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太った?

「君……少し太ったか?」
夕食を終えて各々のプライベートタイムを過ごしていた時の事だった。私の隣で最近古本屋で仕入れたという錬金術書に目を落としていた彼が唐突に言ったのは。膝の上に乗せた雑誌をめくる手を止めて、私は顔を上げた。そして、彼――ロイ・マスタング大佐の顔をまじまじと見つめた。
本に夢中になっていたはずの彼は、いつの間にか私をじっと観察していたようだ。まるで上から下まで舐めるように眺められていて、私は居心地が悪くなるのと同時に、少々呆れた。
……それは妙齢の女性にかける言葉としてはいかがなものだろう。
彼は時々こんな風にひどく無神経な時がある。女性にマメで、モテる男を気取っていて、それを羨ましがる部下に女性の扱いとは? という偉そうなご高説を垂れているくせにだ。今日は機嫌が悪いから二日目かと聞かれたりや、肌が荒れてるから化粧ノリが良くないなとか怒ると早くシワになるぞとか。彼のデリカシーの無い発言は数え上げればキリがない。
常々この人は本当に女性に相手にされているのだろうか? と不思議になる事がある。それでも、度々デートだと出かけていく(実際は本人曰く情報収集らしいが)のだからそれなりにモテているのかもしれない。
……それとも、彼の無神経さはもしかして私限定で発揮されているのだろうか? だとしたら遺憾ながらも嬉しいと思ってしまう自分に困る。彼が己を偽らずに率直に自分を出せるその相手が、私だと言うならば、やはり面映ゆいものがあるのだ。恋人としても嬉しい。
しかし、体重という女にとってナイーブな問題に言及するならば話は別である。私だって軍人である。体の健康管理には人一倍気を使っている。食事には常に気を配っているし、きちんとトレーニングも積んでいる。それを、太ったよばわりされるのは納得がいかない、憤慨ものだ。
けれども。
私はその感情のままに「太っていない!」とむきになって彼に反論するのは避けた。体重を気にするような女だと思われたくはなかったのだ。そんなのまるで、そこら辺の普通の女性みたいだ。……そう、私は虚勢を張ったのである。
「……私がもしも太っていたとして、何か問題が?」
極力冷静を装って彼に問う。私の体重は変わっていないのだから太ってはいない。それは事実だ。だが、他ならぬ彼に、太ったなどと疑いをかけられた事自体が私にはショックだった。
見た目が変わったのだろうか? 体の線? たるみ? それとも抱き寄せた時の重さで判断を?
しかし、そんな動揺を悟られぬ様、私は無表情を貫いた。女としての葛藤を彼に知られるのは恥ずかしくて耐えられない。
「いや、そういう訳じゃない。いや、むしろ……」
言葉を切った彼は、私の頬に手を添えた。彼の無骨な指が優しくそこを撫でていく。主人に撫でられた犬のように、私はその心地よさに目を細めてしまいそうになって、慌てて取り繕った。
「太っていたならば、問題はないんだ」
「え?」
先ほどの彼の言葉を、恋人に太った事を咎められた――と理解していた私は一瞬意味を計りかね、ぽかんと口を開けてしまった。きっと、無表情が崩れて間抜けな顔をしていたと思う。そんな私に優しい笑みを向けて彼が言う。
「……太ったなら、それで良いんだ。君、最近痩せた様だったから心配でな。……無理をさせている私の責任だ」
心配そうな瞳で私を見つめてくる。そんな目で見るなんて卑怯だ。自分の誤解があまりにも滑稽で恥ずかしくなってしまう。
だから、一瞬でも無神経だなどと思った事に罪悪感を覚えて、私も虚勢を張るのを止めにした。
「あの…大佐。申し訳ありません……私、てっきり」
「うん?」
「……重い女がお嫌いなのかと」
そういう意味かと思いまして。
心の内を告白した私に彼は目を丸くして、そしてぷっと吹き出した。くくくっと笑みを噛み殺して笑う。いつの間にか目には涙まで浮かんでいて。あまりにも彼が笑い過ぎるので私は恥ずかしくて仕方がない。だが、彼の言葉を誤解したのは自分なので甘んじて受ける事にした。
「……笑い過ぎです」
「ああ、すまん」
とうとう我慢が出来なくなって苦情を申し立てれば、彼はふと真剣な顔になった。頬に当てられていた手が滑り落ちて背中に回ってから、腰に置かれる。そして、彼が立ち上がる気配がした刹那。
「安心したまえ……よっと」
「た、大佐!?」
私の身体は宙に浮いていた。慣れない浮遊感に手足をバタつかせていると、「こら、大人しくしたまえ」と窘められる。まるでお姫様のように私は彼に軽々と抱き上げられてしまったのだ。
「何を……」
「……だから。安心したまえ。私が抱き上げる事が出来るまでは許容範囲内だ」
それは私の体重を指して言われた言葉に間違いない。そして、彼は私を軽々と持ち上げていた。
「力には自信がある。これでも鍛えているからな」
見上げた視線の先に朗らかに笑う彼の顔がある。魅入られた様に私は目を離せなかった。
「……安心して太ってくれたまえ」
どんな君でも抱き上げるから。
そう言い切る彼の言葉の力強さに、私はくらりと眩暈がした。まるで酩酊しているような気分だ。顔と体中が熱くなってどうしようもなくて、私は彼の胸に額を擦り付けた。犬が主人に愛情を示すように、すりすりと擦り付ける。それでも、まだ足りない気がした。
――だって、これは体重だけの話ではない。そんな気がした。
そう、まるで自分――リザ・ホークアイという存在の重さまでも負うと言ってくれる頼もしい男に、私は不覚にも惚れ直したのだ。
「なんだ?……今夜は素直だな」
彼の嬉しそうな言葉に私は心の中で反論していた。
……だって、仕方がないじゃないですか。貴方のせいです。
言葉の代わりに私は無防備な彼の首に手を回すと、素早く唇を押しつけて。そして。その口づけは寝室へ着いてベッド上に降ろされて、シーツの海に私が沈んでも、ずっと続けられたのだった。




