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by netzeth
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お腹空いた

5万円の枕を買う夢を見たうめこです、こんばんは。その枕のフィット感ハンパなかったわ。もしものび太君レベルで寝つける枕なら5万円出しても惜しくない。いつでもどこでも眠れるって才能だと思うのです。

お腹空いて眠れないです。何か食べようかな……と考える深夜。肥える秋……。

いつか再録本出したくて古い本のデータを流し込んでぼちぼち編集作業をしているのですが、一向にはかどらない。編集作業向いてないやー。

拍手ありがとうございます(^^)
一日一本! というよく分からない目標のもと今日も小話を書きましたのでよろしかったら下↓からどうぞー。カエルスパーキング!!!(゚Д゚)







雨上がりの自宅の庭はリザにとって緊張を強いられる場所だった。雲間から覗く太陽の光が、葉に残った水滴に反射してキラキラと輝き眩しい。たっぷりと水分を含んだ土の匂いと雨に洗われ澄んだ空気のコントラスト。とても気持ちが良い空間のはずなのに、しかしリザは雨が降っている時よりも憂鬱になってしまう。
雨が降っている時はいい。リザも外には出ないから、あれ、と遭遇することもない。しかし、雨上がりはいけない。油断していると至る所にある水たまりから、あれ、はひょっこり姿を現すのだ。
その日、裏庭で晩ご飯のためのナスとトマトを採集していたリザは突然目の前に飛び込んできた緑色の物体に悲鳴を上げた。
「きゃあああ!」
野菜の入った籠を取り落とさなかったのは、ひとえにリザのもったいない精神故だ。そして腰が抜けて尻餅を付きそうになったのをこらえたのも同様であった。雨上がりの庭で尻など付いたらドロドロのぐちゃぐちゃ。お洗濯が大変なのだ。
故に。籠をかかえてリザはじりじりと後ずさった。緑色の物体――カエルから目を離すなんてとても出来ない。もしも、背中を見せた瞬間に飛びかかられたら? カエルのジャンプ力を舐めてはいけない。こんな小さなカエルでも簡単にリザとの距離を詰めて来る。あれが自分に触れる――想像するだけで身震いがして、リザは息を詰めてカエルと見つめあっていた。
お願い……私が庭を出て行くまで動かないで。じっとしていて。
切実に願いながら、リザは相手を刺激しないように慎重に動いた。カエルは口下の部分をヒクヒクと動かしながら、リザを見上げていた。
その時である。
「リザ? どうしたの?」
背後から良く知る少年の声がした。自分とカエル以外の他者が来てくれた……! と安堵したあまり緊張が弛み、思わずリザは反射的に彼にすがりついていた。
「マ、マスタングさん……! 助けて!!」
「へ!?」
「カエル……! 追っ払ってくださ……!」
「カエル?」
今はとても頼もしく感じる彼――ロイの胸に抱きついて目をぎゅっとつむり、リザはカエルを指さした。困惑したようなロイの声が聞こえたが、彼はすぐに状況を呑み込んでくれたらしい。大丈夫だよ、とリザに一声かけると彼は一端彼女から離れていった。そして、素早くカエルを手に包み持つと庭の外へと追い出してくれたのだ。
「ほら、もう大丈夫。カエルは遠くにやったからね」
リザがおそるおそる目を開くと、全ては終わっていた。あの、恐ろしい緑の物体は姿を消しており、リザの庭にすっかり平和が戻っていた。
「あ、ありがとうございます……マスタングさん……ご迷惑をおかけしました……」
カエルが嫌いだなんて、小さな子供みたいだ。きっと彼は呆れただろう。
恥ずかしさに顔を赤くしながら、リザは消え入りそうな声で礼を言った。ロイは照れ笑いを浮かべながら、頭を掻いている。
「いや、全然迷惑なんてかけられてないよ。リザはしっかり者だから、いつも俺が世話をかけてばっかりだったし。むしろ、リザの役に立てたなら嬉しいよ。でも、意外だな」
「え?」
「ネズミも虫も蛇もリザは平気なのに、カエルはダメなんだな」
