うめ屋


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すっきり

風邪もすっかり良くなりまして、すっきり爽快。ついでに部屋も片付けました。冬物も整理して、セーターとか洗いました。もう昼間は暑いくらいですねー。UV対策もしなければならないかあ、面倒くさいなー。

スマフォでぽと入力したら、ポルナレフが1番に出て来る辺りもうダメな気がします。そういえば、ガラケー終了というニュースを見た気がするのですが。マジっすか。スマフォでネットをガラケーで電話とメールと使い分けてるうめこからすると、ガーン( ;゚Д゚) スマフォで電話とかガラケー愛用者からすると話づらそうで嫌だな。面倒だな。って感じです。ま、慣れればいいんでしょうけども。

もうスパコミ来週ですね! 今日はペーパーSS書いたり値札作ったり搬入用の荷造りしたりしてました。天気予報によると日曜日は今の所お天気いいみたいですね(^^)気温も高くて、薄着で行った方がよさげ? 


拍手ありがとうございます♪



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by netzeth | 2015-04-26 21:21 | 日記 | Comments(0)

妙な特技

 リザには妙な特技がある。


「マスタングさんっ、早く早く!」
 跳ねるように駆けて行くリザを追って、ロイは歩くスピードを上げた。春の日差しが降り注ぐようになった街はそこかしこに花が咲き乱れ、すっかり冬の冷たさが一掃されている。頬を優しく撫でていくのは暖かな風。悪戯な春風がはしゃぐ少女のスカートを捲り上げていきはしないかと、ロイは思わず心配した。
「もうっ、何をしているんですか、マスタングさん!」
 急かしながら頬を膨らませている仕草はまだ子供そのもの。しかし、しなやかに伸びた細い手足や丸みを帯びてきた身体は、大人の女性の片鱗を覗かせる。
(すっかり女の子っぽっくなったなあ……)
 なんて思わず父親みたいな感慨を抱いてしまって、ロイは苦笑した。自分とリザは四つしか違わないというのに。もっとも、この年頃の四歳差というのは大きいのだが。
 出会った頃のリザはまだまだ子供で、ロイは小さな妹が出来たようで嬉しかったものだ――。
「マスタングさん?」
「わっ!」
 突然間近で声が聞こえて、思考に沈んでいたロイは驚いてしまった。眼前にはリザの可愛らしい顔がある。息がかかってしまいそうな距離にあるその顔は少しお怒り気味だ。
「マスタングさんっ、こんな大事な時にぼやぼやしないで下さい!」
「う、ごめんよ、リザ……」
 ぷりぷり怒る顔も可愛いなあ……とリザが聞けばますますヘソを曲げそうなことを考えながら、ロイは謝った。
「本当ですっ、早く行かないと良いものが無くなってしまうんです! そのためにこんなに早起きして家を出て来たんですから!」
「わ、分かったよ、急ごうか……」
 言うなりリザはロイの手を引いて歩き出す。少女の勢いに若干気圧されながら、ロイは大人しく従った。


 
 リザは春が好きである。どうして? と理由を聞いたらば、気候が良いから光熱費がかからなくなるし、時期的に美味しく食べられる草花が芽生えるし、何より街で春のフェスタがあるから! と元気よく答えて貰った。彼女はこの春のフェスタが秋の収穫祭と並んで大好きなのだ。
 理由はシンプルである。
 曰く。
「美味しい物がタダで食べられるからです!」
 とのことだ。
 まったくリザらしい、とロイは納得した。常日頃からホークアイ家の真っ赤な家計を切り盛りしているリザは、タダという言葉に敏感だ。可愛らしい少女なのだからもう少し、控えめに……というロイの願いむなしく何の恥じらいも躊躇もなく彼女は、春のフェスタにてタダ飯を満喫している。
「ファスタングふぁんっ! ふぁっち、ふぁっちにも行って、ふぃまひょう!」
「分かったよ、リザ。だから、しゃべる時はお口の物を飲み込んでからにしような」
 ピリ辛のタレがたっぷり付いた鳥串と春の山菜の揚げ物を両手に持って、ニコニコした顔の少女をロイは諫めた。一回一個まで。という決まりに則り、リザは何回も並んではタダ飯をゲットしている。ロイがそっと止めなかったらきっと無限ループだったろう。 
「あ、見て下さい! バザーをやっているみたいですっ」
「そうか。じゃあ、行ってみようか」
 女性の買い物にお供するのは、男性の義務。幼い頃から女の子の扱いをたたき込まれて来たロイは特に嫌がることもなく、ごく自然にリザに付き合ってやる。それを差し引いてもロイにとってリザは可愛い妹的な存在だ。彼女が嬉しそうだと、ロイも幸せな気分になる。
「わぁ……いっぱい古着があります、あっ、すごく安いですっ」
「本当だね。ちょうどいい、何か春の服を買ったらどうだい? 俺が買ってあげるよ」
 瞳をキラキラさせて店を物色しているリザ。普段は母の形見だというぶかぶかの服を着ていたり、繕い過ぎて布がボロボロの粗末な服を着ている彼女である。もう少し女の子らしくお洒落してみたらいいと、ロイは申し出てみた。
 少しの遠慮とそれ以上のもったいない精神から、いつもロイのプレゼント的なものにはあまり良い顔をしないリザも、この時ばかりは心が揺れ動いたらしい。
「本当ですか?」
 嬉しそうにぱっと顔を輝かせて、はにかむ。それから、もじもじと言いにくそうに瞳を伏せながら頬を赤らめた。
(可愛いなあ……) 
 と、ロイはすっかりお兄ちゃんの気分である。妹におねだりをされるというのはこういう気分なのだろうか。
「……それじゃあ……お父さんの、シャツ。買って貰っていいですか?」
「師匠の?」
「はい。……襟とか袖のところとか、お出かけ用のが、もうずいぶんボロボロだから……」
 てっきり自分の服をねだるのだとばかり思っていたロイは拍子抜けした。女の子にプレゼントを上げるという男の妙な高揚感が萎んでいく。しかし、これもリザらしいなとすぐに思い直した。
 自分よりも、父親。多少貧乏性だが、思いやりのあるこの心優しい少女らしい。
「いいよ、もちろん」
「ありがとう! マスタングさんっ」
 輝くような笑顔を見せて、早速リザは父親のためのシャツを探し始める。そして、何枚か候補を見繕うと慎重に見比べて検討し出した。自分の物を買うときは一番安い物を迷うことなく選ぶリザだが、父親の物となるとそうもいかないようだ。う~ん、と悩む様子の彼女にロイは声をかけてやる。
「どうしたの? 師匠の好みが分からないとか?」
「あ、そうじゃないんです。この前お父さんにお洋服のこと聞いたら「万物は全ていつか無に還る、見た目にこだわって何になる」って言ってましたから」
「……師匠らしいね」
 その無駄に悟りを開いてるあたりが。
「あ、「だから一番安価なものでいい」とも言ってました」
 似たもの親子……と思ったが、それは口に出さないでおいた。
「そうではなくて。お父さんのサイズが分からなくて……どのくらいだったかな……」
 なんだ、とロイは納得した。
「そうか。う~ん、師匠は確か身長は俺と同じくらいだったかな?」
 そう言って、ロイは己の頭に手をかざしてみた。成長期の彼はここ最近ずいぶんと背が伸びた。今まで見上げていた大人の師匠と目線が同じくらいになったなと感じていたのだ。
「後は体型だけど……」
 と、ロイはホークアイ師匠の姿を思い浮かべる。あのいつも病的な暗い笑みを口元に張り付かせている師匠。身体も当然、細身で、健康的とはいえない。
(俺と同じくらいの身長でも、肩とか胸とか全然厚みがないよなあ……)
「あ、そっか。こうしましょう」
「へ?」
 ロイが自分と師匠を比べて、リザに服サイズのアドバイスをしようとした時だ。リザはぽんと手を叩くと、グッドアイディアです! と言いながらロイに向き直った。
 そして。
 何が? とロイが問う間もなく。彼女は。ぎゅうっとロイに抱きついたのである。瞬間、女の子特有の身体の柔らかさとふわんと香った石鹸のいい匂いにロイは動揺した。
 腹の上、リザが顔を埋めている己の胸よりやや下辺りに、控えめな膨らみが当たっている。それが何か、と認識するのは非常にロイにとって危険だった。脳裏で言語化してしまったら、それこそまずい、いろいろと。
「な、何をっ……リザ」
 女の子らしくなった……という感想を、その身で実感する羽目になったロイは、動揺を押し隠して少女に問いかけた。こんな人前で抱きつくなんて案外積極で大胆だ、どこで覚えてきたんだこんなことお兄さんは許しませんよ、と言いたいことは山ほどあったが、我慢する。
「う~ん……マスタングさんより、ちょっと小さめですね」
 だが。
 少女は、ロイの慌てっぷりなどまるで気にせずにそんなことをぶつぶつ呟きながら一人で納得している。胸の上でうんうんと頷くのはやめて貰いたかった、ふわんふわんの短い金髪が顎の下を擽ってこそばゆくて、妙な気分になってしまう。
「リ、リザ……?」
「あ、マスタングさん。ご協力、ありがとうございました」
 そう言ってリザはあっさりとロイから離れてしまう。多少名残惜しく感じてしまいながらも、ロイが協力……? と困惑した表情を見せると。
「はい。私、お父さんにぎゅっとした時の感覚を覚えていますから。だから、マスタングさんをぎゅっとして比べたらお父さんのサイズ分かるかなって」
「あ…なるほど……」
 どうやら今のぎゅ、は特に愛情表現でも何でもなくただの身体測定だったらしい。
(何だ。そうか、そうだよな……って、何で俺、ちょっと残念そうなんだ?)
 なんてロイが葛藤しているのをよそにリザはさっさと父親のシャツを選んで、店主に声をかけている。
「これ、まけて下さいっ」
 それから元気はつらつと値切り始めた。その間にも思春期真っ盛りな少年ロイの思考は高速回転していた。
(待て待て。その前になんで、俺、リザに抱きつかれて動揺してんの? リザだぞ? 俺の可愛い妹だぞ? 妹……だよな?)
「まだまだ高いです! 後もう一声!」
(でも、すっかり女の子らしくなったりして……いい匂い…がしたなあ……お店のお姉さんみたいな……ああ、ダメだ、リザに邪なこと考えちゃダメだっ)
「ほら、端数は思い切って切り捨てましょう!!」 
(違う違う…! これは、そんなんじゃなくて、妹の成長に戸惑う……そうっ! そうだ。これはお兄ちゃん的なモヤモヤだ!)  
 そして。とうとう1センズ単位まで値切り始めたリザの声を聞きながらも、ロイは果てしなくぐるぐると惑うのであった。


