うめ屋


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いろいろお知らせ

【通販連絡事項】 2/29 1:00までに頂いたお申込みには全て確認メールを返信済みです。メールが届いてないよ~という方はご一報下さいませ~。


SS更新しましたー!今回はちょっと悲しいお話?かもですが、うめこの中ではロイアイはハッピーエンドと決まっておりますので大丈夫!と信じております(^^) 途中ちょっとミスってあげてしまって後からこっそり直しておきましたが、それがWEBの良い所だなあと思います。本だったら床を転げまわってるとこだったわ…。


拍手ありがとうございます!
ブログコメントを下さったお方様もありがとうございました(^^)
お返事を書きましたのでよろしければ、該当記事をご覧下さいませ~。






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by netzeth | 2016-02-29 01:18 | 日記 | Comments(0)

残照

※ 泣き中尉、シリアスで暗くて悲しい話です、注意。
 


その長い軍人人生で初めて、リザ・ホークアイは仕事をサボった。

 
 その景色は私服の時と、少しだけ違って見えた。街並みは同じはずなのに、なんだかおかしい。きっと休日は用事を済ませようといつも急いているからだろう。事実、今のリザは特にすることもなくブラブラと街を散策しているだけだ。
 歩いているとそこかしこから声をかけられる。最初は軍服を着ているから目立つのだろうか、と考えていたがどうも違うようだった。

「副官さんっ、今日もお疲れさん! 閣下なら今日は見てないよ!」
「いつもご苦労様。あの方なら来てないわよ?」
「閣下がまた逃げたのかい? まーったく、仕方のないお人だねぇ……」

 どこに行っても、そんな風に話しかけられてしまいリザは苦笑する。そういえば、リザが軍服で街を出歩くのは逃げたかの人を捕獲するためばかりであった。自然と街の人々に彼――ロイを探しに来た副官さん、と覚えられてしまったようだ。

 ――そうだ、どうせならば彼の逃走経路を辿ってみよう。

 思いつきは特に意味があるものではなかった。ただ、リザは本当に他にすることが無かっただけだ。なにせ、仕事をサボって街を徘徊するなんてことは彼女にとって初めての経験だったので。

 
 最初に訪れたのは、ロイが入り浸っている古本屋だ。ストリートの隅っこにある小さな小さな本屋。しかし、その店内はまさに異次元空間と言っても過言ではなかった。よくもこれほど狭い敷地面積にこれだけ本を詰め込んだな、と感嘆せざるを得ないほどに本、本、本の山…いや山脈だ。
 無秩序に並べられた天井まで高さのある本棚。そこにぎっちりと納められている分厚い専門書。もちろんそれだけではない、空いたスペースがあれば本で埋める…それがこの本屋の流儀であるらしい。通路にまで本が積み上げられており、その様相はさながら迷路である。何しろ1メートル先の本まで辿り着くのが一苦労なのだから。

 一歩足を踏み入れた瞬間、古い本の香りが鼻をつく。リザにとっては幼い頃から慣れ親しんだ懐かしい匂いだ。一歩進むごとに本で躓きそうになる。それを慎重に避けながら、リザは進んでいく。
 これまた本に埋もれたカウンターから、白髭の店主がちらりと視線をよこしたがすぐに読んでいた本へと顔を伏せてしまった。愛想の無い店主の態度はいつものことなので気にしない。泥棒の類でないならいいと判断されたのだろう。
 そうして、リザはロイが好む書がある一帯へとやってくる。本と本の間にかろうじて置かれた、木製の椅子。座るとぎしぎしという不安な音を立てるが、いくら重荷をかけても不思議と壊れない。ロイはいつもこの椅子の上にあぐらをかいて座り、錬金術書を読みふけっていた……。
 リザも真似をしようと、適当に何か読める本を探した。しかし専門的なタイトルが書かれた本ばかりで、どれを手にしたらいいのか分からなかった。
 
 ロイが居れば、嬉しそうにおすすめの本を教えてくれたのに。
 
 そんなことを思ってしまい、リザは一気に本を読む気をなくしてしまった。ここは自分が来る場所ではなかったようだ。と店を出ていく。
 と。
「……行くなら、これを渡してくれ」
 背中に声がかかって、リザは振り向いた。いつの間にか、店主が一冊の分厚い本を携えてたっていた。
「これは?」
「……やっこさんが、ずいぶんと探していた本だよ。先日ようやく入ってな。とっといたのに、ちっとも来やしない」
「……わざわざ、ありがとうございます」
 丁寧に頭を下げて、リザは本を受け取った。ずっしりとした重みに店主の心遣いを感じて、なんだか泣きたくなった。
「きっと喜ぶと思います」
「ああ。お代付けとく」
 もう用は済んだとばかりに店主は乱暴に手を振ってくる。
 それに、それでは、ともう一度丁寧に挨拶をしてリザは本屋を後にした。


