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お腹空いた

5万円の枕を買う夢を見たうめこです、こんばんは。その枕のフィット感ハンパなかったわ。もしものび太君レベルで寝つける枕なら5万円出しても惜しくない。いつでもどこでも眠れるって才能だと思うのです。

お腹空いて眠れないです。何か食べようかな……と考える深夜。肥える秋……。

いつか再録本出したくて古い本のデータを流し込んでぼちぼち編集作業をしているのですが、一向にはかどらない。編集作業向いてないやー。

拍手ありがとうございます(^^)
一日一本! というよく分からない目標のもと今日も小話を書きましたのでよろしかったら下↓からどうぞー。カエルスパーキング!!!(゚Д゚)







雨上がりの自宅の庭はリザにとって緊張を強いられる場所だった。雲間から覗く太陽の光が、葉に残った水滴に反射してキラキラと輝き眩しい。たっぷりと水分を含んだ土の匂いと雨に洗われ澄んだ空気のコントラスト。とても気持ちが良い空間のはずなのに、しかしリザは雨が降っている時よりも憂鬱になってしまう。
雨が降っている時はいい。リザも外には出ないから、あれ、と遭遇することもない。しかし、雨上がりはいけない。油断していると至る所にある水たまりから、あれ、はひょっこり姿を現すのだ。
その日、裏庭で晩ご飯のためのナスとトマトを採集していたリザは突然目の前に飛び込んできた緑色の物体に悲鳴を上げた。
「きゃあああ!」
野菜の入った籠を取り落とさなかったのは、ひとえにリザのもったいない精神故だ。そして腰が抜けて尻餅を付きそうになったのをこらえたのも同様であった。雨上がりの庭で尻など付いたらドロドロのぐちゃぐちゃ。お洗濯が大変なのだ。
故に。籠をかかえてリザはじりじりと後ずさった。緑色の物体――カエルから目を離すなんてとても出来ない。もしも、背中を見せた瞬間に飛びかかられたら? カエルのジャンプ力を舐めてはいけない。こんな小さなカエルでも簡単にリザとの距離を詰めて来る。あれが自分に触れる――想像するだけで身震いがして、リザは息を詰めてカエルと見つめあっていた。
お願い……私が庭を出て行くまで動かないで。じっとしていて。
切実に願いながら、リザは相手を刺激しないように慎重に動いた。カエルは口下の部分をヒクヒクと動かしながら、リザを見上げていた。
その時である。
「リザ? どうしたの?」
背後から良く知る少年の声がした。自分とカエル以外の他者が来てくれた……! と安堵したあまり緊張が弛み、思わずリザは反射的に彼にすがりついていた。
「マ、マスタングさん……! 助けて!!」
「へ!?」
「カエル……! 追っ払ってくださ……!」
「カエル?」
今はとても頼もしく感じる彼――ロイの胸に抱きついて目をぎゅっとつむり、リザはカエルを指さした。困惑したようなロイの声が聞こえたが、彼はすぐに状況を呑み込んでくれたらしい。大丈夫だよ、とリザに一声かけると彼は一端彼女から離れていった。そして、素早くカエルを手に包み持つと庭の外へと追い出してくれたのだ。
「ほら、もう大丈夫。カエルは遠くにやったからね」
リザがおそるおそる目を開くと、全ては終わっていた。あの、恐ろしい緑の物体は姿を消しており、リザの庭にすっかり平和が戻っていた。
「あ、ありがとうございます……マスタングさん……ご迷惑をおかけしました……」
カエルが嫌いだなんて、小さな子供みたいだ。きっと彼は呆れただろう。
恥ずかしさに顔を赤くしながら、リザは消え入りそうな声で礼を言った。ロイは照れ笑いを浮かべながら、頭を掻いている。
「いや、全然迷惑なんてかけられてないよ。リザはしっかり者だから、いつも俺が世話をかけてばっかりだったし。むしろ、リザの役に立てたなら嬉しいよ。でも、意外だな」
「え?」
「ネズミも虫も蛇もリザは平気なのに、カエルはダメなんだな」
不思議そうな顔でロイは指摘してくる。それから彼は言葉を更に継いだ。
「どうしてカエルは苦手なんだい?」
本当に大した理由もなく、彼は好奇心だけで尋ねたのだろう。ロイに他意はまったくない。話そうかどうしようかリザは迷ったが、助けて貰った恩の手前、誤魔化すようなことは出来なくて。実は、と話し出す。
「……カエルの王子様ってお話知ってます?」
「ああ、知ってるよ。魔法でカエルにされてしまった王子様が、お姫様のキスで元に戻る童話だろう?」
ロイが言う童話は少しだけ違う。きっと彼は彼流に解釈して覚えているのだろう。リザは首を振って説明した。
「違います。本当はカエルはお姫様を助ける代わりにキスをして貰う約束をしたのに、お姫様はカエルとキスをするなんて嫌だとカエルを壁に叩きつけてしまうんです。それで、カエルの魔法が解けるってお話です。……子供の頃このお話を聞いた時、私、お姫様の意地悪、カエルがとても可哀想って思って。私なら絶対にカエルにキスをして上げるのにって……それで……」
「もしかして……実際にカエルにキスしようとしたの?」
ロイが笑いを堪えるように言うのに、顔から火が出る思いで頷く。
「はい。……もうその後は分かりますよね? とてもカエルにキスなんて出来なくて、それどころか顔に飛びかかられて……」
それが幼心にトラウマになり、今でもカエルを見るだけでリザは震えてしまうようになったのだ。リザの何とも微笑ましい告白にロイがとうとうくくくっと声を漏らして笑い出す。それをリザは睨みつけた。
「笑い事じゃありません! 本当に怖かったんですから!!」
「ご、ごめん。ごめん……蛇を捌いて食べようって言い出すリザのカエル嫌いの理由がそんな可愛いことだと思ったら、つい……」
謝りながらもロイは笑いを止められないようで、口元を押さえて目に涙まで浮かべている。リザはぷうっと頬を膨らませた。
「私、これでも子供の頃真剣に悩んだんですよ? カエルにキスが出来ない私はお姫様を悪く言えないって」
「リザは真面目だなあ……あれは童話だろう?」
童話を真剣に考え受け止めるリザに、ロイは感心したように言う。
「童話でもです。だって私、例え約束があってもカエルが嫌だっていうお姫様の気持ち、分かってしまったんですもの。だから、悩んだんです。ああ、私、小さな生き物を愛せないとても嫌な人間なんだわって」
そんなものかな……と呟いたロイは、何かを考え込むようにあごに手を当てると。
「じゃあこう考えたらどうだい? お姫様はカエルとキスするのが嫌だったんじゃない。王子様が気に入らなかったからキスしなかったんだ。女性が好きでもない男性にキスをするのを嫌がるのは自然な話だろう?」
「じゃあお姫様は、王子様をちゃんと好きだったら相手がカエルでもキスをして上げたってことですか?」
「そ、そういうこと。それならカエルにキスしなかったお姫様は、約束を破ったのはもちろんいけない事だけど、女性としてなら正しい感情を持っていたと言えるだろう?」
だから、リザもそんなに難しく考えることなんて無いんだよ。そう笑いながら言うロイにリザはしばらく考え込んで。そして、ふと思いついたことを口にした。
「あの、私……」
「ん?」
「……もしもマスタングさんが魔法でカエルにされたら、そうしたらカエルとキス出来るかもしれません」
「え!? リ、リザ……それって……」
リザの言葉に一瞬呆然としたロイが、我に返る前に。
「私、カエルがマスタングさんだったなら……きっとキス出来たと思います。こんな風にっ」
「リ、リザ……!?」
素早く背伸びして少年の頬に唇を押しつける。ロイが顔を赤くして頬を押さえるのを、ふふふっと笑いながら見やって。
「カエルのお礼、です!」
野菜の入った籠をしっかりと抱えなおすと、リザは軽やかに雨上がりの庭を出て行ったのだった。