 
(なんてこと、あったよなあ……) 
 うららかな春の東方司令部司令官執務室にて。ちょっと昔の思い出に浸っていたロイ・マスタング中佐は、目の前に立つ新任の部下に目をやった。
「えーと、俺、いや違った、自分は、士官学校ではどべでしたが、中佐の部下に配属されまして、光栄の至りでありまして、これからも、自分の職務に邁進していき、過去の汚名を挽回したいと、のぞむべく、日々努力していく、しょぼっ」
 あ、噛んだ。
 そうだった、とロイはようやく現実に還ってきた。自分は、緊張し過ぎて長い上に所々噛みまくり言葉使いがちょっと変になっているこの男の挨拶が退屈になってきて、思わず現実逃避していたのだ。
「あ~……ハボック准尉。そんなに緊張することはない、もう少しリラックスしたまえ。私は何も君をとって食いはしない。……それから、汚名は返上するものだ。挽回してどうする」
「へ? あ、いいんッスか? じゃあ、遠慮なく」
 と、ポケットから躊躇無くタバコを取り出した男がそれを口にくわえようとした所で、隣でこいつ大丈夫かと呆れた顔で眺めていた彼の同僚がその手をはたいた。
「バカ野郎。そこまでリラックスするな。中佐は、お前の緊張をほぐして下さっただけだ」
 腹の出た貫禄のある男――ブレダ准尉が、ロイの言いたいことをそっくりそのまま言ってくれたので。幸いロイは怒鳴らずに済んだ。こちらは士官学校主席だと聞く。使えそうな男だとロイは値踏みする視線を彼に投げた。
「まあ、いい。……諸君らはこれから私の部下として働いて貰う。活躍を大いに期待する。以上だ」
「「イエッサー!!」」
 綺麗な敬礼を決めた二人を見やってから、ロイは隣でずっと直立不動無言で控えていた副官に声をかけた。
「ホークアイ少尉。……君からは彼らに何か言っておくことはないか」
「はい。総務課からの伝達事項が少々……」
 うぉっ、しゃべった。全然しゃべらないし動かないし綺麗な人形かと思ってたぜっ、と軽く驚きの声を発するハボック准尉は無視して(口の滑りやすい男だ)リザは伝達事項を淡々と告げた。
「ハボック准尉。あなた礼服の申請をまだ出していないでしょう。総務課から早くサイズを教えて欲しいと通達があったわ」
 リザが言うのは、士官全員に支給される軍服の礼装の話だ。任官した時に用意されるのだが、ハボックはまだ受け取っていないらしい。
「あ、すんません……っ、俺、最近またがたいがでかくなっちまったから、いつものサイズより大きいのを頼もうと思ってて、で、まだサイズちゃんと計ってないんス」
 まだ成長期なのか、こいつ。とロイはハボックのでかい図体を見上げた。背の高さと堂々たる体格は力仕事にはうってつけだな、と感想を抱く。その彼にリザが怜悧な眼差しを送った。
「そう。もう、期限はとっくに過ぎているのよ。総務課も困っていたわ」
「す、すんませんっ!」
 鷹の目、絶対零度、と噂されるリザの瞳に見据えられて、ハボックはひたすらに恐縮している。ふうっと息をついてリザがハボックに近づいた。
「いいわ。では、すぐに身体測定をします」
「へ?」
 ぽかんとした声はハボックのもの。彼は事態を把握していない。嫌な予感がして、ロイが待てとリザを止める声よりも早く。彼女は彼女流の身体測定を実行してしまった。
 ――そう、すなわち。ハボック准尉にぎゅうっと抱きついて。
「しょ、しょ、しょ、しょーい!?」
 リザにがっちりと抱きすくめられた、その羨ましい男。若造の顔が真っ赤に茹で上がり、その頭からしゅーっと湯気が上がった。それを隣のブレダが唖然と見ている。
「……はい、分かったわ。マスタング中佐よりも2サイズ上って所かしら」
 