 
 次にリザが向かったのは、ロイの行きつけの花屋だった。彼は市井の女性とデートをする時必ずそこで花を買っていた。こじんまりとした花屋だが豊富な種類の花が用意されており、また、客層に合わせてのフラワーアレンジメントをしてくれることで人気の店だ。
「あら、こんにちは」 
 リザの顔を見たとたん、花屋の看板娘がにっこりと笑って挨拶をしてきた。手には香りが強い華やかな花を持ち、くるくると見事な手際で綺麗な花束を作っている。
「今日はどんな花がご入り用ですか? 西や南から珍しい種類の花がいっぱい入って来てるんですよ。ほら、この花なんて綺麗でしょう? アエルゴ特産のお花なんですって」
 色鮮やかな赤い花を指さして、花屋の娘が明るく言う。
「あちこちの国と仲良くなったおかげで、外国のお花をたくさん仕入れることが出来るようになりました。どうぞ、閣下にもお礼を言っておいて下さいね」
「……ええ、もちろん」
 嬉しそうな娘の無邪気な顔を直視することが今のリザには出来ず、微妙に視線をそらしながら頷いた。すると何を誤解したのか、娘は何やら納得顔する。
「また貴方にデート用のお花を買って来させようってんですか、閣下は? 相変わらずデリカシーの無い方ですね」
「そういう訳では……」 
「まーた、かばう必要なんてないじゃありませんか」 
 日頃の行いがものを言ったのか、リザの否定を娘は信じてはくれなかった。
「会う女性に合わせて細かく花を指定して、時には花言葉にまでこって。
そりゃあ、うちには良いお客さんですけど、女性としてはどうかと思うんですよね、私」
 憤慨するように言った娘だが、そこでふっと表情が緩んだ。
「……でも、許せちゃいます」
「え? どうしてです?」
 突然怒りを引っ込めた彼女に、リザは首を傾げた。
「閣下が昔、ぽろっと言っていたからです。本当はね、これまでもこれからも、この店で買った全ての花を贈りたい女性はただ一人なんだ……って」
 そんなことあの顔で真剣に言われたら、不実も許せちゃいますよね。固まっているリザに、娘は笑顔で告げると。数本花を見繕って可愛らしい花束を作った。
「はい、これ。閣下に渡して下さい。近くに咲いている一番綺麗な花にちゃんとお水を上げて愛して上げてねって」
「あの……これ……」
「お代は閣下に付けとくわ」
 結局、リザは花を見る暇もなくロイへの花束を押しつけられて花屋を後にした。



 最後にリザが訪れたのは、ロイが好んでいたレストランだった。デートに使う高級な店ではない。老夫婦が営む、家庭料理が自慢のいわば飯屋である。
 飴色に磨かれた木製のテーブルと椅子。手作りとおぼしきテーブルクロスの裾に小さな花柄の刺繍がしてある。出された水はミントの葉が入って爽やか。リザの喉に詰まった重苦しいものを洗い流してくれるようだった。
 テーブルにメニュー伺いに現れた給仕係りの奥さんは、リザの顔を見るなりこう言った。
「あら~今日は閣下は一緒ではないの?」
「ええ、はい」
「そう。あの方も偉くなって忙しくなってしまったのねえ。きっとうちよりももっといいお店に行ってるでしょうし……」
「そんなことはありません。閣下はこちらのコンフィとビーフシチュー、デザートのザッハトルテが好きで……なかなか来られないのを、いつも嘆いておられます」
「まあそうなの。それは嬉しいわね」
「はい。本当にこちらの味を恋しく思っておいでですよ。何しろ、こちらのビーフシチューは閣下の一番の大好物ですから」
「あら」
 片方の眉を跳ね上げて、婦人は驚いた顔をする。それから心底おかしそうにころころと笑った。 
「まさか、それは違うわ。あの方の一番は、彼の大切な人が作るビーフシチューだそうよ。だから、うちは二番目なんだって申し訳なさげに言っていたわ。本当に、律儀な方よね」
 悪戯っぽく笑い、片目をつむる。突然の話にリザは面食らってしまい、それから居心地の悪い思いをした。婦人の視線がもう全て分かっているんですからね、と語っている。
 ああ、こんな所でも彼との思い出にばかりに出くわしてしまう。
 これでは、自分の逃走は意味がないではないか。
 こみ上げる想いを何とか押さえて、リザは婦人に笑顔で応対した。そして、食事を終えるとさっさとレストランを後にしようとする。
 だが。
「ああ、待って。これ、持って行ってね。閣下に日頃の感謝を込めて」
「……これは?」
「うちのザッハトルテよ。そろそろうちの味を思い出して下さいって言っておいてね。ああ、お代は今日の分も合わせて閣下に付けとくから心配ないわ」
 そうこうしているうちにぽんっと正方形の箱を渡されてしまう。本と比べれば軽いが、そこに詰まった重みにリザは小さく嘆息した。
「はい、必ず」
 慎重に頷くと、手を振る奥さんに見送られてリザはレストランを出た。


 
 レストランを出ると、既に空は夕暮れだった。ぽつぽつと街灯が付き始める中、周囲が赤く染まっていく。
 次はどこに行こうか……そう、夕日が見える場所がいい。
 そう考えながらリザはとある場所へと歩き出した。


