うめ屋


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by netzeth
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ペーパーSS集4

2013 冬コミ


喉の辺りをくるくるグリグリ擽ってやると、子犬は気持ち良さそうに目を細めた。それが可愛くてついつい構い続けてしまう。頭を撫でると黒いモコモコした毛並みが手に心地良い。そのまま背中に移動して手を優しく滑らせた。
キュンキュンと嬉しそうに鼻を鳴らす黒犬にリザの笑みが深くなる。
「リザさーん?」
そんな愛犬とのスキンシップタイムに、無粋な横槍が入ったのはその時だ。意図的に無視して子犬と遊ぶ。
「リーザさーん、リザさん? リーザちゃん、リザたん、リザぴょん、リザっち……マイラブリースイートエンジェルリザリザ…」
「もうっ、何ですか! 私は今忙しいんですっ」
放って置けばどんどんエスカレートしていく呼びかけに、リザはとうとう痺れを切らして声を上げた。それ以上は精神衛生上聞きたくない。これだけ耳にしただけでも結構な破壊力があったというのに。
「忙しいって。どこがだ? 遊んでいるだけじゃあないか。犬と」
「犬じゃなくてハヤテ号です。ブラックハヤテ号」
「……ハヤテ号と」
かなり微妙な顔をしていたが、リザの指摘に彼――ロイは素直に訂正し言い直してきた。それに満足しつつリザは言葉を続ける。
「ですからハヤテ号と遊ぶのが忙しいんです。お風呂にも入れてあげたいですし、ブラッシングもして、たっぷり撫でてもやって…いろいろやりたい事があるんですよ」
澄まして言えば、ロイの顔があからさまに歪む。口をへの字に曲げた子供みたいなムクレた顔だ。まったく。貴方は幾つですかと問うてやりたい。
「それはせっかく愛の巣にやって来た恋人を放って置いてする事か?」
「人の部屋に変な呼称を付けるのは止めて下さい。……今夜はお約束は無かったはずですが?」
「約束が無ければ来てはいけないのか?」
「…………」
質問を質問で返される。追い返さずに部屋に入れ、茶まで出してやっている時点でリザの気持ちなどお察しなので、そこは沈黙を持って答えるしかない。
――来てくれて嬉しいなどと、愛犬の様に愛情に素直になれない自分には、到底言えないのだから。
けれど。
言わずとも分かっているんだぞ、とばかりにニマニマ笑っているロイの態度は、若干どころか大いに気に入らない。
「……ご不満なら貴方も犬を飼ってみてはいかがですか? そうしたら私の気持ちもお分かりになりますよ」
腹立ち紛れにそんな事をリザは言ってみる。一度飼ってしまえば犬は家族に等しい。たまの休みくらいたっぷりと可愛がってやりたいのだ。そんな愛犬家の気持ちを汲んで貰いたい。と苦情を申し立てれば、
「犬ならもう飼っているが?」
さも当然といった表情でロイは言う。その内容に驚いて、反射的にリザは尋ね返していた。
「大佐が犬を?」
それは初耳だ。元々犬が好きだという事は知っていたが、まさか飼っているとは思わなかった。洗濯に掃除といった自分の生活さえきちんと出来ないだらしない男なだけに、意外であった。
「それは…どんな子ですか? 毛は何色で…小型犬ですか? それとも中型? 女の子でしたらうちのハヤテ号のお嫁さんにどうですか?」
興味が募って思わず矢継ぎ早に訊ねてしまう。
それにロイは笑いながら答えてきた。
「そうだな…毛は金色で長いよ。体格は中背…というよりちょっと小柄かな。茶色い瞳の可愛い女の子だが…ハヤテ号にはやれないな」
「どうしてです?」
うちの子に何の不満が? と親心が首をもたげて、口調に咎める様な響きが滲んでしまう。
「……私のだから。彼女は私のお嫁さんになるのさ」
言うやいなやロイはリザの肩に腕を回し、引き寄せてきた。油断していたリザはいとも容易くロイの胸の中に収まってしまう。
「君の言うとおりの犬の可愛がり方を私も実践するよ。私は愛犬家だからな。まずはその美しい金色の毛を思う存分ブラッシングしてから、一緒にお風呂に入る。その後はもちろんたっぷりスキンシップして可愛がってやるぞ?」
ロイの手がリザの頭を撫でる。先ほどまでリザがハヤテ号にしてやっていたのと同じように。
ようやく彼の言わんとする事をリザは飲みこめた。
「なっ、誰が犬ですか……っ」
「犬だろう? 君は私の」
悪びれる事なくしれっと言ったロイは、相変わらず優しくリザの髪を撫でている。
「金の毛並みの誰よりも美しい、賢くて強くて優しい、私の自慢の犬だ」
そんな風に言うのはズルい、とリザは思った。それでは、こちらはもう強く否定出来ないではないか。リザがロイの狗であるのは確かだが、自分はこんな風に愛玩されるべき存在では無いというのに。
しかし、リザは自覚していた。ロイに撫でて貰っている自分の見えない尻尾は、今嬉しさに激しく振られているのだと。
抗えない本能に身を任せて、リザはロイに身を預ける。とても落ち着く匂いと熱を目を閉じて感じた。
まるで甘えるようなリザの仕草に、ロイは満足げな笑みをこぼす。
「犬の居る生活は良いもんだな、リザ」
それに同意してしまうのは何だか負けの気がして。返事の代わりにリザはカプリとロイの首筋に噛みついてやったのだった。