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by netzeth | 2014-09-30 00:05 | 日記 | Comments(0)

スタバ

お休みって終わるの早いですね。明日からまた仕事かーと思うと悲しい。

昨日はスタバに行ったのですが。地元にスタバの無い田舎者のうめこにはスタバの注文はかなり敷居が高かったです(笑) しかし、もう羞恥心などあまり無い年齢なのでww 店員さんに注文時詳しい説明を求めてしまった。これはどういった商品なのか、コーヒー成分入ってるのか(苦手)、サイズのトール?ってどれくらいなのかとか。いやあ、優しい店員さんで懇切丁寧にご説明してくださったよ。カップの実物を出してこれが右からショート、トール……みたいに説明してくれたww SML表示じゃない!!!(゚Д゚)という衝撃ww 無事にバニラクリームフラペチーノを注文出来た。コーヒーショップだからコーヒー成分入っているものしか置いてないと思ってたけど他にも抹茶フラペチーノとかあって、良かったです(^^)

海の向こうに台風が居るせいで海が荒れてます。そのせいか潮の香りがします。最近金木犀の香りもするので混ざって変な感じです。とにかく台風は近づいて来ないで欲しいです……。

スパーク新刊2冊目も届きました!完成本を見るとテンション上がります♪ まだ先の話なのにもう荷造りしちゃいましたww 
それから、自家通販ですが今週中くらいにはイベント直近ということで一時休止させて頂きます。よろしくお願いいたします。


拍手ありがとうございまーす!ポチポチありがたいですヽ(○´∀`)ノ
↓以下小話を書きましたのでよろしければどーぞ。変なマスタングを書きたかったお話。付き合って話を聞いてあげるハボックは優しい心の持ち主。







「なあ、ハボック。お前は人間の背中に翼が生えているのが見えたらどうする?」
「はあ。そりゃあとりあえず家に帰って寝ますねー」
「……なるほど。疲れて目の錯覚が起こっている。熱があって幻覚を見ている。酒に酔っている。そのいずれかの場合を想定しての寝るという解決法か。合理的だ」
「ご推察の通りッス」
「私も大体同じ意見だ。実は以前この発言をした男に私は、「眼鏡のレンズをドブにでも落としたのか?」 と真剣に尋ねたものだ。だが、そいつは私の話など少しも耳に入らない様子でラリアットを決めてやりたくなるようなムカつく面をしてこう答えた「バカだな~ロイ。俺を見損なうなよ? 例えそうなっても心の目で見るに決まってんだろ」と……」
「どこの格闘家ですかその人。や、大体誰の事か分かりますけど」
「そいつが言うには、とある女性に翼だけでなく天使の輪っかまで見えるそうだ。天使はいつも俺のそばにいる! と公言してはばからない男の頭を私はずっと心配してきた。こいつ、大丈夫かと。「とりあえず病院行け」と言ったこともあったな。……だが、私は間違っていた」
「……間違っていた?」
「ああそうだ。間違っていた。何故なら……天使は実在する」
「は?」
「最近私にもその天使の輪っかと翼が見える様になったんだ。彼女が現れると周囲の景色は鮮やかに色を変える。頭上からは白い光が降り注ぎ、その光を受けて頭の輪は輝きを増し、純白の翼は美しく羽ばたくのだ。私は悟った。そう、彼女こそ地上に舞い降りた天使なのだと!」
「……中佐?」
「どうして今まで気づかなかったんだろうな。おそらく、私が錬金術師だった故だろう。天使など宗教画の中にしか存在しない空想上の存在だとばかり思っていた……」
「あの、えっと」
「しかーし! 天使は居たのだ! 私のすぐそばに! 気高き存在である彼女は私を助け救ってくれる天より使わされし者! 昨日も無垢なるその瞳で私を可愛く見つめ「中佐、3枚目の上から12行目スペルミスです」との至言を!……ああ、私は葛藤している。汚れ無き者である彼女に私のような世俗にまみれた輩が触れて良いものかと! この前などうっかり手が触れてしまって私は叫んだ! 触れるな!(私は)汚らわしい! と」
「……それでこの前少尉がちょっと落ち込んでたんッスね。私、中佐に嫌われてるのかしらって」
「ああ、どうしたらいいんだ! 神より使わされし存在に触れることは禁忌だと言うのに私は天使に恋い焦がれている!」
「告白したら良いんじゃないッスかね。俺が見る限り脈ありですけど」
「バカを言うな! 天使だぞ!? 私のような卑小な存在が彼女を汚すことなどあってはならない!」 
「んじゃーまずはデートに誘ってみるとか」
「天使を!? しかし、問題がある! 天使は一体何を食べる?……おそらく純化したエネルギー体である彼女の主食は水、空気、光、と言ったところか……」
「少尉は植物ですか。いくら少尉でも光合成は無理だと思うッスけど」
「では、神に祝福されし食べ物か……?」
「や、少尉、この前食堂で分厚いリブステーキを嬉しそうに3人前食べてましたけど?」
「天使は肉など食べない! 百歩譲って桃かイチゴか砂糖菓子だ!」
「……どんだけ夢見てるんスか、少尉は明らかに肉食系ッスけど。まー食べるものは何でも良いから、とにかく今夜にでも一緒に夕食行ったら良いんじゃないッスかねー、あと、少尉は天使じゃな」
「いや! まだ問題がある!! 何と言って誘えばいい!? 相手は天使だ、普通の人間の男が誘うような文句では誘えないだろう……」
「や、ふつーに、「食事に行こう」でいいじゃないッスか。あと、少尉は天使じゃな」
「やはり……君と天上のヴァルハラへとお花摘みに行きたい……とかか? それとも、神の食物アンブロシアとネクタルを共に食そう……が良いだろうか?」
「……多分、どっちも意味が通じないと思います。少尉困惑しますよ。あと、少尉は天使じゃな」
「ああああ、私は一体どうしたら……!!」
「…………とりあえず食事に行く前に、病院行った方がいーんじゃないッスかね」