 
 そこからは、セントラル・シティの街並みが一望できた。なだらかに曲線を描く丘の向こうに、日が沈んでいくのが見える。最後の光が一際眩しくリザの目を焼いていた。
「どうだった? 楽しかったかい? サボリ魔くん」
 穏やかな低い声を背中で聞いたのはその時だった。慣れ親しんだ気配が背後からどんどんと近づいてくる。それはそうだろう。結局リザは中央司令部の屋上へと戻って来たのだから。
「……サボリ、魔、なんて言われるのは心外です」
「ああ、そうだな。君がサボったのはこれが初めてだ。まったく。あの鬼の副官リザ・ホークアイが仕事を放棄して逃亡……なんて、前代未聞だったぞ」
 すぐ横に立った、彼の顔を見上げて。リザは一息に言った。 
「いいえ。思ったよりも、つまらなかった、です」
「ん?」
「……先ほどの質問の答えです」
「そうか。それは残念だ。これで、君にも私の気持ちが理解して貰えると思ったのに」
 言葉とは裏腹に彼――ロイはちっとも残念そうには見えない顔をしていた。どこか愉快だという風な、明るい顔。
 だから、リザは我慢できなくなった。
「貴方が連れて行かれてしまうというのに、これで楽しめていたら私は頭がおかしくなってしまったのでしょう」
 いえ、とリザは言葉を継ぐ。
「……おかしくなってしまいたかったのかもしれません」 
 
 アメストリス国軍事最高責任者、ロイ・マスタング大総統の過去の戦争責任を問う裁判が始まろうとしている。それに伴って、ロイはもうすぐセントラル刑務所に収容される。
 まだ国民にも、ロイに近しい軍人たちにも知られていない重大機密だ。
 リザでさえ、知らされたのは今日――今朝のことだった。
 それを聞いたリザは、仕事を放棄してセントラル司令部を飛び出したのだ。……ロイに対する、何よりも彼を救ってくれない世界に対する精一杯の抗議のつもりだったのかもしれない。   
「……おひとりで、他の者に類が及ばぬようにと、なさったのはご立派と申し上げるしかありません。罪には罰が、必要です……でも、貴方がいないと寂しい。貴方がいない世界は寂しいんです、閣下!!」
 私も、みんなも! 
 リザの血を吐くような叫びが、黄昏に響いた。ほのかな残照の中、辺りは徐々に青い闇が降りて来ている。
 
 ――逃げ出して全てを忘れてしまいたいと願っても、どこに行っても、貴方の痕跡があった。どこに行っても、貴方が居た。

 リザは公私を分ける女だった。ロイと一線を越える関係を持っていても、それを仕事に影響させたことなど無かった。
 だが、最後の最後だけは。
「この本も、お花も、ケーキも、全部全部貴方に贈られたものです。貴方がなさって来たことの結果です。みんな貴方が好きなんです…私も……だから、置いていかないで下さい……」
 もう泣くまいと、誓った。
 何度も弱い自分を嫌悪した。
 だが、リザは結局いつもロイに泣かされてしまう。
 ロイのためになら、何度でも素直な涙を流すのだ。
 太陽の残照を吸い取ったかのように、頬を滑り落ちた涙がきらきらと光った。煌めいて落ちて、消えていく。
 ロイの手がリザの頬に触れた。暖かいその温度に、涙腺はますます緩んでしまう。
「……もう君を泣かすまいと、決めていたのにな。すまない、すまない……」
「謝らないで下さい」
 謝られてはリザは困ってしまう。まるで、自分が駄々をこねる子供のように思えてしまう。いや、事実そうなのだ。もうどうにも出来ないことで、嫌だと泣いて訴えている。
 ……本当に、滑稽だ。でも、無駄だとも愚かだとも思わない。
 ロイを失うかもしれないというのに、今泣かなければ自分は、一体いつ、泣けばいいと言うのだ。  
「どうか、閣下…約束して下さい。必ずまた戻ると。サボって街に出て私に追いかけられて……街のみんなに仕方がないなと笑われると」
「ああ、努力する」
「本屋にも花屋にも飯屋にも全部お代を付けてあるんですから、戻られなければ閣下は借金踏み倒しですからね」
「……それは怖いな」
 ふっとロイの口元が歪んだ。リザが好きないつもの唇の端を引き上げる笑み、それをロイは失敗した。彼も、こみ上げるものをこらえているのだ。
 その瞬間リザのせき止めていた感情が全て決壊した。
 ロイの首に飛びついて、抱きつく。まるで、子供みたいな行為だったが、気にしなかった。
「マスタングさん、わたし、あなたに、会えて、良かった……あなたに渡せて良かった……」
 ずっとロイに言いたくて、言えずにいた言葉だった。
 背中を抱いたロイの手が、ぎゅっとひときわ強くリザを抱き込んだ。
「その言葉が聞けただけで、この道を選んで良かったと思えるよ。これ以上をよくばってはいけないかな」
「いいえ……いいえ! 貴方は無欲過ぎです、もっと欲張って下さい」
「そうか。なら、少しだけ欲張ってみようか……」
 ロイの手がリザの顎にかかる。軍部の中だと言うのに、くいっと持ち上げられてもリザは抵抗も忘れて身を任せていた。
「必ず戻って君と……」
 最後は言葉にならなかった。リザとロイの唇の中に吸い込まれていったからだ。
 だが、リザははっきりとロイのその言葉を聞いた。


 リザはロイからあの花屋からの花を貰った。
 白く可憐なその花の花言葉は、希望。
 リザはその花を抱いて、ロイの帰りを待っている。
 


END
*************************

泣き虫なリザちゃんですみません。毅然と中尉、が好きな方は注意。この後、いろいろありながらもロイアイはハッピーエンドなるので、大丈夫です(^^) ロイはきっと華麗に戻って来るでしょう。


曙光に続く

 


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by netzeth | 2016-02-28 19:11 | Comments(2)

理由は??