2014 春コミ

「リザおねーさん、これ、たべてね」
「ええ、ありがとう。エリシアちゃん」
少女の小さな手から差し出されたもてなしのクッキーを受け取って、リザはそれを口に運んだ。隣の椅子に座る小さな女の子――エリシアが期待に満ちたきらきらした眼差しをリザに向けてくる。彼女が何を待っているのか、既に悟っていたリザはにっこりと微笑んだ。
「とっても美味しいわ」
「ほんと! これ、きのうエリシアがつくったのー!」
正確に言えばクッキーの型抜き作業をしただけらしいのだが。ニヤケた顔でその歪な形をしたクッキーを自慢していたヒューズを思い出しながら、それでも心からリザは言う。
「すごいわね。こんなに上手にお料理が出来るなんて、エリシアちゃんはすっかりお姉さんね」
「えへへへ~~」
満面の笑みを浮かべてえっへん、と胸を張る幼い少女は大層愛らしい。これはヒューズが親バカになってしまうのも無理からぬ事かもしれない――なんて、リザは思う。
その肝心の父親は今、己の上官と話し込んでいる最中だ。エリシアの相手をしてやりつつ、リザはヒューズ家のリビングのソファーへと視線を向けた。そこには真面目な顔をしたロイと家主のヒューズの後ろ姿が見える。何を話しているのかは知らないが、彼らの表情を見る限りそれはずいぶんと真剣な話だと思われた。
久しぶりに会う盟友の腹を割った話し合いだ。しばらくは邪魔をしないようにせねばならない。それには、リザの子守の能力が試される事となる。
「エリシアちゃんはいつもママのお手伝いをしているの?」
「うん!」
聞けば少女の母親は急な用事で朝から出かけているそうだ。それで今日は急遽ヒューズは休みを取り、父娘で過ごす事になったらしい。それが、ロイとリザがセントラル出張にてわざわざヒューズ家を訪れた理由である。
軍法会議所に出向いたロイは、ヒューズが休みだと聞いて自宅を訪問したのだ。
「そう。とっても偉いのね」
「うん! ママのおてつだいをいっぱいしたからエリシア、およめさんになれるかなあ?」
「ええ、エリシアちゃんはとってもとっても、一番可愛いから、きっと素敵なお嫁さんになれるわ」
女の子らしく将来の夢はお嫁さんらしい。ヒューズ中佐が聞いたら大変な事になるわね……なんて、笑いを堪えつつ、リザはご機嫌なエリシアの頭を撫でてやった。
――この調子ならばしばらくは上官達も落ち着いて話せるだろうか。
リザがそんな事を考えていた時の事だった。
「ううん! ちがーよ!」
「え?」
キッチンの子供用の椅子の上に座ったエリシアは、ぶんぶんと首を大きく振った。手足までばたつかせて、全身を使ったずいぶんな否定のしようである。
「ちがーもん!」
頑固に何かを否定し続けるエリシアにリザは困惑した。子供は好きだが扱いに慣れていない彼女には、幼子の感情の変化が分からない。何か悪い、彼女を傷つけるような事でも言ってしまったのだろうか。と不安になる。
「な、何が違うの?」
おそるおそる問えば、エリシアは答えてくる。
「エリシアよりも、リザおねーさんのがかわいいんだよ!」
「そ、そんな事は無いわ。エリシアちゃんが一番可愛いわ?」
