うめ屋


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ゲーム感想その2

wiiゲーム「黄昏ノ少女」の個人的プレイ感想デス。
前作「暁ノ王子」と完全に続いていますので、前作をプレイしてないと分からない部分がございます。
またロイアイサイトなため感想はロイアイ視点です。管理人の主観がかなり入ってます。

かなりネタバレですので嫌な方はご注意下さいませ。
大丈夫~な方は続きからどうぞ。

続き
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by netzeth | 2009-12-20 15:14 | ゲーム感想 | Comments(0)

time to say goodbye

いつもならしないはずの玄関の掃除を殊更丁寧に終えて、リザは次にすべき事を探した。洗濯…庭の掃除…他にもいろいろすることを探して――もうそれ以外見当らない事を確認すると、リザは小さくため息をついて取り掛かった。  
――いつもより少し遅くなった朝食の支度を。
メニューはもう決まっている。全て彼が好きなもの。ベーコンはカリカリに焼いて、目玉焼きはターンオーバー。パンケーキにたっぷりのハチミツと少しのバター。モーニング・ティーはとって置きの葉で。
その全てをリザはゆっくりと用意していく。もう少し、後もう少しだけゆっくりと。少しでも良いから長く――。

彼がこの家に来てもうどれくらい経つだろうか。リザはそっとキッチンの脇に置かれた古びた椅子の背もたれを撫でる。錬金術で彼が直してくれた椅子。窓から見える一緒に枯れ葉を掃いてくれた庭。洗濯物干しの紐を通してくれた軒先。父と二人だけの明るさに乏しいこの淋しい家には、いつの間にか彼との思い出で溢れていた。
学校から帰ったらお帰りと迎えてくれて、一緒に食卓を囲んで、私の作った料理を美味しいと褒めてくれた、彼。母が亡くなってからというもの父がいっそう研究にのめり込む様なって、そうして無くなってしまった当たり前の日常を、彼は私に与えてくれた――。
この最後の朝食を終えれば彼は旅立ってしまうのだ。それを思うとリザの手はどうしても鈍るのだった。


後は紅茶を入れるだけに朝食の準備を終えて、リザは自室に戻った。
彼にと用意した品々の中から、昨夜遅くまで彼のイニシャルを刺繍したブランケットを手に取る。一生懸命に縫ったはずのそのブランケットは、朝の光の中でみすぼらしく見えた。
馬鹿じゃない私……。こんなもの持っていける訳ないじゃない。彼が行くのは士官学校。寮に入るのだ。必要な物は揃っているだろうし、ましてや余計な物など持っていく余裕などないだろう。
――こんな無駄な物。
彼は置いていくのだ。未来へと進むためにこの家の物は必要ない。
全て置いていくのだから。父も。……私も。
夢へと、未来へと歩き出す彼を笑って見送ると決めたのに。心は裏切り、胸はしめつけられるようだった。彼がいなくなると知った時の気持ちを何と呼べばいいのかリザは未だ知らない。
別れの朝が永遠にこなければいいと祈ったあの気持ちを。
行って欲しくない。ここにいて欲しい。ずっと一緒にいて欲しい。そう願うにはリザはまだ幼過ぎた。
彼の門出だ。笑って見送るのだ。
涙は見せない。そんなもの彼の重しになるだけだ。
だから笑って、そして、さよならを言うのだ。……自らを苦しめる気持ちも知らないままに。


「さよなら、リザ」
「さようなら、マスタングさん。どうかお元気で」



END
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題名はサラ・ブライトマンの曲から。
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by netzeth | 2009-12-18 22:09 | Comments(0)

ゲーム感想その1

wiiゲーム「黄昏ノ少女」の個人的プレイ感想デス。
前作「暁ノ王子」と完全に続いていますので、前作をプレイしてないと分からない部分がございます。
またロイアイサイトなため感想はロイアイ視点です。管理人の主観がかなり入ってます。

かなりネタバレですので嫌な方はご注意下さいませ。
大丈夫~な方は続きからどうぞ。

続き
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by netzeth | 2009-12-15 21:20 | ゲーム感想 | Comments(0)