 楽しい土曜日の夜にこんばんはー(^^) 金曜日か土曜日の夜を延々繰り返すタイムリープしたい。そんなこと言ってると日曜日の夜か月曜日の朝をえんえん繰り返すリープにハマったりしてww

最近!!まじで!!本当に!!痩せた!!……ジョジョアニメ4部に備えてジョジョ風に言ってみました。びっくりマーク多いよね、ジョジョ。

痩せた理由を今後のために明らかにしておこうといろいろ考えたのですが、
1 腰の血行をよくするために半身浴をしている。
2 腰の筋肉しなやかにするために、適切な栄養をとっている。
3 腰痛改善のために骨盤の体操などをしている。
4 飲み物をオール麦茶にした。
5 毎日深夜にじゃがりこサラダ味をむさぼりくうのをやめた。

うめこ的には4かな~と思ってたのですが、5だろと家人に即答されたのでした。


ところでツイッターを始めました。
情報化社会においてけぼりにされてる感がずっとしていたので、ようやく時代に追いつこうと思ったとかそんな適当な理由と、日記に書くまでもない短い思いつきを呟けたらなと思いまして。まだツイッターの用語もマナーなどもさっぱりなので何か失礼があったら申し訳ないです…(^_^;) ご趣味の合うお方様がた、初心者丸出しですがwよろしくお願いいたします。

パソコンだとまだマシなのですが、スマホは文字うちすら今まで全然やって来ず(メールは未だにガラケー)アプリすらツイッターで初めて使うありさまで、スマホだと何をどうしていいのやら。ブログやピクシブを更新したよーみたいなお知らせツイートもやってみたいのですが、あのアドレスを貼るのどうやんのー??みたいなレベルで勉強中ですww

そのうちブログにツイッターのIDを貼ろうと思いますが、これもやり方勉強中なので、とりあえずここにアドレス貼っておきます。ツイッター よろしければ見てやって下さい(*^_^*)



拍手ありがとうございます!!
嬉しいです~ヽ(○´∀`)ノ
 
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by netzeth | 2016-02-28 02:00 | 日記 | Comments(0)

眠い…

【通販連絡事項】 2/26 1:00までに頂いたお申込みには全て確認メールを返信済みです。メールが届いてないよ~という方はご一報下さいませ~。


春が近いからでしょうか、最近眠いです。こんばんは。
椅子の上活動限界時間…というとエヴァっぽくていい感じですが、マジで20分座ってると腰が痛いわーてなだけの話。今はアーユルチェアーというのが気になっている。ちなみにテンピュールは劇的に楽にはならんかった。

リザパパお墓前の「他の家族や親戚はいないのか?」の増田のセリフ読むたびに、何でプロポーズしてかっさらっていかないの?っていまだに腑に落ちない。押したらイケた絶対。
増田はリザたんに対しては変にぴゅわなとこありそう。他の女性とのデートはシティ派なのに、リザたんとは星を見に行っちゃう。リザたんは特別感( ˘ω˘ ) 


拍手ありがとうございます(*^_^*)







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by netzeth | 2016-02-26 02:05 | 日記 | Comments(0)

グッド・モーニング

 早起きは三文の得……というのははるか東の島国のことわざらしい。アメストリスにも似たような言い回しがあるので、なるほど早朝の行動を是とするのは万国共通であるようだ。
 
 ……眠い、だるい、気持ち悪い…何の得もあるものか。

 東方司令部の通用門をくぐり、建物へと続く長い階段をロイはぼんやりと見上げていた。寝不足から瞼が持ち上がらず疲れで身体が重い。おまけに酒の飲み過ぎで気分も良くない。この心臓破りの階段を登る気も起きず、深くため息を吐く。司令部が高い場所にあるのは軍人としての基礎体力作りの一環と言われいるが、今は忌々しいことこの上ない。
 昨夜は情報収集のため、幾人もの女性たちと会った。その過程で飲酒もした。特に酒に強い訳でもないロイにとっては、なかなかきつかったが、付き合いというものがある。女性たちにいい気分で話をして貰うためには、必要不可欠であった。
 そうして、飲みたくもない酒を何杯も飲み、営業スマイルを振りまき、世辞で舌をフル回転させて。結局、大した収穫はなかったのだから、より一層疲れを感じるというものだ。
 既に時刻は朝、家に帰る気にもならず直接司令部に登庁した。
 体調、気分共に最悪である。
「ん?」
 寝不足のせいで霞む視界に、金色が飛び込んできたのはその時だった。前方の階段上に誰かいる。まだ薄暗い周囲の青い闇にとけ込むように軍服の青が動いていた。きっちりとまとめた金色の髪と見慣れた華奢なシルエット。
 部下のリザ・ホークアイ中尉である。
(日勤だというのに、こんな早朝に出勤していたのか……)
 真面目な彼女ならありえることだ。毎朝ロイが出勤した時にきっちりと仕事の準備が整えられているのは、こういうリザの努力故なのだろう。
 上司として、ねぎらいの言葉の一つでもかけてやらねばなるまい。
 声をかけるべく、ロイは階段を登る。一段二段……と、リザに近づいていく。瞬く間にその距離は縮まって。
(……変だな)
 リザがまったく移動していないのに気づいて、ロイも動きを止めた。先ほどから、彼女は階段を不自然なほどに遅く登っているのだ。
 何事なのだろうか、と疑問に思った瞬間。
「……ほら、もう少しよ、頑張って」
 珍しく感情のこもった必死な声が耳に入り、続いて彼女の足下が見えて。ロイの疑問は一気にとけた。
 むくむくした小さな黒と白の塊が動いていたのだ。リザの愛犬のブラックハヤテ号である。まだ赤ちゃんと言ってもいい子犬の手足は短く、彼は階段を登るのに四苦八苦していたのだ。
 前足を上段において、うんしょと身体を持ち上げる。そうして立ち上がる格好になってから、後ろ足を片足、上段にかけるのだ。階段の段差は小さな体躯と同じくらい。成犬ほどに体力もジャンプ力もない子犬には登るのは難しい。
 それをリザは見守っている。抱き上げて運べばなんてことはない、距離だ。だがそれをせず、あくまでも子犬自身の頑張りを彼女は応援している。
「……あっ」
 時折、子犬の脚が滑って落ちそうになる。その度にリザの手が伸びて子犬を支えようとする。だが、すぐに思い直したように彼女は手を引っ込めるのだ。
「大丈夫。お前は強い子ですもの、出来るわ」
 リザの言葉は、まるで自分に言い聞かせているようだった。
 甘やかすのは子犬のために良くないと、我慢しているのだろう。
 
