うめ屋


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大佐、噂になりたい

「早速諸君等の調査の成果を聞こうじゃあないか」
その日、ロイは副官を除く直属の部下達を己の執務室に集めていた。彼の言葉にその場に居た四人の男達はそれぞれ違った表情を浮かべる。
そんな彼らを代表して口を開いたのは、一番嫌そうな顔を隠していなかったブレダである。
「はい。まず初めに調査期間が約一ヶ月である事を述べておきます。我々は大佐の指示に従いこの一ヶ月、綿密なる調査をしました。これは我々一同が貴重な仕事の時間を割いて行ったものであり、その結果が厳正なるものである事をここに宣言いたします」
「前置きはいい。さっさと報告しろ」
「イエッサー。調査の結果、東方司令部内の噂において大佐の恋のお相手として名前が上がった人物はここ一ヶ月で、五人。一人目は花屋の看板娘のアン。二人目はうちの電話交換手のサリー。三人目はカフェ店員のジェシカ。四人目は司令部の食堂で働いているヘレン。五人目は鋼の錬金術師エドワード・エルリッ……」
「ちょっと待て」
それまで黙ってブレダの報告を聞いていたロイだったが、彼が最後の人物の名を挙げた所で口を挟んだ。
「何ですか。報告はまだ終わってないんですがね。最後まで黙って聞いて下さいや」
「これが黙っていられるか。何で男と、しかも鋼のと私が噂にならねばならんのだ」
「知りませんよ。あくまで俺らは大佐のお相手として名前が挙がった人物を記録して、列挙しているだけなんで」
「あ、エドワード君に関しては少し補足があります!」
はいっと元気よく手を上げたのはフュリーである。彼は手元の資料? らしきものに目を落としてそれを読み上げる。
「エドワード君と大佐の噂が出始めたのは、この前エドワード君が司令部に立ち寄った日のすぐ後くらいからですね。噂の出所は主に後方勤務の女性達です。彼女らは大佐とエドワード君が口げんかしている所を目撃した模様。その後、エドワード君がキレて暴れたのを大佐が取り押さえたのも見ていた様です」
「ああ……私がやりすぎて鋼のが伸びてしまったのを、医務室に運んでやったアレか」
「はい。彼女達曰く、お姫様抱っこ萌え! だそうです」
「………。何で私があの鋼のと……あの豆を掘ってやらねばならんのだ」
「別に大佐が攻めとも限らないんじゃないですか? 現に女性達の間ではエドロイもありよね、と……」
「言うな!」
男の沽券にかけて誰が受けてやるものか、と鼻息を荒くするロイに、報告を続けて良いですかね、とブレダが冷めた口調で言った。
「……続けろ」
「五人目は鋼の錬金術師、エドワード・エルリック。で、この五人とも、ここ一月の間に大佐と何らかの接触があったと思われる人物達です。噂の程度はまあ大なり小なりありますが……おおむね、マスタング大佐がまた新しい恋人を作ったとかまあいつも通りの内容です。特に目新しい情報はありませんね。あ、鋼の大将についてのみは、いろいろ面白い話が他にありますが……」
「……いい。聞きたくない」
「そうですかい? 少年愛に目覚めた大佐が大将を司令部に呼びつけペットにして調教しているとか、実は大佐の方が大将に躾られてるとか……」
聞かん!! とロイは叫ぶとぎりぎりと歯をかみしめる。そんなに男と噂になったのが悔しかったのだろうか、と一同が見守る中、ロイはだんっと机を叩いて立ち上がった。
「どうして……どうして、私の相手に中尉が居ないんだ!?」
納得いかないのはそこかい。
全員で心中で突っ込んで。今度は代表をバトンタッチしたハボックが呆れた口調で言った。
「大佐の恋の噂について調査しろとか言うから、何事かと思いましたけど、まさか、中尉との噂があるのか知りたかったんすか?」
「そうだ」
あっさりとロイは頷いた。
「おかしいとは思わないか!? お前達! 私と中尉は四六時中一緒に居る。しかも美男美女! そんな二人が密室に一緒に居る……というだけで、庶民の妄想はかき立てられて然るべきだと言うのに、これだけ長い間東方司令部に勤務していても、中尉との噂はまったく立った事が無いんだ!」
これは由々しき事態だ、と重々しくロイは言った。今まで見たことも無いような深刻な顔つきをしている。
「いいか。これは信頼の問題なのだ。このような如何にも美味そうな餌が目の前にぶら下がっているのに、誰も食いついて来ない……という事は、この東方司令部を統括する司令官とその副官がよほど不仲に見えているという事だ。つまり、私と中尉の信頼関係が疑われているのだ」 
そうかな?
