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by netzeth
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ペコーdeパラレル☆Ep1(後編)

ペコーさんは目の前の男がロッカーから出て犯人に忍びよるのを、鏡に写っている事で気付きました。
そこで注意を逸すために声を上げたのでした。
「貴方は?」
「客ですよ。幸い店内にいたのでやつらに気付かれないうちにここに隠れる事ができました」
「何故逃げなかったんです?」
男は肩を竦め、
「一応軍人なんでね。逃げる訳にはいきませんよ」
そう言ってダークカラーの洒落たスーツの脇を開けて見せます。そこにはガンホルダーが装着されていました。
この男が店内の客や従業員を誘導して素早く逃がしたに違いない――とペコーさんは思いました。
男は軍人とはいえ、この非常時にやけに落ち着いています。百戦錬磨の修羅場を潜ってきた者だけがもちうる特有の余裕がありました。
若く、自分とそう変わらない年齢に見え、軍人のイカついイメージとはかけ離れています。外見だけみれば優男に見えるかもしれません。
「そういう貴方こそ何者です。なかなか物騒なモノをお持ちのようだ。一般市民にしては」
男はペコーさんの太腿に忍ばせた銃に気付いている様です。
ペコーさんは自分の立場と今の状況を説明しました。店内のいる犯人の人数と武器の種類なども詳しく話しました。
「エイゼルシュタイン教授の娘さんが……下手に動けんな」
男はアゴに手をあてジッと考えこんでいます。そして、
「一つ考えがある。私はやつらにとってのイレギュラーだ。それを利用しない手はない」
男はペコーさんに己の作戦を伝えます。それを聞き、ペコーさんも了承しました。男の作戦はかなり危険な賭けですが、他に良い手もありません。
その時です、
「おいっ、まだかよ」
隣りの部屋の男が痺れを切らした様です。
「憲兵達がお出ましのようだぜ! そろそろいかないとリーダーにどやされるぜ」
今入って来られるのはまずいと、ペコーさんはとっさに、先ほどの様な男を誘う甘い声を出しました。
「あああっんっんっあん!」
「ちっ、早くしろよ」
「……早くして下さい」
何とかその場は誤魔化せましたが、恥ずかしさに顔を赤くしながら、ペコーさんは軍人だという男を促しました。
「ん、ああ。しかし……君の声は心臓に良くないな……」
ぼそっと男が呟いた言葉に、またもや恥ずかしくてペコーさんは顔から火が出るおもいでした。


「ずいぶんとお愉しみだったな」
ペコーさんとペコーさんをロッカールームへと連れて行った覆面男が事務所に戻ってくると、ペコ―さんの乱れた胸元や髪、上気して赤く染まった頬を見て物欲しそうに待っていた男が言いました。
「今リーダーが交渉中だ。俺は裏口を見張る。お前は戻れよ」
連れが頷くのを見て、男はバリケードで塞いだドアを警戒します。瞬間、
「うっ・・・」
男が崩れ落ちました。
「うまくいったか」
男を後ろから銃で殴り倒して、覆面をとったのは先ほどの軍人さんです。
「ええ」
身ぐるみを剥ぎ、軍人さんは男の仲間と入れ替わっていたのでした。
軍人さんは手早くその辺りにあるもので、倒れた男の覆面をとり猿轡をかませ縛り上げました。
「こいつらはおそらく、連続強盗団の獣の牙一味だ」
「強盗団・・・獣の牙なら聞いた事あります。少し前までセントラルなどで騒がれていましたね」
「ああ、セントラルのやつらが取り逃がして、お鉢がこっちに回ってきたんだ。まったく使えん」
軍人の歯に絹きせぬモノ言いに、ペコーさんはこんな状況だというのに思わず笑ってしまいました。軍人さんの腹を立てむうっとした様子が思いのほか子供っぽくて不覚にも可愛いなとちょっと思ってしまったのでした。
