うめ屋


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今も好き

「出会ったばかりのあの頃は良かったです。貴方は真面目で誠実な少年でした。そりゃあ気のきいた言葉一つも言えない唐変木でしたけど、ヘラヘラしながら女性に声をかけたり、手を振ったりなさらなかったし。ましてや、しなければならない事を放り出してデートに出かけたりもしませんでした」

「出会った頃の君は良かった。素直で初々しくて可愛らしくて。寝ている私を起こす時だって銃をこめかみに突き付けて安全装置を外したりしなかったし、ましてや発砲して壁に銃痕を付けたりもしなかったよな」

「それを言うなら貴方だって、あの頃は断りもなく私のお尻を撫でたりしませんでしたし、後ろから無理やり抱き寄せてキスを迫ったりもしませんでしたよね」

「あの頃の君は私と指先がちょっと触れただけで恥ずかしそうに顔を赤くしていたよな。いやあ…可愛かった。特に頭を撫でると頬をリンゴみたいに赤くしてでもすごく嬉しそうにしていて……犯罪的な可愛さだったな。それなのに今はどうだ? 尻を撫でても止めて下さいと一言冷めた言葉だけ。顔色も変えないし、抱き締めてキスしようとしても、はいはい早く済ませて下さいね、とばかりに無抵抗。趣が無いにも程がある。女性たるもの幾つになっても恥じらいは忘れて欲しくないものだな」

「そういう貴方だって、昔は私が貴方のパンツをお洗濯しただけでそんな事しなくていいから!って顔を赤くしていましたよね。バスルームで裸の貴方と鉢合わせしてしまった時なんか、可愛らしく慌てて必死に前を隠していましたのに。今ではパンツはその辺に脱ぎっぱなし、私が居てもバスルームから堂々とぶらぶらさせながら出て来るわ、そのまま冷蔵庫に直行して缶ビールを一気飲みしてくう~っ美味い! とかオヤジ丸出しですよね? 恥じらいをお忘れなのはどちらですか」

「口を開けば仕事しろ。プライベートでだって、野菜を残すな、ちゃんと風呂に入れ、コーヒーはブラックで飲むな。ゴミはゴミ箱に分別して、トイレットペーパーは1回30センチまで。君は年々口うるさくなるよな」

「軍での仕事の時でさえ男と口を聞くな、人前では露出の激しい服は着るなミニスカートは履くな。付き合いでも合コンは禁止、飲みに行く時は相手は誰で何処に行って帰りは何時になるか事前に報告しろ。年々貴方は口うるさくなりますね」

「………………」
「………………」

「でも今も好きですよ?」
「私もだ」



萌え

「あ、おはようございます、ホークアイ中尉。……どうしたんですか? 何だか顔色が優れないようですけど……」
「本当だ、顔色悪いっスよ。中尉」
「おはよう、フュリー曹長、ハボック少尉……どうしましょう、私…私……もう、大佐のおそばにいられないかもしれないわ……」
「え!? そ、それって……」
「一体どういう事ッスか?」
「実は昨日、私大佐のフラットのお掃除をしていて、大佐の書斎があまりにも汚かったから整理整頓したのだけど……その時に間違って古雑誌と一緒に大佐が大事にしていた本を処分してしまったみたいなの……! ああ、どうしましょうっ、あんなに大事なものだから君は絶対に触れないようにと言われていたのに……。きっと大佐はすごくお怒りになるわ…いいえ、怒られるのは構わない。私がいけないんですもの。だけど許して貰えなかったら……大佐は私を遠ざけてしまうかもしれないわ……!」
「そ、そんな事絶対ないですよ! 大佐に限ってそんな……」
「ええ、どうして非番の日にわざわざ大佐の部屋を中尉が掃除してんのかツッコミたいですけどっ、しかも大佐は昨日は夜勤だし、家主の留守に部屋にどうして入れるのかも気になって夜も眠れなくなりそうッスけど! それはともかくっ! フュリー! すぐに業者に問い合わせろっ、昨日の今日ならまだ間に合うかもしれねえ!」
「は、はい! 僕、行ってきます!」」
「と、とにかく中尉、大佐に謝りましょう! 夜勤明けで大佐はまだ司令部にいますよね? 大佐が部屋に帰って中尉の失敗を知る前に先手を打ってこっちから謝るんです! 俺が例え相手が獲物を目の前で横取りされた飢えた獅子でも絶対に許して貰える謝り方を中尉に伝授しますからっ」
「本当に!? 少尉!」
「ええ! 自転車のサドルをカリフラワーにしても、自動車のハンドルをプレッツェルにしても、これで謝れば相手は絶対に許してくれます!」
「何故かしら?……その仕打ち、私は嬉しいわ!?」
「それは中尉だけです! と、とにかく、いいですか? 中尉……まずはこれをあーして……」