と、その場に居た(ロイを除く)全員が思ったが、上官の熱弁を遮る勇気(もしくはやる気)を持った部下は居なかったので皆、沈黙する。
「司令官と副官の仲が上手くいっていない……などと思われては、兵達の士気に関わる。ここは早急にこの事態を改善しなければならない」
「で、どうするんです?」
「噂になる行動をする」
ロイの返答は非常に明瞭で簡潔であった。
そもそも、副官との色恋沙汰の噂なぞそれこそ上を目指すロイにとっては足下を掬いかねないスキャンダルだろうに。この上司、やる気満々である。とその場に居た(ロイを除く)全員は再び思いを同じくした。


見目麗しい年頃の男女が始終共にいてしかも直属の上司部下――という美味しい関係であるというのに、そもそもどうしてリザとロイは噂にならないのか。司令部の人間が二人の事を気にしていない、見ていない……という訳では決してない。むしろ逆。それはもういろんな意味で目立つまくるこの二人の事を、じっくりばっりち全部見てしまっているからなのだ。
銃を発砲しながら廊下を、まるでマンガの猫とネズミの様に追いかけっこしている姿など日常茶飯事。時に昼寝をしている所を連行したり、受付の女の子を口説いている所を連行したり、資料室で本の虫になっている所を連行したり……。とにかくリザがロイをひっとらえてお説教しながら、執務室に引っ張っていく様子はこの東方司令部の名物なのである。自由奔放なサボり魔の上司の有能なおもりとして、リザは司令部……いや、司令部外にも名を馳せていた。
主従関係が完全に逆転しているかのような二人の姿を常日頃から見飽きている司令部の人間にとって、こんな二人を色っぽく結びつける妄想をしろという方が無理だ。皆、あれは恋人同士というより、おかんとだらしない息子だと自己完結していたのであった。



さて、リザと噂になる行動をする! と意気込んだロイだったが、彼が取った手段は非常にシンプルなものだった。それはとにかく、司令部にいる間中はずっとリザのそばに居る……というものである。といってもそれだけでは何時もと何ら変わりはないわけだが。もちろん、それだけではない。ロイはさりげなく二人の仲を匂わすようなスキンシップをとろうと、リザの隙を虎視眈々と狙っていた。
「大佐」
「何だね」
「どうして今日は私の後を付いてくるんですか?」
基本的に仕事の間は二人で居る方が自然なので、最初のうちは特に不審に思っていなかったリザだったが、執務室を出て司令部内の各部署を訪れても、射撃場に向かっても、食堂に昼食をとりに来ても。ロイがぴったりと自分の側から離れようとしないので、いい加減何かおかしいと思い始めていた。
「いけないかね? 今日は仕事は真面目にやっているし、別にいいだろう?」
「それはそうですが……」
現在二人は仲良く一緒に座ってお昼ご飯を食べている。いつもの向かいの席ではなく、何故か隣に座るロイがリザは気になって仕方がないようだ。二人の周囲には同じく昼食を食べようと司令部の人間が集まっている。人の目がある今が絶好のチャンスだとロイは思っていた。
椅子を必要以上に近づけて、リザにくっつく。パスタランチセットのパスタをフォークに巻き付けていた彼女は、動きの妨げになるロイの身体を邪魔そうに肘で押しやった。
「ちょ、大佐。そんな近くにいましたら、肘が当たってしまいます。離れて下さい」
「どうして? 少しでも君のそばに居たいんだ」
「はい? 頭大丈夫ですか?」
ロイ会心の甘い台詞も、リザ・ホークアイにかかればただのボケた戯言である。しかし、ロイはめげなかった。リザと噂になる。ただ、それだけを胸に粘り続ける。