 ……まるで、母親のようだな。

 子犬に愛情を注ぐリザを見て、ロイはそんな感想を抱く。厳しく、でも限りなく優しく、子犬を見守る彼女に確かに母性を感じた。
「ほらっ、あとちょっと!!」
 だからリザと黒犬をロイも見守ることにした。もう少し、そんな彼女を見ているのも悪くないと思ったのだ。それに、頑張るハヤテ号を見ているとロイも手に汗握る気分だった。自然と応援にも熱がこもる。
 そうして、よちよちとした足取りながらも、くじけることなく果敢に階段に挑んでいた毛玉は、とうとう最上段へと辿りついた。
(おお、よくやったな!)
 感嘆したその瞬間、ロイの目の前では信じられない光景が展開された。
「よくやったわ!」
 リザの手が子犬をさっと抱え上げたのだ。胸に抱きしめて、彼女はそのままぴょんぴょんと飛び跳ねる。まるで少女のように軽やかに。嬉しくて仕方がないという風に、全開の笑顔で。それから、子犬にスリスリと頬ずりをして。偉いわ、すごいわと誉めちぎった。 

 ……ああ、良いものを見た。

 鬼の副官のありえない姿に度肝を抜かれると同時に、疲れがすっ飛んでいく気がした。まるで心に春風が吹いたかのような、幸福感に包まれる。
 ことわざはあながち、嘘ではなかった。
 (ヒューズの奴じゃあないが、写真にとって焼き増しして、自宅と仕事場と胸元に常備したい……)
 リザの可愛らしい姿を、常にその手にしておきたい。独り占めしたい。そんな欲望に駆られてしまった。
「きゃん!」
「え……?」
 その時、子犬が吠えた。彼は後ろに居るロイを察知したらしい。続いてリザが振り向いて、ばっちりと目があった。
 ――その瞬間の彼女の顔も、ロイは写真にとっておきたいと心底思った。
 が、残念ながら、写真機は手元にない。だから、代わりに脳裏に焼き付けることにする。
「やあ、中尉。おはよう、早いな。ハヤテ号もおはよう」
「は、はい……大佐の方こそお早いですね。おはようございます……」
 常になく挙動が怪しいリザに、ロイは吹き出しそうになる。ロイに先ほどの醜態を見られたのではないかと、焦っているに違いない。
 副官のメンツのためにロイは素知らぬふりをしてやった。
「そうだな。たまにはな」
 ロイに何も言われ無かったことに安堵したのか、リザはあからさまにホッとした顔をした。ロイは笑いをこらえるのに必死だ。
 子犬はふりふりと尻尾を振ってロイとリザを見比べている。まるで、僕は大佐居るのを知ってたよ! と言いたげに。
「それでは、はりきって書類を処理していただけますね。締め切りが迫っている案件が何件かあるんです」
「おいおい…勘弁してくれよ」
 こちとら徹夜明けである。あまり激しい勤務は勘弁願いたい。しかし、ロイの顔を見て仕事モードに入ってしまったらしいリザは止まらなかった。
「いいえ、大佐がせっかく遅刻ギリギリでなく出勤して下さったんですから。副官としてこの機会を逃す手はございません」
 ぴしゃり、と言い切る副官にやれやれとロイは頭をかいた。これは今日はハードな一日になりそうだなと覚悟を決める。そうしてため息を吐くと、嘆く様子のロイにリザの表情が少しだけ緩んだ。
「……真面目にやって下さいますなら、少しくらいご褒美を考えますよ」
 きっとリザの言うご褒美とは、休憩時間を長めに取ったり、ロイの好きな甘いものを差し入れする……と言った類のことだったのだろう。
 しかし。
「……なら、私もこいつみたいに誉められたいな」 
 ロイは、誘惑に耐えきれなかった。リザが慌てふためき、羞恥に頬を染めるのを見たいという誘惑に。そして、心に秘めて置こうという決意をあっさりと覆して指摘してやった。
「……!!」
 絶句したリザの顔がみるみる内に赤くなる。そんな彼女にニヤリと笑いかけて、階段を颯爽と登ったロイはすれ違いざまにポンとその肩を叩いた。
「期待しているよ」
「……大佐!!」
 はははっと笑いながら、足取りも軽くロイは司令部へと向かう。
 早起きは三文の得。今日は良い日になりそうだと愉快に思いながら。
 