多分、彼の親友と一緒でその病に付ける薬は無い気がしたが。
恋の病の副作用で副官が天使に見えるようになってしまった上司に、ハボックは半眼でそう助言しておいたのだった。







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by netzeth | 2014-09-28 23:02 | 日記 | Comments(0)

週末

やっと週末!今週は一日短いはずなのに、妙に長かった気がします。よほど仕事が嫌だったようだ(笑) 

ワンドロならぬワンライというものがあると聞く。ワンドロの意味も最近知ったうめこですが、とても面白そうです(^^)だが、ツイッター上の企画とな。ツイッターやっていないとダメなのねー。

ここ3年で5キロくらい太ってしまったことが判明。これはヤバいなー。また3年かけてで良いから5キロ減らさないと……。何がいけないのか分析した所、お菓子を深夜に食べる、カロリー気にせず食べる、ストレスフリーの生活。この3つのような気がする。ストレスがあると食べられなくなる人間なので、太るのはノンストレスの証。つまり幸せじゃん!良いじゃん!……いや、良くないよ!! と葛藤している。でもこれ書きながらぱりんこカレー味バリボリ食べてる時点でいろいろ終わってる気がしないでもない。

 


拍手ありがとうございます(^^)
以下続きから拍手コメント(9/26分)のお返事です。




続き
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by netzeth | 2014-09-26 22:24 | 日記 | Comments(0)

暑かった

台風の影響なのでしょうか、今日は蒸し暑かったです(^_^;) それはまあいいとして。また台風が出ているようで憂鬱でございます。しかもコースがうちの地域直撃のやばいコース。もう来ないで欲しい……。昔は9月くらいまでと言われていた台風も普通に10月にも来ますよね。スパークに当たらなければ良いなあ。

背中のできものが炎症中なう。痛いよ……。手術しない限りできもの自体なくならないらしいが手術は怖いからしないよ。今回もイソジン塗って前向き?に治すよ!

スパーク新刊一冊目が自宅に届きました!やはり本の形になったのを見るとテンション上がります。でも読み直して表現ミスを見つけてしまいゴロゴロ転がっている。そっとスルーをお願いしたい。

そういや、この前買った素材集ではりきって本の表紙だけ作りました。表紙だけ。中身は?(笑)


拍手ありがとうございます(^^) ブログコメントを下さったお方様もありがとうございました!お返事を書きましたのでよろしければ該当記事をご覧ください。


  




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by netzeth | 2014-09-25 23:12 | 日記 | Comments(0)

今くらい

こんばんはー。
うめこ的に今くらいの気候がちょうど良いと思っています。裸足と半そでで過ごしていても大丈夫で湿気のないさっぱりした空気。これが理想です。これ以上寒くなると着こまないといけないので、無理だ。う~ん、一年中こうなら冷暖房代や洋服代が浮くのに。でも、帽子やマフラーとかブーツとか冬コートとかの冬装備は好きですけどね。ファッションとして可愛いから。アメ国は暑いイメージより寒いイメージがあるので、ロイアイは基本厚着かしら。そういや画集でピンクのダッフルを着ていたリザたんの絵がありましたっけ。あれは可愛かったv


スパーク新刊2冊目、「meruhen」もとらのあな様でお取扱いして頂けることになりました。ただ今予約が始まっております。よろしくお願いいたします。 
→ こちらから


拍手ありがとうございます(*^_^*)
以下続きから拍手コメント(9/23、9/24分)のお返事です。




続き
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by netzeth | 2014-09-24 23:01 | 日記 | Comments(0)

夢を見た

鋼と進撃がコラボっている漫画を読む夢を見た。へいちょーがアメ国の軍服着て大佐と深刻な顔で話しているのです。へいちょーの軍服姿は似合ってたので良かったですが。むしろうめこは逆が見たかったよ。立体機動で飛び回るロイがさww 

台風が来るとか聞いてブルーです。物凄い角度で曲がって日本来るのが解せない。雨、要注意ですね。

SS更新しました。題名からまんまグレイシアさんとの話ですね。ちょっと真面目に書いてみました。(真面目……??)

とっても素敵な素材集を手に入れてしまって興奮している。買って良かった! あとはこれを使いこなすセンスだけだな!!


