うめ屋


ロイアイメインのテキストサイト 
by netzeth
プロフィールを見る
画像一覧

SS詰め合わせ3

◆下着談義◆

「くっそ暇だな……おーし、皆今から好きな下着の色を言え! 俺は白な」
「おいハボ。いくら平和だからって気ぃ抜き過ぎだろ、真面目に仕事しろ。それからお前は女に夢を見過ぎだ。今時白い下着付けてる清純な女なんて居ないぞ」
「うっせー夢見て何が悪い。そういうお前はどうなんだよブレダ」
「俺は無難にピンクだ」
「ピンクぅ~?? お前の方が夢見てるだろうがよ!」
「なんだと!」
「まあまあお二人とも、せっかく珍しく司令部が平和なんですから。争いは無しにしましょうよ」
「おお、フュリー。お前は何色だ?」
「ぼ、僕ですか!? えーと……僕は、黒、ですかね」
「ほほう。曹長は年上のお姉さま好みですか」
「へ!? 別にそういう訳ではないんですが……やっぱりそう見えちゃいます……?」
「世間一般のイメージでは黒を身につけるのは、妖艶な大人の女性でしょうな」
「お前童顔だから年上に可愛がられそうだもんなー。くっそ、自分の強みを理解した上でのアピールか? 抜かりねえなー」
「自分は何にも知りませんって顔をしておきながら、裏で計算高く立ち回るタイプですな」
「そ、そんなこと……! じゃ、じゃあファルマン准尉は何色なんです!?」
「私、ですか。私はヴァイオレットを所望します」
「紫か。お前も曹長と同じ年上お姉さま好みか?」
「いえいえ、ブレダ少尉。確かに紫も黒と系統は同じように思えますが、古来より紫は性欲を高める色と言われておりまして。つまり、紫という選択は非常に合理的な見地からの回答とお答えしておきましょう」
「ふーん、お前案外むっつりなのなー」
「何を話しているんだ」
「げ、大佐」
「ハボック。仮にも上官に向かってげ、とは何だ、げとは」
「い、いや、実はちょっと内輪の話をしていましてですね……そうだ、大佐は好きな下着の色って何色ですか?」
「何、下着?」
「はい。もちろん女性の、ッスよ」
「そんなこと言われんでも分かってる。そうだな……中尉」
「げ、中尉もいたんスか!」
「さっきから大佐の後ろにずっと居たわよ、ハボック少尉。……ところで大佐、何でしょう?」
「ああ。君の今日の下着、何色?」
「今日は……ああ、ペールブルーですね」
「そうか。よしハボック。じゃあ、私の好きな下着の色はそれだ」
「……………はあ、さいですか」



◆子供話◆

危ないものや貴重な文献が置いてあるから、書斎は立ち入り禁止にしているというのに。子供たちに甘い貴方はパパといっしょがいいの! とおねだりされて今日も中へと入れてしまった。前に貴重な錬金術書に落書きされて涙目になっていたのをもう忘れたのかしら?
私がお茶とミルクをもって入室すると目に飛び込んで来たのは娘を膝に乗せてデスクに向かっている貴方だった。何故か貴方は顔をしかめている。
「どうなさったのですか?」
また本に悪戯書きをされたのかしら。不思議に思いながらも貴方の手元を覗き込み、私は盛大に吹き出した。
そこには、娘が描いたブラックハヤテ号らしき犬の絵があった。いつか貴方が書類のすみに落書きした不格好な犬の絵とまるっきり同じ。
「ふふ、やっぱり親子ですね、とても似ています」
貴方は複雑そうな顔を崩さず、私の画力は幼児並だったのか……と呟いていて。私はまたも吹き出しそうになってしまう。
それでもパパじょーず? と娘に尋ねられて、世界一だ! と答える貴方は親バカなのか、それとも自画自賛なのか。
ショックを受けている貴方には悪いけれど、この絵はリビングに飾っておこくことにしましょう、と私はこっそり決意したのだった。