ペコーさんに笑われた軍人さんは失礼お嬢さんと慌てて取り繕った笑みを浮かべます。
「軍ではやつらの襲いそうな店に網を張っていたんです。今までの襲撃パターンから割り出してね。どうやら当たったようですが……、どうもポカをしたようだ」
おそらく押し入った店で目的を果たせず、逆に憲兵から追われ、このカフェに逃げ込んだのだろうと軍人さんは言いました。
「ということは、要求は足の確保と逃走時の安全……でしょうね」
「ああ」
「軍は要求呑みますか?」
「簡単には呑まない・・・呑んだところで意味が無いからだ。今までのやり口からしてやつらは要求を叶えても人質を無事に解放するとは限らない・・・」
ペコーさんも同意見でした。
獣の牙というのはただの泥棒ではなく、とにかく邪魔するものは排除する悪逆非道の強盗団として知られているのです。その手口は夜中にそうっと忍び込むなんてものではなく、白昼堂々押し入り、その強力な武器であっと言う間に邪魔者を片付けるといったもの。その犯行時間は極めて短く、憲兵隊が駆けつける頃には遺体以外何にも残っていない――それが強盗団獣の牙なのです。憲兵隊では手がつけられないということで軍が動いていたのですが、セントラルでは芳しい成果をあげる事ができず、獣の牙が次のターゲットをイーストシティに定めたという情報をききつけた東方司令部が警戒していたのです。
「おそらく人質救出のための別部隊が動いているはずだ。だが、突入は今の状況では無理だろう。リスクが大きすぎる」
「では、軍は人質の安全を一番に考えていると思って良いんですね?」
「当然です」
黒髪の軍人さんが当たり前だと言わんばかりの表情で頷いたので、ペコーさんは彼を信じようと思いました。
実はペコーさんは軍が強行策に出るのではないかと懐疑的だったのです。ペコーさんの住むアメストリスはいわゆる軍事独裁国家なのです。軍が一番偉いのです。ましてや既に何十人もの犠牲者を出している強盗団を捕まえるためなら、市民の一人や二人犠牲にするのではないかと思っていたのです。軍が一番権力を持っているのですから、世論なんて簡単に押さえられます。
でも、目の前の黒髪の軍人さんは不思議と信じられる気がしました。
そうです。彼は最初に逃げようと思えば逃げられたのです。でも、彼は残りました。人を助けるために。
「今の状況では、軍は動けないでしょう。我々が何とかするしかありません」
ご協力願えますかと問う彼にペコーさんは、
「もちろんです」
力強くうなずきました。
軍人さんの黒い瞳が細められ……口の端が引き上がります。浮ぶのは不敵な笑みです。
「いい返事だ」
ペコーさんはなぜか彼の顔から目を離す事ができませんでした。


「ペコーさんっ」
戻ってきたペコーさんにアルモニが抱き付いてきます。私は大丈夫と安心させてペコーさんはアルモニを庇う様にカウンターの中に蹲りました。
「遅かったな。異常は?」
獣の牙のリーダーらしき男が、戻ってきた男に声をかけます。
男――軍人さんは首を振ります。喋ったらばれてしまいます。そう、軍人さんは覆面を被って再び犯人達の仲間のふりをしているのです。
「そうか。車の用意は時間がかかるとの事だ。ひとつあいつらに立場ってもんをわからせなきゃいけないな」
「おいっガキを連れて来いっ」
軍人さんがアルモニの腕を掴みます。
「ペコーさん……」
「大丈夫よ。必ず助かるわ」
アルモニを力づけるようにペコーさんは笑います。
獣の牙のリーダーとアルモニを連れた軍人さんとで外に出ます。残された一人が窓ガラス越しに店内から油断なくその様子を見つめ、もう一人がペコーさんに銃を向けます。
少し離れた所に黒い制服の憲兵と青色の制服の軍人とが取り囲む様にこちらを見ています。
外に出た三人に痛いほどの視線が集まります。ですが、恐怖でアルモニはそれどころではありませんでした。
「いいか、合図をしたら伏せるんだ。いいね」