END
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by netzeth | 2013-07-31 01:01 | Comments(2)

やっと

原稿終わったのでやっとコミケカタログを買いました。ネット通販で注文したのですが、買おうと思っていたアマゾンさんで冊子版が売り切れてました……ort やっぱり発売と同時に買わないとダメですねー。ま、別の本屋さんで注文したのですが、送料かかるというので無料になる料金にするために他の本を買ってしまったww

まあいいや。早く来ないかなー。ばっちりチェックしたいのです。

話がズドーンと変わって新刊2「夜を泳ぐさかな」の方もとらのあな様に委託をお願いしております。もう予約が始まったようです。こちらも合わせてよろしくお願いいたします。



拍手ありがとうございます(*^_^*)
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by netzeth | 2013-07-29 23:37 | 日記 | Comments(0)

2冊目入稿

なんとか夏コミ新刊2冊目を入稿いたしました! 後は印刷所さんにお任せです。ああ、達成感と解放感ヽ(○´∀`)ノ
それに伴ってオフラインに新刊情報を更新いたしました。

また自家通販の方を休止させて頂きました。お申込み下さった皆様ありがとうございました!再開は夏コミ後を予定しております。


さー、ようやく原稿も終わったのでたまっているやらねばならない事やりたい事をこの土日は片づけておりました。そういえば、前の記事で書いた座椅子が届きました。原稿が終わった後にww もう少し早い到着を期待していたぜ。しかし、この子結構いいお値段だったのですが、そのせいか立派でデカい。うめこの狭いお部屋ではこの子、じゃま……げふんげふんっ。すわり心地は中々です。腰も良い感じ。しかしお尻が擦れるのは何故なんだぜ? ひりひりして痛いんだぜ?

とにかく原稿終わってまずお部屋の片づけをいたしました。掃除機もかけました。真面目にお料理もしました。頂きもののズッキーニをパスタにし、ソテーにし、チーズ焼きにし……まだまだある!消費しきれないよ!あとはたまりにたまったアニメの録画を視て、止まったままのゲームの続きをやって、サイトの方もSSを更新いたしたく。さらに夏コミの準備も……とまだまだやらねばならぬことは盛りだくさんですねww とまあ、原稿やってなくとも土日2日ではやりたい事がやりきれないですww



拍手ありがとうございます(*^_^*)
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by netzeth | 2013-07-28 17:56 | 日記 | Comments(0)