それはいつも耳にタコが出来るほどに言われているヒューズのノロケだ。世界で一番可愛い彼の娘。正直父親の話は聞き飽きたが、その内容自体はリザも同感であった。
母親に似た可愛らしい容姿、父親似の朗らかで明るい性格。この少女は皆から愛される要素を沢山持っている。自分なんか、比べられるものではない。
「エリシアちゃんが一番よ。私よりもずっとずっと可愛いわ」
「ちがーもん! だって、ロイおじたんがゆってたよ?」
突然幼女の口から出た上官の名にリザは驚く。しかしエリシアはおかまいなしにどんどんとしゃべり続ける。
「このまえねーロイおじたんがおとまりにきたときねーパパとけんかしたのー。エリシアこっそりきいてたのー。パパはエリシアがかわいいってゆってねー、ロイおじたんはリザおねーさんのがかわいいってゆってたのーだから、リザおねーさんのほうがかわいいんだよ」
……あの二人は子供に何を聞かせているのだ。呆れを通り越して、目眩が起きそうだ。
下らな過ぎる喧嘩の内容もさることながら、言い争いの場面を見せてしまうなど教育上絶対に良くない。
現に幼女は無邪気な様子で、リザに告げてくる。
「パパはエリシアのことがだいすだからーロイおじたんはーりざおねーさんがだいすきなんだね」
「……そうね」
純粋な子供相手にまさか違うとは言えない、この大人の純情をどうしてくれるのだ。顔から火が出そうな気分を味わいながら、リザはキッチンからロイ達がいるリビングへと恨めしげな視線を送った。
「そっか! じゃあエリシアはーパパがだいすきだからーリザおねーさんはロイおじたんがだいすき?」
どうしてそこは断定してこないで疑問系なのだろう。またきらきらとした期待の籠もった眼差しを向けられて、リザは追いつめられた。相手は非常に強敵である。しかしエリシアの容赦ない追求の手を逃れる手段は他に無く。
「だ、い、す……す…き、よ?」
恥ずかしさに顔を赤く染めて、リザは何とか言った。こんなのただの子供向けのリップサービスだと言うのに、どうして一言好きと言うだけでこんなにも動揺してしまうのか。いや、その理由は分かっている。リザはロイに関する事柄にも子供にも嘘は吐けないからだ。リザはエリシアに本気の本音を引き出されてしまったのである。
「そっか!」
ようやく納得したのか、エリシアはリザを解放してくれた。この会話をロイとヒューズに聞かれていなかったのだけが幸いだ。特にロイに聞かれた日には、このネタでこの先ずっとからかわれそうだ。
「ねーリザおねーさん!」
「え、なあに?」
「あのね、あのね、ロイおじたんがね、りざおねーさんはかわいいっていってたのー」
まだ何かあるのだろうか。と一瞬身構えたが、エリシアは話題を繰り返す様である。同じ話を何回もするのは子供に良くある事だ。リザは根気よく付き合ってやる。
「そう。でも、エリシアちゃんの方が可愛いわよ」
「ううん、パパはーエリシアのほうがかわいいってゆってたけどーろいおじたんはねーよるのりざおねーさんはとってもかわいいってゆってたのー。りざおねーさんはーおひるとよるだとちがーの?」
「…………大佐!!」
……子供に何を聞かせているんだ何を!!
上官達の邪魔はしない――という誓いを忘れて、リザは叫んだ。