自分を掴んでいる男がそっとアルモニに囁きます。男を振り返る衝動をすんでの所でおさえ、アルモニは返事の代わりに小さく頷きました。
リーダーは大声をあげて自分達を包囲している軍、憲兵達に改めて要求をしています。そして、アルモニの素性を明かして意に添わない場合の彼女の末路を声高に主張するのでした。
「いいたいことはよーく判った! だが、さっきも言った通り、そちらの希望する車を用意するべく現在鋭意準備中だ。あと少し待ってくれ。これは嘘ではない。何ならここにある車ならすぐにでも渡せるが?」
「・・・要求通りの車を用意しろ」
リーダーは妥協したようです。何しろ五人プラス保険のために人質を連れていく事を考えれば、大型の車でなければ不可能です。
簡易スピーカーでリーダーと話しているのは、立派な体格の軍人でした。全体的にがっちりとしていて貫禄がありますが、縦より横にデカいです。態度も体格に似ててどっしり落ち着いているように見えます。
「・・・焔の若造はお出ましにはなってないようだぜ。はんっ、所詮おつむだけの腰抜け野郎か」
馬鹿にした様にリーダーが言いました。ですが、何処かほっとした様にもアルモニは聞こえました。
東方司令部の実質的司令官である大佐をアルモニは知っていました。軍人でありながら優秀な錬金術師でもある彼は昔から父であるエイゼルシュタイン教授とも親交があるのです。司令官なのですから普通なら現場に出てこないものです。ですが、この東方司令部の大佐は、このような事件が起こると必ず自分で指揮をとると聞いています。何故なら彼自身が人間兵器と呼ばれる武闘派の錬金術師だからです。そんな彼が何故今日今いないのでしょう? 彼だって出張などでシティを離れる事くらいあるでしょう。そうしたらいくら緊急時でも、現場にくることは出来ないでしょう。けれど、アルモニには彼がここに居ない事がどうしても引っ掛かかるのです。リーダーは切れ者と言われる彼が居ない事を内心安心しているのですが、強がっているのです。
「いいか! あと十五分だっ!十五分だけ待つ!」
「そりゃ無茶だ。せめて三十分にしてくれ」
「ふざけるな!十五分と言ったら十五分だ」
「車のある場所からここまで何分かかると思ってるんだ。せめて二十五分・・・いや二十分だ」
「・・・よし。だが、二十分たっても用意出来ない時は人質を一人殺す」
交渉役の軍人のネゴシエイトはなかなか達者でした。頭ごなしに犯人の要求を蹴らず、逆にこちらの事情も察してくれと頼むような形で、犯人側の譲歩を引き出しています。
リーダーと軍とのやり取りの間、アルモニを掴んでいる男は頭上に注意を払っていました。アルモニには彼が何かを待っているように思えました。
そして、アルモニは話しかけてきたその男がよしと小さく呟くのを聞き取りました。その声――聞くのは二度目です――を聞いた瞬間アルモニの脳裏に天啓のように閃くものがありました。まるでもう少しで解けそうなパズルが解けた時みたいに。
その瞬間、いろいろな事が一度に起こりました。
「伏せろ!」
アルモニに男が言ったのと、銃声がしたのは同時でした。獣の牙のリーダーが悲鳴をあげたのも。そしてガラスの割れる音……アルモニは命じられるままに頭を抱えてしゃがみ込みました。   
――彼なら信じられます。
店内からリーダーを見守っていた獣の牙の男は何が起こったのか理解できませんでした。リーダーが撃たれたということは判りました。けれど、リーダーの隣りにいた仲間が振り返り自分に向けて発砲してきたのは、悪い夢ではないかと思いました。そして倒れた後、意識を失う寸前にもう一人の仲間……女を見張っていた男が倒れるのを見ました。何故やつまで倒れる? 裏口を見張っている仲間はどうしてやってこない? 彼の疑問は晴れる事なく彼は気を失いました。
