うめ屋


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今期のアニメ

まだ蚊がいる我が家。でも今の時期の蚊は夏の蚊に比べて動きが鈍いです。夏の蚊がリヴァイ兵長の立体機動だとしたら、今は新兵の立体機動かな。

今期のアニメ。クロスアンジュと神撃のバハムートが面白いです。アンジュは自分死にたくないからお前が死ね!とか言い出す元お姫様がすごいキャラしてる。バハムートはクオリティたっけーな絵が良い。どっちもアニメオリジナル作品なので(バハムートは一応ゲームですが)先の読めないお話が魅力。あとSIROBAKOも楽しんでみている。アニメ制作の舞台裏楽しい。

拍手ありがとうございます\(^o^)/


以下マスタング組野郎共話。ハボック。前の人たちの話とつながっておるですね。




上司に頼み込んで夜勤シフトを変更して貰い、はりきってデートに出かけた俺が司令部に戻って来たのは、それから一時間も経っていない時刻だった。彼女に渡すはずだったドデカい花束を肩に担いで俺は司令部内を歩く。ずっしりと肩に重く感じるそれと無駄に香る花のいい匂いが、俺の心の傷をえぐる。すれ違う顔見知りの同僚達から送られるまたフられたのか……という事情を察した哀れみの視線が痛かった。
「ジャン・ハボック少尉、無念の帰還であります」
花束片手に報告がてら、俺は上司の部屋へと向かった。正直辛いものがあったが、無理を言って勤務の変更をして貰った以上は礼儀だ。扉を開けて開口一番敬礼しながら言う。辛気くさいのは苦手だ。だから出来るだけ明るい雰囲気で通そう思っての演出だった。のだが。
「……泣いてもいいんだぞ? 大嫌いな注射を無理矢理打たれた後の子供でももう少しマシな顔をしている」
俺の顔を見るなり瞬時に全てを理解したらしい上司――マスタング大佐が、痛ましい顔をして言ったので。
「た、大佐~~!!」
思わず張りつめていた気が緩み、ずっと堪えていた涙がだーっとこぼれ落ちる。
「こらっ、泣くのはいいが、寄るな、触るな、抱きつくな! 鬱陶しいわ! 私は男に胸を貸す趣味は無い!」
「ううっ、だっで、大佐がめずらじく、やざしいから……俺、俺ぇ……!」
「わ、分かった、分かった! とりあえずこれで涙を吹いて鼻水をかめ!」
大佐はポケットからハンカチを取り出してぽいっと俺に投げてよこした。それを拾い上げて、俺はブビーっと鼻をかむ。
「……大佐の匂いがするッス。モニカほどじゃないけど、いい匂いッス……モニカぁ~!」
「……気持ち悪いこと言うな。 それから、フられた女の名前はもう出すな。忘れろ。それがお前のためだ。……ただお前と縁が無かったというだけの話、気にするな」
そのハンカチは返さんでいいからな、とぶっきらぼうんに言って顔を顰める大佐だったが、言っていることは至極まっとうでどこか俺に対する気遣いのようなものが感じられた。
「……そうッスね…元々、俺にはモニカは手の届かない花だったってことッスかね……」
大佐の思わぬ優しい態度に、俺は少し慰められた思いがしていた。幾ばくか落ち着きを取り戻して、とりあえず手に持っていた花束を応接用のテーブルの上に置いた。
名前も知らない可憐な花々で構成されたそれ。せっかくだからと、大きく立派に見栄えよくと花屋のおばちゃんがサービスしてくれた。だが、結局彼女には渡せず無駄になってしまった。
――こんな大きく立派な花束よりも、俺はモニカという一輪の花が欲しかったのに。
ああ、やばい。せっかく止まった涙がまた出てきそうになって、俺はぐずっと鼻を鳴らした。
「俺なりに頑張ったんスけどねえ……」
肩をがっくりと落としつつ、続けて俺自身も応接用ソファーにどかっと座る。両腕を背もたれに投げ出して、天井を仰ぐと無性にタバコが吸いたくなった。
「ああ……一本吸いてー…」
「……吸っていいぞ。今夜はサービスだ」
「マジッスか」
大佐の執務室は基本的に禁煙である。紙や書類が燃えてしまったらことだし、臭いが付くからという理由で他でもないここの副官に禁止されたのだ。
「いいんスか。……中尉に叱られません?」
「ここの部屋主は私だ。私が良いと言ったら良いんだ」
一応確認すると、大佐は憮然とした顔で言い切った。俺が大佐よりもホークアイ中尉の顔色を伺った事が納得がいかないのだろう。どっちの階級が上だと思っているんだとその顔は語っているが、ここ東方司令部の力関係は単純な階級の高い低いには左右されないことを俺はよーく知っている。
「じゃー遠慮なく。もしもバレたら、中尉には大佐が怒られて下さいね」