「私は至って正常だよ、中尉。食べている時の君はとっても魅力的だから、一番近くで見ていたいんだ。あ、ほら、良かったら私の分も食べたまえ」
手をつけていない己のクラブハウスサンドウィッチセットをリザの方に押しやると、ロイはにっこり笑った。
「ああ、ほら、中尉。ミートソースが口の端に付いてるぞ?」
何気ない仕草でハンカチを取り出して、有無を言わさずリザの口元を拭う。
「むっ、むう~~」
「ははは、君はうっかりさんだな」
むいむいと男の荒っぽい手つきで唇を擦られて、リザが顔を赤くして何やら物言いたげな視線を向けてきたがロイは爽やかにスルーした。というか、自分の目的を達成するのに夢中で最初から肝心のリザの事は見ていなかったので気づいていなかった。彼はただ、ひたすらに。
(どうだ……? 皆、仲良しな私達を見ているか?」
周りの評価だけを気にしていたのだ。



それからも毎日、ロイは時間が許す限りリザと一緒に居た。そして、人目のある場所を狙い、リザにボディタッチをしたり、つまずいた彼女を好奇を逃さず抱き止めたり、時には無理矢理手を繋いだり。リザと噂になるために、あの二人怪しいんじゃない? と言われたいがために、いろいろ頑張り皆に二人の仲をアピールし、さりげなくというよりは、セクハラギリギリの行為を繰り返していた。おそらくリザが訴えれば、完全にロイは敗訴だったろう。
しかし、不思議とリザはロイのその行き過ぎたスキンシップを拒絶はせず、彼のしたいようにさせていた。そしてそのおかげもあってか、ロイの努力はついに実を結ぶ事となったのだ。
「聞いたか?」
「はい。司令部中今、その話題でもちきりですな」
「正直、もう良いって感じだぜ」
「まさか、大佐があんなに頑張るなんて……」
野郎の部下四人で顔を見合わせてため息を付く。当初のロイの宣言通り、リザとロイは見事、東方司令部において今一番ホットな話題のカップルに躍り出る事に成功した。食堂のおばちゃんから、最高責任者のグラマン中将に至るまで。二人の噂を知らない者はこの東方司令部には存在しないほどだ。
「知ってるか? 噂じゃあ大佐と中尉にはもう三人くらい子供が居るらしいぜ……」
「僕は四人って聞きましたけど? 何でも、女の子が欲しかった大佐が頑張ったけど四人とも残念ながら男だったとか……」
「で、今五人目を妊娠中と私は聞きました」
ただの上司と部下、そして、おかんとだらしない息子だったはずの二人はほんの少しの間に運命の恋人同士となり、同棲中だのもう籍が入ってるだの隠し子が居るだの、噂はとんでもなく尾ひれが付きまくって収拾がつかない状態になってしまった。ロイの狙い通りと言えば狙い通りだったが。
「やり過ぎッスよ……大佐……」
東方司令部の人間は仲睦まじい二人を随所で目撃させられ、すっかり二人の仲の認識を改めてしまったのである。すなわち、あの二人はできてる。ラブラブだと。この結果にロイは一人大満足していたようだったが、ロイの部下としての立場の彼らはそうもいかない。あまりに噂が一人歩きしてしまっているのは、どう考えても危険としか言いようがない。まだ東方司令部内だけならばただの噂です、冗談です。と笑い話にも出来ようが。これが外に漏れてしまうようならば、ロイの出世にも関わる大問題である。
「その辺はまー大佐がいつもの口八丁で何とでもするだろうがな……」
肩を竦めてブレダが呟くように言った。マスタング組のブレーンである彼は、そのボスの能力を誰よりも把握しているつもりだ。チェスのように何手も先を読み、ロイはその手の問題もぬかりなく立ち回るに違いない。
「問題は……」
と、ブレダがある人物の名を口にしようとした所で、仕事部屋の扉が開いた。彼が正に今脳裏に思い描いていた人物が入室してくる。