サンドイッチ・ハニー

レタスにハム、マヨネーズは手作りで。
タマネギにチキン、コショウを利かせて。
仕上げにたっぷりのマスタードを。
それが……あの人の好み。


どんな仕事にも繁忙期というのは存在する。もちろん軍部とて例外ではない。それが司令官ともなればなおさらだ。 
――かくして、東方司令部の司令官であるロイ・マスタング大佐は朝から大量の書類の処理に追われていたのだった。
やってもやっても減らない書類――むしろ増えている――にいい加減げんなりしたロイは、サインする右手はそのままにため息をついた。
今が忙しい時期だとは承知しているが、いくらなんでもこれは酷い。朝から休みなくサボりもせず真面目に励んで既に午後三時過ぎ、一向に終りが見えない。こういう地道な仕事が上に行くためには必要だとは分かっているが、このままでは上に行ってこの国を変える前に過労死しそうだ。
自分の未来を思いやって、ロイがもう一度ため息をついた時、グーと腹の虫が鳴いた。そういえば昼食も取っていない。そんな暇はないと後回しにしていたのだが、余りの忙しさにすっかり空腹感も忘れていた。食べに行く余裕もないし、さてどうしたものかと思案していた時、
「失礼します」
控え目なノック音と共にリザが入って来た。その手にはお盆を載せている。
「進み具合はどうですか? お茶と少しですが食事を用意しました。何も召し上がらないのは身体に悪いですから」
机の上に置かれたのは、東方司令部名物不味いお茶(ただしリザが入れると美味しくなる)と小さな皿の上に乗ったサンドイッチだった。
リザの心遣いに感謝しながらも、メニューがサンドイッチなあたり、手は止めずに仕事をしろと言われている様でリザの副官魂に頭が下がる。
「ありがとう。中尉」
ロイは礼を言って有り難く頂くことにした。もちろん右手はペンを握り書類にサインをして。
食べ始めるとやはり空腹だったのか、あっと言う間に食べ終わってしまった。
「美味いな」
サンドイッチは非常に美味だった。具材の種類からマスタードの量まで自分好みだ。素朴でシンプルなサンドイッチだが、かえってそこがいい。量としては物足りないが、満腹になると眠くなる。このくらいが調度いいのかもしれない。
そして、さて、とロイは残りの仕事を片付けるべく、再び書類と格闘を開始した。


「やれやれ……」
時刻は午後六時。
昼間頑張ったかいがあり、何とか仕事は片付いたようだ。グンと凝り固まった身体を伸ばしていると、また、空腹を感じた。何しろ食事はあのサンドイッチを取っただけだ。
ふと、あの時食べたサンドイッチの味を思い出す。腹が減っていたからかもしれないが、あのサンドイッチは美味かった。
「中尉」
副官席で書類の確認をしていたリザを呼ぶ。
「はい」
トントンと書類の端を揃え、素早くクリップで止めて、リザが顔を上げる。
「なあ、昼に持ってきてくれたサンドイッチ、食堂のものじゃないよな? とても美味しかったんだが。久しぶりに食べたな、あんな美味いものは。シンプルだが素朴で懐かしい味ってやつだな。どこで買ってきたんだ?」
「あれは……その」
少し俯きながら、リザは珍しく歯切れの悪い返事をよこす。
「そうだ。代金を払ってなかったな。忘れる所だった」
財布を取り出していくらだ? と聞くと、たいした額ではないから結構です、と断られた。
「そういう訳にはいかない。幾らか教えたまえ」
上司として部下に奢られるというのはいささか情けないし、ましてや男としての面子もある。女性に金を払わせる訳にはいかないと再びリザに詰め寄れば、しぶしぶといった様子でリザは金額を口にした。それを聞いてロイは驚く。
「ずいぶん安いな……わざと安く言ってないか?」
「いえ、本当にその金額なんです! その、とても安いお店で……それにそんなにたいしたものじゃないんです」
「そうか」
だから、代金を貰うのは申し訳ないという様子のリザを見て、彼女がそこまで言うなら、とロイは納得した。
「また、たまにで良いから買ってきてくれないか」
「……たまにでしたら」
 控えめにリザはそう、了承してくれた。


それからというもの、ごくたまにリザはサンドイッチを持ってきてくれる様になった。だが、ロイが何度店の場所を尋ねても、その度にリザは「秘密です」と教えてくれなかった。穴場的な店でリザもあまり教えたくないのかもしれない。しつこくしても仕方ないと、ロイも深くは追求しなかった。そんな事が何度か続き、ロイはそのたまにのサンドイッチを楽しみにするようになった。
どこにでもある普通の、何の変哲もないサンドイッチなはずなのに、どうしても無性に食べたくなる時があるのだ。
買ってきてくれたリザに美味いと言いながら食べると、いつもリザは嬉しそうな顔をした。実はリザのそんな表情を見るのもロイの密かな楽しみだった。
そうして、何度目かのサンドイッチを食べた日だったろうか、ロイは夢を見た。まだ修行時代の夢。ほとんどの内容は忘れてしまったが、一つだけ強く印象に残っている会話があった―――。

「マスタングさん。お夜食お持ちしました」
「リザ。まだ起きてたのか。ありがとう……そんなに気を使わなくてもいいのに」
「ダメです。マスタングさん放って置くと何にも食べないでしょう? 身体に悪いですよ」
そういってまだ幼いリザが出してくれたのは―――。