不思議そうな顔でロイは指摘してくる。それから彼は言葉を更に継いだ。
「どうしてカエルは苦手なんだい?」
本当に大した理由もなく、彼は好奇心だけで尋ねたのだろう。ロイに他意はまったくない。話そうかどうしようかリザは迷ったが、助けて貰った恩の手前、誤魔化すようなことは出来なくて。実は、と話し出す。
「……カエルの王子様ってお話知ってます?」
「ああ、知ってるよ。魔法でカエルにされてしまった王子様が、お姫様のキスで元に戻る童話だろう?」
ロイが言う童話は少しだけ違う。きっと彼は彼流に解釈して覚えているのだろう。リザは首を振って説明した。
「違います。本当はカエルはお姫様を助ける代わりにキスをして貰う約束をしたのに、お姫様はカエルとキスをするなんて嫌だとカエルを壁に叩きつけてしまうんです。それで、カエルの魔法が解けるってお話です。……子供の頃このお話を聞いた時、私、お姫様の意地悪、カエルがとても可哀想って思って。私なら絶対にカエルにキスをして上げるのにって……それで……」
「もしかして……実際にカエルにキスしようとしたの?」
ロイが笑いを堪えるように言うのに、顔から火が出る思いで頷く。
「はい。……もうその後は分かりますよね? とてもカエルにキスなんて出来なくて、それどころか顔に飛びかかられて……」
それが幼心にトラウマになり、今でもカエルを見るだけでリザは震えてしまうようになったのだ。リザの何とも微笑ましい告白にロイがとうとうくくくっと声を漏らして笑い出す。それをリザは睨みつけた。
「笑い事じゃありません! 本当に怖かったんですから!!」
「ご、ごめん。ごめん……蛇を捌いて食べようって言い出すリザのカエル嫌いの理由がそんな可愛いことだと思ったら、つい……」
謝りながらもロイは笑いを止められないようで、口元を押さえて目に涙まで浮かべている。リザはぷうっと頬を膨らませた。
「私、これでも子供の頃真剣に悩んだんですよ? カエルにキスが出来ない私はお姫様を悪く言えないって」
「リザは真面目だなあ……あれは童話だろう?」
童話を真剣に考え受け止めるリザに、ロイは感心したように言う。
「童話でもです。だって私、例え約束があってもカエルが嫌だっていうお姫様の気持ち、分かってしまったんですもの。だから、悩んだんです。ああ、私、小さな生き物を愛せないとても嫌な人間なんだわって」
そんなものかな……と呟いたロイは、何かを考え込むようにあごに手を当てると。
「じゃあこう考えたらどうだい? お姫様はカエルとキスするのが嫌だったんじゃない。王子様が気に入らなかったからキスしなかったんだ。女性が好きでもない男性にキスをするのを嫌がるのは自然な話だろう?」
「じゃあお姫様は、王子様をちゃんと好きだったら相手がカエルでもキスをして上げたってことですか?」
「そ、そういうこと。それならカエルにキスしなかったお姫様は、約束を破ったのはもちろんいけない事だけど、女性としてなら正しい感情を持っていたと言えるだろう?」
だから、リザもそんなに難しく考えることなんて無いんだよ。そう笑いながら言うロイにリザはしばらく考え込んで。そして、ふと思いついたことを口にした。
「あの、私……」
「ん?」
「……もしもマスタングさんが魔法でカエルにされたら、そうしたらカエルとキス出来るかもしれません」
「え!? リ、リザ……それって……」
リザの言葉に一瞬呆然としたロイが、我に返る前に。
「私、カエルがマスタングさんだったなら……きっとキス出来たと思います。こんな風にっ」
「リ、リザ……!?」
素早く背伸びして少年の頬に唇を押しつける。ロイが顔を赤くして頬を押さえるのを、ふふふっと笑いながら見やって。
「カエルのお礼、です!」
野菜の入った籠をしっかりと抱えなおすと、リザは軽やかに雨上がりの庭を出て行ったのだった。







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by netzeth | 2014-09-30 00:05 | 日記 | Comments(0)