うめ屋


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by netzeth
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風邪を引いたかな?

朝から少し喉が痛いので風邪引いたかなー。明日は出かけるので今日は暖かいアップルティでも飲んで早めに寝たいと思います。そんなこと言いつついつも夜更かししてしまうんだがなww 

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マスタング組野郎共を書きたい企画。ブレダ。
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司令官執務室に名指しでお呼びだし……というと、大抵の奴なら何かやらかしたんじゃないかとビビるもんだ。実際同期のヒヨコ頭は呼び出されるとヤベっ、また報告書の落書き消し忘れて提出しちまったのかなと焦った顔をする。まあ、焦っても別にたいして反省しないとこがこいつのマズイとこなのだが。だが、俺に限ってはそんなアホな心配はない。むしろ我らがボス――ロイ・マスタング大佐から直々にお呼びがかかるのは、俺にとっては楽しい時間の始まりだったりするのだ。
「来たか。ブレダ、待っていたぞ」
俺が入室すると、大佐はもう応接用のソファーに腰掛けて準備万端で待っていた。テーブルの上にはチェス板と白黒の駒。
「今日は勝たせてもらうからな」
ウキウキとした顔で宣言する大佐に、俺は苦笑した。
「ええ。せいぜい楽しませて下さいよ」
「言ったな? 腕が鳴るな」
俺の不敵とも言える言葉を受けて、大佐は口角を吊り上げた。この白黒の遊戯がたいそう好きな大佐は、純粋に今から始まる勝負を楽しみにしているようだ。俺も大佐とチェスを打つ時間を気に入っている。他のお偉方と違って大佐はコテンパンにのしても、階級に任せて怒鳴り散らしたりしないからな。むしろ、手加減した方が不機嫌になるくらいだ。まあ、大佐は手加減しなくてはいけないほど弱くはなく、俺にとっては油断出来ない好敵手なのだが。
「お前は黒、私は白だ。先手はくれてやる」
「いいんですかい? 後悔しますよ」
この東方司令部で俺とハンデ無しに打てる相手はそうそういない。これまた時々お呼びがかかるグラマン中将くらいだろうか。脳裏に幾つもの手を思い浮かべながら俺は最初の駒を動かした。すかさず大佐が次の手を打ってくる。
「お、やりますね……」
好勝負の予感に俺は思わず舌なめずりをした。
こんななりをしているが、俺には体を動かすよりもこうやって頭を使う方が心地良い。昔から、戦史を研究して戦略と戦術を練るのが得意だった。軍に入ったのも、その特技を生かせると思ったからだ。だが、理想と現実が往々にして違っているのはよくある話だ。士官学校を首席で卒業した俺を待っていたのは華々しい出世街道ではなく、頭の固い老害達のお守りだった。事件の際俺がどんな作戦を提案しても、彼らはそれを採用してはくれなかった。それが部下の犠牲も市民の犠牲も最小限で済むベストの選択肢だというのに、彼らは目先の出世と自分の利益を常に優先していた。
「今日の私はひと味違うぞ?」
ルークを移動させながら、大佐が楽しげに言う。
そんな空しさと己の無力さに打ちひしがれていた俺の前に現れたのが、この男だった。正に焔のような激しさでこの司令部の改革を行った大佐は、作戦室でくすぶっていた俺を取り立ててくれた。そして、こう言ったのだ。お前の好きなように作戦を立てていい。私はお前を信頼してその作戦を実行しよう。失敗した時のことは考えるな常に大胆に強欲に最上を目指す作戦を立案しろ。責任は私が引き受ける。責任を取るのが上の仕事だからな。お前はただ司令部の頭脳であれ。
俺は感動した。今まで俺が見てきた上官というのは、基本的にいかに失敗した時の責任逃れをするかしか考えていなかった。自分の立場の心配しかしていなかったのだ。大佐は俺が初めて会った、理想の軍人だった。
まあ、思えばそれがいけなかったのかもしれないな。最初にあまりに人間的に惚れこんじまったもんだから、その他の欠点がどうでも良くなっちまったのは問題だった。
「これでどうだ?」