「そうか」
「どうかしました?」
比較的穏やかな日であるので、ロイの居眠りを見逃していたリザだったが、目を覚ましたロイが突然声を上げたので驚いたらしい。
「あのサンドイッチだ」
「はい?」
怪訝そうなリザに、ロイは微笑んで。
「あのサンドイッチは君が作ってくれたものだったんだな……」
夢の中の記憶が蘇る。深夜まで錬金術の勉強をしていた自分にリザが作ってくれた懐かしい味。いつも自分の好みに合わせてマスタードを多めにしてくれた……。
「あ……」
何を言われているのか理解したリザの顔はみるみる赤く染まっていった。
「どうして……」
分かったんです? と聞くリザに、
「君が昔、私に良く作ってくれたサンドイッチと同じ味だ」
――夢に見るまでは思い出せなかったのだが。それにとロイは続けて、
「私の好みの味だったからな。これは私のために作られた物だ」
そうだろ?
とニヤリと笑えば、リザはますます顔を赤くした。
「しかし、どうして言ってくれなかったんだ?」
「それは大佐がっ」
「私?」
「あんまり手放しで褒めて下さるので、言い出せなくなって……申し訳ありません」
申し訳なさげなリザに、いやとロイは首を振る。
「謝るのはむしろ私だ。何度も作って貰って、ずいぶん迷惑をかけた」
「迷惑だなんて……あの、頂いていた代金はとってありますので、きちんとお返しします」
「いや、良いよ。迷惑料だ。とっておいてくれ」
リザの事だ、どうせ材料費くらいしか請求していなかったのだろう。
「もっと早くに気付くべきだったな……すまなかった」
「……いいんです。料理は嫌いではありませんし……それに」
「それに?」
「あなたにサンドイッチを作るのは楽しかったですから」
そう言って柔らかく微笑んだリザに、今度はロイの頬が熱くなる番だった。
あの頃からずいぶんと時を経たけれど、変わらず彼女は自分の好みを覚えてくれていて、自分のためにサンドイッチを作ってくれた。あの頃にはもう戻れず、2人の関係もずいぶんと変わってしまったけれど。
ずっと変わらないものもある。
「その…また……作ってきてくれ」
「はい……」
そう、少し恥かしそうにはにかむ彼女の笑顔とか。


あなたが美味しいと言ってくれるから、私は今日もサンドイッチを作るのです。





END
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美味しいサンドイッチが食べたいなあ・・・。
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by netzeth | 2009-12-12 22:11 | Comments(2)

ガソガソ1月号感想

ガソガソ1月号感想です。
ネタバレあり。本誌未読の方、コミックス派の方はご注意を!

大丈夫~という方は下のネタバレからどうぞ。

ネタバレ
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by netzeth | 2009-12-11 20:46 | ガンガン感想 | Comments(0)

MCK5

煮詰まっていた。それはもう本当に煮詰まっていた。
昨日の食堂のメニューだった野菜と魚介類のあったか具だくさんスープより煮詰まっている。(スープは美味かった)自分のせいではない。それは断言出来る。デートだってここ一週間はご無沙汰だし、就業中に居眠りだって、逃走して昼寝もしてない。なのに、だ。仕事が滞りまくっているのは、全てあの役に立たない親の七光坊やのせいなのである。


話は一週間前に遡る。
東方司令部に研修と称して中央のお偉方のボンボンがやって来た。やれやれ面倒なのがきたな適当に相手して何事もなく帰って貰おうと司令部一同心を一つにしたのも束の間、その坊ちゃんは適当に相手が出来る輩ではなかった。主に下に悪い意味で。
まずこいつが一番最初にした事と言えば、司令部に来なかった事である。否、辿りつけなかったのである。
朝からイーストシティから五駅も先の駅から電話をかけてきて曰く、「乗り過ごしたから迎えにきてくれ」。それを聞いた瞬間、電話口から相手を燃やしてやりたくなったが、何しろ相手は中央のなんちゃら将軍のご子息(名前なんてなんちゃらで充分だ)失礼があってはいけないと、ハボックを迎えにやらせて、そいつがようやく司令部に辿り着いたのは昼過ぎ。さて着任の挨拶を……と執務室で待つがいっこうに現れず、聞けばそいつは着いた早々お腹が空いたとほざき、そのまま食堂に直行し、あまつさえ料理に難癖を付け必至に止めるハボックにワインを買ってこいと命じたとか。
この時点で既にこいつを備長炭にしても良い気がしたが、そこはあいてはほにゃらら将軍のご子息。我慢。我慢。
ようやくそいつがやってきて、今日からよろしくお願いします的な挨拶をした時には既に私の忍耐は限界がきていた。だが、今思えばこれはまだまだ序の口だったのだ。
まずこいつ(こいつで充分)は仕事のしの字も知らない有様で、何でこんなのが士官学校を卒業出来たのか心底不思議だった。こいつは一応私の副官として研修をする事になっていたんだが、まあやることなす事まるでダメ。毎日遅刻は当たり前、定時になれば仕事が残ってようが何だろうがさっさと帰る。何度注意しても同じミスを繰り返し、またそれを悪いとも思わず、何かと言えば親父の名前を出し、東方司令部を中央司令部と比べて、やれ田舎くさいだの貧乏くさいだの文句ばかり。一番不幸なのは彼の指導に当たっていたホークアイ中尉だろう。
それでも中尉は辛抱強くそいつがやらかしたミスをフォローし、少しでも東方司令部を良く思って貰おうと努力していた。だが中尉のそんな涙ぐましい努力も空しく、そいつは勤務態度を改めようとはせず、そして、そいつのせいで必然的に司令部の仕事は遅れていき―――一週間後にはにっちもさっちも行かない状態になっていたのである。