夏コミ新刊サンプル2

二二:〇〇を回ったところでしとしと降り出した雨は、一時間を経過した今、とうとう本降りとなった。今朝の天気予報によるとこのまま一晩降り続くらしい。この時期、夜に雨が集中して降るのはイーストシティでは珍しいことではない。こんな夜は皆外出は控え、程良く肌寒い気温の中、薄い毛布に包まり早々に眠ってしまう。東方司令部にとっては、雨で災害でも起きぬ限り事件が減る静かな夜となるのだ。
人通りが絶えた東方司令部の長い廊下の途中で立ち止まって、リザは窓の外を見つめていた。相変わらず雨は止む気配を見せなかったが、幸いそれほど強く降ってはいなかった。これならば災害対策の部隊は出さなくても済みそうだとリザは安堵する。そのために通常の夜勤勤務者に加えて、臨時にシフトを変更して人員を確保していたのだ。だが、それも無駄骨に終わったようだ。待機を命じられた軍人達には申し訳ないが、彼らが活躍する機会など無いに越した事はない。大丈夫そうだからといって待機命令をすぐに解く訳にも行かないが、今夜彼らは忙しい夜を送らずに済むだろう。
そこまで考えをまとめると、リザは改めて視線の先にある風景に意識を移した。風景といっても、雨垂れに濡れたガラス窓に、ぼんやりとした司令部の明かりが映っているだけの光景だが。彼女は闇夜に揺れるそのほのかな明かりを見つめた。
――まるで巨大な水槽の中に浮かんで夜を眺めているよう。
そんな感想が不意に脳裏に浮かんで、リザはふっと笑みをこぼした。いつか幼い頃に見た、熱い海に住むという魚の水槽を思い出す。青と黄色の鮮やかな色を纏ってガラスの箱の中を優美に泳ぎ回る魚達。小さく、たくさんで群れを成して、休む事も知らず、まるで止まれば死んでしまうと、忙しくその小さな世界を精一杯に泳いでいた。
(私と同じだわ) 
ぼんやりとリザは考える。
そう。自分は、自分達は東方司令部という水槽を泳ぐ魚。この水槽の中でいつか大海に出る時をじっと待っている――。休む事もせず、止まる事も許されず、水底から夢を見て、ただひたすらに泳ぎ続けて。
――パタポタッ。
その時、リザの意識を引き戻したのは、窓に叩きつけられた雨音だった。どうやら風が少し出てきたようだ。ハッと我に返ったリザが目を凝らすと、暗い窓には水に滲んだ明かりと、疲れた顔の女が映っていた。
それに、リザは苦笑した。
柄にも無く、埒もない想像をしてしまったようだ。水槽を優雅に泳ぐ美しい魚。自分はそんなに良いものじゃない。せいぜいより大きな魚に食べられぬよう生きるために足掻く小魚だ。
そして小休止を終えて、リザはまた歩き出した。まだまだやらねばならぬ事が残っている。立ち止まってはいられない。

――夜はまだ始まったばかりなのだから。

そして、二三:三〇。
降り続いていた雨の勢いが少しだけ弱まった時刻、手の中にある小さな銀色を転がして、リザは思案していた。
リザ・ホークアイは一つだけこの東方司令部において、他の者には許されていない特権を持っている。
その挿話に纏わるのがこの鍵だ。鈍く光る金属製の冷たいそれに目を落として、リザはこの鍵が彼女の元へとやってきた経緯を思い返していた。