犯人達に混乱が訪れたその瞬間を逃さずペコーさんも動いていました。一瞬にして仲間が倒されて呆然としていた自分に銃を構えていた男を狙い撃ちます。太腿の銃を取り出す動作と発砲はほとんど同時に見えるほど素早いものでした。ペコーさんは立ち上がり、男が落とした銃を拾いあげました。
「よし、全員確保だ! ブレダ、怪我人は病院へ。殺してはいない」
未だ一人だけ立っている覆面の男が覆面を取りながら、取り囲んだ軍人達に命令しました。
「大佐~~~勘弁して下さいや」
交渉役をしていた軍人さん―ブレダ少尉が疲れた様に肩を竦めます。
「非番の時くらい大人しくしていて下さいよ」
大佐と呼ばれた犯人に化けていた黒髪の軍人さんはムッとした様に反論しました。
「うるさい。事件に巻き込まれたのは不可抗力だ。私のせいじゃないぞ」
そう、軍人さんはまず、裏口から突入の機会を伺っていた別部隊にコンタクトをとり、犯人が外に出たら狙撃するように命令していたのです。そして、自分はペコーさんと犯人のふりをして戻ったのです。もちろん裏口の部隊を率いていた大佐の部下のハボック少尉は自分が行くと主張したのですが、時間が無いということと大佐のわがままで押し切られてしまったのでした。
「アルモニちゃんっ」
ペコーさんも外に出てきてアルモニの安否を確かめます。
「ペコーさんっ」
駆け寄ってきたペコーさんにアルモニは抱き付きました。
「私は平気」
ペコーさんこそ怪我してない? と心配顔の優しい少女に大丈夫と言ってあげます。
「我々の不手際で危ない目に合わせてしまってすまない」
そんな二人に、黒髪の軍人さんが頭を下げました。
「そして、ご協力を感謝します。ミス・・・ペコー?」
そういえば、自分達はたがいに名乗ってもいませんでした。不意におかしくなって、ペコーさんは黒髪の軍人さんに微笑みました。
「マーゴット・オレンジペコーです。皆さんはペコーと呼んでいます」
何か眩しいものを見るように、ペコーさんを見つめていた軍人さんがペコ―さんに握手を求めて手を伸ばしました。  そこでペコーさんは軍人さんがいつの間にか白い手袋をしているのに気付きました。外に出ていく時はしていなかったはずです。犯人達の死角になった時にはめたのでしょう。でも、いったいなんのためにあの非常時に手袋なんかはめたのでしょうか?
「私は……」
「大佐!!」
ブレダ少尉の焦った声が聞こえました。
肩と足を撃たれて倒れて気を失っていたはずの獣の牙リーダーが突然抵抗したのです。油断した憲兵が突き飛ばされ、他の憲兵が取り押さえるより早く、小型の銃を大佐に向けました。
銃声は一度、そして、ぱちっという空気が震える音。
「があああああ!」
獣の牙のリーダーが一瞬だけ焔に包まれました。焔は狙いを過たずリーダーだけを包むと、直ぐに消えてしまいましたが、その一瞬でリーダーを大人しくさせるのには十分でした。しかし、リーダーを焔が襲うより半瞬早く、ペコーさんの銃から放たれた弾丸がリーダーの手から銃を弾き飛ばしていたのでした。
 リーダーを再び捕縛するように命じてから、大佐は改めてペコ―さんに向き直りました。
「ミス・ペコー。素晴らしい腕だ。私の焔も必要ではなかったな」
「貴方は……」
「私は東方司令部司令官ロイ・マスタング大佐。焔の錬金術師と呼ぶ人もいます」
白地に赤い模様の入った手袋。ペコーさんはそれが練成陣と呼ばれるものであることを知っていました。
(焔・・・の錬金術師・・・ロイ・マスタング・・・)
黒く深い瞳に魅入られるように、差し出された手をペコーさんは握り返したのでした。




END


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        お友達の八神アキ様から頂きました☆素敵ペコーさん♪
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# by netzeth | 2010-03-26 21:31 | Comments(0)