「燃やそう。それが良い。そうしよう」
「怖い事を名案だ! みたいに言わないで下さいよ」
ハボックが溜りに溜まった書類を抱えながら言う。
うるさい、それがこの状況を打開するのに最善の策だとは思わんのか?
「それには同意しますけどねー。でもそれだと中尉の努力を無駄にしちまいますよ」
分かってる。分かってるから実行してないんだろが。まったく何でもいいから早く帰れ、それで東方は平和になるんだ。中尉だって何も弱音を吐かないが正直うんざりしているだろう。彼女のためにも一刻も早く奴の研修期間が終わるのを祈るばかりだ。
「失礼します」
さて、噂の中尉がやってきた。心なしかやつれているように思う。いや、もちろんやつれても彼女は美人だが。
「あの大佐…少尉を見かけませんでしたか? 見当らないのですが」
少尉と言うのは例のバカ息子だ。ん? そういえば今日は見てないな。
「大佐! 大変です!」
慌ただしくフュリーが入ってきた。何だ騒々しい。
「いえ……それが、例の少尉の宿舎にこれがあったそうなんですが」
フュリーが差し出した紙を受け取る。手紙か? 何々……、
「もう我慢出来ないので帰ります。二度と来ません」
――――は? はああああああ!?
「あのどうしましょう? 少尉帰っちゃったらしくて」
おろおろするフュリー。私だってどうしたらいいのか分からない、思考停止中である。だが、私が何か言うより早く地の底から響いてくるような低い声が発せられた。
「帰った? ですって? まだ研修期間は終わってないのに? 食堂のご飯が不味くて食べられないと言うから、わざわざ外のお店に出前をしてくれるように頼んだというのに? 宿舎のベッドが固くて眠れないと言うから新しいベッドを手配したというのに?」
……そんな事までしてやってたのか中尉。
「それを? 帰った?」
彼女は無表情だった。いや、いつも無表情だが。それでもいつもの無表情には無表情なりに表情があるのだ。だがこれは違う。正真正銘何の表情も彼女顔からは伺えない。
これはマズい!
彼女と付き合いの長い私の頭の中で、警報が鳴る。だが、その私より早く。
「みんな! MCK5だ!」
ブレダが謎の言葉を口にした。その言葉に皆蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
な、何だ? とっさの事に事態が把握出来ない。それでも何とかハボックの首根っこを掴んで訊く。
「何だ!? MCK5って!?」
「マジで中尉がキレる5秒前の略っス!」
「何だそれは!? 私は知らないぞ!」
「当たり前です! 大佐が逃げたら誰が中尉の怒りを鎮めるんです?」
私は人身御供かっ。
冗談じゃない私だって怖いんだ。
「大佐! 後はおまかせするっス!」
どんっと私を中尉の方へ突き飛ばし薄情なセリフを吐きながらハボックは執務室を出ていった。
待て! くそっ。
「大佐……」
ぼそっと中尉が呟く。な、何だ? 中尉。私は悪くない。私は悪くないぞー。悪いのはあのバカでアホな能無しボンボン七光り少尉であってだな……。
「私……ダメな女ですか?」
へ? ダメなのは奴であって断じて君ではないはずだが……ん? 中尉は何を言ってるんだ?
「私……自分でも頑張ったつもりでした。少しでもいいから東方司令部に良い印象を持って貰おうって。例え彼が雨の日の大佐より役に立たなくても」
――さりげなく傷付く事を言われた気がするが……それはまあ良い。中尉? もしかして泣いてるのか!?
「それなのに……まさか、帰ってしまうなんて。申し訳ありせん、大佐……私が不甲斐ないばかりに」
違う! それは違うぞ中尉! 君は良くやった! やり過ぎなくらいに!
彼女の瞳からポロリと涙がこぼれる。それと同時に、私は思わず彼女を抱き寄せていた。
「中尉。君は悪くないだから泣かないでくれ」
彼女の肩は細くて、抱き寄せた首筋からは良い香りがした。彼女の匂いだ。
「彼……きっと大佐の事を悪く言うと思います。私のせいで……」
「そんな事良いから」
彼女の頭を抱え混み、反対の手で背中をぽんぽんと叩いてやると、スンと鼻をすする音が聞こえる。
そうだ。そんな事はいいんだ。奴が親父に何を言おうがそんな事に負ける私ではない。それは君が一番良く知っているだろう? 私が困るのは……。
「君が泣く方が私にとっては大問題なんだ。だから、泣きやんでくれ」
「大佐……」
彼女は目元をゴシゴシと拭うと私を見上げて。
「ありがとう、ございます……大佐」
にっこりと微笑んでくれた。