 ――こら、そこで私を引き合いに出すんじゃあ、無い。妙な誤解を招くだろうが。

 
 というロイの思い、むなしく。涼しい顔で手に持った書類に、リザはハボックのサイズを書き込み。
「あ、でも、中佐の抱き心地よりもぶわっとがばっとずっしりした感じだから……3サイズ上の方が無難かしら……」
 なんて、とどめを刺してくれる。
「…………あの、マスタング中佐。一つ、聞いていーですか?」
「聞くな……」
 固まっているハボックに代わって、ブレダがロイに疑問を投げかける。それに疲れた声で返答して、ロイは思うのだった。

 出来るだけ速やかにこのリザの妙な特技を何とかしようと。
 

 
END
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by netzeth | 2015-04-25 17:36 | Comments(0)

早く来い来い

はやーくこいこいGW! 原稿修羅場も終わりまして心はもうGWです。はやーく来ないかな♪ んで、ちょっとお知らせを。新刊2「境界線上の黒」も書店様の方で委託させて頂けました。予約始まっているようです。ご利用をお考えの方はよろしくお願いいたします。→ とらのあな

仕事帰りの増田を「食事になさいますか、お風呂になさいますか。それとも私になさいますか」と無表情でお出迎えする副官たんが抜けない新妻リザたんのお話が頭の中を乱舞してます。キラキラ新妻日記☆?みたいなのww 夫婦本!書きたいな。そういや夫婦になるまでの本は書いたことあっても夫婦になってからの本って書いたことないかも。……ないよな? と作りたい本の構想だけは思いつくけど時間が足りない最近。いっそ週休5日にしないかな、日本政府……。

春アニメ。真面目に見てるのが「山田君と7人の魔女」と「ベイビーステップ」だったりする。どっちも難しいこと考えずに安定して見ていられる。山田君の方はOP&EDの歌がとってもよい……。あ、ジョジョは別格で。3部ももう終盤でして、ついにダービー弟まできちゃいました。ああ……もうすぐ終わりなのね、と感慨深くなります。ぜひぜひ4部も5部もやって欲しいなあ。ところで。番組改編期になると職場での話題が「新ドラマ何見てる?」なのですが。ドラマをアニメに置き換えてうめこはぜひせひ話したいです。そういう職場に、私は行きたい。


拍手ありがとうございます(^^)
以下続きから拍手コメント(4/21分)のお返事です。
 



続き
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by netzeth | 2015-04-22 23:07 | 日記 | Comments(0)

境界線上の黒~サンプル~

~本文抜粋~



「いいや。君よりも上手く淹れられなかったが」
 言うなりロイの手が、リザの手を掴み彼はマグカップを握らせてくれた。
少しぬるい。……おそらく、リザが火傷をしないようにとの配慮なのだろう。すとんと隣にロイが座るのを感じ取りながら、マグカップを口に運ぶ。 
「ありがとうございます。いただきます」
 ゆっくりと口を付けて、飲み込んだ。それを、ロイはじっと眺めているようだった。彼が待っている言葉にアタリを付けると、リザは答えてやる。
「……美味しいです」
「そうか、良かった。だが、早く戻って来てくれ、待っている。やっぱり君の淹れる茶がいいんだ」
 ホッとした声がどことなく嬉しそうで、リザは心を鎧う物が溶けだしていくのを感じていた。彼にならば、この胸に巣くった不安を、素直に打ち明けていいだろうか、誰にも、同僚にも親友にも言い出せなかった不安の種を。と一瞬魔がさしたように思った。
 しかしそれは彼女にとって悪手であったことに、リザは気づいていなかった。それは同時にロイが抱えているものをも暴き、白日の元に晒す結果になってしまう。
「……どうでしょうか。もしかしたら、後数日では戻れないかもしれません」
 気づかぬままに彼女はぽろり、と本音を吐露していく。
「…………どういう意味だ?」
 そうやってロイの表情の変化に気づけない今のリザは、彼の触れてはいけない部分に手を伸ばしたのだ。
「お医者様は、二週間で見えるようになると申しておりましたが。……元通りになる保証は無いと言われました」
「何だと? それは……」
「……もしかしたら視力が、下がるかもしれないと」
 ロイが息を呑む気配がして、リザは手に持つマグカップをぎゅっと握り締めた。彼はその重大性をもちろん認識している。
「どれくらい下がるのか、は経過を見ないと分からない。もしかしたら、大丈夫かもしれない。とも。ですが……」
 もしも、リザの視力が大幅に下がってしまうようなことがあったらば。それは、狙撃手のリザには致命的だった。眼鏡をかけて矯正すれば日常生活には支障をきたさないかもしれない。事務仕事ならば、こなせるだろう。
 しかし。
「……もしもほとんど見えないくらいまで視力が下がってしまったら……狙撃手としてだけではなく、戦闘員としても現場には立てなくなるかもしれません……」
 それは、リザが銃を取りロイの背中を護るという使命も果たせなくなるということ。
「もしも……もしも、そうなったのならば。……大佐、遠慮なく私を切り捨てて行って下さい」  
 声が震えてしまうのを、リザは自覚していた。ロイをこの手で護れなくなる。それはリザにとって一番辛いことだ。彼と誓った未来のために、どこまでも彼について行くと誓ったというのに、こんな所で脱落してしまうなんて口惜しい。
 そして。
 それ以上に、リザは自分がロイにとって必要でなくなるのが怖かった。
かつて、リザは同じ経験をしたことがある。それは、背中の秘伝をロイに譲り渡し、自分が用済みの存在になったと思いこんだ時のこと。
 あの時のリザは努力を重ね、彼にとっての新たな価値を自分に付与した。優秀な軍人となって、彼に助力するという道を見つけたのだ。しかし、もしもその道さえも失ってしまったのならば。……リザの取るべき行動は一つ。出来るだけ、ロイに迷惑をかけぬ形で彼から離れること。
「まだ、仮定の、話ですが。……もしも、そうなった時は、どうぞ迷うことなど無きよう」
 優しいロイは、きっとリザを失うことに心を痛めるだろう。だが、それではダメなのだ。国を変えるという夢の前に余計な障害など、あってはならない。
「視えぬ狙撃手など、貴方の足手纏いにしかなりません。価値などないのです」 
 ですから、捨てて行って下さい。と出来るだけリザは冷静に冷然と言い放つ。少しもロイの心を乱すことはしてはならない。いつでも、自分は切り捨てられる覚悟をしている――そう伝えたつもりだった。
 だが、目の視えぬ鷹は見誤っていた。このロイ・マスタングという男が胸の奥に隠し持つ激情に。それは彼女の言葉を契機として、噴き上がらんばかりに燃え上がり、彼を突き動かし始めたのだ。
「……価値が、無い…だと?」
 低い声には彼の煮えたぎるような想いが込められていた。その感情が怒りであると受け取り、リザはさもありなんと納得する。優しい彼は部下の自虐的な物言いが気に入らないのだろう。また、自分の手足の一つを亡くすことにも失望感を覚えているに違いない。リザはそう判断し、更に言い添えた。
「はい。私の代わりなどいくらでもおります。どうぞ、もしも私が価値を失くした時は、代わりを見つけて下さい。そして、貴方はまっすぐに上を目指して行かれますよう……あっ」
 言葉が終わる前に、リザの腕は乱暴に掴まれていた。痛いほどにロイの手が食い込んでいる。
「……私が君をそばに置くことを、価値のあるなしで、判断していると?」
「はい。当然です。軍人としての価値で部下を判断するのが上官の務めというものです」
 ぎりぎりと握られる腕の痛みに耐えながらも、リザは首肯してみせた。ロイを自分のことでほんの少しでも煩わせたくなかった。それには、まず自分が平気な顔を、態度を示して見せねばならない。この張り裂けるように辛い想いを、決して悟られぬように。
 だが。
「はっ、まさかっ!」
 瞬間、ロイの感情が弾けたように飛んだ。まるで肝心なネジが一本どこかに消えてしまったかのように、彼の口調ががらりと変化する。
突然のロイの変貌にリザは戸惑う。判断材料が纏う空気と彼の口調だけ――というのが非常にもどかしかった。表情が視られれば、彼の感情などリザはすぐに見抜けるというのに。
「軍人としての価値基準で君を見ていたと……? 笑わせる」
「大佐……?」
「ここまで君に伝わっていなかったとは、滑稽だよな。まったく、このロイ・マスタングとあろう者が、何をやっていたのか」
 ロイの感情が読めない。彼の独白めいた言葉に、リザは反応出来なかった。彼の感情は彼自身が操る焔のように燃えさかっていく。
「……価値が無いから捨てていけ? それを私にしろ、と? 他ならぬ君が言うのかっ、その口で!」
「そうです、大佐」
 そこだけは譲れないと肯定すれば、皮肉気な笑い声が上がった。
「ははっ! ……逃がすと思うのか? そんなことでこの私が君を!」
「たい、さ……!」
 瞬間、掴まれていた腕を引かれてリザはバランスを崩す。そのまま、ロイの方へと倒れ込んでしまった。すぐに手をついて体勢を立て直そうとするが、身動き出来ない。どうやら、ロイにぎゅっと抱き込まれているようだ。かつて無い抱擁に、リザは動揺する。何が起こっているのか、把握出来なかった。リザを覆う暗闇は、彼女の行動を妨げ理解を遠くした。