出張で貴方が居ない日は、子供達はしょんぼりと肩を落としている。特に娘は泣いて貴方のズボンを掴んで離さず、貴方は出かけるのにとても苦労した。対してお兄ちゃんは寂しそうにしつつも、我が儘は言わず、よい子で貴方を送り出していた。
出張先から貴方が電話をかけて来た時だって、妹に先に話させてやったりととても聞き分けの良いお兄ちゃんだ。それでも、本当は貴方と早くお話したくてうずうずしていたのを私は知っている。いろんなことを我慢して良い子でいるお兄ちゃん。とても偉いけれど、まだ幼い子供なのだから、もう少し我が儘になってもいいと思う。前から思っていたことだが、娘は貴方に似ていて、そして息子は私に似ている。自分と重ねて見てしまうから、そう思ってしまうのだろうか。
パパが居なくて寂しいと今夜も泣く妹のふわふわの金髪をパパはおしごとなんだからしかたないよ、と撫でている優しいお兄ちゃん。
私はそんな息子の頭を撫でてやる。
「お兄ちゃんも寂しかったら、寂しいって言っても良いのよ?」
すると、息子は私を見上げ小さな胸を張って答えた。
「ぼくはおとこだから、パパがいないときはぼくが、ママといもうとをまもるんだ! パパとのおとこどうしのやくそくなんだ!」
だから、寂しいなんて言わないよ! と男の子の顔をする。
私は驚いた。
あら、こういう所はしっかり貴方の血を受け継いでいるのね。
あまりの愛おしさに「ママ、とっても心強いわ」と私は息子を抱きしめた。




◆思い出カレンダー◆

十二月に入り今年も残り僅か。とうとう最後の一枚となったカレンダーを眺めて、リザは時の流れの速さを感慨深く思う。
真新しいカレンダーを購入したのが、つい昨日のように思えるというのに。本当に一年などあっという間だ。
さあ、そろそろ来年のカレンダーを用意せねばならないだろうか。と、今年使用していた花の絵が入ったそれにリザは目をやる。
「来年はどんなカレンダーがいいかしら、ねえ、ハヤテ号?」
足下に纏わり付いていたむくむくした黒毛の塊に視線を向けると、きゃんっとそれは小さく鳴いた。リザの家族となってまだ日が浅い彼はまだまだ小さな子犬だ。無邪気に甘えてすり寄って来る子犬はとても可愛らしかった。
「今年は犬のカレンダーがいいかしらね」
微笑み浮かべ、愛犬の背を撫でてやりながらリザはそんな事をひとりごちる。また、きゃんっと返事をするようにハヤテ号が一声鳴いた。
すると。
ふとリザの脳裏にはとある記憶が蘇って来て、あまりの懐かしさにリザは目を細めた。
(そう、私が初めて買ったカレンダーも犬のカレンダーだった……)



そんな余裕なんて無いからと今まで買う事が出来なかったそれを、少しづつ貯めたお金でようやく手に入れる事が出来た。
家に帰ると、リザは興奮した顔で手に持っていた袋を明ける。リザが買ったのは、犬の絵が入ったカレンダーだ。サイズはそれほど大きくはないけれど、ちゃんと日にちの下に書き込めるスペースが付いたもの。
さあここに何を書こうか? 街のお店の大安売りの日? 鳥猟の解禁日? 裏庭のお野菜の種まき日? 思いついた節約料理のレシピというのもいいかもしれない。 
わくわくした思いで、リザはカレンダーをめくっていく。一月二月三月四月……せっかく買ったのだから、最初に書き込むのは何か特別な予定がいい。五月六月七月……やはり、ただで美味しいものが食べられる街の収穫祭の日が良いだろうか。
「あ……!」
そしてある月のページでリザの手はぴたりと止まる。その月の、とある日。そこにリザの目は釘付けになっていた。
(やっぱり、ここ……しかないよ、ね)
確信を得た彼女はすぐに赤いペンを持って来てその特別な日に赤い丸をくれた。手がうっかり滑って一重ではなく、二重丸になってしまった。更にうっかり滑って花丸にしそうになった己の手を何とか止め、リザは自分で埋めた余白を眺めてとても嬉しそうに笑う。
これからきっと自分はこのカンレンダーにいろんな予定を書き込んでいく。それは考えるだけで心躍る未来だ。その最初の一歩――一書きに、リザは大いに満足していたのであった。