MCK5は何とか不発に終わったが、ハボックらがいなくなって結果的に良かったのかもしれない。こうして彼女を慰める事が出来たのだから。しかし、彼女にとっては奴への怒りより私に不利益が来る方が応えるんだな……。
私の胸に愛しさが込み上げてくる。
愛しい彼女を悲しませた代償をどうやってあの迷惑野郎に払わせてやろうか、と考えながら私は彼女を再びギュッと抱きしめたのだった。






END
****************************


大佐と中尉が2人の暗号を決めているように、その他部下4人も彼らにしか分からない暗号があったら面白いなあと。他にはIICとかあります、多分。(イチャイチャ注意報、大佐と中尉がいい雰囲気になると発動)
ちなみに発令係りは1番空気が読めそうなブレダ。
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by netzeth | 2009-12-09 21:25 | Comments(0)

ムーミン

 ブログいじくり中。更新したいなあ・・・。でも家に帰ると眠くなる・・。
ムーミンになりたい。ムーミンて冬になると春まで寝るんだぜ!冬眠するんだぜ!
普通にベッドに入っておやすみ~で春まで寝るんだぜ!
昔、これを見て衝撃をうけました。
なんて羨ましい生き物なんだ・・。ムーミンになりたい・・・。
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by netzeth | 2009-12-01 21:41 | 日記 | Comments(0)

しりとり

「やっと終わった・・・」
「はい」
「まったく今回は危なかったな」
「ええ、本当に」
「まさか直々に中央まで出向く事になるとは」
「これも、どなたかがおサボリになって書類期限がギリギリになったおかげですね」
「う・・・な、なあ! イーストシティに着くまでの間汽車の中ではする事もなし、ここは一つ…」
「しりとりをしませんか、大佐」
「し、しりとり?」
「はい、しりとりです」
「い、いだろう。では、私からいくぞ。…ライム」
「無能な上司」
「!!・・・素人」
「とっとと仕事しろ」
「・・・・ロイ」
「いい加減あいそがつきるぞ」
「・・・・・造花」
「がたがた言わずに仕事しろ」
「・・・・・・ロウ」
「撃ってもいいですか」
「・・・・・・・か、覚悟」
「ごめんで済むと思ったら大間違いです」
「・・・・・・・・・すみません・・・・・」
「ん、がつきました。大佐の負けですね」



END
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期限ギリギリの書類を間に合わなくてセントラルに自ら持って行った帰り。
実はかなりご立腹だったリザたん。

更新一発目がこんなんですが、うちはロイアイサイトです。(言い張ってみる)
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by netzeth | 2009-12-01 21:29 | Comments(0)

いつか会う日まで 

事件は唐突に始まる。
「あ、パパっ!」
何ら何時もと変わりない司令部にて、朝の会議を終えたロイが執務室のドアを開けた途端、軍部に似つかわしくない可愛らしい声が聞こえた。と、同時に何か小動物的なモノがトトトっと寄って来て、ロイの脚に抱きついてきた。
「……な、なんだ?」
扉を開けたまま、事態が把握できずに固まっていると、再び可愛い声で、
「パパっ」
と呼びかけられた。
一瞬でロイの脳裏につい最近あった、隠し子疑惑をかけられた事件が思い起こされる。
「い、嫌、違うぞっ。これは何かの間違いだ」
誰に何を言われた訳でもないのに、言い訳めいた事を口にしてしまう。
鋼の錬金術師エドワード・エルリックがマスタング大佐の子供だと勘違いされ、テロリストに誘拐された事件の折、ロイは隠し子がいるのではないかと疑われたのである。
この手の事にはことさら過敏に反応せざるを得ない。
「……・大佐。すげー怪しいっスよ」
部屋の中でハボックが煙草を片手に、ニヤリと笑いながら狼狽えているロイに突っ込みを入れた。


「……つまり中庭に居たんだな? この子は」
「はい。とにかく連れて来て話をきこうと……」
己の執務室で、ロイはフュリーとハボックの報告を聞いていた。最初にこの女の子見つけたのはフュリーらしい。
中庭で放し飼いになっているブラックハヤテ号におやつをあげようとしたら、小さな女の子がハヤテ号と遊んでいたというのだ。
「それにしても、何故司令部に子供が? 警備は何をやっているんだ」
「大佐が連れてきたんじゃないっスか?」
「だから、知らんと言っているだろうが」
「でも、他人とは思えないほど懐いてますよねえ……」
ロイをパパと呼んだ当の少女はロイの膝の上に座り、フュリーに与えられたお絵描きセットでご機嫌に何やらお絵描きをしている。
サラサラした金髪と薄茶の瞳をした三~四才くらいのとても可愛らしい子だ。目をキラキラさせ頬を紅潮させて、クレヨンを握っている。
勢い余ってロイのマガホニーの立派な机に、紙からクレヨンが元気にはみ出していた。ちらりと覗くと何やら黒い色が全体的に多い。
茶色い瞳を上に向けてじょうず? と聞いてくる少女にロイは頷いてやりながらハボック達に視線を向けた。
「とにかく、知らん。第一あまり私には似てないだろうが」
もう一度断固として否定する。
「そういう問題っスかねえ……」
「言われてみれば……あの、会った時から気になっていたんですけど…この子誰かに似てません? いや、大佐じゃなくて」
言葉の途中でぎっとロイに睨まれ、慌ててフュリーは手を振る。実は、それにはロイも同感だった。デジャヴを感じるのだ。この少女を見ていると何か……ひどく懐かしい気がする。
「失礼します」
軽いノック音の後にドアが開いたのはその時だ。
「大佐…………今日の予定ですが……」
『あ』
室内にいた三人の声が被り、
扉を開けて入ってきたリザが、珍しくきょとんとし、
「ママ!!」
少女が嬉しそうに叫んだのは同時だった。