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by netzeth | 2015-04-20 23:42

終わったー!

2冊目新刊入稿しましたー! やたー!終わったー! もうね、風邪が酷くて正直諦めてたのです。でも、昨日病院に行って来ましたらだいぶ回復しまして。やっぱりね、処方してもらうお薬はめっちゃ効くわぁー。効きすぎて副作用の眠くなる効果で昨日はめっちゃ寝てしまったんですけどん。この風邪感染力すごくて、うめこから既に家族二人にうつってます。どんだけ。

後は印刷所さんから不備が無いと聞けば出るでしょう。1冊目も2冊目もバタバタでいろいろ失敗してそうで怖いのですがww えーと2冊目は一時的に目が見えなくなっているリザたんに攻めブラック増田がいろいろエロいことする話です。←なんて書きましたがシリアスです、たぶん。

風邪は治ってきたけど、仕事行きたくない病が発症。行きたくないよーずっとロイアイ書いてたいよーと嘆く日曜日の夜ww


拍手ありがとうございます!
レス不要でコメント下さったお方様もありがとうございます♪ お言葉に励まされております(^^)








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by netzeth | 2015-04-19 23:20 | 日記 | Comments(0)

あれやこれや

パイセンをえろい意味だと思っていたうめこです、こんばんは。先輩ですか。そうですか。

風邪がノドの痛み→鼻水→咳と順調に進行中。に比例して原稿は停滞中。二冊目落としそう。この土日でどれくらい進められるかが勝負かな。

原稿は進まないのですが、あれやこれやしてました。とりだめたDVD消化。メンインブラック3とろぼとーちゃんは両方泣けた。春アニメも見てます。俺物語面白い。血界戦線のED超スタイリッシュでリピートしまくってる。この作品雰囲気がバッカーノに似てるなあ。と思っていたら時代設定や場所は同じくらい?あと例の紐なアニメも見てる。例の紐、りざたんに付けたし……。

いつの間にかとらのあなさん分の再録本2011無くなってました。お買い上げ下さった皆様ありがとうございました!

拍手ありがとうございます(^^)
SS書いたのでよろしかったらどーぞ!







「今回は絶対に譲らないからな!」
 という俺の宣言をレベッカ・カタリナははんっと鼻で笑った。
「ハボックのくせに生意気。何たって、あたしとリザはマブダチなの。あんたの出る幕じゃないわ。そ、れ、に。彼女にフられたばかりのあんたに有給休暇1週間なんて宝の持ち腐れよ」
「うっっせー! お前だって、彼氏居ない歴もうすぐ1年じゃねーかっ」
「あ、それ言う? 言っちゃう?? このレベッカねーさんの地雷を踏み抜いたわね、このバカハボック!」
「二人とも、落ち着いて」 
 と、俺とレベッカの五十歩百歩なたいそう醜い争いにホークアイ中尉が困った顔をしている。そうだ、そもそも俺とレベッカの恋愛事情は今回の問題とは無関係である。……少なくとも今の時点では。


 
 アメストリス国軍の伝統として、毎年春先の行われる催しがある。それが軍内対抗競技会……まあ、学校で言う運動会みたいなもんだ。その意義は日頃の研鑽の成果を見せる場であると共に仲間と競い合うことにより更なる技術と体力の向上はかるためのもの――であり、ちょっと前にマスタング大佐と鋼の大将が錬金術戦を繰り広げたが――まあ、あれもこれの延長みたいなものだった。
 これ、すなわち軍部祭りである。
 ブラッドレイ大総統が就任してからと言うのも、真面目だった競技会が祭りじみて来たのは彼の愉快な人柄故だろうか。加えて、東方司令部には大総統に負けず劣らずのお祭り好きで破天荒な御大がいらっしゃるのだ。
 東方司令部最高司令官グラマン中将は、更にこの軍内対抗競技会に自由過ぎるカスタマイズを施した。ミスコンまでやろうとしたのは、流石に女性達に猛反発にあい諦めたが。だが、祭りの盛り上げ方を心得ている中将は、代わりに各競技の優勝チームに豪華な特典を用意してくれたのである。
 その中の目玉が、射撃競技優勝チームに与えられる――絶対有給休暇1週間なのだ。
 ポイントは、絶対・有給休暇ということだ。軍人なんてやっていれば休みなんてあって無きもの。例え休暇であってもスクランブルがあれば呼び出されるのは常。有給休暇消化なぞ夢のまた夢だ。ただ、取れもせず消えていく休暇を貰っても意味はない。
 しかーし。今回の絶対有給休暇は違う。なんと、文字通り絶対にお休みをもらえる権利なのだ。何があろうと、それこそ隣国が攻め込んでこようとも、イーストシティに銃弾の雨が降ろうとも、例え大総統府がマングースで埋め尽くされようとも! 絶対に休んでいいよ! という夢のような? 優勝商品なのである。
 さあ、もうお分かり頂けただろうか。何を俺とレベッカが争っているのかを。


「リザは絶対にこのレベッカさん率いる狙撃部隊Aチームで出て貰うんだから!」
「何をっ、中尉は司令官付き副官なんだから、絶対司令官付隊チームだろ!」


 射撃競技はチームの代表1人による勝負。ならば、必然的に東方司令部の鷹の目、随一のスナイパーであるホークアイ中尉が居るチームが圧倒的に有利だ。
 ホークアイ中尉は司令官付き副官。よって、この俺の所属する司令官付隊チームだとだと思っていた。
 しかし。
 それに難癖を付けてきたのがレベッカである。グラマン中将が言った「あ、チーム分けは基本的には所属部隊別だけど、本人の強い希望があれば自由意志に任せるからね。好きなとこ行っていいよ~」という自由過ぎるルールを盾に、ホークアイ中尉をレベッカの所属チームによこせというのだ。