   ***


リザの背中にはかつて、ただ一人の人物を除いて決して他人には見られてはならぬ秘密が隠されていた。しかし、現在ではその秘密は正しき相手へと受け継がれた。そして、背中の秘密は誰の目に触れても構わないように、その肝心の部分は抹消された。もう、誰に目撃されてもその正確な意味を読みとることは不可能になったのだ。けれど、だからといってそれを易々と人目に晒す事に心理的な抵抗が無くなった訳ではない。
それは今もなお、いや、火傷が加えられた事で余計に禍々しい姿を保っている。人がそれを目にしたら、例え悪意が無くともどういう感想を抱くのか、リザには容易に想像がついた。ならば、極力隠すに越した事はあるまい。故にリザは司令部では軍服の下にハイネックを着用していた。それは暑い夏の最中でも脱がれることは無かった。着替え時にも、女子ロッカーにひと気のある時はハイネックを着たまま帰宅した。
そうしたリザの涙ぐましい努力によって、彼女の背中は今まで誰の目にも触れる事はなかった。けれども、それは様々な場面でリザに不便をもたらした。その一つが司令部の仮眠室利用の点においてである。
東方司令部にはシャワー室が付属した仮眠室が完備されている。むろん、男子、女子双方にだ。佐官以下の軍人達は、夜勤シフト時や、徹夜で司令部に詰める事件が発生した時などにこの仮眠室を利用する。
司令官付き副官という立場上、リザにも司令部で仮眠をとらねばならぬ事態は頻繁にあった。もちろん、彼女もこの下士官用の女子仮眠室を利用していた。しかし、それには一つ問題があったのだ。
仮眠室のシーツは常に清潔を保つように、と必ず一日に一回は取り替えられている。当然利用する軍人達もその点は気を配り、汚れた身体で寝床に入る事はせず、必ずシャワーで汗を流してからベッドを使う。そのためにシャワー室が付属しているのだ。
だが、背中を他人に見られたくないリザにとってこのシャワー室利用はかなり気を使う作業であった。何せ、人の出入りが引っ切り無しなのだ。人の裸を不躾に見る女性などはここには皆無だが、背中のそれはその意志が無くとも容易に人目に触れてしまう。かといってリザ一人で仮眠室を独占する訳にもいかない。それまでは彼女は人が居ない時間帯を見計らってシャワー室を利用し、今まで幸い誰にも出くわすことはなかったが、それもただ運が良かっただけの話だ。不特定多数の女性軍人が利用する場所なのだから、いつ誰が入ってくるか分からない。その時にどうやって無防備な背中を隠せばよいのか。バスタオルで覆える範囲を大幅にはみ出している秘伝。それは常にリザにとって悩みの種であった。
以上の様な理由から、いつしかリザは仮眠室の利用を控えるようになっていた。そんな風に毎回気を使っていては、安らげるはずの場所でもゆっくりと休息をとることは出来ない。別に仮眠室でなかろうと休息くらい取ることは出来る。リザは戦地を経験した軍人だ。過酷な状況下で睡眠をとった事など数え上げればキリがない。それに比べれば……と、仕事部屋の自分のデスクで休んだり、時には備え付けてあるソファーに横になったりもした。身体はゆっくりと休めないかもしれなかったが、気を使うだけの仮眠室よりは幾分マシだった。
しかし、そんなリザの状態を目撃した人物が居たのだ。そう、リザの上官であったロイ・マスタングである。
彼はソファーで眠っていたリザを見つけるなり、ものすごい形相で彼女に詰め寄ってきた。
「ホークアイ少尉。……君は何をやっているのかね?」
ウトウトしていた所に現れたロイに、リザは当初何かの事件かと誤解して跳ね起きたものだ。それほどに彼の表情は鬼気迫っていた。
「はい。仮眠をとっておりました」
彼が何を憤っているのか分からぬままに、リザは素直に返答した。……と言ってもそれ以外に答えようが無かったのだが。
「……ここでかね?」
「はい。……何か問題がありますでしょうか」
「大あり……」
何かを言い掛けて言葉を止めたロイに、リザは首を傾げた。彼はリザの顔をじっと見つめて、それから沈痛な面持ちで眉を寄せた。まるで何かをじっと考え込んでいるように。そして、彼のその瞳に少しだけ痛ましさが滲んで、リザは悟った。ロイはどうしてリザが仮眠室を利用せずにこんな場所で寝ているのか、その理由に気づいてしまったのだと。彼は明敏で優しい人だったから。
既にその問題で彼が負い目を感じる必要性はまったくもってない。だから、リザは慌てて取り繕った。
「……今日はたまたま仮眠室が混んでおりましたので」
いつもしている訳ではない、仮眠室を利用出来ない訳ではない。そんな否定を込めての言葉だったが、しかし、彼は納得しなかったようだ。強い視線をリザに当てたロイは、
「だが、若い女性がこんな場所で無防備に眠るなんて感心せん」
何かあったらどうする。
まるで、娘を持つ父親のような口調と顔で言ってくる。
「ここは、司令部の中です。滅多な事など起こらないと存じますが」
「……だから、君は自覚がないというか……分かっていないんだ。軍の野郎達など飢えた狼より質が悪いぞ」
「ですが、同じ軍の仲間です。そのように警戒した目で見るのは……」
渋い顔を崩さずに言い切ったロイは、彼の言葉を真面目に受け取らないリザに対して業を煮やしたのか。
「来たまえ」
リザの手を引いて歩き出そうとする。ソファーから降りて、慌ててブーツを履いたリザはロイに引っ張られるままに彼について行った。




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by netzeth | 2013-07-28 17:28

突然の

夕方に突然の雷雨に襲われました。仕事中だったのですが、部屋の窓が全開であったのを思い出して悲しくなりました。ジタバタしても、もうどうしようもないですからね…(-_-;) ええ、びっしょりですww電化製品とかは置いて無いので良いのですが。お布団が濡れてしまった…。今度からは暑くてもちゃんと窓は閉めてでかけよう。

床に直座り原稿による腰痛に耐えかねて座椅子をぽちってしまいました。腰に優しいというので、彼にかける期待は膨らむばかりです。ああ早く来て!うめこは首を長くして待っております。




拍手ありがとうございます! 

以下続きから拍手コメント(7/22分)のお返事です。

続き
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by netzeth | 2013-07-23 22:01 | 日記 | Comments(0)

お知らせいろいろ

毎週思うんですが、土日じゃ短いです……。こんばんは。
もうお休みが終わってしまいました。どうしましょーまだまだしないといけないことが山積みなんですけど。

とりあえずお知らせを。オフラインに夏コミ新刊情報をUPしました。とりあえず一冊目を。と言っても、入稿したのはいいですが、土日を挟んだのでまだ印刷所から受け付けました通知は来ていなかったりするんですけどねー;; で、現在二冊目は頑張って書いております。間に合うといいなーな、感じです。落としたらスパークで出します……。

お知らせその2
とらのあな様の方で夏コミ新刊1の予約が始まったようです。よろしくお願いいたしますこちらからどうぞ

それからとらのあな様に委託しておりました既刊「火蜥蜴を抱いた」は完売したようです。ありがとうございました<(_ _)> 

お知らせその3
自家通販の方は7月いっぱいくらいで在庫管理のため休止いたします。



えっと、お知らせ事項はこれくらいでしょうか。
それでは、二冊目の原稿に逝って参ります!