実はかなり子供っぽくて短気なとことか、我慢が苦手ですぐに前線に出てくるとことか、慎重なようでいて詰めが甘いとことか、冷酷になりきれず優しすぎる所とか。軍の頂点を目指そうという男として、これはどうかと思う欠点部分を俺らでまあフォローすればいいかという気にさせられてしまったのだ。要らぬ苦労を背負い込んだ気もしないではないが、それもまた楽しむのが俺流の人生哲学だ。
「おっと、これは強い手ですね」
板上の攻防はいつの間にか俺の劣勢に傾いている。大佐は考え事をしながら片手間に勝負出来る相手ではないようだ。舐めてかかったお詫びに、俺は全力を持ってお相手をすることに決めた。
「……ところで、大佐。少し前に中尉が下士官に愛の告白されたのをご存じで?」
勝負ごとで最も大事なのは人心を掌握することだ。俺は大佐にジャブを放つ。そう、すなわち心理的に揺さぶりをかけること。大佐の欠点の一つ――女癖が悪いくせに、実は本命の女には弱い。という部分を最大限に利用させて貰うことにする。
「……初耳だ」
案の定大佐は俺の話題に乗ってきた。平静を装ってはいるが、動揺が表情に現れている。大佐もまだまだである。
俺は内心苦笑した。
――この人は意識的な女たらしで、無意識の人たらしなんだよなあ……。
俺もハボもファルマンもフュリーも大佐の青臭い理想にひかれて、付いていこうと決めた。どんなに無茶苦茶な夢でもこの人なら実現させてしまうかもしれない。そんな何かが大佐にはあった。参謀である俺には無い、人を惹きつける、カリスマ。
「中尉はお綺麗ですからね。例え険しい崖の上の花だろうと、無謀にも登って手折ろうとする輩は要るってことですかね」
後輩が例えていた話を持ち出して、俺は大佐を煽った。
俺は参謀、かっこよく言えば軍師。それが俺に貸せられた役割って奴だ。俺にはカリスマ性はない。それは生まれ持っての性質。
その性質故に、俺は崖の上の花を取るために崖を登ったりはしないだろう。無謀であることは参謀にとっては罪だ。リスクとリターンを天秤にかけて挑戦に値する勝率を叩き出せなければ、実行しない。冷徹に成功率を計算し、1パーセントでもそれを上げること。それが参謀の役割。俺はきっと何パターンも崖を登る算段を考えても実行はせず、その中でもっとも成功率の高い方策を考え出した所で、満足してしまうのだろう。どんなに花が欲しくとも、おそらく崖を登るのは他の誰かに任せるのだ。
「……そうか」
ナイトを動かした俺は大佐の顔色を伺った。眉間に皺を刻み口がへの字に曲がった、むっつりとした顔。俺に詳細を聞きたくて仕方がないのを、必死に我慢しているって表情だ。あまりにも分かり易くそして可愛らしい我が上司殿に、笑いがこみ上げるのを俺は堪えた。しかし、我慢が効かずついついからかってしまう。
「勝負は優勢だというのに、ずいぶんと渋い顔をしてますね。大佐」
「うるさい」
短い台詞で俺を黙らせるのは、苛ついている証拠だ。大佐は焦ると口数が少なくなる。逆に調子に乗るとペラペラと口が滑らかに動く、そういうタイプだ。多分、どうでもいい女にはペラペラとどうでもいいお世辞を言えるのに、本命の女には愛の言葉一つ言えないのではないだろうか。
「黙れ、勝負に集中しろ。手加減したら、許さんからな。私はお前の知謀を高く買っているんだ。がっかりさせるなよ」
「……イエス・サー」
おやおや、大佐は俺が意図的にこの話題を出したことに気づいていたようだ。気づいていながらも、結局踊らされて動揺し、だがそれでも手心を加えるなと釘を指してくるこの負けず嫌い。
――本当に人間的に魅力の尽きない人である。
「大佐」
「何だ」
俺は思わず心の思い浮かんできたことがあって、特い深く考えることなくそれを口に出していた。
「大佐って、過去に青臭い夢でもうっかり語って幼気な若者の人生変えたこととかありません?」
これだけの人たらしならば、誰かの人生の一つや二つ、狂わせてそうだとふと思った訳なのだが。
「「あ」」
俺の言葉に大佐は額に汗を浮かべて、持っていた駒を盛大に置き間違えたのだった。











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by netzeth | 2014-10-25 18:55 | 日記 | Comments(0)