「で、名前は? 親御さんの事は聞いたの?」
ママっと呼ばれても特に動揺を見せる事なく、リザはてきぱきとフュリーに話しを聞いている。
「いえ、その……これからです」
ハボックやフュリーもロイの時と同様に、「中尉、子供がいたんですかー。もしや隠し子ですかー?」などとからかいをする事はなかった。
そもそも真面目なリザに限ってそんな事はないと思っていたし、また、思いたかったし、そもそもそんな怖い事を言える訳ない。
「そう。では、私が話を聞きます。二人とも仕事に戻って。…………大佐」
「な、なんだ?」
突然話を振られて、あからさまに動揺するロイである。
「大佐にお心当たりは?」
「……ない」
「少しも?」
「ない。ないったらない」
ジッとロイを見つめて問うリザの声は静かであったが、ハボックとフュリーは息を飲んで見守ってしまった。何やら言外で恐ろしく長いやり取りをしている様に思えた。
「……そうですか。申し訳ありません。以前の事件の事ががあったもので」
一見しつこく疑った非を詫びているだけの様に見えるこのリザの態度が、ハボックとフュリーにはそら恐ろしい。当の本人のロイはもっと恐ろしかった。
「いや、その……」
ロイもリザを少女がママと呼んだ事が気になっていた。そして、当の少女がリザによく似ているのだ。ハボック、フュリーも同様の事を思ったらしい。さっきからチラチラと二人を見比べている。もちろんそんな事を聞ける雰囲気でもなく、それに、ハボックやフュリーの前でリザに尋ねる気もなかった。
だがロイには、例えリザと二人きりでもこの話題を振る事は出来そうもない。……それだけこの手の話は微妙なのだ。二人にとって。
「ほら、二人とも。大佐も仕事にお戻り下さい。先程言いかけた事ですが、今日中に仕上げる予定の書類の締め切りが正午に早まったんです。この子の親御さんは私が責任をもって探しますから」
ハボックとフュリーを促し、リザは少女にいらっしゃいと手を引いて執務室を後にする。
「パパ、ばいばい~」
ニコニコと手を振る少女に反射的に手を振り返し、リザと目が合い少々引きつった笑いになったロイだった。