 ――重苦しい疲労はいつのまにか全て消え去っていた。



END
***********************

マスタンはリザたん居れば元気はつらつ、おろなみん。ぴょんぴょんするリザたんが書きたかった。

 


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by netzeth | 2016-02-21 23:56 | Comments(0)

今年は

【通販連絡事項】 2/21 23:00までに頂いたお申込みには全て確認メールを返信済みです。メールが届いてないよ~という方はご一報下さいませ~。


今年ってオリンピックイヤーなんですね、2月が29日まであると気づいてようやく思い至りました。オリンピック好きなので楽しみです(^^)えーと…リオでしたっけ? ということは日本の裏側ということで深夜放送になるのかな。わー寝不足になりそう♪でも眠い目を擦りながら仕事行くのもオリンピックの醍醐味ということで☆よーしガンガン録画すんぞ!

自分でリザたんにハニートラップを命じておきながら、いざリザたんがエリザベスとして男を誘惑しているのを見ると耐えきれなくなっちゃうロイの話書きたい。野望と女の間で苦悩する男……。どこまでも自分勝手にリザたんに嫉妬をぶつける感じで、ゾクゾク来るww



拍手ありがとうございます(^^)





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by netzeth | 2016-02-21 23:41 | 日記 | Comments(0)

明日は猫の日らしい

【通販連絡事項】 2/21 17:00までに頂いたお申込みには全て確認メールを返信済みです。メールが届いてないよ~という方はご一報下さいませ~。


とにかく明るいマスタングというフレーズが頭から離れないうめこですこんにちは。ズボンより普通にミニスカが好き♪って、これは別人だわ。

テンピュールのクッションと背宛てを買ってみた。出来れば何時間でも椅子に座っているの平気になりたいなー。最近腰の調子はいい感じなので、このまま完治!させたいです。

〆切が迫っていたので、5月のスパコミの申し込みを済ませました。申し込み欄にカップリングを書く欄があるのですが、普通にリザ・マスタングと入力してしまった。……私は間違ってない( ˘ω˘ ) 治したけどww

牛先生ってうめこの記憶が確かならば……キスシーンをお描きになったことありませんよね?? ロイアイの初キスを妄想するの楽しい。若ロイ仔リザ時代に済ませてるのかなあ…とか、その場合転んでその拍子にみたいなベタベタな展開がいいなとか。大人になってからだと、眠っているロイ&リザにこっそり…とか。それかロイがリザたんを部屋まで送って行って別れ際…リザたんの可愛さにロイがぐらっと来て、背中を向けたリザたんの腕をつかみくるっちゅーの強引に奪う系でも可。

うめこはバックトウザフィーチャーとか時かけとかタイムリープとかシュタインズゲートとかひぐらしとかいわゆるリープものタイムトラベルものが好きなのですが、ロイアイタイムリープ妄想が最近熱いです。いろんな二次創作でもお見かけしますが、切なくて燃える展開のお話が多いですよね。あーロイアイタイムリープ話いいなー。

そういえば。
仕事しないマスタングがリザたんにお説教されて、「まったく、何をお考えになっているのですか!」と言われて「君のこと」って返してリザたんが赤くなるって話読みたい。


拍手ありがとうございます!とっても嬉しいです(・´ω`・)






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by netzeth | 2016-02-21 17:55 | 日記 | Comments(0)

暖かかったり寒かったり

【通販連絡事項】 2/17 0:00までに頂いたお申込みには全て確認メールを返信済みです。メールが届いてないよ~という方はご一報下さいませ~。


早咲きの桜が咲いていたので写真にとるべーと思ってたらもう葉桜になっていた。早い!金曜日から月曜日でこうなったので、やっぱり土日の暖かさが原因か。あのままで良かったのに…と思います。寒さ、戻りましたね。寒いと動かなくなる生き物です。そんな生き物が動かないと痛くなる腰痛を発症するとか、業が深いと思いました。この万年引きこもりインドア人間にはきついです。趣味を主にロイアイ妄想をしたりお話を書いたりすること……から、お外で元気にスポーツすることに変えろと!? ははははっ、無理。せめて日本各地にロイアイ聖地でもあれば巡礼の旅に出るのですけどねえ……東方司令部とかホークアイ邸とか。そういう場所がある系の作品がちょっと羨ましくなりました(^^)

私は熱狂的に好きな特定のアーティストとかアイドルとか居ない人間なので、音楽も曲が気に入ればジャンル、歌い手問わずで買います。だから、この人が好きだからこの人が歌っているから買う!という感覚がよく分からなかったのですが。ロイアイがアルバム出したら? という脳内シュミレーションに買う!保存用と2枚買う!ライブもいく!と即答できたので、なるほど、歌っている人が好きだから買う!会いに行きたい!という感覚を大変よく理解できました。という訳でセカンドシングル出してくれてもいいのよ?とノーセンキュー以来思っています。

銃撃に合ったロイが懐からマスタン財布取り出して、やれやれこれが無かったら即死だったぜ……ふう。みたいな夢を見た。それは弾除けとして使うものではない。おそらく、マスタン財布を楽しみにしているのだと思われます。


