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うめ屋


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by netzeth

安らぎの庭

ポカポカとぐんぶの裏庭はとても暖かくて、僕はお気に入りの芝生でごろごろしてた。本当はご主人やフュリーそうちょうと遊びたかったけれど、今日は朝からご主人もそうちょうも忙しそうで、パタパタ動きまわっていて、そんな暇ないみたいだ。
つまんないなーと僕は退屈でぐんぶの庭で一人で遊んでた。そしたら、お友達のみいちゃんが来たから、二人で今、ごろごろしているんだ。みいちゃんはぐんぶを縄張りにしている、黒猫さんだ。みいちゃんって名前は本人の自己申告だけど、ぐんぶの皆はクロとかノラとかって呼んでいる。みいちゃんには僕みたいにカッコいい決まった名前はないみたい。今度ご主人様に頼んでつけて貰ってあげようか?ってみいちゃんに言ったら、遠慮しておくわ、と言われちゃった。みいちゃんは孤高の野良猫さんだから、人間の付けた名前なんてきっといらないんだな。かっこいい。
「お、お前こんな所に居たのか」
そうやってみいちゃんと僕がごろごろしている所に、たいさが来た。たいさもみいちゃんとおんなじで、名前がたくさんある人だ。ご主人はたいさをたいさって呼んだり、マスタングたいさって呼んだり、ロイって呼んだりしてる。どれがたいさの本当の名前なんだろう。今度ご主人に、たいさにももっとかっこいい名前を付けてあげてってお願いしてみようかな。
「……くつろいでいる所悪いが、私も仲間に入れてくれ」
たいさは僕の背中を撫でてから、みいちゃんの頭に触れると自分も芝生の上にごろーんってした。僕たちは二人だけで退屈してから、たいさが来たのが嬉しくて、二人でたいさに乗っかった。僕はたいさのお腹にあごを乗せて、みいちゃんはたいさの胸の上で寝そべる。しっぽをぱたぱたして遊んで欲しいと訴えてみたけど、たいさは笑って僕たちを撫でているだけで、遊んでくれる気はないみたいだった。
ちょっとつまらなかったけど、何だかたいさが疲れてるみたいだったので、僕らはたいさと一緒に寝ることにした。ご主人も疲れている時、僕が寄り添ってあげると嬉しそうにありがとう元気出たわって言ってくれるから、たいさも元気が出るといいなって思った。みいちゃんも同じ気持ちみたいで、たいさの上で大人しくしている。
「お前達は仲良しなのか?」
僕とみいちゃんを代わる代わる見たたいさは、そんな事を尋ねてきた。うん、僕とみいちゃんはお友達だ。いつも一緒にごろごろしているんだよ。そうお返事すると、たいさは、
「そうか。羨ましいな」
と言った。どうしたんだろう。たいさはとっても悲しそうな顔をしていた。僕は心配になってたいさのお顔に鼻先を寄せた。元気を出して欲しくて舌でぺろぺろもしてあげた。たいさは僕を見て、ありがとうお前は優しいな、とお礼を言ってくれた。
「お前達は種族が違っても仲良く出来るというのに……私達人間と来たら……いつまでも、学ぶ事を知らないどうしようもない生き物だな」
たいさの言葉の意味は僕には分からなかった。ひょっとして朝、ご主人が言ってたテロっていうのに関係あるのかな。みいちゃんにどう思う?って聞いてみたら、みいちゃんは人間社会は難しいのよって教えてくれた。そうなのか、僕にはさっぱり分からないや。みいちゃんはインテリ猫さんだな。
「いつか私達もお前達のように分かり合える時が来るだろう、か……」
たいさはぽつりと呟いて、そのまますーすー寝息を立てて寝てしまった。人間の大人は僕たちみたいに暇だからってお昼寝はしないから、お日様があるうちに眠ってしまうこともない。だから、たいさはよっぽど疲れていたんだと思う。
僕とみいちゃんはじっとしてたいさと一緒にいた。たいさがすーすー眠っているから、僕がたいさを守ってあげなきゃと思ったんだ。ご主人が僕に強く大きくなるのよっていつもご飯をくれるから、僕は強くて、ご主人やたいさを守れる立派な大人になりたいんだ。みいちゃんは人間の男は面倒よね、私達みたいな存在にしか弱音を吐けない。なんて呟いている。よく意味は分からないけどやっぱりみいちゃんは大人だな。そしたら、僕の鼻に大好きな匂いが香ってきたんだ。僕は嬉しくなって吠えそうになった。でも、たいさが眠っているのを思い出して、慌てて口を閉めたんだ。そしたらくふって変な声が出ちゃった。
「……ハヤテ号? 居るの?」
僕の思ったとおり、ご主人がやってきた。向こうの建物のかげからご主人は出てきた。ご主人は僕の顔を見て、そして眠ってるたいさを見た。僕はその時、困ったなって思ったんだ。だって、ご主人はたいさにとっても厳しいんだ。たいさが僕と一緒に寝ていたり、遊んでいるのを見つけると、いつも怖い顔でやってきて、僕を叱った時みたいに、銃を出して怒るんだ。時々撃つから、たいさは青い顔をして、いつもご主人に連れられていく。たいさがサボっていたら教えてね、って僕に言うくらいだもん。
でも、今日の僕はたいさが寝ていてもご主人に教えてはいけない気がしていた。たいさはとっても疲れて寝ているんだから、そのままごろごろさせていてあげたかったんだ。だから、僕はご主人に訴えた。たいさはサボってるんじゃないよ。疲れたからお休みしているだけなんだよって。僕はご主人がいつ銃を出すんじゃないかって、ひやひやしてた。
でも、
「……もう、仕方がないですね」
眠るたいさの顔を見たご主人は、とっても優しいお顔をしてた。いつもみたいに怒ったりしないで、銃も出さなかった。かわりに、たいさのとなりに座って、たいさの頭を僕にするみたいに撫で撫でしてあげていた。
「こんな場所でしかお眠りになれないなんて……」
ご主人に撫で撫でされたたいさはとっても気持ちよさそうだった。僕はちょっぴり羨ましい。
「ゆっくり休んで下さい……」
ご主人が怒り出さないのが僕には不思議だった。僕の言葉が通じたのかな。僕はまだ子供だから、ご主人とたいさの事はよく分からない。だけど、みいちゃんは、こんな事を言っていた。なんだこの男にはちゃんと弱みを見せられるつがいがいるのね。良かったわね。って。また、みいちゃんの言う事は難しくてよく分からなかったけど、僕も良かったねって思った。だから、僕はまたたいさとみいちゃんと一緒にごろごろする事にした。今はご主人がいるから、僕は安心して眠くなってしまったんだ。きっとたいさもご主人が来てくれたから、安心してお休み出来るよね。
僕はたいさとご主人の間で丸くなると、お昼寝をする事にする。そしてお肉をたくさん食べる夢を見られたらいいなあ、と思いながら目をつむった……ご主人とたいさの何だか安心する匂いに包まれながら。




END
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by netzeth | 2014-04-07 00:52