うめ屋


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目の保養

長い金色の睫毛が落とす影を見るのが好きだ。瞬きをする度、それは微かに揺れて彼女をより可憐に見せる。
化粧っけのない頬を見るのが好きだ。何もせずともきめ細かい彼女の肌は、白く透き通っていてまるで熟練の職人が作った滑らかな陶磁器の様だ。
いつもキリッと引き締めている口元を見るのが好きだ。時折その口元が弛んでほんのりとした笑みを彼女が見せる時、それは一番魅力的なカーブを描く。ルージュなんか塗ってなくたって艶々とピンク色をしたそこは、どんなに柔らかいのだろうか。そんな妄想をするだけで、私の心は躍るのだ。
仕事中に彼女――ホークアイ中尉の顔を眺める事。それがこの無味乾燥なデスクワークを彩る私の秘かな楽しみである。
今日も今日とて期限の迫った書類を片づけていた私はその合間を縫って、このささやかな息抜きの時間を満喫していたのであるが。
「何ですか?…さっきからじっと見て」
薄茶色の怜悧な視線にぶつかって、私は慌てて目を逸らした。しかし、時は既に遅し。中尉にはばっちり私が彼女を盗み見ていた事を知られてしまっただろう。
「目の保養だ」
最初は偶然だとか、君の後ろを見ていたとか、適当に誤魔化そうと思った私だったが、何となくその時はつい本音の様な物が漏れてしまった。……もしかしたら、中尉の反応を見てみたかったのかもしれない。
しかし、敵もさるもの。相手はあのリザ・ホークアイ中尉である。
ここで頬を赤らめるなり慌てたりさもなければ呆れるなりの何かしらの反応を見せてくれるのならば、彼女も可愛らしいものなのだが。このクールな副官は顔色一つ変える事なく、
「そうですか。ほどほどにお願いします」
なんて言って、暗によそ見してないで書類を見ろ手を動かせと私をせっついてくれた。
――分かっていたさ。彼女が私に興味を持っていない事くらい。その証拠に一見口説き文句ともとれる言葉を贈ろうとも、彼女は一顧だにしない。
虚しくなるくらいに、綺麗に私の言葉はスルーだ。想いを寄せる女性にここまで相手にされないとなると、男として少々…いや、かなり情けなくなる。私は彼女を愛して止まないと言うのに、肝心の彼女は私に無関心なのだ。イーストシティ一のプレイボーイと言われたこの私がこの有り様。しかし、それも仕方が無いのだろう。相手はあのホークアイ中尉だ。一筋縄ではいかないのは百も承知している。きっと彼女は私の事なんかこれっぽっちも……ん?
考え込んでいた私は、ふと視線を感じて顔を上げた。
すると再びホークアイ中尉と目が合った。さっきとは真逆のシチュエーションだ。……ああ、きっといつまでも仕事を再開しない私が気になって見ていたのだろう。勤勉で優秀な副官である彼女は、私のお目付け役なのだから。
だから、私はあえて尋ねてやった。
「君こそ何だね? 私の事をじっと見て」
ホークアイ中尉の返答など分かっている。早く仕事をしろ、って言いたいんだろう?
しかし、私の顔をじっと見つめていた彼女はやっぱり無表情のままこう言った。
「目の保養ですよ。……真剣に考え事をしている貴方の顔が好きなので」
……勘弁してくれ。目の保養だけじゃ済まなくなるぞ、この無自覚小悪魔め!!




END
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by netzeth | 2013-09-10 02:39 | Comments(0)