「リザは半分狙撃部隊所属みたいなもんなんだからっ、うちでしょ!」
「何おうっ! お前だって狙撃手だろっ、自分で出て勝つっていうプライドはないのかよっ!」
「そんなもの有給休暇1週間の前に儚くも散ったわ……!」
「散らすな!!」

 レベッカの要求に簡単にはいそうですか、と屈することは出来ない。何しろ、有給休暇1週間がかかっているのだ。

「それを言うなら、うちの狙撃部隊Bチームにも権利はあるぞ!」
「ならうちだってっ。中尉はよくうちの部にお見えになる!」
 
 また増えたホークアイ中尉争奪戦参加者。そうだっそうだっ、という賛同の声が上がってうるさいことこの上ない。ちなみに、ここは飲み屋で、周りは酔っぱらいだらけ。うるさいのは仕方がない。
 各チーム代表が集まっての競技会前の親睦会……という名目の飲み会は混沌とした様相を見せていた。皆酒が入っているせいで、遠慮がない。収拾がつかないとはこのことだ。


「だーっ! 周りが騒いだって仕方ないじゃないっ。ここはとにかく、本人の意志を確認しましょ。ねえ、リザ? この大親友のレベッカさんと一緒に参加したいよね? そうに決まってるでしょ?」
「くぉらっ! 女の友情で誘導尋問するんじゃないっ!」

 周囲から一斉に注目を浴びて。ホークアイ中尉は珍しく戸惑った顔をしていた。彼女からしてみれば、親友の頼みは断り難いだろうし、かといって俺ら同僚を裏切ることも出来ないだろう。他に義理のある部の声も無視出来ない。確かに板挟みの困った状況だ。

「私はどこのチームで出場してもかまわないけれど……」

 中尉はそこで、言葉を切った。こちらを立てればあちらが立たず。言葉に詰まるのも無理は無い。

「私は……大佐の命令に従います」

 続いた中尉の言葉に、俺らは一斉に振り返った。そこには。


「ん……? なんだ?」


 このホークアイ中尉争奪戦の喧騒の中、一人置いてけぼりをくっていた、そう、一応この中で一番えろい…いや、違った。偉い人――ロイ・マスタング大佐が寂しそうにちびちびとグラスを傾けていた。
 あ、大佐。居たんだっけ。
 この人の存在を半分忘れかけていた俺は、かなり不敬なことを思いながら大佐を観察する。あ~あ、みんながホークアイ中尉にばっかり夢中になっているから、飲み過ぎてるぞ、この人。もともと酒が強くないのにな。誰か止めてやれよ。
 もちろん、大佐に注目が集まらないのには理由がある。射撃競技では役に立たない――というのもあるが、そもそも。彼はグラマン中将と共に大会を取り仕切る責任者の立場であり、参加者ではないからだ。


「そうねっ、リザの言うとおり! 大佐に決めてもらいましょ」

 ホークアイ中尉の提案に一番に乗ってきたのはレベッカだった。俺はしまったと唇を噛む。大佐は責任者であり公正かつ公平な立場でなければならない。よって。大佐の付属部隊である俺らとはなあなあなの関係ではあってはならないのだ。
 つまり。
 立場的に大佐はホークアイ中尉を、付隊チーム所属にはしないだろう。むしろ意図的に避けなければならないのだ。
 くっそ、やられた! 
 にんまり笑っているレベッカの赤い唇を睨みつけて、俺は唸る。
 これでレベッカの勝率は格段に跳ね上がった。中尉が一番縁がある狙撃部隊+彼女の親友という立場。有利なのは間違いない。なんだかんだ言って中尉思い……いや、中尉大好き大佐ならば、レベッカのチームに。と言うかもしれない。


「ね、マスタング大佐。答えて下さい。リザはあたしのですよね??」
「違うって! 大佐ぁっ、ホークアイ中尉は俺らのものですよね!?」

 酔っぱらって顔を赤くした大佐はまずはレベッカの顔を、次に俺の顔を見た。それから周囲を取り巻く連中をぐるりと見渡して。そして、最後にホークアイ中尉の上で視線を固定した。

「はあ?…………んなの、決まってるだろう」

 俺たちは息を呑む。


「リザは私のものだ」

 
と、真顔で酔っぱらいがのたまってくれやがったので。
 
 俺ら彼女居ない野郎共のやる気元気が行方不明になり、レベッカがやってられないわー! とやけ酒をかっくらい、ホークアイ中尉がもう、なんてことを言うんです……と可愛く憤慨するはめになりましたとさ。

 めでたくなし。めでたくなし。 





   


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by netzeth | 2015-04-17 00:54 | 日記 | Comments(0)

いってしまった?

スパコミ2冊目いけないかな~と再び原稿な日々に戻ったうめこです、こんばんは。でも暗雲。やばい喉が痛いっす。逝ったかも。絶対喉が痛いって言ってた上司に職場で移されたような気がします。この大事な時期に!恨みます。毎日イソジンでうがいしよっと。もうもう!こんなに寒いのが悪いんだ! 仕事休んでやるから!……や、うめこの風邪いつも熱は出ないから、ダメなんですけどねー(白目)

というわけでちょっと潜ってます。


拍手ありがとうございます!
レス不要でコメント下さったお方様、ありがとうございます!!
睡眠はたっぷりとりたいと思います☆やはり寝るのが一番ですかね(^^)









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by netzeth | 2015-04-11 23:33 | 日記 | Comments(0)

なにこれ寒い

いきなり寒いですね。雨はいいけど寒いのはアウトー。4月なのに真冬気分を味わうとは。本当にこう寒暖の差があると体調管理が難しいです。マジで体がついてかないっす。そろそろ春物のお洋服を用意していたのに、冬のコート引っ張り出す羽目に。でも近年春物ってあまり活躍の機会がありません。だって寒い→からすぐ暑いになるんですもん。中間が無いよ! 

新刊とらのあな様に委託してます。予約がもう始まったようなので、ご利用をお考えの方はよろしくお願いいたします<(_ _)>→とらのあな

自分の中で空前のダイエットブームのせいか深夜の通販番組のダイエット器具が欲しくてたまらない。外人のムキムキのおにーさんが白い歯見せて割れた腹筋を見せつけているのを見ると、ああこれ買えば痩せられるんだなーとかうっかり信じそうになる。恐るべし深夜番組の魔力。脳みそが半分寝ているから正常な判断力が働いてないんですな。絶対にそれ物置でホコリかぶるから!


拍手ありがとうございます(^^)




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by netzeth | 2015-04-08 22:52 | 日記 | Comments(0)

入稿しました

スパコミ原稿を何とか入稿しました。印刷所さんから受け付けたと言って貰えたので何もなければ新刊出ると思われます。ので、オフラインを更新いたしました。スパコミ新刊詳細とサンプルです。今回はリザたん一人称なので彼女が脳内でしゃべりまくってます。愉快なラブコメ?になったかな……?

まずはマイルームの惨状を何とかせねばー。もうね、ひどい。とにかくひどい。かつてないひどさ。とりあえず片付けてまともな人の住処に戻そう。あと脳みそがすごく疲れているので、しばらく休養させたいな。脳ってどうすれば休まるのか……?