拍手ありがとうございます(*^_^*) ぽちぽち見て癒されております♪





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by netzeth | 2014-09-23 18:21 | 日記 | Comments(0)

上司の親友の妻

アメストリス首都セントラルシティの中央駅は、人混みでごった返していた。その点で言えばイーストシティと似たようなものだったが、あちらに比べてここはどこか洗練されている。行き交う人々の優雅な物腰と最先端の服装、そして幾重に連なる駅のホームを覆うドーム上の屋根は高く、所々に瀟洒な装飾が施されていた。
内乱が終わってまだ幾ばくも経っていない東と比べる方が間違っているのかもしれないが、戦乱の影響の無いここはまるで別の国に居るようだ――という感想をリザ・ホークアイ少尉は抱いた。
「じゃあ、すまないが後は頼む」
「はい。お任せ下さい」
ホームを出て駅前で迎えの車に乗った上司の見送りをする。彼――ロイ・マスタング中佐はこれから中央司令部で緊急の会議である。慌ただしく車に乗り込んだロイに綺麗な敬礼を決めたリザは、自動車が視界から消えた所で踵を返し歩き出した。
彼女にはこれからロイに依頼されている仕事があった。いや、仕事――と言ってしまうとおおげさかもしれない。何しろこれは軍務には関係の無い彼の私事に関することだったので。
駅から歩いて数分の場所にある、緑豊かな公園まで足を運んだリザは時計を確認する。時間まで後5分。どうやらちょうど良い案配だったようだ。
平日の昼間だというのに、公園内は憩う人々で賑やかだった。平和なセントラルシティの現状を横目に、リザは指定された場所へと赴いた。公園内に設置された像の前。遠目でその場所発見し近付きながら、まだ待ち人の姿が無いことを把握した。
彼はまだやって来てはいないようだ。
他の待ち合わせをする人々に紛れて、リザはそこに立った。うら若い美しい乙女の軍服姿に、ある者は無遠慮に注目しある者はぎょっとした顔をする。確かに穏やかなこの場所には釣り合わない格好かもしれない。とリザはちらりと思った。
その時である。
「あの、すみません」
リザの方を見ていた者達の一人――自分よりも少し年上に見える女性が遠慮がちに話しかけてきた。茶髪とも金髪ともとれる髪色の女性だ。短いその髪がさらりと頬に揺れる、清潔感溢れる綺麗な人である。
「何でしょう」
言葉の足りなさ愛想のなさは生来のもの。これではまるで威圧しているようだ……もう少し柔らかい言い方もあるだろうに、と自分で自分に少し呆れながらリザは返事をした。
「マスタングさんの、部下の方ですか?」
しかし、リザのぶっきらぼうな対応にも少しも臆する様子もなく女性はごく自然体で尋ねてきた。柔らかい笑みがその口元を彩っている。
「そうです。失礼ですが……?」
「ああ、やっぱりそうでしたのね。マースったら、ただ部下の方が来るとしか教えてくれないんですもの」
マースという名前が出て、リザは驚く。では、彼女は自分の待ち人の関係者なのか。訝しげにリザが眉を寄せると、女性がそれに気づいて慌てたように頭を下げてきた。
「あ、申し遅れました。私、マース・ヒューズの家内です」
「少佐の……」
「はい」
初めてリザは女性の顔を正面から見る。……言われて見ればどこかで見たような気がしないでも無かった。それが少し前にヒューズより見せられた愛妻の写真だと気がつくまでに少し時間がかかった。
「そうですか。それでは、ヒューズ少佐は?」
本来リザがロイから頼まれたのは、ここでヒューズに会い彼がロイへと渡す物を受け取ること。本当ならばロイが直接赴くはずだったのだが、東を出る直前に中央での会議時間が変更になり、その余裕が無くなってしまったのだ。司令部を出る前にヒューズには連絡を取り、名代としてリザが出向くことは伝えておいたはずなのだが。
「マースは司令部から緊急の呼び出しがあって、ここに来られなくなってしまったんです。マスタングさんに連絡を入れようとしたんですけどもう、列車に乗ってしまった後だったみたいで。それで、私が代わりに」
「そうですか」
それで彼の愛妻がリザと同じように名代となって現れたという訳か。考えてみれば迂遠な話だとリザはおかしく思った。当人同士はおそらく中央司令部で顔を直接合わせることになるだろうに。
「それで……これがマースから預かって来た物なんですけど……」
彼女は抱えていた紙袋から綺麗に包装された細長い箱を取り出した。少し重みがありそうなそれをリザは素早く彼女から受け取った。思った通り、ずっしりと腕に負荷がかかる。
「確かに承りました。ご足労下さりありがとうございました」
丁重に頭を下げつつ、リザは淡々と礼を述べた。これでリザの任務は終了だ。実は腕の中のヒューズからの贈答品が少し気になったが、リザの役目はただこれを受け取ってロイに無事に渡すことだけだ。中をあれこれ詮索することは出来ない。
しかし。
「……中身が気になりますか?」
目の前に立つ女性は穏やかな笑みは絶やさずにそんなことを問うてきた。まるでリザの内心を見透かすように。もちろん本心を隠していいえと首を振るのは簡単だったが、何故かリザには出来なかった。澄んだ瞳をしたこの女性に、隠し事をするのはとても困難なことに思えたのだ。
「正直に申し上げますならば、少し」
「ふふふ……っ」
素直に白状すれば、女性は朗らかに笑う。何だかいろんなことをいっぺんに見透かされてしまった気分になって、リザは少し居心地が悪くなった。
「これは、マースからマスタングさんへの昇進祝い兼誕生日プレゼントのお酒だそうですよ」
「誕生日プレゼント……」
昇進祝いならともかく、誕生日プレゼントと聞き思わず笑みが零れた。大の大人の男同士がお誕生日プレゼントを未だにやりとりしているというのは、何とも微笑ましい話ではないか。
「ああ、やっと笑って下さったのね」
すると、そんな風に言われてリザは目を瞬いた。反射的に女性の顔を見ると彼女は確信めいた口調で告げてくる。
「……貴女がマスタングさんの副官さんでしょう?」
「ええ、はい」
頷いたリザに、彼女はますます笑みを深くして言った。
「ふふふ、マスタングさんがよく愚痴ってらしたのよ。自分の副官が笑ってくれない、どうしたらもっと笑顔を見せてくれるのかなって」
「え……っ」
ロイの名を出されて不意を突かれた気分に陥る。そんなリザを女性の優しい瞳が見つめていた。包容力に溢れた、眩しい笑みだと思った。
「私、ずっと気になっていたんです。マスタングさんがあんな顔で愚痴る副官さんって一体どんな方なのかしらって。ふふふ……こんなに可愛らしい人だったなんて、私の思った通りだったわ」
あんな顔とはどんな顔だろう。突っ込んで聞きたい衝動に駆られるがリザは我慢した。それをしては己の羞恥心が保たない気がしたのだ。
「あ、あの……」
何と言うべきか困って俯いてしまう。こういった女性相手では自分のペースが保てない。
「ごめんなさい。私ったら余計なことを。つい、お話の中でしか会えなかった方に直接お会い出来て嬉しくなってしまったの」
リザの反応に、彼女はすぐに自分の不躾さに気が付いたように謝ってきた。しかし、でもと付け加えてくる。
「出来ればマスタングさんにもっと笑ってあげて下さいね。そうしたら彼、きっとマースに酔って愚痴ったりしなくなると思うから」
――ロイは普段ヒューズに何を言っているのだろう。
後で上司を問いつめようと固く心に誓いながら、リザは苦笑いした。
「ご忠告痛み入ります……ミセス・ヒューズ」
名を呼ぼうとして、それを知らぬことに気づき女性にそう呼びかける。
「あ……」
そこで終始リザの上手に居た女性がぽっと顔を赤らめた。何か自分は間違ったことを言っただろうか。生真面目に自分の言葉を反芻して、すぐにリザはああ、と気づく。
彼女はそういえば新婚だった。ロイがヒューズと彼女との結婚式に出席してきたのはつい最近の話だ。伴侶の姓で呼ばれるにはまだ面はゆい時期なのだろう。
「……すみません、そんな風に呼ばれるのはまだ慣れなくて。よろしかったら名前で呼んで下さると嬉しいです。……ああ、まだ自己紹介もしていなかったですね」
そう言うと彼女はリザに手を差し出して、にっこり笑った。
「マース・ヒューズの妻の、グレイシア・ヒューズです」
「マスタング中佐の副官をしております。リザ・ホークアイです」
そしてリザもその手を握り返し、挨拶を交わしたのだった。