「やあ、中尉。こんばんは」
物思いに沈んでいたリザを引き戻したのは、慣れ親しんだ男の声だった。いつのまに、と驚きながら顔を向けるとリビングの戸口にやはり見慣れた男が立っている。
「返事が無いから勝手に入ったが……どうした?」
鍵は渡してあるのでそれは別に構わなかったが。相変わらず唐突な恋人の訪問に、リザは渋面を浮かべて見せた。
「何でもありません。それよりも、大佐。お帰りがずいぶんと早いようですが?」
非番の自分と違い、目の前に立つ男は今日もきっちり仕事である。退勤するにはまだ早い……そんな時刻での登場に不審の目を向ければ、男――ロイは心外だという顔をした。
「……言われていたものはちゃんと終わらせて来たよ。で、本日は市井の情報収集に出てそのまま直帰という訳だ。……こら、そんな疑い深い目で見るのは止めたまえ。せっかくいいものを持って来たというのに、あげないからな?」
「いいもの?」
ロイが大いばりでいいものと断言するものが、本当良いものだった例は今まであまり無い。(派手な宝飾品や服だったり、布面積が足りない下着だったり)半信半疑で聞き返せば、ロイが論より証拠だとばかりにそのいいものとやらをリザの目の前に広げて見せた。
「あ……」
あまりのタイミングの良さにリザは言葉を失う。
――それは、カレンダーだった。そう、リザがつい先ほど買わなければいけないと思案していたもの。
しかも、
「どうだ。こいつの写真を加工して印刷して貰ったんだ」
リザが欲しいと思っていた犬の――ハヤテ号の写真が使われたカレンダーだ。愛犬の可愛らしい写真がふんだんに使われたそれに、リザの頬は思わず緩んでしまった。
「可愛いですね……」
セピア色の写真の中のハヤテ号の無邪気な姿。目を奪われたリザは夢中で一月から順にカレンダーをめくっていく。もちろんどの月もハヤテ号尽くしだった。
「良いだろう? 持ち込んだ写真でオリジナルのカレンダーを作ってくれるサービスをやっている店があってね。そこで作ったんだ。君は私のプレゼントをあまり快く受け取ってくれないが、これなら気に入ると思ってな」
ロイのプレゼントをちゃんと受け取らないのはまともで無いもの限定だ。とは思ったが、リザは反論するのは止めておいた。今回のプレゼントはそれほど自分にとって素晴らしいものだったからだ。
「ありがとうございます、大佐。カレンダーちょうど欲しいと思っていたんです」
素直に礼を述べて、リザはカレンダーを手繰る。真新しい空白を眺めていると、あの幼い頃のわくわくした気持ちを思い出す。まっさらなカレンダーに予定を書き込んでいく、あの心躍る瞬間を。
だが。
「え……?」
とある月にさしかかった所で、リザの手は止まった。見間違いかと思ったが、確かにある。とある月のとある日。そこに赤いハートマークが描かれているのだ。
「あの、大佐。これは……」
「ああ! 君にとって大事な日だろうからな、ちゃんと私が書いておいたぞ。 忘れては一大事だからな!!」
無駄に自信満々なロイが頷いた、その日は。
「ちゃんと私の誕生日を祝ってくれたまえ! もちろん、プレゼントは君自信でかまわないぞ?」
一瞬リザは唖然とする。
だがしかし。
ちゃっかり自分の誕生日を人のカレンダーに書き込んでおくロイの用意周到さに少し呆れはしたものの、それ以上にリザの心は別の感情に満たされていた。
「ふ、ふふ……ふふふふ………」
「な、なんだ? 呆れないのか?」
突然笑い出したリザに、ロイが狼狽している。常日頃から恋人を愛するあまり、バカな言動をしてはリザに半眼を向けられているロイである。今回のもてっきり呆れられると思っていたらしいが、しかし。リザからは手厳しい言葉も無く、彼は拍子抜けしているようだ。
「いいえ?……手間が省けました」
――もう十年以上も前、自分は同じ日に二重丸を付けた……。その記憶が今、はっきりと鮮やかに蘇る。
あの頃から今まで。彼との関係は変わってしまったが、それでも。リザが彼のそばに居るのはずっと変わらない。リザにとってカレンダーのその印が、その証のように思えて。
「私も。一番最初にその日に印をつけようと思っていましたので」
だから、意地を張らず己の気持ちを素直に吐露すれば。
「そ、そうか……」
リザの年上の恋人は珍しく赤面し、それを隠そうとしてそっぽを向いたのだった。