体重がいよいよやばいので、昨日からダイエットする!ともう何度目になるのか分からない決意を固めたところ。だって、10年前の体重に比べて+10キロくらいあるんです。1年で1キロと考えれば合理的。でも何をすれば痩せるのか。ちょっと前にツイッターで見かけたのですが、エロ原稿(それは漫画でしたが)をすると脳内が興奮してすごくカロリー使ってダイエットに効果的とか!学会も注目しているとか。その法則からすると原稿を終えたうめこは痩せていないといけないのですが。あれれ?おかしいなー。逆に手間をかけずに食べられるスナック菓子やジャンクフードを原稿中は食べまくって太った気がする。

食べなければ痩せる!というのが合理的ですが。空腹になると気持ち悪くなるんです。食べずにはいられない。とくに深夜!一番食べてはいけない時間帯ですねー。どうしたらこの気持ち悪さをカロリー取らずに何とか出来るのかな。大人しく食べて運動した方がいいかなー。自分に合ったダイエット法を見つけたいところ。


拍手ありがとうございます(^^)
いつも大変励みになっております!




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by netzeth | 2015-04-07 00:17 | 日記 | Comments(0)

You Are My Destiny  ~本文サンプル~

1 運命は残酷だ 


運命なんて言葉は、本来ならば私にとって鼻で笑ってしまうものだったけれど。

 それは冷たい雪の降る日でした。
 その年、アメストリス東部を襲った大寒波は連日連夜雪を降らせ、見渡す限りの山河を白く染め上げました。私の住む街も例外ではなく、街はまるでスノードームの様に雪景色の中に沈んでいました。
 吐き出す息は白く、剥き出しの指先は凍るようです。かじかんだ爪先が雪道を踏み締める度に痛み、その度に私の足は歩みを止めようとするのでした。
 ですが、止まる訳には行きません。私は歯を食いしばり襲い来る寒さに耐え、家から街へと続く緩い下り坂をのそのそと前進していました。麓の街まではもう少し。雪掻きもろくにされていない荒れた道で、足下は雪に埋もれていましたが、どんなに辛くとも引き返す訳にはいかないのです。
 大寒波のせいでここ数日、身体の芯まで冷えるような日々が続いていました。ろくな暖房設備も無く、雪のせいで暖炉の薪も用意出来なかった我が家は、屋内と言えど外と変わらぬ極寒の地でありました。ペラペラの服を何枚も重ね着し薄い毛布で私は寒さを凌いでいましたが、元来病気がちな父はそうもいかなかったのです。
 日頃の不摂生も相まって父は酷い風邪をこじらせました。いいえ、お医者さんに見立てて貰った訳ではないので、ただの風邪ではなかったのかもしれません。もしも質の悪い流感の類であったのならば、一刻も早くお医者に見せお薬を処方して貰わねばなりません。実際父は昨夜から高熱を出して寝込んでいます。
 しかし栄養のある食事もろくに用意出来ない我が家の経済状況では、お医者にかかることなど出来ようはずがありません。もしもの時の蓄えなど我が家には皆無で、もちろんお金を用立ててくれる親戚も知り合いもおりません。
 けれど貧乏を嘆く暇も、私にはありませんでした。私には少しでも早くお金が必要だったからです。このままでは父の命に関わります。私は決死の覚悟で家を飛び出しました。
 安物のブーツに着古したダッフルコートと、私にはぶかぶかの母のワンピース。およそ防寒とはほど遠い格好で私は街を目指したのです。街へ行けば何かしら良い方法があるかもしれません。何でもいい、とにかくお金が欲しい。縋るような思いで私は雪道をひたすらに歩いていたのでした。
 実際私には一つだけ心当たりがあったのです。
 それは、街で買い物をしていた時に聞いた大人達の世間話でした。
 ――金に困ったのならば、女なら五番通り辺りの街角に立てばいい。一晩で結構な金を稼げる。 
 幼かった私はその話の本当の意味を知りませんでした。知らないままに、藁にも縋る思いで私は街に辿り着くと五番通りへと足を踏み入れたのです。
 そこは子供の私が今まで訪れたことのない界隈です。このような寒い雪の日でもそこは一種独特な雰囲気を持った場所でした。日が暮れてまだ間もないと言うのに、ここはまるで真夜中のような夜の深い闇を感じさせました。ですが、人通りが無いという訳ではありません。むしろ逆です。降りしきる雪の中でも沢山の人が通りを歩いていました。そのほとんどは男性です。そして、逆に道行く人々を呼び止めて居るのはほとんどが女性でした。凍るような寒さだと言うのに、肌も露わな服を着ている若い女性です。
「なあに? お嬢ちゃん。ここはあんたみたいな子が来るような場所じゃないわよぉ」
 五番通りに来たのはいいものの、それからどうしたら良いのか分からず途方に暮れていた私は、街角に立つ女性達を眺めていました。その視線に気づいた女性の一人が話しかけて来たのです。濃い化粧を施した綺麗な女性でした。近づくとふわんといい匂いがします。
「あら、よく見たら可愛い子ねぇ。そうね、後五、六年したらまたおいで、お嬢ちゃん」
 女性はここで生計を立てている様子です。この人に頼めばここでお金を稼ぐ算段が付けられるかもしれない、と私は思いました。
「あ、あの! 私お金が必要なんです。今すぐではダメでしょうか?」
「今すぐぅ? う~ん、どうかしらぁ? あんたくらいの可愛い子なら需要がありそうだけどねぇ……流石にあたしも気が咎めるわ。さ、黙ってパパんとこ帰りなさいよぉ」
 必死に頼み込んでみましたが、けんもほろろにしっしっと追い払われてしまいました。この時、この女性は本当に親切でこのような行動を取ってくれたのですが、愚かにも私はその意図を汲めませんでした。
 私はこのままでは帰れなかったからです。
 女性と別れ、私は五番通りを更に奥へ奥へと歩いて行きました。寒さに体が震えていました。昨夜から何も食べていない腹は鳴りっぱなしで、ひもじさで全身の力が抜けていきそうです。それでも病気の父を思い、お金を得るまでは絶対に帰らないと悲壮な決意で通りをさまよい歩きました。そして、人通りが途切れた奥まった場所で、私は再び声をかけられたのです。
「お嬢ちゃん、お金が欲しいのかい?」
 振り返ると、壮年の男性が立っていました。一目で質が良いと分かる上等な服を身に纏った紳士です。彼は先ほどの女性と私とのやりとりを見ていたのだと言いました。
「私が用立ててあげよう。だから、一緒においで」
 その声はとても優しげで、口元には微笑みを浮かべています。男性は手を私に差しのべました。
「可愛そうに、そんな寒そうな格好をして……震えているじゃないか。私がすぐに暖めてあげよう。美味しいものも沢山食べさせてあげるよ」
「でも……」
 私は戸惑いました。いくら私が世間知らずだからと言って、流石に無償でこのような親切を受けられるとは思っていません。この世界は等価交換の原則で成り立っているのです。何を得るにしても代価が必要です。けれど私が差し出せるものなど、この私自身しかありません。 
「なあに、この私とほんのちょっと付き合ってくれるだけでいいんだ。夜は一人じゃ寂しいからね。誰かにそばに居て欲しいんだよ」
 男性は相変わらずニコニコと笑って、猫撫で声で私を誘います。彼の声や態度は優しいけれど、私にはとても気持ち悪く思えました。彼の視線は私をまるで物のように扱っていたのです。私を感情のある生き物だと見てはいなかったのです。この男性に付いて行って何をさせられるのか、具体的に想像は出来ませんでしたが、きっと良くないことが起こるのだという予感はしました。
 本当はとても逃げ出したかったです。
 けれど、私には選択肢はありませんでした。運命は一人の少女を過酷な現実へと追い込んでいたのです。
 泣きたくなるのを我慢しながら、この時私は学校の同級生が言っていた話を思い出していました。
 ――今日リザは運命の人に出会うわ、とっても良い運勢よ。これはアメストリスの運命の女神様が言っているから本当よ!
 安い占いの本を見ながら、同級生は断言しました。
 そんなの嘘です。運命は私に味方をしてくれなかったのです。私を父を、非常な現実へと落とし、笑っているだけ。カミサマなんて私は信じません。
「どうだい? 一晩で十万センズ払おう」
 迷う私に悪魔の囁きが聞こえます。
 十万センズは今の私にとって、夢のような金額でした。それだけあれば父をお医者さんに見せて、良いお薬を処方して貰えます。栄養のある物もたっぷり食べさせてあげられます。
「さあ……」
 カミサマは私に救いの手を差し伸べてはくれなかったけれど、代わりにこの男性を使わしてくれたのでしょうか。破滅への道を行けと。何が起こるのか想像も出来なかったのですが、どんな悪いことでも父が死ぬよりはきっといい。そう思い、男性の手を取ろうとした時でした。
 