リザとグレイシアの初めての出会いはそんなささいなものだった。





「リザおねーさん!」
小さな女の子の声がして、すぐにどーんと後ろ足に衝撃を受けた。鍛えているため転びはしないが驚いて振り返ると、見知った少女が自分に抱きついていた。
「こんにちは、エリシアちゃん」
「こんにちはー!」
綺麗な薄い色の髪を二つしばりにした元気な少女は、リザの挨拶ににぱっと笑った。
「これ、エリシア!」
そこでようやく少女の母親の声がした。駅の人混みの向こうから彼女は駆け寄ってくる。おそらく人波に我が子を見失ってしまったのだろう。エリシアを見つけた彼女――グレイシアはほっと安堵の表情を浮かべていた。
「こんにちは。お久しぶりですね、グレイシアさん」
「ええ本当に、こんにちはリザさん。お会い出来て嬉しいわ。……エリシア、お姉さんが困っておいでよ離れなさい」
親しげな笑みを浮かべた彼女は、次いで母親の顔で娘を叱っている。エリシアは渋々と言った様子で抱きついていたリザの脚を離した。
「いい子ね、エリシア」
「本当に。もうすっかりお姉さんなのね」
誉められたと解釈した幼児は嬉しそうに胸を張ると、大きな声で元気良く言った。
「あのね、あのね! エリシア、パパのお使いに来たのよ!」
「そう、偉いのね」
ブルーの瞳がキラキラと輝いてリザを見上げている。リザは腰を屈めると視線を合わせてやった。
「パパから、ロイおじたんに誕生日のプレゼントなんだよ!」
エリシアはまるで自分が贈るかのような誇らしげな顔をする。それにグレイシアが苦笑していた。
「……毎年マスタングさんにもういいから贈るな、って言われているのにあの人、懲りないから」
「そういう大佐も文句を言いつつ、中佐へのプレゼントをいつもまんざらでも無い様子で選んでいますから、お互い様ですよ」
指摘すれば「あいつが先に贈るからお返しをしなければならないんだ」としかめっ面をしてロイは言う。
女達はそんな素直じゃない、しかし仲良しの男達の仲を顔を見合わせて笑った。それで結局自分達は忙しく直接渡すことが出来なくて、こうやって名代に立てられたリザ達がやりとりするのも、もう何度目だろうか。本当ならば互いの家に郵送すれば良い話なのだが、男達は変にこだわりがあって直接の手渡しを毎年行っているのだ。
「もう、ほんとうにどうしようも無い人達ですね。それにしてもあの二人、いつまで経っても仲良しですよね」
「ええ、私もそう思います」
グレイシアの言葉にリザは頷いた。ヒューズはヒューズでいつものあの調子で変わらずロイに接し続けているし、ロイはロイでうるさそうにしながらも、彼の相手をしてやっている。
「ふふ、いつかマースが冗談で言ったことがあったんですよ。もしもマスタングさんが女性だったら、彼と結婚していたかもしれないと」
「まあ……」
心底おかしそうに言うグレイシアの言葉に、リザは驚いた。あの愛妻家で誰よりもグレイシアを愛していると言って憚らない男が、冗談でもそんなことを言うのが意外だったのだ。
「それは……」
想像して見ると何だか変な気分になって、言葉に困る。実はリザは以前に逆を考えたことがあるのだ。彼女にならば、とリザは告白する。
「私も、中佐がもしも女性だったのならば、大佐は中佐をお選びになったと思います」
それほどにロイとヒューズは仲が良い。思わずそこに嫉妬めいた感情を抱いてしまってリザは己を恥じていた。他愛ないもしもの話で何を悋気を出しているのだろう。しかも、自分はただの部下だ。嫉妬をするという話ならば、妻のグレイシアの方だろうに。
「それは偶然ですね。実はマースは以前マスタングさんに俺が女だったらどうした? と尋ねたことがあったんです。そうしたら、マスタングさん何て言ったと思います?」
リザの言葉にグレイシアはそうそう、とまた意外な話をしてくれた。またも驚くべき話にリザは言葉に詰まる。
「え……それは」
親友には素直じゃないロイのことだ、きっとヒューズを邪険にしたに違いない。「冗談じゃない、お断りだと」と。だがグレイシアが言ったのは。
「マスタングさんはね、大真面目に言ったんです。「お前が例え女でも多分、親友だ。俺が女として惚れるのはリザだけだ」って」
「な……っ」
思わぬ上司の告白めいた話を聞いてしまって、リザは大きく動揺した。見ればグレイシアは悪戯っぽく笑っている。
「おからかいに……ならないで下さい」
「からかってなんていません。私はマスタングさんのお話をそのままお伝えしただけですもの」
頬を赤らめてしまったリザに、グレイシアは澄ました顔で言った。
「ねえ、リザさん?」
「はい……」
「いつになったら私にミセス・マスタングと呼ばせて下さるの?」
「下さるのーー?」
グレイシアの口まねをしたエリシアがきゃっきゃと笑っている。よく似た面差しのヒューズ家の女性陣に見つめられて、リザは困ってしまった。これは、最初に出会った時、グレイシアをミセス・ヒューズと呼んでしまった意趣返しなのだろうか。
「そ、それは……」
「私、主人と一緒に楽しみにしているのよ?」
「エリシアもエリシアも!!」
にこやかに笑うこの女性が案外おちゃめで食えない女性であることを、今、リザは実感する。さすが、あのヒューズの妻をやっているだけのことはある。夫婦は似ると言うけれど――。
「…………前向きに善処したいと思います」
何とか絞り出したリザの答えを聞き、上司の親友の妻である女性は娘と共に声を上げて笑ったのだった。