「あ、ホークアイ中尉! お、疲れ様です!」
彼女の噂話をしていたのが気まずく、フュリーが取り繕うような慌てた挨拶をした。
「え、ええ……お疲れ様……」
平生の彼女には似つかわしくない、どこか呆けた様子でリザが返事を返してくる。それに一同は顔を見合わせた。どこか憂いを含んだリザの表情が気にかかった。
「どうしました? 中尉、何だか元気がないっすね」
「そう?」
そうね……。
尋ねると、リザはやはりどこか上の空な風情で答える。ますます、らしくない様子に、野郎達は困惑した。まさか、やっぱりあの噂を気にしているのだろうか……? そんな心配が彼らの中にわき起こる。無理もない。真面目一徹、有能な副官で知られていたリザが、その上官とイケナイ仲だと噂されているのだ。彼女にとってはショックな出来事だったのだろう。
「あ、あの……中尉。気にしない方が良いですよ! あんなのただの噂ですから! 大佐と中尉が実際はなにもないって僕たちは知ってま……モガモガっ」
様子のおかしいリザを気遣ってフュリーが励ましの言葉をかけるが、それはどう見積もってもいろいろ地雷を踏んでいた。慌てて、ブレダとハボックでフュリーの口を塞いで、
「な、何でもないっすから!」
あいまいに笑ってからその発言を誤魔化そうとする。下手をすれば彼女の逆鱗に触れて、蜂の巣も覚悟していたが、しかし、彼らの予想とは裏腹に、リザは怒りは見せず、代わりに寂しげな表情を浮かべていた。
「……やっぱり、ただの噂、よね……」
「「へ?」」
その瞬間、男達の声が綺麗にハモった。



「中尉……それは、どういう……?」
「あ、ごめんなさい、何でもっ、何でもないのよ?」
顔の前で手を大きく振ったりなんかして、常に冷静沈着なリザが珍しく慌てている。その様子も相まって思わず出てしまったらしい彼女の先ほどの一言が、男達の間に波紋を呼んだ。
ただの噂よね、という中尉の言葉はどういう意味だ? と彼らは各々考える。さっきの発言でははまるで、ロイとリザのあの芸能人の恋愛報道みたいな行き過ぎた噂が、所詮噂でしかないことをリザ自身が残念に思っているように聞こえてしまうのだ。
「中尉……本当にどうしたんですか? らしくありませんぜ」
おそるおそる……という風にブレダが尋ねると、リザは困ったような笑みを見せた。
「そうね、私らしくないわね。……何だか、最近自分がおかしいというか、変なの。常にふわふわしたスポンジの上を歩いているみたいというか……変な動悸がしたり、顔が火照ったりして……」
「体調が良くないんですか!?」
「そうかもしれないわね。今日だって、お昼ご飯がのどを通らなくて……」
リザの自己申告に、野郎達は大変だ、と青ざめた。あのリザが、食事はお代わり当たり前、ペロリと三人前を平らげるリザが。ご飯が食べられなくなるなど、よほどのことだ。ことの深刻さを、彼らは実感する。
「大丈夫なんですか? それ……病院に行ったほうが良いんじゃ……」
「やだ、大げさね。そんなたいした事じゃ無いと思うわ。ずっと、こんな調子という訳でもないし、ただ……」
「ただ?」
「最近、大佐の事を考えると、何だか胸が苦しくなってご飯が進まなくて……」
「…………」
全員でアイコンタクトを取った。どうする? という無言のやりとりをして。とりあえすハボックが事情聴取に入る。
「あの……中尉、その症状を具体的に俺らに話してくれません?」