拍手ありがとうございます(*^_^*)

 
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by netzeth | 2013-07-22 00:57 | 日記 | Comments(0)

夏コミ新刊サンプル

BAD COMMUNICATION より抜粋


「……その事だが。聞いたか? おっさんの後任の話」
「ああ。あの、イシュヴァールの英雄…だろう? 一体どんな熊かゴリラなんだろうな。きっとすげえ筋肉ダルマだぜ」
俺勝てるかな…? などと、ハボックは呑気に笑っている。どこまでもお気楽な性分の親友にブレダは内心苦笑した。
イシュヴァールの英雄、ロイ・マスタングは国家錬金術師だ。その銘は焔の錬金術師。イシュヴァール内乱において鬼神のごとき活躍をし、イシュヴァールの民を殲滅せしめた男。その功により二十代前半の若さで中佐の階級に登り、殲滅戦に参加した兵士達から彼は英雄と呼ばれている。
ブレダとハボックが士官学校在学中に内乱が終結したため、二人はまだその目でその英雄と呼ばれた男を見たことはない。
「何でもいいけど、ケベックのおっさんよりも骨があるやつが来るといいよなー。こう、この人ならついて行ける! みたいな頼もしいのがさ」
「……そうだな」
さて、果たして。ロイ・マスタングがどれほどの男か。
親友の言葉に頷きながら、その真価を見極める必要があるとブレダは思う。噂通りの血も涙も無い冷徹な男なのか。それとも。
吉と出るか、凶と出るか。
賽の目がどう出るのかだけは、士官学校にて戦術の天才と呼ばれたブレダにも分からない。
博打は嫌いではない。勝負は時の運。時に負けるのも良い経験だろう。だが出来る事ならば、今度の勝負には勝ちたいものだとブレダは思った。
何しろ、賭けるのは自分達の人生になるのかもしれないのだ。高いチップをかけるには…それなりの代価というものが必要なのだから。