拍手ありがとうございます(*^_^*)








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by netzeth | 2016-02-17 00:26 | 日記 | Comments(0)

独占

「では行ってらっしゃいませ」
「ああ」
仕事を終え夜の街にでも繰り出すかと考えていたレベッカ・カタリナは、東方司令部の通用門で思わぬ光景を目にした。
リザが軍服でロイが私服という取り合わせ。つまり、親友がその上司をお見送りしている場面だ。
男は三つ揃いのスーツに上等なオーバーコートを羽織り、白いマフラーを首からかけた小洒落た格好。ピカピカに磨かれた靴と離れていても仄かに香るオードトワレ。どう見積もっても仕事に向かうようには見えない。
一部始終をこっそり眺めていると、2人はレベッカに気づいていないのか、
「あ、大佐。お待ちを」
「うん?」
「御髪が乱れております。それにネクタイも曲がって…」
なんて、まるで夫婦のようなやり取りを始める。
リザの手がロイの髪を優しく撫でつけ、するりとネクタイを整えていく。
ただの副官にしては手慣れ過ぎている鮮やかな手並みに、見てるこっちが恥ずかしいわ、とレベッカは呆れた。
あれほどの親密さを見せつけておいて、ただの上司部下だと主張するのは無理がある。
事実2人がただならぬ仲であるのを、レベッカは知っていた。
「それでは、お気をつけて。……あまり羽目を外さないで下さいね」
「分かってるよ」
軽く手を上げて、ロイが出かけていく。その後ろ姿をしばらくの間リザはじっと見つめていた。
「……旦那のお見送りご苦労様」
タイミングを見計らって声をかける。すると、リザが驚いたように振り向いた。
「レベッカ…居たの?」
「ええええ、居ましたよ、ずっと」
「もっと早くに声をかけてくれても良かったのに」
「あんたと旦那があまりにも2人の世界だったもんだから、声かけちゃ悪いと思ったのよ」
「何よ、それ」
冗談だととったのか、リザはくすくす笑う。いや冗談じゃないんだけど…とレベッカは心中でツッコミを入れた。
「まあ、いいわ。ところで御仁はどこにお出かけ? ずいぶんと気合いの入った格好してたけど」
純粋に興味本位で問いかけた疑問には、
「デートよ」
という、(ほとんど)妻からの爆弾発言が返って来た。あまりにもあっさり言うものだから。
「……相手はヒューズ中佐とか?」
そうであってくれ、と願いながら恐る恐る言えば。
「いいえ? 懇意にしている女性とよ」
リザは清々しいまでの浮気容認発言をしてくれて。レベッカは頭を抱えたくなった。
「……あんたたちの電気コード並みにこんがらがって捻れた複雑な関係は察してるけどさ。それはこころよく送り出したらダメじゃない?」
「あらどうして?」
「どうしてって……御仁はあんたの…その、良い人でしょう」
人の気配はなかったが、はっきりと口に出すのは憚られて、曖昧に濁す。
ロイとリザは秘密にはしているが、男女の仲だ。体だけではないお互いに深く愛し合う関係。
レベッカは部外者だが、親友としてリザの気持ちくらい分かっているつもりだ。
「そうね。でも仕方ないわ。あの人は皆のマスタング大佐、皆のロイさんなんですもの」
「何よそれ」
「ロイさんロイさんって、女の子達に慕われるのが仕事なの」
「いや、言わんとしてることは分かるけどさ…」
国軍大佐として東方司令部司令官として、そしてその野心を軟派な男の仮面で押し隠す身として。
ロイにも守るべき体面がある。
街の女達と交流するのも、ロイ・マスタングという偶像を維持するために必要なのだろう。
「それってあんたは嫌じゃないの」
「別に平気よ。それがあの人のためになるのなら」
「でもさぁ…」
相変わらずロイに献身的過ぎる親友に、レベッカは危機感を覚えた。
それは、それこそ男にとって都合のいい女ではなかろうか。あの御仁に限ってリザをそんな風に扱いはすまいが…万が一にもリザがないがしろにされるようならば親友としてレベッカは黙っていられない。
「私は大丈夫よ、レベッカ。心配してくれてありがとう」
まるでレベッカの心を読み取ったかのように、リザが微笑む。そこには何の虚勢もなかった。彼女は心からそう言っている。
はあ…とレベッカはため息をつく。
「……当人同士が納得してるなら、あたしが口出す権利はないけどさあ」
それでも、とレベッカは思ってしまう。女なら誰しも恋人を自分だけのものにしたい…という独占欲があるものだろうと。
「まったく。聖人か何か? あんたには人並みに欲ってもんはないの?」
「あるわよ」
さも当然という顔でリザが言ったので、思わぬ返答にレベッカはへ? と間抜けな顔をしてしまった。
「私はあの人を独占したいんじゃない……あの人に独占されたいの」
それが私の望み。うっとりとしかし力強く断言したリザに、レベッカは呆気に取られる。
もしかして。苦労しているのはリザじゃなくてロイの方なのではなかろうか。
並々ならぬリザの執着心と歪んだ欲望に、レベッカは先ほどとは違った意味の危機感を覚えたのだった。




END
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by netzeth | 2016-02-16 23:57 | Comments(0)

