うめ屋


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by netzeth
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花言葉

「これを私に?」
「ああ! 君にぴったりだと思って、明るくて綺麗な色だろ?」
「ありがとうございます……マスタングさん」


「なあ、中尉はプレゼントに何を貰うと嬉しい?」
東方司令部にやって来ていたエドワードが発した唐突な質問に、リザはお茶を用意していた手を止めてエドワードを見返した。珍しく弟のアルフォンスを連れずにやってきたエドワードは、生憎ロイが会議中だったため彼を待っているところだ。
「プレゼント?」
「そ、プレゼント」
エドワードは伺うようにジッとリザを見ている。リザはエドワードの意図は何だろうと考えて、そして、直ぐにピンと来るものがあった。
「もしかして……女の子にプレゼント? あ、あの幼馴染みの……ウィンリィちゃん?」
「な、何言ってるんだよ!」
どうやら図星らしい。
エドワードの幼馴染みのウィンリィとは、ずいぶん前に一度会ったきりだが、今頃はきっと綺麗に成長しているだろう。どうやらエドワードは彼女にプレゼントをしたいらしいが、何をプレゼントしたらいいか分からなくて、女性であるリザに聞いたのだろう。
「エドワード君が選んだものなら、何でも喜ぶんじゃないかしら?」
「そんな事ないぜ、この前買っていった、カッコいいブローチの反応微妙だったしなあ」
「どんなブローチだったの?」
「こう、髑髏にトゲトゲがついてて……」
「……分かったわ」
エドワードのセンスで選ぶと、どうも問題ありらしい。それならば、とリザは代案を提案してやることにする。
「お花なんかどうかしら」
「花? そんなんで喜ぶのかなあ」
「あら、女の子は誰でもお花を貰うと嬉しいものよ」
……花ならば、エドワードのセンスも関係あるまい。
「ふ~ん、でも花って言ってもいろいろあるだろ?」
「そうね……ねえエドワード君。花言葉って知ってる?」
「それくらいは知ってるよ」
うふふ、とリザは悪戯っぽく笑って。
「花を選ぶ時はね、花の見た目だけじゃなくて花言葉にも気をつけないといけないのよ。じゃないと後で後悔するわ」
「もしかして、体験談?」
「……昔、ね」


ロイに貰った花を花瓶に生けたのは良いが、数日経ってさすがに少し萎れてきた。長持ちするように砂糖を入れておいたがもう限界だろうか。せっかく貰った花を処分してしまうのは嫌だ。どうしたらずっと残しておけるだろうかとリザは思案して。ドライフラワーにしたらどうだろうと思いついた。
そうと決まればまだ綺麗なうちに作ってしまおう。
そうして手早く花を紐で束ね、風通しの良い日陰に吊したところで、リザは後ろから声をかけられた。
「リザ……」
「マスタングさん?」
振り向くとどこか元気のない様子のロイが立っていた。
「その……この前あげた花の事なんだけど……」
「あ、はい。ずっと残しておける様に今ドライフラワーに……」
 吊るしたドライフラワーを指さすが、しかしそんなリザの仕草などロイは目に入っていない様だった。そして、思い詰めた表情で叫ぶ。
「な、無かった事にして欲しいんだ! その、本当に知らなくて……」
「え?」
「俺はそんな事絶対思ってないからっ。……まさか色が違うとあんな花言葉になるなんて知らなくて……」
「花言葉?」
「と、とにかくゴメン!」
せっかくドライフラワーにするために吊した花を見て貰おうと思ったのに、ロイは自分の言いたい事だけ言うと部屋を出ていってしまった。
「……どうしたのかしら……」
普通でなかったロイの様子が気になる。花言葉がどうとか言っていたけれど。
理由を突き止めたくて、その後すぐにリザは街の本屋に行き花言葉に関する本を手に取った。
「え~と……あ、あった」
ロイに貰った黄色いカーネーションの花言葉は。
『軽蔑』
確かにそう記されていた。


「ははは! 誰だか知らないけど、間抜けな奴だな!」
リザの昔話を聞いて遠慮なくエドワードは大笑いする。
「そうね……花をくれた人はずいぶん落ち込んでいたみたいだったわ。同じ花でも色によって花言葉が違うから、エドワード君は気をつけないとダメよ」
「分かってるって、俺はそんな間抜けじゃないからなー」
ふんっと胸を張ったエドワードの頭が叩かれたのは、その時ことだった。
「鋼の。軍部はお前の喫茶室じゃないぞ」
振り向いたエドワードの視線の先に、いつの間に戻ってきたのかロイが立っていた。お茶を飲んで寛いでいるエドワードが気に入らなかったらしい。彼はむすりとしてご機嫌斜めな様子だ。
「誰かさんが居ないのが悪いんだろうがっ」
早速噛み付くエドワードを煩そうに見て、
「話は私の執務室で聞く。ほら、とっとと行きたまえ」
ロイはエドワードを顎で促した。まだブツブツ文句を言いながらも本来の目的を思い出したのか、エドワードは大人しく部屋を出て行く。
ロイもエドワードに続いて出て行くかと思ったが、彼はその場に止どまって、無言でリザを見た。への字に曲げた口が不機嫌ですと主張している。それがロイの拗ねている時の癖だとリザは知っていた。
「どうしたんです?」
「……間抜けで悪かったな」
「……! 聞いてらしたんですか」
「入ろうとしたら、君があの話をしているのが聞こえたんだ。入るに入れなかった」
何も鋼のにしなくても良いだろう……不本意そうに言う様がロイの顔があまりに子供っぽくて、リザは思わず笑ってしまった。
「何がおかしいんだ!」
「すいません……。でも、大佐。私は人生の先輩としてアドバイスしてあげただけですよ? だって、花言葉を知らないとあんなに落ち込む事になるんですから」
――あの時のロイのションボリした姿は忘れられない。
「あ、あれは、若気の至りってやつだ! もう忘れてくれ! 今の私はそんな事ないからなっ。そうだ、その証拠に今度中尉に花をプレゼントする」
 むきになってロイはそんな事を言い出した。それにリザは苦笑しながらも釘を刺してやる。
「赤薔薇とかベタなのはやめて下さいね」
「うっ、わ、分かった。君にぴったりの花を贈るよ」
「楽しみにしておきます」
……実を言えば、あの時の自分は花言葉なんてどうでも良くて、ただロイが自分に花を贈ってくれた事が嬉しかったのだけども。
さてどんな花を贈ってくれる事やら。
早速悩む様子のロイを見やって、リザはそっと一人微笑んだ。




END
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# by netzeth | 2010-01-29 21:08 | Comments(0)