END
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by netzeth | 2014-09-23 18:02 | Comments(0)

無事に

こんばんはー。無事に二冊目の原稿入稿いたしました。多分出るだろうということで、オフライン情報に新刊詳細を更新いたしました。
また、スパークのチケットが届いていたのでスペースNOも記載しました。今回はまた西の上です。最近コミケでもシティでも西が多い気がします。

明日は祝日ということでのんびりしてます。ずっと一日行ったらお休みっていうペースでお仕事したいwwそれならきっと健康で長生き出来ると思うんだ。


拍手ありがとうございます!
以下続きから拍手コメント(9/22分)のお返事です。





続き
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by netzeth | 2014-09-23 00:05 | 日記 | Comments(0)

meruhen サンプル

◆風呂×恋人×ラブラブ◆


最近のリザ・ホークアイの悩みは、恋人が自分を好き過ぎること。
そんな悩みを打ち明ければ、彼氏と別れたばかりの親友からはあんた喧嘩売ってるの!? と眉をつり上げられ怒鳴られる始末。ひどい、自分は真剣に真剣に思い悩んでいるのだ。
「喧嘩なんて売っていないわ、聞いてレベッカ。この前ね、私の部屋の狭いシングルベッドで寝ていたらね、その、ね、……落ちてしまったのよ」
「何が?」
「その、か、彼がよ!」
「……そこで照れんじゃないわよ、こっちが恥ずかしいじゃない」
しかし、リザは半眼で突っ込むレベッカの視線など気にも止めずに。
「それでね……彼ったら……」
困っている詳細を彼女に話して聞かせた。



「見てくれ、リザ!」
ある日帰宅すると、恋人が自宅に居た。それはいい。既に合い鍵も渡しているし、何時でも来て良いと告げてある。だが、問題はそこでは無かった。
「どうだい!?」
得意満面の顔で上官兼恋人が指し示したのは、己の寝室の中だった。何故か扉が無く、心なしか入り口が広がっているそこ。寝室の真ん中には見慣れないものがどでんと鎮座している。
「お、大きい……」
それはドデカいサイズのベッドであった。
今までリザが使っていたシングルベッドに比べれば二倍以上ありそうなそのサイズ。おそらく、これがキングサイズのベッドという奴に違いない。リザはそんなサイズのベッドなど童話の絵本の中でしか見たことが無かった。天蓋付きのベッドに横たわっているのは、お姫様。リザにとってこのような大きなサイズのベッドとはそういうお伽噺の中に登場するような、およそ現実感にかける存在であった。
「あの、これどうしたんですか?」
「もちろん、買って来たんだ」
当たり前だが、勝手に自分のシングルベッドが変身する訳がない。
「本当は錬成しようと思ったんだが、さすがにシングルサイズを二倍以上に引き延ばして大きくすれば素材の強度が失われてしまうからね。質量保存の法則には逆らえん。材料を足せば可能だったが、それをするくらいならば買ってしまった方が手っ取り早いと思ってな」
「はあ……」
錬金術関連のことを詳しく話されても、リザには理解出来ない。だから生返事をしつつも、彼女はもっと別の部分が気になっていた。
「あの、これ、買ってきたんですか?」
「そうだが? いやあ、部屋に入らずに困ったよ。そこは今度こそ私の錬金術で入り口を広げてなんとかしたがね」
リザはざっとその巨大なベッドを見分してみた。
そのベッドはただデカいだけではなく、無駄に意匠が煌びやかだった。そう、本当に童話の中のお姫様が使っているかのような、そんな豪奢なベッドだ。ヘッドボードは真っ白なシルクが張られ、中心にはバラの装飾。周りは金縁で囲われている。フットボードにも同じような装飾があり、フリフリのベッドカバーに覆われて見えないが、おそらくサイドフレームも同様だと思われた。
概算することしばし。
リザはこのベッドのだいたいの値段(推定)を叩き出して、くらっと眩暈がした。
(一体私のお給料の何ヶ月分……?)
計算すると空しくなるので、それはしなかったが。代わりに沸々と怒りが込み上げてくる。質素倹約が座右の銘である自分に、こんなベッドで眠れというのか。
……それに、このベッドでは。
「こんなの要りません。私には必要ありません!」
強く言ってしまってから、しまったと思ったが遅かった。リザの怒りが理解出来ないのか、ロイは戸惑った顔をしている。
「え……何故だ、リザ? これで、思う存分君の部屋で愛し合えると言うのに、何が不満なんだ? 君はベッドが小さいということをやたら気にしていたようだから……。それに、君にいつもいつも私の部屋に来て貰うのは申し訳ないと思ってだな、こうやって用意したというのに」
ロイの気持ちは分かっていた。彼はリザを心の底から愛してくれている。好かれすぎて困るくらいだ。その気持ちは十分に嬉しい。だが、問題はそこではないのだ。そこにロイはまったく気づいていない。
それが歯痒くて、彼は悪くないと分かっているのに、リザの口調はついついきついものになってしまう。
「とにかく、私には必要ありません、引き取って下さい!」
「……もしかして、君……ベッド……嫌なのか?」
「嫌です! 私は意地でも使いませんからね!」
「……分かった、ベッドは使わない」
売り言葉に買い言葉。
この時のリザは頭に血が上っていて、ちょっとやりとりに言葉が足りてないだとか、やけにロイが素直に引き下がったとか、そういうこと全般に思いが至っていなかった。
――相手はあのロイ・マスタングだということを、リザはもう少し考えてみるべきだったのだ。彼はリザの斜め上どころか、理解の川を軽く渡って笑顔で向こう岸から手を振ってくる男だ。
しかし。
「とにかく! 私のベッドを返して下さいっ」
「え……っ、あの小さい奴だろ?」
「そうです!」
「あれなら、業者に引き取って貰って処分して貰ったが……?」
「……もう、もう! 貴方なんて知りません!!」
またしてもリザの神経を逆撫でするようなことを平気で言うロイに、リザの怒りは爆発して。この時の些細なやりとりなど記憶の彼方に追いやられてしまったのだ。