セントラルシティ発イーストシティ行きの急行列車。そのコンパートメント席に向かい合って座る男女の姿があった。男も女もまだ若い。特に女の方はまだ二十歳そこそこだろう。幼さを残した頬の柔らかな線が、窓から差し込む日差しを受けて白く浮かび上がっている。その滑らかな肌をなんとなく眺めながら、男――ロイ・マスタングは大きく欠伸をした。
「……中佐。眠いのでしたらどうぞイーストシティに着くまで眠って下さい。昨日は遅くまで引き継ぎをしていて、休んでおられないのでしょう?」
「……それはそうだが。だが、私が眠ったら君はどうする気だ? 君だって昨日は遅かったのだろう」
「もちろん、私は起きて中佐の護衛をいたしますが。いつ何が起きてもおかしくないこのような無防備な場所で、二人とも眠るなんて出来ないでしょう」
当然だと言わんばかりに主張する己の副官に、ロイは内心ため息を吐く。言い出したら彼女は引かない。
「バカを言うな。女性を一人起こしていて、自分だけ寝るなんて私に出来ると思うかね?」
それでも強い口調で反論するが。やはり彼女――リザは簡単には納得しなかった。むしろ、ロイの女性と言う言葉を聞いてあからさまに険しい顔付きになる。
「中佐。私は軍人です。貴方の部下、です。男も女もありません。上官の護衛をするのが私の仕事であり、役割です。上司を差し置いて寝る部下が何処にいますか!」
分かっている。彼女は女性として扱われる事を一番厭っているのだ。特にロイから。
イシュヴァール内乱が終わると共に士官学校を卒業したリザはロイの下へと付いた。実はそれは双方が希望しての結果である。基本的に人事は上が決める事なので、本人達の意向は考慮されても絶対ではない。しかし、今回に限りそれが叶ったのはロイがイシュヴァール帰りの英雄であった事と、そして、リザの母方の祖父の力が関係していた。リザは祖父にロイの下へと配属して貰えるように、と願ったのだ。可愛い孫娘からの唯一にして最初で最後かもしれないおねだりに、東方司令部最高司令長官であったリザの祖父――グラマン中将は全力を尽くした訳である。
「さあどうぞ、中佐。仮眠をお取り下さい。新任の司令官が寝不足のくまをこさえてやって来た…とあっては、示しが付きませんよ。只でさえ威厳が不足しているんですから」
「君…一言余計だぞ……」
容赦の無い舌鋒を振るうリザに男心を傷つけられつつ、ロイは渋々目を閉じた。リザの言う事ももっともだと思ったからだ。
イシュヴァール内乱終結からの半年を、ロイはセントラルにて過ごしていた。軍上層部は内乱の英雄と呼ばれたロイをまずは手元に置いて、いわゆる様子見をしていたのだろう。かの男の処遇をどうするのか。地位は。何をさせるのか。ようやく結論が出たのは、半年の歳月が過ぎた後のことだ。東の狸グラマンとの折り合いが悪かったケベック中佐に代わり、マスタングを司令官へ。……それが上層部の判断だった。
ロイは少佐から中佐へと昇進し、リザも准尉から少尉へと階級を上げた。二人で辞令を受けて、晴れて故郷である東の地へと戻るのだ。寝不足の冴えない風貌で現れてはそれこそ足りない威厳が、更に減ってしまうというものだ。
それでも、ロイは最後の抵抗にこんな事を言ってみる。
「……じゃあ、少尉。隣に来ないかね」
「……何故ですか」
「膝枕……もしくは肩を貸して……いや、やっぱりいいよ」
リザが腰の銃に手をかけたのを見て、ロイはあっさり諦めた。彼女も寝不足気味のせいか少々気が立っているようだ。これ以上ゴネるとやばい…と敏感に空気を読んでロイは大人しく寝入る事にした。
腕を組んで目を閉じて。そして、眠りの入り口でしばし考える。
この半年一緒に過ごしていてずっと感じていた事だが、リザは必要以上にロイに対して女の部分を出すことを忌避している。彼に対してはあくまでも上司と部下。昔の、打ち解けた兄妹のような関係は鳴りを潜め、ただ、今ここにあるのは彼女からの忠義と、そして強い使命感だけだ。
ロイにはそれがどうにも寂しく、しかし、それ以上に仕方がない…という諦めに似た感情がその胸を占めていた。
焔の錬金術、イシュヴァール、そして屍を背負い血の河を渡る――未来を見据えたその誓い。それら全ての事が今に至るまでロイとリザの関係を拘束し、縛り付けているのだから。
だが、それでも。
諦めきれぬ女への想いが胸を疼かせる。……東へと移った事で自分達の関係は何か変わるのだろうか? そんな思考を巡らせながら、男は次第に眠りへと誘われていった。




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by netzeth | 2013-07-22 00:35

今日は。

今日は比較的涼しい一日でした。こんばんはー。いつもは大活躍しているマイ扇風機さんも一日お休みでしたよ。こんな日がずっと続けばいいのにー。

さて、座ってずっと原稿をしておりましたらば、腰が痛くなりました。ちょっと休憩です。あー寝ながら打てるキーボードとか無いかなー。もしくは音声入力できるのとかww きっと椅子に座ってやったほうが良いのでしょうが(うめこは床に直座り)それだと冬を乗り切れる気がしないんですよねー。ま、今の時期は良いんですが。



拍手ありがとうございます!


以下続きから拍手コメント(7/20分)のお返事です。

続き
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by netzeth | 2013-07-20 23:11 | 日記 | Comments(0)

入稿

深夜にこんばんはー。
何とか原稿を入稿いたしました。これで一息……と思いきや、二冊目に取り掛かりたいと思います。こちらはちょっと間に合うかどうか分かりませんが(^_^;) というか無理っぽいですが。とにかく、ぎりぎりまで頑張ってみたいと思います。では、再び原稿に逝って参ります。


拍手お礼文を更新しました。今回は変な話ばっかかと……すみませんww


拍手ありがとうございます(^^)
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by netzeth | 2013-07-20 02:55 | 日記 | Comments(0)