シンプル

コトを終えると男は女に興味をなくすと言うが、彼――ロイはいつまでも自分に構いたがる。彼が特殊なのか、はたまた世間の認識が間違っているのか。ロイしか知らないリザには分からないが、少なくとも優しく触れられるのは嫌いではなかった。
「髪……短くなってしまったな」
 髪を撫でていたロイの手が一瞬止まる。声には隠しきれない名残惜しさが滲んでいて。うっとりと男に身を任せていたリザは顔を上げた。
「短いのはお嫌いですか?」
「……いいや。短かろうが長かろうが君は素敵だよ。ただ……」
「ただ?」
「君は突然髪型を変えるから。その度に私は心穏やかじゃない」
 思わぬロイの告白に、リザは新鮮な驚きを味わう。たかだが髪型を変えるだけの女の行動に、彼が一喜一憂しているとは思ってもみなかった。女性相手に臆面もなく、似合うね、素敵だよ、と誉め言葉を贈るこの男が。
「そんな、髪くらいで大げさですよ」
「大げさなものか。髪は女の命と言うだろう。私の経験上女性が髪型を変える時は何かしら心境の変化があった時だ」
「…………」
 大真面目にそう指摘するロイに、リザは沈黙した。
 何故なら、ある意味それは正解だと思ったからだ。確かに、リザが髪を伸ばしたのも切ったのにも理由があった。
「……以前、君が髪を伸ばし始めた時、私は何故と尋ねたな?」
「はい」
「君はこう答えた。……リゼンブールで会った女の子を見て、伸ばすのもいいと思ったから、と」 
「その通りです」
 頷きながらリザは過去を思い起こす。
 リゼンブールで出会った少女――ウィンリィ・ロックベル。今は母となった彼女を見て、リザはロングもいいと思ったのだ。
 それは実にシンプルなきっかけであった。実際、親友にシンプルねと驚かれたのも覚えている。
「私は君らしいシンプルな理由だな、と笑った」
「ええ、そうでしたね」
 もちろん、それも記憶している。あの時、ロイは何故か安堵したかのような笑みを浮かべていた……。
「だがな、きっとそれだけじゃ無いのだろうとも思ったのだよ、私は」
「え?」
 思わず聞き返せば、ロイが言葉を続けた。ぴったりとくっついているので、彼の低い声が直接身体の内に響いて来る。とても心地が良い。
「その女の子……とはウィンリィ嬢のことだろう? あの子を見て、君が何を思ったのか想像は難くなかったよ」
 確かに、ロイならば簡単にリザの胸のうちなど読んでしまっただろう。
 心の中で首肯しながら、リザは思う。
 あの頃のリザはがむしゃらに己の道を邁進していた。ロイを護り彼を上に押し上げるため、自分がその礎となるのも辞さない覚悟でただひたむきに。自分のことは後回しにし、国民のために国に尽くすことこそ罪滅ぼしになるのだと信じていた。
 だからこそ、リザの目には兄弟を思って泣くウィンリィが眩しく映ったのだ。自分の気持ちを素直に吐露し、連れて行かないでと願った彼女。ともすれば、相手の都合を考えぬ自分勝手とも取れるわがままだ。
 けれど、リザにはその子供らしい純真無垢さが羨ましかった。
 だから、髪を伸ばした。少しでも自分の気持ちに素直になれたら……頑なな自分を変えられたらと思ったのだ。
「それが、どうだ。君は急に髪を切ってしまった。今度は一体どんな心境の変化だ?……私は君に振り回されっぱなしだよ」 
 やれやれ……とロイがぼやく。自分の髪型一つをそこまでロイが気にかけていたとは思わず、リザは驚く。そして、ロイが分からないと首を捻るのをおかしく思った。 
 リザが髪を切った理由は、伸ばした理由と同じにシンプルだったからだ。
 ……もう、外見だけ似せて願いをかけるようなまねをする必要がなくなったというだけ。
 ロイに心も体も預けて、リザの想いは昇華された。
 もう、あの少女を羨む必要はなくなったというだけだ。リザはリザだ。自分の想いを大切にし、自分らしくあればいいだけ。髪型など関係ない。
「なあ? 今度はどういう訳で髪を切ってしまったんだ?……もういいのか?」
 彼と褥を共にする程に自分の気持ちを素直に受け入れられるようになった今は、もういい。
 しかし、それを素直に口にするのは流石に照れが勝って。代わりに行動で示すことにする。
「ん」
 身体を起こして、ロイの頬に優しく手を添えた。愛しい唇に己のそれをそっと落とす。重ねたそこから、心が伝わるように。
「んん……」
 ロイの手が持ち上がって、リザの後頭部に当てられた。それから再び髪をなで下ろしていく。優しく何度も何度も金の糸を梳いた。
「……長いのがよろしければ、伸ばしましょうか?」
 唇を離して、至近距離で見つめ合う。ロイの黒い瞳をのぞき込んで、リザはその真意を探ろうとした。
 男の趣味に合わせたいと思うほどには、リザにも女心がある。そういう素直な自分を今は許せるようになっていた。
「そうだな。だが……長いのもいいが、セミロングも良かった。変わっていく君の魅力にずっと私はやられていたよ。……結局、君ならば私はなんでもいいみたいだ」
「……もう。そんなこと言われて、私はどうすればいいんですか」
 ベッドの上にいてさえ恥ずかし過ぎるロイの台詞に、リザは改めて頬を染めたのだった。 




END
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by netzeth | 2016-02-14 21:05 | Comments(0)