「というわけでね、私今、ソファーで寝ているのよ。私のシングルベッドが戻ってくるまでね」
「なんで? そのキングサイズのベッド、まだあるんでしょ? それで寝なさいよ」
「嫌よ、あんな私のお給料の何ヶ月分ものベッド。落ち着いて寝られないわ」
寝具まで新しくて、ベッドカバーもシーツも枕もフリフリのふかふかのおまけにピンク色。メルヘンチックこの上ない。あれで安眠しろという方が無理だ。軍人であるリザにとっては、まだ地面に寝袋で寝ろと言われる方がマシである。
「あの人にも私はあれでは寝ないと宣言してあるから、あれは今、私の洋服置き場になっているわ」
「もったいない話ねー。意地張ることないのにさ。彼氏からキングサイズのベッドをプレゼントって、このベッドの上で愛し合いましょうって意思表示でしょ。いいことじゃない。御仁もはりきっているようだし」
「……だから、好かれ過ぎて困るって話になるんじゃないの」
リザだって承知している。ロイがあのベッドを自分との行為のためにわざわざ買ったのだということを。
だが、部屋主に相談もなくあんな高額な買い物をした挙げ句に勝手に部屋に設置したのは、どう考えても許せない。
(それにあれじゃあ……)
「……あんたやっぱりあたしに喧嘩売ってんでしょ。恋人に好かれすぎて困るなんて、そんな贅沢な悩み聞くのも馬鹿らしいわ。もうちょっと面白い相談してきたらどうなのよ? 御仁が男と浮気したとか実はロリコン趣味だったとか、SM趣味があって困るとか」
寂しい独り身の親友はやさぐれた表情で言った。
しかし半分目が笑っているので、完全に人の色恋沙汰を娯楽の一つとして面白がろうとしているのが見え見えである。
「ちょっと。私は真剣なのよ、レベッカ。面白い、面白くないの問題じゃないわ」
「そういう問題よ。恋愛は人生最大の暇潰し、楽しいか楽しくないかでしょ。特にあんたと御仁の話はエンターテイメント性に優れてそうで期待しているのにさ」
「……こっちは貴女を楽しませるために悩んでいるんじゃないんだけど」
憮然と抗議するが。何を言おうがはいはい彼氏持ちの余裕よね、とか、どうせ恋人の居ない女の僻みですよ、とか。レベッカは真面目に取り合ってくれない。
業を煮やして、リザは悩みの続きを打ち明けることにした。これを聞けば、さすがに彼女も同情して真剣に相談に乗ってくれると思ったのだ。
「それでね。とにかく、あのキングサイズのベッドが家に来てからだと思うんだけど……」



ロイの部屋のバスルームは寛ぐには快適な場所だった。彼はリザよりも数段グレードが上のフラットに住んでいるので、部屋数もあるし敷地面積も広いのだ。当然バス、キッチン、トイレと言った場所も広く機能的に作られている。トイレはともかく、キッチンなどはロイには宝の持ち腐れであったが。
その中でも特にバスルームは広く、また最新の設備が整っていた。大きなバスタブに出の良いシャワー、もちろん脱衣所が分かれてあり、ピカピカの洗面台も備え付けられている。シャワーカーテンで仕切っただけのリザの部屋とは大違いだった。
「いい気持ち……」
ロイの部屋にお泊まりに来ると、リザは必ずこの大きなバスタブに湯を張っての入浴を楽しんでいた。
普段質素倹約を人生標語にしているリザのささやかな贅沢タイム。ロイは良い匂いのする入浴剤やあわあわになるシャワージェルなどを、リザのために用意しておいてくれる。これくらいならば、とリザは彼の好意に甘えてそれらを拝借していた。
「すごい……お肌がツルツルしているわ……」
白い濁り湯となる入浴剤はラベンダーの香り。美肌効果が謳い文句らしく、湯に浸かっている肌の手触りは滑らかだ。鼻孔を擽っていく甘い香りは、リザの精神をリラックスさせてくれる。
(一体、この入浴剤って幾らなのかしら?)
思わずそんな現実的な考えが首を擡げて、リザはいけないいけないと首を振った。
(……キングサイズベッドの時だってそれで大佐と揉めてしまったんですもの……あれは流石に勘弁出来なかったけれど、入浴剤の値段くらいでうるさく言ったら、いい加減あの人に愛想を尽かされてしまうわね)
キングサイズベッド事件以降しばらく、リザは怒り心頭でロイとの恋人同士の逢瀬も拒否してきた。
それでロイは深く反省したらしく、リザが使っていたシングルベッドと同じものをちゃんと戻すと約束してくれた。(もちろんお金はなるべくかけずにとも釘を刺した)それで、二人の間のわだかまりもようやく解けて、本日のお泊まりとなった訳である。
(ずっとおあづけだったから、今夜はきっと……)
激しい夜になるに違いない。
そんなはしたない想像をしてしまって、頬と身体が熱くなるのをリザは押さえられなかった。熱めの湯の温度と相まってのぼせてしまいそうだ。その証拠に少し、頭がくらくらしてきてしまった。そんな己に苦笑しつつ、リザはバスタブを出ると冷水のシャワーを浴び、身体を洗おうとスポンジを手に取った。
その時である。
「……リザ? 入るぞー?」
何とも呑気な声と共に、家主がバスルームに侵入してきた。



