねる様に先を行っていたハヤテ号がリードが動かないのを見てとってリザを振り返った。
「ハヤテ号?」
子犬はどうして動いてくれないの? という顔でリザを見上げてくる。そのソワソワした様子に、何かこの先に子犬の興味を惹くものがあるのだろうか…とリザは
不思議に思った。
結局、ハヤテ号のしたいようにリードを 持ってリザは再び歩き出す。すると子犬は数歩先の露店へと一目散に駆けて行く様子である。
「あら、可愛いワンちゃんだこと。いらっしゃい、お嬢さん」
リザの目の先には色とりどりの花が並べられていた。早速その花々の中に鼻を突っ込んだハヤテ号がフンフンと鼻を動かしている。
「こら、ハヤテ号ダメよ!」
「クウン…」
慌ててリザが叱りつけると、子犬はゴメンナサイとでも言わんばかりにシュンと頭を垂れた。
「ははは、いいよ、お嬢さん。そこに置いてあるのは売り物じゃなくて処分するやつだから。きっとワンちゃんもお花の良い匂いが気に入ったのさ。ね?」
花屋のおかみさんは豪快に笑って、萎れているハヤテ号の頭を撫でてくれた。
そう言って貰えてリザもホッとする。
改めて店内見ると、ずいぶんといろんな花を取り扱っているらしく、中には名前も知らない花々が幾つもあって、思わずリザの視線は惹き付けられてしまった。
「綺麗なお花ですね」
思わずこぼれ落ちたリザの素直な感想に花屋のおかみはすかさず、
「あら、嬉しいね。どうだい? 良かったら買っていかないかい。サービスするよ」
といった商売人らしい調子の良い営業トークを口にする。
それに苦笑しながらも、リザはおかみの言葉に乗せられて、花を買って行こうかという気分になっていた。
どの花が良いだろうか、と思案する事しばし。
その花屋に置いてある花はそのどれもが美しく、可愛らしく、可憐で、あれもこれもとリザは目移りしてしまう。いっそ気に入ったもの全てを購入してしまおうかとも思ったが、リザの部屋に飾るには多すぎるし、第一自分の狭苦しい部屋に置いておいてはせっかくの綺麗な花が勿体無い気がする。
もっと広く花が見栄えがするような部屋ならともかく……とそこでリザの脳裏に浮かんで来たのは、無駄に広い癖に飾り気が無く、ガランとした物の乏しい部屋だった。
――そうだ。ロイの部屋に飾ろうか。
彼の部屋なら広いからあちこちに置けるし、何よりあの無味乾燥な部屋に彩りを添えてくれるに違いない――それはとても素晴らしいアイデアに思えた。
とそこまで考えて、しかし同時に萎れたままの花が放置される絵が思い浮かびリザは顔をしかめた。
ロイの事だ、花瓶の水などマメには変えないだろうし、花が萎れてもきっとそのままにしてしまうだろう。そうなると、リザは度々花の手入れにも行かなくてはならない。ただ花を持って行けば、終わりではないのだ――。
そこでリザはまたもはたと気づく。
花を口実に頻繁に相手の部屋に上がり込むなんて誰かさん――花を贈ってやる当の本人と同じ手口ではないか。
己の思考回路と、とろうとしていた行動を省みて、リザには何とも言えない恥ずかしさが込み上げてくる。
――これではまるで自分がロイの部屋に行きたい…と思っているみたいだ。
「どうだい、お嬢さん?気に入る花はあったかい?」
おかみの声にリザは我にかえった。赤らんだ顔を隠すように少し俯くと。
「あれと、それと、あちらとこちら、それからこの花を下さい……」
結局、リザは目についた花を全て買い込んだ。欲しいのだから仕方がない。そして花を買い過ぎてしまった自分がロイの部屋に向かうのも仕方がない事だと己に言い訳しながら。

そして、両手いっぱいの花を抱えてリザは歩く。心なしか弾む様なその足取りに、子犬がじゃれつく様について行く。
滅多にないリザからの訪問を彼はどう思うだろうか。
恥ずかしさと面映ゆさと少しのワクワクを胸に抱えてリザは足を早めた。
驚くだろう彼に言う言葉は、もう、決めている。

「毎度ありがとうございます。ごひいきの花屋です」




*************************
[PR]
by netzeth | 2013-01-20 03:27 | Comments(0)