――ヒューズ家に銃声が鳴り響かなかったのだけはリザの最後の理性であった。


2014 スパコミ

「大佐、お話があります」
目を据わらせて堅い声で言った私の姿を見て、彼は直ちに居住まいを正した。部下は私で上官は彼であるというのに、これではまるで逆だ。彼がこんな態度を取る時は決まって後ろ暗い事がある時である。
「な、何だね?」
案の定、彼――マスタング大佐は視線を逸らした。
「仮眠室のあれ、についてです」
指摘すると、あからさまに大佐の表情が変化した。さーっと刷毛で塗ったように顔色が青くなる、劇的な変化だ。こんなに分かりやすくて、よく司令官なんてやれているものだ。
「あ、あれ? ど、どれの事だね!?」
裏がえる声が彼の慌てぶりを象徴し、どれという疑問が心当たりが複数だという事を語っていた。
「も、もしかして……少し肌色の多い雑誌の事か……?」
それはあまりにも控えめな表現というものだ。
「ち、違うんだ、中尉。あれは私のものではなく、だな? 司令部の風紀の乱れを正すために司令官としてハボックの奴から没収しただけなんだ。別に十八ページ目のベティちゃんが気に入った訳では……! 仮眠室に置いてあったからと言って断じてあれは私の夜のお供じゃないからな!?」
確かに私は彼専用の仮眠室に置かれた彼の私物の中から、そのいかがわしい本を発見したが。中身が少し気になってパラ見して、十八ページ目の耳と尻尾を付けた女豹ポーズを取ったベティちゃんもばっちり記憶していたが。(大佐の好みってこんな胸の大きな女性だったのね。というか没収した割にはめちゃめちゃチェックしているんですね。ふ~ん)
「それの事ではございません」
否定した私に、彼は意外そうな顔をして。次の瞬間はっと顔を強ばらせた。
「な、なら…! 君が言うあれって……まさかっ、枕の下に入れて置いた君の隠し撮り写真の事か? あ、安心してくれ……っ、私の真の夜のおかずはあの君の写真……」
「違います!」
動揺しているのかとんでもない事を口走る大佐に、私はさすがに顔を赤くした。何を安心しろというのですか、何を。
「違う? じゃあ……サイドテーブルの引き出しに放り込んでおいたゴムの事か? あれは、君が起こしに来てくれた時にもしもの事があってはいけないと思ってだな、紳士の嗜みとして持って置いただけで……ん? これも違うのか? じゃあ、その奥に突っ込んだ期限が過ぎた書類の事か? あ、あれもそのうちちゃんと提出しようと思っていて……」
「全部全部違います!!」
女として危機感を感じる事や、副官としても危機感を覚える事を言われたがそのいずれも私は否定した。(書類の事は後でじっくりと説教しますけど)
「じゃあ、何だ?」
とうとう大佐の心当たりは弾切れらしい。困惑を深めた表情で彼は私を見つめてくる。よくもまあ、あれ、という指示語だけでこれだけ隠し事が湧いて来るものだと感心してしまう。
「……大佐の枕の事です」
「枕?」
彼は首を傾げると、心底意味が分からないという顔をした。それもそうだろう。これは彼の意識下にある話ではないから。だからこそ、問題なのだけれど。
「そうです。大佐が仮眠室に持ち込んでおられる、抱きつき専用の枕です」
「ああ、私の抱き枕ね。それがどうしたんだ?」
抱き枕。
大佐には寝ている時に無意識に何かに抱きつく癖がある。おそらくシンの猫熊がタイヤに抱きつくのと似たような習性なのだろうと勝手に私は思っている。(昔写真で見た)多くの場合それは寝具――枕や毛布と言ったものに発揮される。しかし、頭に敷いている枕に抱きつけば頭の収まりが悪くなり、毛布に抱きつけば、防寒の役割を果たせない。そう言った理由から抱きつき専用の枕を彼は自ら用意しているのだ。
「……大佐の抱き枕は、その…とある物に形状が似ている気がしまして」