◆椅子×処女×忠義心◆


男というのはどうしようもない生き物である。身体のとある部分に、ある種の欲望が溜まると我慢が出来なくなってくる。そういう時は自分で処理するか誰かに頼むかの二択になる訳だが、出来れば前者は選びたくない。行う度に男のプライドがすり減っていくし、虚しさがハンパないからだ。では、必然的に後者となる訳だが。
そこで、問題となるのが恋人の有無である。恋人さえ居れば何の問題もなく溜まったものは吐き出せるが、居ない場合は。お金を払ってプロに頼むか、または恋人ではないがお世話をしてくれる女性を頼るしかない。
大抵の男はお金を払うという選択肢しか無いわけだが、しかし、恋人でなくとも相手をしてくれる女性が数多居るという羨ましい男もこの世には居たりするのだ。
ロイ・マスタング大佐もそんな男の一人である。面倒なので特定の恋人を持った試しはないが、寝てくれる女性の知り合いはごまんと居る。
夜の街に出ればロイさんロイさんと女性達が寄ってきて、夜を共にしたいと向こうから申し出てくれるのだ。
だが。
「……もう我慢できん!!」
司令部に軟禁状態では、そんな男の欲望も発散しようがない。
握っていたペンを放り投げると、ロイはうーうーとまるで狼のような低い唸り声を発した。それに冷たい視線を投げかけたのは彼の有能な副官だ。
「大佐。お仕事中はお静かに」
涼やかな容貌にクールな態度。東方司令部絶対零度の鷹の目、クールビューティーと名高いリザ・ホークアイは淡々とした調子で告げてくる。
「そちらの書類を処理していただけましたならば、約二十分ほどの休息が可能となります。そうしたらお茶をお持ちしますから、何とかそれまで我慢して下さいますよう」
「ダメだ! もう限界なんだ、私は!!」
傍らの書類タワーを凪払うように腕を振り、ロイは絶叫する。書類がパラパラと崩れ落ちて宙を舞った。それをやはり冷静に拾い上げる副官を、ロイは苛立たしげに睨みつけた。
「もう何日家に帰って無いと思っているんだ! 二週間だぞ、二週間! ずっと司令部の狭い臭い仮眠室で寝泊まりして、シャワーも食事もずっと司令部! しかもそれ以外の時間はひたすら書類書類書類! 普通の人間なら気がおかしくなっている所だぞ!?」
「では大佐は並の人間ではないのですね、さすが国家錬金術師であらせられます。さすがです。きゃあ、素敵」
「そんな見え透いたおだてに乗るかー!」
ほとんど棒読みで賞賛の言葉を口にするリザに、せめて作り笑顔くらいしろ! とロイは突っ込んだ。
「とにかく私はもう、限界なんだ! いいか!? 人間には三大欲求というものがある。食欲、睡眠欲、あと一つ何だか分かるか?」
「性欲ですね」
「そう! その通りだ。後の二つは司令部でも何とかなる。だがな、性欲だけはどうにもならんのだ。……という訳で私は今夜こそ帰宅する」
「何がという訳ですか。まだまだ書類は山積みなんです。帰らせる訳にはいきませんよ。性欲がどうにもならないというのならば、今夜はハボック少尉からハードポルノ雑誌を徴収して参りますからそれで」
熱く語るロイを冷たくリザは突き放す。副官のあまりの無情な言いように、ロイはふるふると震えた。
「私に独り寂しく処理をしろと……? このロイ・マスタングともあろう者が自慰など出来るか。夜の街に出れば私を待つ女性達がそれこそわらわらと寄って来ると言うのに! とにかく、今夜こそ私は司令部を出るからな!」
そのつもりで! とロイの叫びを聞いてリザの眉が寄せられた。非常に不愉快だという顔をした彼女は、では、とあくまでも無表情に代案を提案してくる。
「自慰でなく司令部で性欲を処理出来ればよろしいのですよね?」
「その通りだ。ちなみに男相手は却下だからな、私にはそっちの趣味はない。……君は軍内に居る女性に手当たり次第手を出せばいいとでも言うのかね?」
それこそ私が帰宅するよりも面倒な事態になるだろう、と指摘すればリザは首を振った。
「そんな必要はありません。不肖、私が何とかいたしますから」
「は?」
ロイの顎ががくんっと落ちた。




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by netzeth | 2014-09-22 23:29 | Comments(0)

オワタ―\(^o^)/

ふふふ、今週は日曜日が終わっても悲しくないです。火曜日休みだから頑張れます(^^) それしてにも涼しくなりましたよね、昨日から長袖を引っぱり出してきて着てます。もう下にヒートテック着てるよ……。部屋でじっとパソコンに向かってると寒いんだよー。

スパーク新刊2冊目、原稿終わりました! まだ入稿はしていないんですけど、うちのパソコンのハードディスクとバックアップしたのが同時に飛ばない限り多分大丈夫かと。えーと76ページで内容はロイアイがいろんな場所でいたしているエロコメディ?詰め合わせ本です。

ようやく銀匙の最新刊を読みました。大学に受かるまでは手を出したらアキちゃんのパパに殺されると血の涙を流す八軒君をロイに置き換えて読むのがマイ・ブームww 

鋼アニメ一期のブルーレイリマスター版が欲しいです。前、すごく変わったと脚本家の方が言っておられたのでどんなもんか確かめてみたい。でももう一人の私が囁く。お前のDVDレコーダー壊れるてるじゃん。ブルーレイ見れないじゃね?と。その通りだよ! ちくそー。いいもん、もしもブルーレイぽちっちゃったら買い替えてやるー。というか、何か特典はつかないのかなー。牛先生の書下ろし的なのが。無理かなー(^_^;)


拍手ありがとうございます!ぽちぽちに元気を貰う日々でです(^^)





 
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by netzeth | 2014-09-21 18:22 | 日記 | Comments(0)