「お名前は?」
「るな!!」
クッキーを頬張り、ご機嫌な少女は元気良く答えた。
「そう。良いお名前ね」
とにかく応接室に連れていく事にしたリザだったが、もちろん擦れ違う同僚達は驚きと奇異の目で少女を見た。それを親戚の子だととにかく誤魔化したのだが、皆その一言で納得の表情になった。曰く「ああ、本当だ。中尉に似ていますね」だそうだ。
言われてみれば、幼い頃の自分に似ている様な気がするが、いかんせん自分の見かけのことは良く分からない。
自分に何か言いたそうな顔したロイの事を思い出し、リザは胸に何ともいえない気持ちが込み上げるのを感じた。
ロイは子供の頃のリザを知っている。この子が自分に似ているかどうかを一番良く分かるのは彼だろう。
そして自分をママと呼び掛けたこの少女。
ロイの言いたい事は察しがついた。自分こそ心当たりは? ということだろう。
馬鹿らしい……。
自分に子供を孕んでいた暇など何処にあったというのだ。そもそも、自分が彼以外と―――彼以外にどうして肌を晒せると思うのだろう。そして、肝心の唯一の人がぐずぐずしているから、自分は未だに……・そこまで考えてリザははっと我に返る。
……なんて事を考えているのだろう、私は。
「ママどうしたの?」
ルナが不思議そうな顔をしていた。リザは微かに赤らんだ顔を隠す様に、何でもないのよと返事をし、
「ねえ、ルナちゃん。ルナちゃんのパパのお名前は? パパのお仕事分かる?」
とにかくこの女の子の両親を探さないといけない、とリザは気持ちを切り替える。小さな女の子が一人で軍部に来たとは考えられない。親が連れて来たとしたなら、軍人か軍関係者だろう。はぐれてしまったなら心配しているはずだ。
しかしそこで、パパのお名前は? と聞いた当の自分がわずかに緊張を感じている事にリザは気付いた。
確か、ロイの事をパパと呼んだが……まさか、まさかそんな事……。
「ルナ分かる! パパはねえ、エラーい人なんだよ! ぐんってとこでお仕事しているんだよ!」
軍! エラい!!
ルナの言葉はリザを直撃する。
「んでねーパパはれんきんじゅつしなんだよ! るなもおべんきょうしてるんだあ~」
おまけに錬金術師!! リザはよろりと精神的によろめきながら、
「で、お、お名前は?」
少女にそう何とか聞いた。…………出来れば真実は知りたくなかったが。
「あなた!!」
「……え?」
「ママがねえ、いつもパパの事そう呼んでるよ」
「ねえ、ルナちゃん、それはお名前じゃなくてね……他にのお名前でママはパパの事呼んでいない?」
「うーんと……かっか!! ママ、かっかーってパパの事呼んでた! でも、パパそういわれると怒るんだよー」
かっか? 閣下!!
では、少なくともこの子の父親は将軍位以上の人間だ。我知らずリザは安堵の溜め息をついた。
しかし、ロイへの疑いは晴れたものの、ここでまた新たな問題が浮上する。将軍位以上で錬金術師で今現在東方司令部にいる人間なんているだろうか?
東方司令部で将軍位を持つのは、東方司令部指令長官グラマン中将ただ一人だ。中将は錬金術師ではないし、こんなに小さい娘などいないだろう。と考えてリザはいないわよね? と不安になった。リザは個人的にグラマンとは密接な関係がある。周囲には秘密にはしているが。よって、中将閣下の性格というか所行は他の者より承知しているのだ。
ロイと言い、グラマン閣下と言い、隠し子いないよね?とハテナマークが付くような行動は謹んで欲しい。と思うリザである。
まったく……閣下が悪い事をあの人に教えるから……あんな風になるのよ。
女性関連のあれやこれやグラマンがロイに仕込んだ事を思い出して、リザはため息をついた。昔は気の利かない唐変木な男であったロイは、女性の扱いを彼――グラマン教授されたのだ。それからというもの、元々の才能を開花させてロイはあのような女性関係の派手な男になってしまったのである――。
そこでリザはいけない、と逸れた思考を現実問題へと戻した。どうしても思考が逸れがちになるのは、リザがロイをパパと呼ぶ少女の出現にそれなりに動揺しているからなのかもしれない。
将軍位で錬金術師というと、中央司令部のグラン准将などだが、彼を始め将軍クラスの訪問となれば、事前にロイが知らない訳はなく、よって副官であるリザの耳に入らない訳はない。
そして、今日はそんな予定はないのだ。
「ありがとう。パパの事は分かったわ。ママのお名前は?」
少女はどうしてそんな事訊くんだろう? と不思議そうな顔をした。
「りざ! るな、ちゃんと言えるよ」
そして、ルナちゃんはやっぱり元気に答えた。


リザと言う名前は特に珍しい名前ではない。愛称でリザと呼ぶ名前だってある。だが、東方司令部でリザと言う名前は自分だけだ。
「ルナちゃん、お名前全部言える? ルナちゃんはルナ何ちゃんって言うの?」
とにかく、あまり期待せずにいたファミリーネームも聞いてみる。賢そうな子だからちゃんと知っているかもしれない。――その割にパパは閣下と貴方だったが。
きょとんとしたルナだったがリザの意図したところが分かったのかニッコリ笑って、
「るな・ますたんぐ! さんさい!」
と、答えた。
性はマスタング。母親の名はリザ。合わせて……リザ・マスタング。なんだ、その心臓に悪い名前は!
ま、マスタングという性だって別に多い……いや、少ない方だろうが、あの人以外にもアメストリス中を探せばいるだろう。……例えば大佐の親戚とか。
表情には出てはいないが、混乱気味のリザを不審に思ってか、それとも単に飽きただけか、ルナは、
「ママ~どうしたの? るな、はやてごうと遊んできたいよー。はやてごう小さくてかわいーんだよー」
とリザの袖を引っ張りねだる。
「ハヤテ号を知っているの?」
「うん。お庭で遊んでたら、メガネのお兄さんがきたの」
おそらくフュリーの事だろう。ロイの朝の会議に同行したため、今日は朝が慌ただしく、リザはハヤテ号に朝ご飯をあげずに家を出た。中庭に放して、フュリーに面倒をみてくれるように頼んでおいたのだ。そこで彼は少女を保護したのだろう。
「ねえ、ルナちゃん。お庭には誰ときたの? パパ? ママ?」
ルナは首を振る。
「るなひとりできたの。ママはね、ねんねなの元気ないの。るなしんぱいだけど、今日はパパがおうちにいるからだいじょうぶよってママいったの」
ママお元気になった? と心配そうに、リザに聞いてくる。そんなにルナの母親に似ているのだろうか自分は。
ママではない、と言うのも気が引けて大丈夫よと言ってやるとルナはぱあ~と顔を明るくした。素直で優しい良い子だ。少女の金髪に手を置いて、リザは言ってやる。
「そうね、お外に行きましょうか?」
少女に関する手掛かりがあるかもしれない。
「うん!!」
満面の笑みを浮かべてにルナは頷いた。