◆彼の欲しいもの◆

「あ、こら、ダメよ、ハヤテ号」
忙しなく二本の編み棒を動かしていると、いつの間にか足下で寝ていた黒い毛玉が毛糸の玉にジャレついていた。彼は丸くふわふわしたそれがたいそう気になるらしい。主人の制止の声も聞こえないようで、夢中でその足先でころころと転がして遊んでいる。
「もうっ、めっ、ハヤテ号!」
子犬に毛糸が絡まる前に、とリザは厳しい声を出して叱る。途端に黒犬はきゅうんと鼻を鳴らして反省の様子を見せると、素直に毛糸を離してくれた。
「ごめんね。これは私のものじゃないから、ダメなのよ」
主人に叱られてちょっぴり萎れてしまった子犬の背を撫でてやりながら、リザは苦笑した。オフホワイトの毛糸でリザが今せっせと編んでいるのは、マフラーである。まだ編み始めたばかりなので長さはたいしてない。
「これはね、大佐のものなの」
その編みかけのマフラーを指し示して、リザは律儀に子犬に説明する。もちろん犬であるハヤテ号に理解出来る訳はなく彼は元気よくきゃんっ、と一声鳴いたのみだった。



リザが彼――ロイのためにマフラーを編んでいるのは、もちろん彼にプレゼントするためだ。だがそれは、リザが自発的に考えたことではない。貧乏だった昔ならばともかく、今の自分が手作り品のプレゼントなどどうかと思うし、ロイ自身高級ブランド品に身を包んでいる。リザの中では当初、手編みのマフラーというプレゼントの選択肢は無かった。
しかし。
「……君の手編みのマフラーが欲しいんだ」
というロイからのクリスマスプレゼント希望の言葉により、急遽久し振りに編み棒を引っ張り出すことになったのである。
当然リザはロイに尋ねた。何故そんなものが欲しいのかと。もちろんたしなみとして編み物くらい出来るが、それでも特別技巧があるという訳ではない。リザの技術はごくごく一般的な腕前だ。そんないわゆる素人が作ったものなど、高級志向の彼には合わないのではないかとも思った。
これらの疑問を素直にロイにぶつけると、彼は少しだけ頬を染めてばつが悪そうに言った。
「いや……昔貰ったのがもうボロボロだから、すまないが新しいのが欲しいんだ」
そう言って彼が出してきたものを目にして、リザは文字通り目を剥いた。彼が持っていたのは間違いなく、子供の頃リザがロイのために編んでプレゼントしたマフラーだったのだ。10年以上の時を経たそれは彼の言うとおりボロボロだった。もともと毛糸自体も安物で、編み技術だって稚拙なものだから当然だろう。今のリザにとってはもう恥ずかしい思い出といっていい代物。
「こ、こんなものまだ持ってたんですかっ!? いえ、これ、まだ使っているんですか!?」
「さすがにスーツには合わないから、普段は使ってないが……。ラフな格好で出かける時はいつもこれだぞ」
そう言い切ったロイに、リザは呆れ過ぎてくらりと目眩がした。いつもいろんな物を買ったそばから無くしたり、すぐに壊したりするくせに……何でこんなものだけ物持ちが良いのだこの人は。
これは早急に何とかしなければならない。と、リザの中にロイの副官として、そして恋人しての使命感が生まれた。東方司令部司令官という責任ある立場にある彼が、プライベートでそんなくたびれたマフラーをしている姿なんて残念過ぎる。ロイにはいつもぱりっとした格好でいて欲しい。
「分かりました。それでは代わりのものをプレゼントさせて頂きますから」
「いいか。君の手編みじゃなければダメだぞ」
ロイが好むブランド店でそれなりの物を購入しよう……そう考えつつ言ったリザに対して、彼は釘を刺すように言った。
「……何故です?」
何度も言うが、リザは編み物に対して特別技術を持っている訳ではない。自分自身ロイに相応しいものを作れるとも思えない。首を傾げるリザに、ロイは更に顔を赤くしながら言った。
「君が編んだマフラーは……君の匂いがするから」
安心するんだ。
そう男に言われてしまえば、リザはもう彼の願いを断ることなど出来なかった。