拍手お礼ログ 24

マスパングさん


「なあ、中尉」
「なんでしょうか」
「キスしたい」
「今は仕事中ですが?」
「そうだな。でもキスしたい。すごくしたい。しないと死にそう」
「……どうしました。とうとう脳味噌にカビが生えましたか? 貴方は梅雨時のパンですか? マスパングって呼びますよ? マスパング大佐」
「もう呼んでいるじゃないか…だが、パンか…パンは好きだぞ」
「私だって好きです」
「ではキスOKということで」
「……なんで今の文脈でそういう話になるんです。パンは好きでもカビの生えたパンはごめんです」
「嘘だ。君は子供時分、私が止めるのも聞かずにカビの生えたパンを食べようとしていたじゃないか」
「あ、あれはっ。…ちゃんとカビの生えたとこは取りました。だから大丈夫だったんです!」
「っていう君に、必死に私はカビの毒性について説明したっけなあ…結局君はカビの生えたパンを食べてしまったし」
「……で、結局大丈夫だったでしょう」
「そうだね、君はね。付き合って食べた私はお腹を壊したんだけどね」
「それは貴方の胃袋が軟弱だっただけです」
「そうだね。君の胃袋は鋼の胃袋だったよね、昔から。……じゃあ、カビの生えたパンでも食べられるよな? ぜひとも脳味噌にカビの生えたマスパングさんも美味しく召し上がって欲しいんだが」
「なんですか。下ネタですか? 仕事中にサイテーですね。そんな無駄話をしている暇があったら手を動かして下さい。そもそも何がマスパングですか。パンはパンでも食べられないパンはな~んだ、っていうクイズの答えよりも下らないですね、マスパング」
「……元々君が言い出したんだろ」
「何かおっしゃいましたか?」
「いや、別に」
「だいたい。食べられない上に仕事もしないのでは本当にただのパンよりも役立たずですよ、マスパング。普通のパンの方が日々の糧なり、栄養なりになっているのですから、おおいに有用です。いいですか? このまま仕事をしないのならば貴方はパン以下です」
「だから、マスパングは食べられるぞ?」
「……まだ言いますか。どうせ美味しくないんでしょう?」
「それは食べてみないと分からない。が、保証しよう。マスパングはとっても美味しいと思う」
「具体的にはどれほどに?」
「……そうだな。食べれば仕事への活力を与えられると思うぞ? いいか? 君がマスパングさんの超絶テクニックキス付きのおいし~い唇を食べれば、元気100倍。力がみなぎって定時に仕事を終わらせるのも不可能ではない」
「参考までに聞きますが、それは食べる私が元気になると?」
「もちろん。あ、ついでに言うと食べられるマスパングもいろいろみなぎる。で、定時にあがった後は二人でキスの続きをするという訳さ。どうだ? 有意義だろう?」
「……ですが」
「さあさあ。君は有能な副官としてマスパングを食べる必要…いや、義務があると思うぞ? ただでさえ雨の降る鬱陶しい季節だ。ここは一つマスパングを食べて二人で元気100倍になってみないか?」
「……う…、し、仕方ありませんね」


そろそろ自分の存在を思い出してくれないかな……。
自分を無視してキスしようとしている時点で、リザの脳味噌にもカビが生えてしまっているんだろーな…と改めて梅雨時の湿気の恐ろしさを認識し、遠い目をするハボックであった。



寸前


「た、大佐っ。その…待って、待って下さい」
「どうしたのかね? この期に及んで……もしかして、嫌…か?」
場所は彼女の部屋寝室のベッドの上。時刻はおそらく午後11時を回ったくらい。
状況は私が彼女――中尉を押し倒して今まさにキスをその唇に落とそうとした瞬間。
ここまで彼女との仲を進めるのに紆余曲折試行錯誤……とにかくずいぶんと時間をかけた私はいよいよという段階になってストップをかけられて、正直かなり興を削がれていた。
なんだ。今までどれだけ待ったと思っているんだ。
だが、何と言ってもホークアイ中尉は初心者。まあ、はじめてのけいけん。ってやつだ。やはりこういう場面にいざ直面するといろいろ不安もあるのだろう。
自分でもびっくりするくらいの自制心を発揮した私は、そっと体を浮かせて中尉から離れる。
そして、優しく中尉に微笑みかけた。……なるべく彼女を怯えさせないように気を付けながら。
「そ、そんな事は…ですが、私……とっても重大な事を思い出しまして」
「なんだ? 重大な事って」
今、まさにことに及ぼうとしている私たちのことよりも、優先しなければならないことがあるというのか?
「はい……その…私…戸締まりをしっかりしたかどうか…それが気になっておりまして……」
なんだそんなことか。と言いそうになるのを私はぐっとこらえて咽の奥に押し込めた。
ここはあくまでも優しく、紳士に。彼女の話を聞いてやらねばなるまい。
「そうか。そうだな、戸締まりは大事だもんな。分かった。今から私が行って確かめてこよう。それでいいな?」
「はい…あ、それからっ…お風呂の換気扇も回っているのか気になります……ちゃんと換気しないと黒カビが…」
……どう考えてもそれは私たちの愛の営みを中断してまで何とかしなければならない問題とは思えない。だが、私は自分を誉めてやりたいくらい根気よく中尉の話を聞いてやる。
「そうだな。タイルの目地に生えた黒カビはやっかいだからな。じゃあ、バスルームも見てこよう」
「あ、あとっ、……ガスの元栓も気になります……ちゃんと締めたかどうか……」
……中尉は私とこういう状況に陥ってなんやかんやしている間(それなりに甘い口説き文句とかを私が頑張って言っている間)内心はずっと戸締まりやら換気扇やらガスの元栓の心配をしていたのだろうか。……すごく遺憾だ。
「わ、分かった。ちゃんと全部見てこよう。それでいいね?」
「はい…お手数をおかけして…あ、それからハヤテ号のお水が切れていないかもついでにお願いします、えっと…あとは……」
……なんだろう。なんだかだんだん、彼女はどうでもいい用事を思いついては私との行為を引き延ばそう引き延ばそうと工作しているように思えてきた。嫌なら、嫌とはっきり言えばいいのに。……いや、本当に言われても今更困るが。いろいろと収まらん。
それでも、出来るだけ彼女には優しくしてやりたい私は黙って中尉に言われた通りの用事を全部済ませて来た。(結局彼女の心配は杞憂で全て大丈夫だったがな)
「……中尉。他に…もう言っておく事はないかね?」
再び彼女を組み敷いて。私は最後に訊ねた。
本当はこのまま一気に雪崩れ込みたかったが、この際中尉に最後まで付き合おうと思ったのだ。その…私との行為に彼女が心おきなく没頭出来るように。……最中にガスの元栓閉めたかしら? なんて事を考えられたくないしな。
「え…あ、……あ、はい…では…最後にもう一つだけ……」
何だ、やっぱりまだあったのか。
今度は何だ。水道の蛇口がちゃんと締めてあるかとか、待機電力の節約に電気のコンセントを抜いておきたいとかそんなのか?
何を言われても動揺せずに、中尉の願う通りにしてやろう。……なんて考えていた私の不意を突いて。
「……大好きです。大佐。…その、する前にちゃんと言っておきたくて……」
中尉がはにかんでそんな事を言うから。
理性を飛ばしてしまって、初めての中尉にかなりむちゃくちゃしてしまったのは……私のせいではないと思う。



