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貧乏リザちゃん物語 本文サンプル

~中略~


腹の虫が盛大に鳴いて手を止めたロイは、時計を見上げた。時刻はもう昼過ぎ。休憩にして何か食べて来ようと、階下に降りる。すると、リビングで何やら難しい顔で考えこんでいる少女を発見した。そっと近づいて声をかけてみる。
「何をしているんだい、リザ?」
「あ、マスタングさん」
 振り向いてロイの顔を認めると、少女はにぱっと笑う。
「学校の課題です!」
「へぇ……どんなことをしているんだい?」
 リザくらいの歳の子がどんな勉強をしているのか、単純に興味をそそられた。もしも、難しいようなら手伝ってあげられるかもしれない。いつも何かと世話になっているリザを、少しでも助けて上げられるならばロイも嬉しかった。
「はい。好きな言葉とその理由を書きなさいって課題なんです! よく出来たら皆の前で発表するんです!」
「そっか、それでリザはどんな言葉を書いたの?」
「はい! 私の好きな言葉はエビフライと大盛りです!!」
 手元のノートを両手で掴んで、何故かえっへん、と胸を張りリザは答えた。
 ……反応に困った。
 大盛りは百歩譲ってあり、にしても。エビフライは完全にアウトじゃないか? それ、好きな言葉じゃなくて、好きな食べ物じゃないか?
「そ、そっか……でも、リザ。エビフライ、なんてよく知ってたね?」
 そもそも海の無いアメストリスにおいて、エビは高級食材だ。淡水エビならばそれなりに安価だが、あまり大きな種が生息しておらず、フライにするとなると基本は輸入もの。故に、高価なエビフライがこの貧乏ホークアイ家の食卓に上ったとしたらそれは奇跡だ。
「昔絵本で読んで……それ以来私の憧れだったんです。そうしたら! この前道端で困っていたお爺さんの荷物を持ってあげたら、お礼に駅前のレストランで奢って貰ったんです!!」
「……リザ、いくら奢りだからって知らない人について行っちゃダメだよ……」
 奢り、ご馳走、という言葉に弱そうな少女に危機感を覚えそれとなく諭すが、興奮した彼女は聞いちゃいなかった。
「メニューをこっそり見たんですけど、エビフライって、なんとうまいかも棒三百本分なんですよ! 憧れの霜降り牛肉だってグラム百本ぐらいなのに……」
「何でもかんでもうまいかも棒で換算するのやめようよ……」
 ちなみに、うまいかも棒とは、美味い、安い、大きい、と三拍子揃った、リザがこの世で一番素晴らしいお菓子と信じて疑わないスナック菓子である。
 ホークアイ家のおやつと言ったら、だいたい一本十センズのこれが登場する。一番人気はチーズ味だ。
「それにエビフライのエビの名前! なんと、ブラックタイガー!って言うんです。私このエビの名前にときめきを隠せなくて……かっこいいです……」
 ああ…うん、リザの好きそうなネーミングだね……。
「ブラックタイガー、とっっっっっても美味しかったんです!……一口噛めばぷりっぷりの歯ごたえで……香ばしさの中にもエビの芳醇な香りが鼻に抜けて……それを引き立てるのが、また絶品のタルタルソースで……私、この感動をみんなに伝えたくて、それで課題に書こうと……」 
 瞳をキラキラさせて、リザはエビフライの素晴らしさについて語る。うっとりとした表情も、エビフライフォーエバーと語っている。しかしリザ。それは好きな言葉を好きな理由じゃなくて、ただの食レポじゃないか? 




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by netzeth | 2016-08-04 01:06 | Comments(0)