失恋した上に、ホークアイ中尉に怒られるのは勘弁願いたものだ。俺は懐からタバコの箱を取り出すと、一本口にくわえた。そして、ライターで火を付ける。モニカが嫌がるからと最近控えめにしていたせいか、その味は身に染みてうまかった。思う存分煙を吸い込み、吐き出す。その時だ。
「私にも一本よこせ」
「へ?」
いつの間にかそばに寄って来ていた大佐が、俺からタバコの箱を取り上げた。驚いて見上げると、大佐はさっさと箱からタバコを取り出してくわえている。
「どーしたんスか。大佐も失恋でもしたんですか」
「……さあな」
ガキの頃は吸っていたらしいが、少なくとも大佐が俺の前で吸っていた記憶はない。そんな人が突然一本とか言い出したら、誰だって驚くだろう。
「私だってタバコを吸いたい気分になることもある」
「それって具体的にどーいう気分ですか。……俺、すげー気になるんすけど」
「気にするな」
「気になりますって。どのくらい気になるかと言いますと、思わず失恋の痛手を忘れそうになるくらい、今、気になってます」
「それはお前、気になりすぎだろう……」
現金な俺に呆れた顔をする大佐のタバコに、ライターで火を付けてやる。大佐はなかなか様になった仕草でタバコを吸い始めた。これはガキの頃、相当吸っていたに違いない。
「別に。お前に比べたら、おそらく下らない理由だ」
大佐は遠い目をして、ふーっと煙を吐き出している。この人がこんな顔をしている時は、大抵ある人物が関係している。
「……ホークアイ中尉となんかあったんスか」
俺が指摘すると、大佐は煙に噎せてせき込んだ。分かりやすい人だ。
「……お前には関係ない」
何も無いとは言わない所が何かあったと認めているようなものだ、こういう所がこの人の可愛い所かもしれない。
俺は最近のホークアイ中尉情報を脳裏に思い浮かべ、そしてすぐにその答えを見つけだした。少し前に後輩が話していた事――下士官に告白を受けていた事が、おそらく大佐の耳に入ったに違いない。
「中尉はきれーですもんねー。うかうかしていたらどこの馬の骨とも分からない奴にとられちまいますよ」
「うるさい。……どいつもこいつも似たようなことばかり言いおって」
俺のからかい混じりの言葉に、大佐は渋い顔をしている。この人は女にフられたことなんて無いような色男で、俺なんか足下にも及ばないくらいモテる恋愛通…のはずなのだが。ことホークアイ中尉との関係については、大佐にとっては大きな弱みなのだ。
大佐はどうでも良い女とはいくらでも遊ぶくせに、本命には一向に手を伸ばそうとはしない。ただ、こうやって中尉が他の男に愛を告白されたと聞いては苛ついて、不機嫌になっている。
正直、何をやっているんだ、と思う。
崖の上に綺麗な花が咲いていたら、たとえそれが険しい崖だろうと迷わず登るのが男ってもんだろうと俺は思うんだ。
だから、俺は迷わずモニカへの崖を登った。結果は手が届かず、まっさかさまに落ちたが。そして、実を言うと俺は昔、中尉への崖も登ろうとした事がある。あの時はあんまり綺麗な花なんで、思わず登ってしまったのだが。だが、結果は推して知るべし。登ろうとする前から落ちた。
同期の同僚には、お前は周りを見ないですぐ突っ走るからいろいろ失敗するんだとよく叱られる俺だが、その言葉はまあ、一理ある。俺は崖を登ろうとする前にもっとよく周りを見てみるべきだった。おそらく、あの時中尉の崖から俺が落ちたのは、目の前に居るこの人のせいな気がするのだ。
「デートの最初に女にデカい花束を贈るような気の利かん男に言われたくない」
「ひっどっ! 俺、めちゃめちゃ傷ついてるのに!!」
心の傷を蒸し返されて、俺のハートはブレイクである。だが、大佐と話しているうちにいつの間にか、失恋の悲しみは薄らいでいた。
「くっそ、あんたもさっさと告白して付き合ってフられちまえ! そんで、俺に慰められればいいんだ!」
心が軽くなって、軽口を叩けるほどにまで回復している。俺はもう、大丈夫だ。また崖を登ろうと思えた。モニカへと通ずる崖はきっと俺の本当に登るべき場所じゃなかったんだ。そしてホークアイ中尉も同様だった。その場所を登るべき男はもう既に他に居たのだから。
「うるさい! 簡単に言うな! 不吉なことも言うな!!」
いつか、俺だけの花が俺にも見つかるはず。その時まで、何度でも崖を登ってやる。
だから。
大佐も、大佐だけの花のためにさっさと崖を登ればいいのだ。


――きっと。彼の手は花に届くだろうから。





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by netzeth | 2014-11-08 02:43 | 日記 | Comments(0)