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by netzeth
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男のシュミ


暖かな春の日差しが降り注ぐ様になった、イーストシティ。その一番賑やかな通りにあるオープンカフェでレベッカ・カタリナは退屈そうに座っていた。街ゆく人々の姿を何となく目で追いながら、ふわああと大あくびをした所で、
「ごめんなさい、レベッカ。待たせちゃったわね」
ようやく待ち人であった女性が現れる。
「別にそんなに待ってないわよ。ただ暇で眠くなったけどね」
女性――リザ・ホークアイが申し訳なさげに言うのにあっけらかんと返事をして、レベッカは肩を竦めた。そんないつも通りの彼女に苦笑しながら、リザは彼女の向かいの席へに座るとアイスティーを注文した。レベッカは一連のリザの様子を黙って眺めている。
「なあに?」
あまりにも彼女がじっと自分を見ているので、何となく気になってリザは尋ねた。すると、レベッカはリザを指さして意味深にニヤリと笑う。
「……それ。やっぱり男のシュミ?」
それ、と指さされたものが己の伸ばしかけのセミロングの髪だと思ったリザは眉をしかめる。
「しつこいわよ、レベッカ。この前ちゃんと説明したじゃない。髪を伸ばしたのは以前会ったロングヘアーの女の子を見ていいなって思ったからでーー」
「違うわよ」
レベッカに言葉を途中で遮えぎられて、リザは一瞬きょとんとしてしまう。てっきり、リザは以前射撃場でした話を蒸し返されたのだとばかり思ったのだが……何が違うというのか。
「髪じゃなくて、その格好よ。あんたがそんな格好するなんて珍しいじゃない」
指摘されてリザは自分の服装を見下ろした。春らしい色をしたブラウスに、タイトなスカート。その上にスプリングコートを羽織ったスタイル。
「そうかしら?」
「そうよ。いつもロングかパンツスタイルのあんたが、そんなミニスカート履くなんてさ。……男のシュミ?」
「違います。それにミニってほど短くもないわよ」
「ふ~ん……」
きっぱりと否定してのにもかかわらず、レベッカは疑い深げにリザを見ている。だが、それ以上追求する気をなくしたのか彼女は唐突に話題を変えてきた。
「そうそう、男のシュミって言えば。この前マスタング大佐とちょっと話す機会があってね。せっかくだからあんたの男のシュミを教えといてあげたわ」
「なっ、ちょっ、レベッカっ! あなた一体何を大佐に言って……!」
「ん? もちろん、あんたの男のシュミは黒髪で黒い切れ長の瞳の優男だって事よ。安心して」
とんでもない事を平然と告げる親友に、リザは絶句した。自分は一体今の発言の何を安心すればいいのか。
「やー御仁、すごーく喜んでたわー。黒髪とか瞳の色はともかく、自分が優男に該当するって思ってるんだから相当な自信家よね。まー実際そうだけどさ」
リザが黙っているのを良いことにレベッカの口はぺらぺらとよく回って回って、更に大きな爆弾をリザに落としてくる。
「ちなみに。大佐の女のシュミも聞いといてあげたわよ。……聞きたい?」
聞きたい。と正直に言うのはリザの意地が許さない。だが、知りたい気持ちはもちろんあった。そんな親友の心中などお見通しなのだろう。相変わらずにやにやとレベッカは笑っている。
「……別にいいわ」
「もう~リザちゃんは意地っ張りなんだから。……でも、このレベッカさんが、そんな事で黙るとでも思った?」
結局リザの意志などお構いなしらしい。
「御仁の女のシュミはね……」
「だから興味無いって……」
もったいぶった言い方をするレベッカに、口では強がりながらもリザは息を呑んで言葉の続きを待ってしまう。
「ミニスカートの女性だそうよ。良かったわね、リザ。あんたは大佐のストライクよ」
「ちょっと! そんなのミニスカートを履くだけで大半の女性が該当するじゃないの!!」
せっかく少し期待していたのにずいぶんな肩すかし感に、思わずリザの抗議の声が上がる。すると、レベッカはますますにやあ~~と笑みを濃くした。
「……やっぱり気になってんじゃないの、大佐の女のシュミ。あたしはてっきり、あんたはとっくにご存じだからミニスカ履いてんのかと思ったわよ」
「ち、違うわよ! 大佐のシュミなんて気になってないし、ミニスカートだって違います! たまたまよ! 誰が大佐のためにミニスカートなんて履くものですか!!」
「ふ~~ん?」
リザの必死の言い訳がましい言葉など、レベッカは最初から信じてはいないようだった。ますます焦ってリザはレベッカに訴える。
「本当よ!? ミニスカートを履けば女性なら誰でも良いなんて人のシュミなんて知りません!」
「それなんだけど、実は違うのよね~」
「え?」
何が? とリザが問い返す隙もなく、レベッカは言葉を続けた。
「実はさっきのには続きがあるの。……御仁のシュミはね、ミニスカートの女性。ただし、現・東方司令部司令官付き副官のに限る、だそうよ。ほら、やっぱりあんたは大佐のシュミよ。憎い事言うわよねー、このこの。あんたの男のシュミ、案外悪くないじゃない?」
次々に情報の爆弾を脳内に放り込まれて処理が追いつかない。眩暈がしてしまいそうなくらい混乱する中で、ケラケラと笑っているレベッカを眺めながら、彼女には叶わないな、と思うリザだった。



END
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by netzeth | 2014-02-19 01:39 | Comments(0)