彼が手ずから錬成して作ったというその理想の抱き枕は、非常にまろやかな形をしていた。……平たく言えばボン、キュ、ボンな形だ。
「そうか?……そうかな?」
「そうです」
自覚が無いのか、私の言いたい事に気づかないのか。彼が否定するのを私は更に否定して言い募った。
「はっきり申しますと、人間の女性みたいな形をしておられますよね」
「う~ん、そうかもな……やっぱり、人間は人間に抱きつくのが安心するものだからかな……?」
まだトボケた事を言うので、なんだか憎らしくなって。口調が少しキツくなる。
「そんなのは別に良いです。大佐のご勝手ですから」
「……じゃあ、何がそんなに不満なんだ?」
「……貴方が、あれ、を。……私の名前で呼んだ事です」
「へ?」
きょとんとした顔の彼。
「以前、仮眠室に起こしに伺った時。貴方はあの抱き枕にぎゅーっと抱きついて、呼んでおりました。……リザと」
「え……いや、ちょっと、待ってくれ。……呼ん…じゃってた? 私」
「はい。はっきりと」
「…………」
そこで、彼は思いっきり私から視線を逸らした。顔色がみるみるうちに青から赤へと変化していく。まるで、日が沈む夕焼け空のよう。そんな風に狼狽されると、私も反応に困った。
実は当初はちょっと注意をしておこうと思っただけなのだ。私以外の人間がもしも彼を起こしに行った時のために、余計な誤解を招かないように。
寝言で部下の名前を呼んでしまうくらいよくある事だろうし、それが私の場合はファーストネームだったのは、昔の事があるから。ただそれだけ。だから少し注意喚起をしておこう。そんな軽い気持ちだったのに。
しかし。
彼、の反応は私に違った事実を教えてくる。あの呼びかけが、実は寝言でたまたま抱き枕に部下の名前を呼びかけた訳では無いという事を。
「あの……大佐?」
まさかとは思いつつ、おそるおそる私は彼に尋ねる。
「……あの抱き枕、に、名付けておられる訳でな無いですよね……? 私の名前を…」
「…………………すまん」
端的な謝罪は私の問いを肯定していた。彼の告白は、私の感情をかき乱すのに十分な威力を持つ。
「……その、どうせ抱くなら、君が、いいな、と思って」
つい……形と大きさも似せて。(どこをどうとは具体的には言わなかった)
更に続けられた彼の言葉は私を動揺させた。
――ああ、この人は何て馬鹿なのだろう。これで世の女性を口説いているというのだから、驚きだ。
「その……不快にさせて、すまん。すぐに、あれは処分するから……」
「本当です。すぐに、破棄して下さい」
申し訳なさげに言う彼に、私は厳しい視線を向けぴしゃりと告げた。大佐はそれを受けてますます身を小さくする。
「……すまん」
――本当に、不器用で、愚かで。……でも根は真っ直ぐな貴方。
「……あのような紛い物必要ありません。あれで満足する貴方ではないでしょう?」
「ちょ……中尉、それ、どういう意味……」
目を見張った彼。答えなど教えてやらない。
「知りません。後はご自分で考えて下さい!」
言いおくと、私は踵を返して彼の執務室を後にした。呼び止める声が聞こえたけれど、あえて無視して後ろは振り返らない。
……振り返ったら、この赤くなり過ぎた顔を見られてしまうだろう。最も。赤く染まってしまっている耳は隠しようが無かったから今更だけれど。
廊下を闊歩しながら、心臓の鼓動が早鐘を打つのを自覚する。
今度、彼の仮眠室に訪れたときに起こるであろう事を想像するだけで、私の体は熱くなり……私を非常に困らせるのであった。



END
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by netzeth | 2015-01-08 22:43 | Comments(0)