「中尉か、おはよう……って何だね!? その格好は!?」
「大佐…おはようございます。…早速ですが私、大佐に言わなければならないことがあります」
「そ、それはいいが、なんでミニスカ!? そ、それに、な、何故猫ミミを…持って…あっ、装着するんだね!?」 
「大佐…私、大佐が大事にしていた書斎の例の本を間違えて捨ててしまいました!」
「な、なんだと…!? あの本をか!? まさか…君、中を見て……」
「とても貴重な本なのでしょう? 私、何てことを……」
「……は、いないようだな。良かった……ってよくないっ! あれが無かったら私、私は……っ、どうしてくれるんだね!」
「分かっております、ですから……誠心誠意謝ります……」
「なっ、ちょ、どうして近づいてくる……近い近い、近いぞ! 中尉! ここは軍部だ、さすがに…ここでは……!」
「……ロイ。許して…にゃん?」


その日。東方司令部司令官執務室にて。
鼻血を吹き出し、萌え、という血文字を残して倒れたロイ・マスタング大佐が発見される。

ちなみに。
フュリーが苦労の末探し出してきた本は、「太ももの神秘~その黄金律に迫る!~」といういかがわしいタイトルのマニアックな本であり(一見そうとは分からないように周到にカモフラージュのカバーがしてあった)、その事実を知ったリザに再び廃品回収に出される事となった。
が、新たな萌えの境地を見い出したロイにはどうでもいいことであったという。



シガレットラブ

司令部の休息場所で煙草をふかしていたハボックは疲れた顔で歩いていた上官を見かけた。
「大佐、お疲れみたいッスね」
声をかけるとロイはやれやれと肩を竦めて。
「ああ、流石に疲れた…。慣れてはいるがああも嫌みを聞いていると感覚がおかしくなってくるぞ」
確か本日は中央のお偉方が視察に来ていたはずだ。若くして高い地位にあるロイを良く思っていない輩がいたのだろう。
ロイは上からのお叱りを一手に受ける中間管理職。げっそりとしているのも無理はない。

「まったく。痛くもない腹を探られるのは不愉快なものだな」
ほんの小さな綻びをつつかれ、大げさに貶められ、何か言えば揚げ足を取られ、正論で反論しようものなら、ネチネチ嫌みを言われる。
まるで厳しい姑に苛められる長男の嫁のようだ――とハボックは同情した。
「まあまあ、もううるさい方々はお帰りになったんでしょ? まだムシャクシャするようならどうです? 一服」
ニコチンでイライラなど吹き飛ばしてみては。軽い気持ちでハボックは自分の愛用の煙草をロイに差し出した。
「そうだな…ガキの頃を思い出して一本……」
煙草に伸ばしかけた手をそこでロイはふと止めた。何事かと訝しげにハボックはロイの顔を見る。すると、彼は苦笑して首を振っていた。
「……やっぱり止めておこう」
「どうしてッスか? ガキの頃に経験あるんでしょ?」
煙草の味を知らない訳でもあるまいにどうしてそこで躊躇するのか。ヘビースモーカーのハボックには理解し難い。

「実はな、昔、煙草を吸っていたらな。年下の女の子に見つかって雑巾バケツの水をぶっかけられて消火された挙げ句、体に良くないから止めろ、もしも病気になってしまったら悲しいと涙目で訴えられた事があってな。……それ以来止めた」
どうやらロイはにわかにその記憶が蘇ってきて、それで躊躇っているらしい。
「美しい思い出ッスねー。心配してくれる子がいるなんて羨ましいッスよ! でも、ま、いいじゃないッスか。昔は昔、今は今って事で、はい」

もう一度ハボックは煙草の箱をロイに向けた。一本出してロイに差し出す。
「気分転換ッスよ!」
「……そうだな」
納得したのか、ロイはハボックから煙草を受け取ると口に咥えた。ハボックから借りたライターで火を点ける。その仕草は中々様になっていて、昔はそれなりに吸っていたのかな、とハボックは思う。
そうして、ロイが煙草を吸おうとした瞬間の事である。
ズッキューンという銃声が辺りに響きわたった。ハボックとロイの目の前を銃弾が通過していく。ロイが咥えた煙草の先が吹っ飛んでいた。

「大佐! 煙草はいけません! 病気になったらどうするんですかっ!!」
今し方発射したばかりの銃を携えて、リザが鬼の形相で走り寄ってくる。
それを呆然と眺めていると、青い顔をしたロイが呟くように言った。
「これでも羨ましいと思うか? 手段が年々過激になってるんだ…」

前言撤回。……そんなに羨ましくもないかな…と思うハボックだった。




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by netzeth | 2014-03-07 01:15 | Comments(0)