「ダメだ」

 私の手を、暖かな手が掴み取りました。その手は力強く私の手を握り込んでいます。
 割って入って来たのは、私よりも少し年上の男の子でした。吸い込まれてしまいそうな深い色の瞳が、私を強く見つめていたのです。一瞬私は寒さもひもじさも全身を覆う疲労さえも忘れました。何故か心拍数が上がり、先ほどとは違う苦しさに襲われます。彼はその黒い瞳を私を連れて行こうとしていた男性へと向け、強く睨みつけました。
「妹が何か?」
 もちろん、私は彼の妹ではありません。けれどこの時、反論の声は出ませんでした。私の身体は男の子が現れた衝撃に打たれていたのです。胸の内に沸き起こる妙な高揚感に戸惑うばかりです。自分に何が起こっているのか、理解出来ませんでした。
「妹が、何か、ご迷惑を、かけたでしょうか」
 彼の登場に驚いて固まっている壮年の男性をまるで威圧するように、男の子は一音一音をゆっくり発音しました。とても素敵な声だわ、と私は呑気に思っていました。
「い、いやっ、何でも無い……何でも無いさ、用は無いっ」
 何歳も年下の少年に気圧されて焦る男性の姿は、とても滑稽でした。彼は少しずつ後ずさると、犬が尻尾を巻いて逃げるように、その場から去って行ったのでした。
「あ、あのっ……」
 後に残された私は、彼に手を握られたまま困ってしまいました。なにしろ問題は何一つ解決していないのですから。私が一文無しなことに代わりはなく、寒くて、お腹が空いて、父が心配で不安で泣きそうなのは何一つ変わりは無いのです。
「来て」
 男の子は硬い声で言い、私の手を引きました。何故か彼に逆らう気になれなくて、言われるままついて行きました。先ほどに比べると寒さが少し和らいでいます。彼の手はとても暖かくて、心地が良かったのです。
 少年が私を連れて行ったのは、五番通りを抜けた先の街の中心部でした。広場になっているそこの隅の食べ物が売っているスタンドで、彼は暖かな焼き栗とスパイシーなチャイを購入すると、渡してくれました。
「ほら、食べて。暖まるから」
 空腹だった私は本能の赴くままに、焼き栗を貪り、チャイを飲みました。熱々のそれらは私の体にじんわりと染み込んでいきます。思わず涙が出そうになるほど、美味しかったのは言うまでもありません。
 そうやって私が食べている間に、彼は自分の首からマフラーを外すと、それを私の首にぐるぐると巻き付けました。知らない匂いが少し落ち着かない気分になるそれですが、食べ物と相まって私を暖めてくれます。
やがて、すっかり焼き栗とチャイを平らげた頃には、空腹は満たされ、ホカホカと体が暖かくなっていました。
「あの……私、困ります……」
 すっかり欲求が満たされると、脳に血が回ったせいか私は冷静になりました。そして、自らが置かれている現状を思い出したのです。 
「私、お金が必要だったんです。だから、さっきの場所で、お金を稼ごうと思っていたんです。せっかく、声をかけて貰ったのに……」
 思い出して、私はこの男の子にお金を稼ぐチャンスを邪魔されたのだという事実に気が付きました。そして、思わず責めるような口調になってしまいました。親切に食べ物を貰ったのに、ずいぶん私は恩知らずです。
「それはどうして?」
 けれど、彼は私の態度に気を悪くした様子も見せず真剣な顔で話を聞いてくれました。そんな風に彼に訊ねられると、黙ってはいられませんでした。問われるまま素直に話をしてしまいます。
「父が、病気で……うちはお金が無いから。私が、何とかしないといけないんです。どうしても、お金が必要なんです」
 話しながら、私は焦りを思い出しました。こうして私は空腹を満たせましたが、家では病気の父が待っているのです。そして、また五番通りの方へと戻ろうとしました。私にはそこしか、一晩でお金を稼げるという場所を知らなかったのです。
「先ほどの人は私と一緒に過ごせば、お金を下さると言っていました。私は、私自身しか持ち合わせがありません。また、そう言って下さる方に私を買って頂くしかないんです」
 私は決意を込めて彼に訴えました。もう止めてくれるな、と彼に言いたかったのです。これは自分の意志なのだと。しかし、彼は許してくれませんでした。がんとして首を振り、私の手を決して離さないとばかりにまた強く強く握り締めました。
「ダメだ」
「どうしてです。貴方に私を止める権利は無いはずです。私にはもうこれしか方法が無いんですっ、離して下さい」
「だめだ。……なら、僕が買う。さっきの人と同じ十万センズ払うよ」
「え?」
 一瞬何を言われたのか分かりませんでした。キョトンとして状況が把握出来ていない私に、彼は顔をくしゃりと歪めて笑いました。
「君を、僕が買うよ。だから、君はもうあんな場所に行ってはいけない。……叔母さんの使いであの通りに寄って良かったよ。君を見つけることが出来たから」
「で、でも……あの……」
 十万センズなんて、こんなあまり年の変わらない男の子が払えるのでしょうか。いいえ、そもそも。私は十万センズの代価など彼に払えません。それとも、先ほどの男性の様に彼も何かを私に求めるつもりなのでしょうか。私でそれに足るのか、私は不安になりました。
「この十万センズで、君は僕のものだ。だからそれを忘れないで、どんな時でも自分を大事にして。いい?」
 両手を肩に置き、私の顔を覗き込むように見つめて。彼は優しく言いました。黒い瞳はどこまでも真摯で、真っ直ぐに私を射抜いていました。私は彼の申し出を断るべきだったのに、言葉が上手く紡げません。またドキドキと心臓がうるさく鼓動を刻みます。彼が現れてからというもの、私の身体はちょっと変です。寒いはずなのに、熱いのです。
「あっ、あの……っ!」
 そして、彼は十万センズを私の手に握らせると引きとめる私の声を振り払って去って行ったのでした。
 ――君は僕のもの。 
 そんなことを言っても、彼は私の名前も連絡先も聞こうとはしませんでしたから、何の意味もありません。そう、もう二度と会わない見ず知らずの少女に、彼は見返りを求めず大金を恵んでいったのです。
 結局そのお金のおかげで、私は父を医者に見せることが出来、食べ物を買い求めることも出来ました。そしてすっかり良くなった父の元に、あの雪の日に来る予定であった入門予定のお弟子さんがだいぶ遅れてやって来た時、私は全ての真実を知るのです。
 我が家の門を叩いたのは――あの時の男の子でした。
 そして後に、私は彼から全ての事情を聞いたのです。彼はあの日我が家に向かおうとしていて、その前に叔母さんに頼まれた使いをこなし、あの五番通りに居た私に会ったのです。そして、我が家に払うお月謝――なけなしの小遣いとバイトで貯めたお金を私に与えてしまい、彼はまた一からお金を貯める羽目になりました。結局、いつまでも先方を待たせるなと叔母さんに怒られて、彼女にお金を借り彼は我が家にやって来たのです。
 もちろん、お月謝は免除になりました。私が父に彼からお金を工面して貰ったことを話したからです。結果的に我が家にお金が来たのだから、当然です。
 また、約束の日時に我が家に来なかったことも不問になりました。それも当然です。彼は他ならぬ私を助けたために来ることが出来なくなったのですから。
最初は彼に怒りを向けていた父も、事情を聞くと逆に彼に感謝を向けるようになりました。(父のことですから、非常にわかりにくいものでしたが)

