うめ屋


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by netzeth
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スーパードライミントキャンディ

 彼女はまるでスーパードライなミントキャンディだ。甘さの欠片もない、どこまでも清涼でクールなその辛さ。
 
そんな女性に誕生日プレゼントを贈りたいからと言って、軽率に仕事中の雑談に混ぜて「今日の誕生日に何が欲しいか」を尋ねるのは頂けない。返ってくるのはおそらく「仕事中誕生日プレゼントに何が欲しいかを聞いて来ない上司」という何ともスーパードライな回答だ。
 過去の失敗を生かした私は、今度こそと気合いを入れてちゃんと休息時間に上記の質問を投げかけることにした。これならば彼女も答えてくれるに違いないと期待に胸を膨らませて。
「……それを答えて私に何か得があるんですか?」
 しぼんだ。
 何て手強いんだ、スーパードライミントキャンディ! 辛すぎて涙が出そうだ。
「わ、私から誕生日プレゼントが貰えるかもしれないだろっ」
「……それで私に何か得があるんですか?」
 どうしよう、同じ台詞で返された。
 それは私からプレゼントを貰っても何の得にもならないってこと、リザちゃん……。今度は涙が出た。だが、私は負けない。彼女がスーパードライであることは既に承知の上じゃないか、何を今更だ!
「……ご、合理的に説明しようじゃないか、中尉。君にプレゼントを贈れれば私のモチベーションが上がり、仕事の能率がUPするという訳だ」
「納得いたしました。私の欲しいものをお答えすればよろしいのですね?」
 非常に有能な副官である彼女は、私の説明に納得がいったらしい。
「そうだ。で? 何が欲しい?」
「そうですね。強いて上げるなら、大総統の地位…でしょうか」
 ……狙っちゃってるの? それ狙っちゃってるの、中尉! もしかしてあわよくば、とか思ってるの!?
 彼女は私の傷つきやすいグラスハートに大きなヒビを入れてくれた。……やっぱり、私が頼りないからいっそ自分で目指そうとか思っているのだろうか……?
「大佐が頼りないのでいっそ私が、と思いまして」
 傷口にソルト!!
 嫌な予感をそのまま肯定されて、私は沈んだ。彼女の表情が冗談を言っているものでなく、どこまでも真顔なのがまたつらい。
「ふぁ、ふぁーすとれでぃの地位なら、いつか用意出来ると思うんだが」
「そうですね、それ以外に欲しいものと言いますと……」
 聞いてない。しかも、大総統の地位は貰えないと悟られている。まあ、あげられないが。
「こちらの山積みになっている未処理の書類を……」
「皆まで言うな、中尉。分かった」
 そうだった。スーパードライで、かつスーパー有能な彼女の望みなど最初から一つではないか。
「すぐに処理しよう」
「この量ですよ?」
「問題ない。……今日中に処理する」 
 それがどんなものでも、例え私には不本意であったとしても。彼女が望むのならば、プレゼントしようじゃないか。そう自分に気合いを入れて書類の山に私は挑んだ。


「確かに受理いたしました。全てOKです」
「そうか……」
 普段仕事では使わぬ脳みそまでフル回転させて、私は日が変わる寸前にようやく書類の山を踏破した。もう何も考えたくないと、ぐったりと身体を机に投げ出す。  
 ぼーっとした頭で、これで中尉は少しでも喜んでくれただろうか……? と自問自答する。
「大佐」
「うんーー?」
 ホークアイ中尉のすっきりとよく通る声が降ってくる。声まで彼女はスーパドライミントキャンディだ。
「……私は形在るものには、それほど興味はありません」
「うん?」
「ですから……確かに、貴方からのプレゼントを受け取りました」
「書類だろう?」
「いいえ。書類を片づけて下さった……貴方からの誠意を、です。確かに、頂きました。……ありがとうございました、大佐」
 彼女はスーパードライミントキャンディだが。その時はそれだけじゃない、ちゃんとしたキャンディの甘さ、が滲んでいた。
「ああ……う、うん。こんなものよければ……」
 思わぬその甘さに、柄にもなく照れてしまう。そして、私は考える。この大量の書類を処理した分、明日は早く仕事を上がれるだろう。そうしたら、彼女を食事にでも誘えるだろうか、と。
 ……まあ、スーパードライミントキャンディな彼女のことだから、また、私がガチヘコミするような断り文句言うかもしれないが。
 それでも。
 私は辛いだけでない、ミントキャンディの味を知ってしまったから。密かに期待する心は止められないのであった。




END
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あさひぃスーパーどらぁぁぁい! なリザたん。




 
 


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by netzeth | 2015-06-17 01:13 | Comments(0)