「わん! わん!」
拾って間もないブラックハヤテ号は、まだ小さい子犬だ。
それでも、拾った頃よりは大きくなっただろうか。
主人を見つけると尻尾を振りながら駆けてきた。リザは膝をついて撫でてやる。
「はやてごう~遊ぼ!」
ハヤテ号は伺う様にリザを見た。頷いてやると嬉しそうに少女と走り出す。
それを眺めやりながら、リザは今後の事に思いを馳せる。
軍部の受付や事務局にも問合せてみたが、迷子の届けはないらしい。軍部内に親がいないとなると後は市街に出て探してみるしかないだろう。
「はやてごう~こっちだよ!」
「キャンっキャンっ」
楽しげにハヤテ号と戯れるルナ。
無邪気に遊ぶ姿を見ると心が和む。ハヤテ号にじゃれかかられてルナの綺麗な金髪が揺れている。
……本当に彼に子供がいたとしたらあんな感じなのかもしれない。ふとそんな事を思う。
ひょっとしたらロイはヒューズ中佐のような親バカになっているかもしれない。その姿を想像するとおかしくて笑みがこぼれる。娘を可愛がる彼と……ルナとそして――はっとそこでリザは我に返った。
「そんな事、ある、はず、ないじゃない」
そう、あるはずがない。
――よりにもよって、彼らの隣に自分を想像するなんて――。
羞恥に染まった顔を振り、リザは自分にいい聞かせる。
――そもそも、そんな未来を自分が願っていい訳がない。
リザは少し寂しげに笑う。あのような可愛い子供を持つことなど……それこそ許されない事だ……。
そうして、視界に少女をおさめようとして。しかし、肝心のルナは見当たらなかった。
いつの間にかはしゃぐ少女の声もハヤテ号の鳴き声も無く、静かになっていた。
「ルナちゃん?」
少女の姿が見えない。ハヤテ号もだ。慌ててリザは辺りを見回した。
「ルナちゃんー!」
呼びながら中庭を探すが見当らない。すると、
「ワンっワンっ」
どこからか犬の鳴き声が聞こえた。ハヤテ号だ。その声を頼りに走る。
司令部の建物の影、ちょうど死角となる場所でハヤテ号とルナを発見し――リザは息をのんだ。
ルナとハヤテ号がいる。そして、もう一人、人影があった。顔は見えない。ただ、その背格好から、男だという事だけをリザは認識する。
「こら。心配したんだぞ。ダメじゃないか、勝手にパパの研究室に入っちゃ」
男は咎める口調とは裏腹に、優しくルナを抱き上げていた。
「ごめんなさい…」
父親に会えたのが嬉しいのか、怒られながらもルナは笑顔だ。
「るなねー小さいはやてごうとあそんだよ! はやてごう縮んじゃったのかなあ?」
「そうか。大丈夫。直ぐに大きなハヤテ号に会えるよ」
「ホント!?」
リザは呆然とその光景を眺めていた。
どこか甘く響くテノールの声も、漆黒の髪と揃いの瞳も全て彼、そのままだ。けれども、自分の知る彼ではない。
「さあ帰ろう。ママも心配しているよ」
「うん!!」
男が言うのと二人が光に包まれたのは同時だった。
「待ってっ!」
男はフワリと微笑むと、すっと口元に人差し指を当てて何事か言ったが、既に光に包まれている彼の声は聞きとれなかった。


「何してらっしゃるんですか?」
リザが執務室に戻ると、ロイが自分の机の上を拭いている最中だった。気の進まない仕事があると、窓拭きを始めたりと前科があるロイである。リザの声が咎めるものに聞こえたようだ。慌てたように彼は言い訳を始めた。
「いや、サボりじゃないぞ。ちゃんと正午までの書類は終わらせた。それより…あの子はどうした?」
「親御さんが迎えに来られました。目を離したらいなくなってしまい、心配していたようです」
嘘は言っていない。
「そ、そうか」
ロイはあからさまにホットした様子を見せる。あまり、深く突っ込みたくないのか、親がどういう人物であるかなどは聞いてこないのは、有り難かった。……答えようにも、リザには答えられない。自分が見たものが現実かどうかも怪しいくらいだ。
「で、何故机を拭いているんです?」
「あの子がしたお絵描きのせいだ。ほら」
画用紙目一杯に絵が描かれている。いきおいあまってクレヨンがあちこちはみ出して机を汚してしまった様だ。
だが、リザはそれよりも描かれている物が気になった。
黒い小さな固まりの様なモノは犬に見えた。横にルナらしき小さな女の子の絵。そして、その両手を繋いでいるのは、黒い髪と金の髪で描かれた少し大きな人間の絵だった。ルナの両親だろう。
「……ふふ」
ロイが訝しげに見てきたがリザは笑いを押さえ切れなかった。特に犬。彼が以前落書きしたものにそっくりだ。
絵心は父親譲りらしい。
あれはきっと夢ではない。いつか、また会えるだろうか?
会いたいと思う自分がいる。その時はこの絵の様に彼と一緒に手を繋ぎたい、と今のリザは素直に思えたのだった。




END
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by netzeth | 2009-12-01 20:00 | Comments(0)