「よくよく考えてみれば、あの発言、ちょっと変態的よね」
あれからすぐにリザはロイに似合いそうな色の毛糸を選んだ。彼はダークカラーの服を好んで着るから、マフラーは明るい色が良いだろう。悩み抜いて購入したそれでリザはせっせとマフラーを編む。一編み一編み想いを込めて。
くすっと笑いながら、足下のハヤテ号にリザは話しかける。彼はくん? と首を傾げていた。
「でも、嬉しいと思ってしまったから、私の負けよね……」
まったく本当にもう、とリザは我が儘な恋人に心中で悪態をつく。
リザはもう昔のように時間に余裕がある訳ではない。忙しい軍務の合間を縫ってマフラーを編むのは一苦労だというのに。
だがそれでも。
リザにとってこのマフラーを編む時間はとても楽しく、心躍る時間だった。
「……もしも私の匂いじゃなくて、貴方の匂いが付いてたら、大佐、何て言うかしら?」
まだ毛糸に興味津々の子犬を優しく見下ろしながら、そんな愉快な想像をしてリザはくすくす笑うのであった。




◆分けてあげる◆

冬至を迎えた東方司令部は非常に冷えている。光熱費節減という謳い文句により司令部内の暖房使用は50%以上控えられており、それはロイの執務室も例外ではなかったのだ。
「寒いな」
吐き出す息が白いの見て、ロイはひとりごちる。先ほど副官が熱い茶を淹れて来てくれたが、それでも身体が冷えていくのを止められなかった。おまけに寒いと空気は乾燥する。乾燥はロイの身体から水分を奪っていき、彼の手は既にかさかさだった。
「紙に触れているから、更に乾燥するな……」
書類を手繰る手を休めて、ロイは己の手を見下ろした。水分が失われた手は所々ひび割れて今にも切れそうだ。切れれば血が出て書類を汚す。そうなる前に何かケアをしなければならないか、とロイは思う。
「大佐、どうかなさいましたか?」
手を止めたロイを不審に思ったのだろうか。同じ部屋内にいた部下の一人が話しかけてきた。彼女はロイの視線を追い彼の手を見て、ああと納得したような表情になる。
「もしかして、乾燥で手が切れたのですか?」
「いや、まだそこまでいっていないんだが……そうなる前に何とかしないとな、と思っていた所だ。ハンドクリームでも買ってくるかな」
男がハンドクリームを塗るのは女々しくていけないがね、と苦笑するロイに対して、美しい副官はそれならば、と言葉を継いだ。
「ちょうど良かったです。私もただいま手のケアのためにクリームを塗ったのですが……少し、出し過ぎてしまって」
言いながら近づいて来たリザが、あっという間にロイの手を取る。
「少し貰って下さい」
手に付きすぎてしまったハンドクリームをまるでロイに分け与えるように、彼女はその手をロイのそれと擦り合わせる。そのぬるぬるべたべたした感触に、妙な気分になってロイは思わず顔を赤らめた。
「ちゅ、中尉……」
「何ですか?」
リザは己がしていることを、ちっとも重大だとは思っていないようだ。ただ、付けすぎたハンドクリームの譲渡としか思っていないのだろう。
「い、いや……何でもない」
優しい感触が手のひらを包み込む。その気持ちよさに、余計なことは言わず、ロイはただリザの柔らかな手のひらの感触を味わうことに集中した。なんだ、これ……という視線で自分達を見てくる、他の部下達の乾燥しきった視線に曝されながら。


おまけ

「大佐……どうなさったのですか?」
「ん? ああ、乾燥して唇がひび割れてしまってね」
「あ、それでしたらちょうど良かったです。今リップクリームを塗りすぎてしまっ」
「それはやらせねーよ!?」



END
******************************







[PR]
by netzeth | 2014-12-23 13:53 | Comments(0)