「結果的にリザの助けになって、お金は師匠の元に渡ったのだから良かったよ」

 後に彼――マスタングさんは私を気遣いつつそんなことを言ってくれました。
けれど、私は知っています。マスタングさんが私にくれたお金は彼の夢を叶えるものでした。もしも、もしもです。マスタングさんの弟子入り先がうちではなかったら。お金が無くて弟子入り出来なかったとしたならば。そう、彼は最初から私を師匠の娘だと知っていてお金をくれた訳ではないのですから。

 ――彼は一人の少女を救うために、自らの夢を投げ出そうとしたのです。 

 あのお金がどんなに大事なものだったのか、私は知りました。それを躊躇無く私に与えてくれたマスタングさん。
 あの日、私たちは出会いました。
 あの時、マスタングさんが来てくれなかったら……私のこの先の人生は大きく変わっていたことでしょう。
 ですから、彼に出会ったあの日から、私は運命というものを信じています。あの人に出会えた運命を信じているのです。


 ――なんて言うのは今は昔の話。
   

 ああ何て時の流れというものは残酷なのだろう。
美しく咲き誇る花も何時かは散り、枯れ果てる時が来るのだ。それが世の無常というもの。どんなにどんなに大事に取っておきたい美味しいケーキだって、それが生ものである以上、十日も常温で置いておけばカビくらい生えるのだ。それをもったいないからって普通に食べればお腹くらい壊すのだ。いえ、私は壊さなかったけれど。……一緒に食べた人は盛大に壊した。そして後に、カビの毒性に付いて懇々とお説教された。けど、その人のお腹が柔なだけだ。だいたいブルーチーズには普通に青カビが生えているではないか。カビくらいどうと言うことはないと死んだ父も……ああ、話が逸れた。
「あなたは引っ込んでなさいっ、ブス!」
「何ですってぇっ! あんたこそデブのくせにっ」
「わたしはデブじゃないわっ、ぽっちゃり系なのよ!」
 私は目の前で繰り広げられている茶番から目を逸らしたいばかりに、一瞬思考を現実逃避させていた。
いけないいけない。
だけど、いい加減私の忍耐力もメーターが振り切れそうになっていたので、仕方がないことだと思うのだ。
「あんたは間違いなくデブよっ、ダイエットしてから出直しなさいよっ!」
「あなただってよーく鏡をご覧になってはいかが? それとも目が悪いのかしら!」
 まだ若い女性二人が剣呑な雰囲気で私の目の前に居る。まさに毛を逆立てた猫という表現がお似合いの二人は取っ組み合い寸前、お互いを親の敵のように睨みつけて低レベルな言い合いを続けていた。その原因は、
「あんたみたいなデブ、ロイさんに相応しくないわ!」
「あなたこそロイさんの前から消えてっ! 整形してから出直しなさいな!」
 私の上司、ロイ・マスタング中佐を巡っての痴情のもつれ?である。
 ……くだらな過ぎて涙が出そう。
 正直一切関わりたくないと言うのが本音だったのだが、なにぶん、ここが東方司令部の一室で、私が彼の副官という立場である以上そうもいかない。
席を外していた上司に代わり来客の応対に出た私は、受付の事務官のミスにより中佐を慕う二人の女性が同じ部屋で鉢合わせ――という恐ろしい状況に遭遇してしまったのだ。当然お互いの存在をそれとなく知っていた女性達は、戦いの火蓋を切って落とした訳である。……迷惑な。バトルならば司令部を出てから思う存分やってくれればいいのに。止めないから。
「……お二人とも落ち着いて下さいますよう」
 けれども、ここは司令部。止めない訳にもいかないので私は仕方なく女達の間に入った。このままではお互い手が出そうなまでにヒートアップしていたのだ。
……もう面倒くさいから、二人とも気絶させてしまってはダメだろうか。こう、首の後ろを手刀でトンっと。で、速やかに荷馬車にでも括り付けてゴトゴトお引き取り願う。
 と、私が真剣に検討し、手刀の構えを取ろうとした時のこと。
「……貴方が、ロイさんの副官?」
「女性の副官だって聞いたから、きっとそうよ」
「ふ~ん…あなたが……」
「ロイさんの副官、ねえ……」 
 喧嘩中のはずの二人が何故かタッグを組んで、私に値踏みするような視線を投げてきた。不躾を通り過ぎて敵意のこもったそれに、私はげんなりする。
 ほら来た。
「貴方ロイさんとどういう関係?」
「ロイさんの代わりだなんて言って出てきたけど、図々しいんじゃない?」
 分かりやす過ぎて、変な笑いが出てしまいそう。我慢我慢。
 どういう訳か、イーストシティにお住まいのロイ・マスタング中佐をお慕いする会の乙女達は(実際そんな会があるかどうか知らないが)ただ、副官が若い女性と言うだけでその仲を勘ぐってくる。それはもう皆さんそういう決まりでもあるのかと言うほど、執拗に。そして、判子で押したように同じセリフを言うのだ。
 もういい加減慣れてきたが、それでも鬱陶しいことこの上ない。私と中佐の関係は上司部下だし、中佐の代わりに出てきたのはそれが副官の仕事だから仕方なく、だ。上司の女関係まで仕事と関係ないのに駆り出され始末を任される副官――なんて副官さんも大変ねと同情されてもいい立場なのに、この扱い。世の中はまったく理不尽である。
「私は中佐の副官です。仕事でありますので」
 いつものように素っ気なく答えたが、やはりいつものように女達は納得しない。敵意を引っ込めもせず、私に強い視線を当てている。
「口ではどうとでも言えるわ。いくら近くに居るからって調子に乗らないことね」
「そうよそうよ。いつもロイさんと一緒に居て、彼のこと何とも思ってないなんてありえないわ」 
 ……何だろう。彼女達の中ではあの人、どれだけ美化されているのだろう。彼の近くに居る女性は、例外なく彼に好意を持つに違いないというこの絶対の確信は一体どこから来るの。
あの人、重要書類の上で昼寝して書類にヨダレを垂らすような人なんだけれど。この前なんか部下と牛乳の一気飲み対決をして、失敗して鼻から牛乳出していたんだけど。
 ――ああ、彼女達の幻想をぶち壊してさしあげたい。私はそんな誘惑に駆られる。その方がいつまでもあんな人に叶わぬ想いを抱いているよりはよほど、彼女達のためになるというものだ。
 ……そう、私は知っている。絶対に叶わないのに。


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by netzeth | 2015-04-06 23:50