「え……? そうね……、何だかここ最近、ずっと大佐が紳士的というか……仕事もしっかり終わらせてくれたし、すごく優しかったのよね……その頃からかしら……? 大佐を見ると動悸息切れめまいがして……だから極力大佐を見ないようにしていたけのだけど、でも気がつけば大佐の姿を目で追ってしまって……そのうち大佐の事を考えるだけで症状が出るようになって……顔は火照るし、胸はドキドキするし。最近じゃあ、うちに居ても大佐の事を考えてしまって、いつの間にか手編みのマフラーとか編み始めてしまったのよ……しかも、気がついたら白地に赤の毛糸で大佐の錬成陣とLOVEって入れてしまったの……。本当に、これ何かしら? まさか、やっぱり難しい病気じゃあないわよね?」
顔の火照りや胸の動悸はともかく。ラブラブ仕様の手編みのマフラーを編んでしまう病気はないだろう。いや、一つだけあるとするならば。
「それ、多分恋っスよ……」
しかもかなり重症な部類のだ。唖然と呟いたハボックの言葉を拾ってリザは一瞬驚いたように目を見開くと、次の瞬間ぱぱっと顔を赤くして、へなへなとその場にうずくまってしまった。見下ろすと、恥ずかしそうに顔を手で覆い隠している。司令部で鷹の目と恐れられている才媛にはとても見えない。
「そう……なの、かしら……? でもっ、こ、困るわ……どうしましょう、これから……もう大佐の顔を見られないわ……」
まるで少女の様に初な様子で悩んでいるリザの姿はとても可愛らしかった。噂になりたいという下らない理由で始めたロイの過剰なスキンシップ作戦は、どうやら思わぬ成果を生んだらしい。
「誰の顔が何だって?」
思わぬ声が降ってきたのはその時だった。皆で一斉に振り向けば噂の人物が戸口に立っていた。
「どうした、皆で寄ってたかって。私の噂でもしていたのか……?」
彼は非常に的を得た軽口を叩きながら、近づいてくる。
「ん? どうした、中尉。しゃがみこんで……まさか、具合が悪いのか?
 よし、私が医務室まで抱いて行ってやろ」
「結構です元気ですピンピンしてますスクワット1000回でも余裕です!!」
まだ作戦の続きをしようと言うのだろうか。ロイがリザに手を伸ばしかけると、ものすごい勢いで立ち上がった(というより飛び跳ねた)リザは身を翻して部屋を去っていく。止める間もない素早さであった。
「……一体どうしたんだ……中尉……」
呆然と呟くロイに、
「……あんたの作戦のせいで、中尉はあんたに恋しちゃったらしいですよ。どうするんですか」
半眼でブレダが事実を告げてやる。当然、その場に居た部下達はロイの得意満面に勝ち誇るリアクションを想像した。リザとあれだけ噂になりたがっていた上司であるから、ようやく彼女の心も手に入れたとほくそ笑むのだろうと。
しかし。ロイはその全てを裏切って。
「………なんだ、と?」
首から顔までをぱぱぱっと赤らめた。先ほどのリザと非常に似通った反応である。二十代後半の男がするのではアウトだが。
「え、そんな……嘘だ、ろ…? だって、あの、中尉が……? まさかだろ……なあ、なあ……?」
頬を赤らめて、意味もなくパタパタうろうろ歩き回っている。そのあまりの取り乱しっぷりに、部下達は確信した。
(この人……ただ噂になる事だけしか考えてなくて、本当に中尉とそういう仲になったらとは想定してなかったんだな……)
「わ、私はどうしたら……! どんな顔でこれから中尉に会えばいいんだ……? ああ、何だか急に胸がドキドキして、苦しいぞ!? これは何だ!?」
「……恋でしょ」
どうしたら! と焦る二十代後半の男は非常に鬱陶しかったので。部下達は上司を放置して、退室する事にした。
後は、もう若い二人で何とでもなってくれ。という投げやりな気持ちで。

――噂が真実になる日はそう遠く無いに違いない。



END
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by netzeth | 2014-05-22 00:16 | Comments(0)