もしもの話


彼はもしもの話が好きだった。
仕事の合間の休息時間、視察の護衛に同行した時、一緒の帰り道。
事ある場面で思い出したように私にもしもの話を投げかけてくる。もしも自分が女だったら、もしも君が男だったら。もしも自分が錬金術師では無かったら、もしも君が師匠の娘では無かったら……君はどうするね? 彼のするもしもの話はそんな風に私を悩ませる問いばかりだった。
彼はそうやって答えに詰まる私をからかって楽しんでいるのだから、質が悪い。いちいち真面目に取り合って真剣に答えを模索してしまう私もいけないのかもしれなかったが。
彼の言うもしもの話は彼と私に関する事に限定されている。おそらく彼は確かめたいのではないのだろうか。どんな運命の元にあっても私達は共にあるのだと。
私は彼がもしもの話をする理由をそう推し量っていた。――運命にまで喧嘩を売るなんて彼らしい。
「もしも……私が死んだら君はどうするね?」
そのもしもの問いは私がこれまで聞いた中で最悪なものだった。
いつものように投げかけられた言葉遊びに、私は書類を手繰る手を止めてしまう。常々彼には冗談のセンスが無いとは思っていたが。冗談にしてもこれは最低である。
「それは…私に対する新手の侮辱でしょうか」
極力怒りを抑えて私は声を絞り出した。彼を護ると誓っている私を馬鹿にしているにも程がある質問。
「……貴方は私が護ります。だから死ぬはずありません」
「だが、私が戦場で死ぬとは限るまい。不治の病にかかるかもしれんし、階段で足を滑らせて頭を打つかもしれない……もしも君の手が届かない場所でうっかり私が死んでしまったら。君はどうするね?」
それは私が最も恐れている事。もしも彼が私の知らない間に居なくなってしまったならば。……例えもしもの話でもその想像は私の胸をぎゅっと締め付けた。
「……そうしたらば、私は貴方を許しません。絶対に許しません。もしも私の許可なく勝手に死んだら殺します。地獄の果てまで追いかけて殺します。……そして」
死んだら殺す。
そんな矛盾した答えを私は愚直に繰り返した。
「貴方の事を大嫌いになります。私を置いて死んでしまう大佐なんて知りません。嫌い…大嫌いです」
「……うん、すまん。分かった。私は死なない。君の許可無く死んだりしないから。……君に殺されるのはかまわないが、私は君に嫌われるのだけは我慢出来ない」
いつの間にか近づいて来ていた大佐の手が私の頭を撫でた。仕事中の親密過ぎるスキンシップ。けれど今の私には抵抗なんて出来なくて。
「だから……泣かないでくれ」
そして、いつの間にか私の頬を流れ落ちていた涙を彼の手が拭った。




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by netzeth | 2013-07-20 02:11 | Comments(0)