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うめ屋


ロイアイメインのテキストサイト 
by netzeth

楽しみだ

ピクシブで楽しみにしている連載があります。
早く更新しないかなーとわくわくo(*゚∀゚*)o 連載を出来る人ってすごいと思います。皆さん連載をする時ってどこまでお話を考えているものなんでしょう。漫画でも小説でも世の中にはいくらでも長い続き物がありますけど、書きながら考えているのか。はたまたちゃんと最初に決めているのか。興味は尽きないですねー。私はチキンなので終わってないお話を公表するのは苦手で(後で最初の方とか修正したくなるww)、連載形式にしてもだいたい最後まで書いてあったりするし。う~ん、その辺りは力技で辻褄を合わせたりするのかなー。綿密な設計図を書いてその通りに進めている人とか居たら尊敬。バクマンとか読むと、伏線じゃないのを後から伏線にしたりとかやってましたし、そういう柔軟なのも面白いですね。世の中のお話を書く方々にどんな風にお話を組み立てているか聞いてみたいです。そういうまとめとかあったら面白いと思います。

マスタング組野郎共の話を書きたくて、とりあえずフュリーの話。
よろしければ↓どうぞ。






「ホークアイ中尉って誰か好きな人がいるんですかね……」
平和な昼下がり、僕が思わずポロリと落とした台詞はその場に居た皆に波紋を投げかけたようだった。皆――ハボック少尉、ブレダ少尉、そしてファルマン准尉はぴたりとその場で動きを止めると、顔を見合わせる。それからぞろぞろと移動して来て、僕は彼らに取り囲まれた。
「とりあえず聞いとくわ。……おまえ、中尉が好きなのか?」
ハボック少尉が僕の首に長い腕を回しながら尋ねてきた。まるでヘッドロックをかけられているような体勢で苦しかったけれど、我慢して僕は返答をする。
「ま、まさかっ、違いますよ! そりゃあ、中尉はお綺麗だと思いますけどただそれだけで……」
「本当かあ?」
「ほ、本当です。中尉は僕なんかには手の届かない人と言いますか……ほら、崖の上にいくらとても綺麗な花が咲いていたとしても無理して取りに行こうとはしないでしょう? ただ綺麗だなあと見ていたいだけというか……」
「ふむ。曹長は崖の上の花を綺麗だなあと見ていたいタイプなのですな。曹長らしいですね」
ファルマン准尉は僕の例え話に納得したように頷いてくれた。けれど、ハボック少尉とブレダ少尉はまだ疑い深い顔をして僕を見ている。
「じゃあ何でお前、ホークアイ中尉の好きな男が知りたいんだよ」
「だな。レベッカ辺りならともかく、機械いじりバカなお前さんが他人のゴシップ話に興味があるよーには思えないんだが」
両少尉に指摘されて、僕はどう答えようか悩んでしまった。確かに僕の趣味は自分で作った広域帯受信機でいろんな電波を拾うこと――というかなりマイナーで暗いものだけど……まあ、この際それは置いとこう。
「それは……」
僕は脳内で答えを模索しながら、とある過去の出来事を思い出していた。



まずは僕がその場面に遭遇したのは偶然だったことを申告しておく。決して盗み見をするつもりなんてなかった。僕がその日司令部の中庭の人気が無い区画に居たのは、新しく組み立てた電波受信機の調子を見たかったからだ。司令部内はいろんな電波が飛び交っているから実験の場としてはうってつけだったし、人気が無い場所を選んだのは無許可で軍の電波を拾うのが後ろめたかったから。
受信機の調子は上々で僕はとっても上機嫌だった。だから、不意打ちでその光景にぶち当たってしまった時、かなり慌てたんだ。
「好きなんです! 良かったら俺とつき合ってください!」
僕の目の前には二人の男女が居た。一人は僕も良く知っている同僚。同じ技術兵の同期でマルコっていう赤毛の男だ。彼は顔を真っ赤にして、目の前に立つ女性に告白をしていた。
「……あなたの気持ちは嬉しいけど、ゴメンなさい」
マルコに交際を断る際のお決まりの文句を素っ気なく告げたのは、これまた僕が良く知る人物だった。きらきらと輝く金色の髪をすっきりとまとめ上げた綺麗な女性――ホークアイ中尉だ。いつも無表情の中尉だけど今日ばかりは少し困った顔をしていた。眉尻が下がって、少し顰められている。
「わ、分かりました! すみません、困らせてしまって! 今日の事は忘れて下さい! 失礼しました!!」
フられたマルコは分かり易く肩を落としていたけど、傍目にも無理しているのが丸わかりな笑顔を浮かべていた。中尉に気を遣っているのだろう。半分泣きそうな顔で笑っているのを見て、僕は同じ男としてマルコに同情したのかもしれない。
マルコが走り去っていったのを見届けた後、僕はたまらず中尉の前に飛び出していた。
「中尉! マルコはいい奴なんです! マルコのどこがダメなんですか!?」
突然現れた僕に中尉は驚いていた。目を見開いたとても普段なら見ることは叶わない珍しい表情。だけど、僕はそれに気づいている気持ちの余裕も無かった。
――どうして僕はマルコのためにこんなに一生懸命になっているのだろう。
とは思いつつも、僕はどうしようもなく憤っていた。きっと僕はマルコに自分を重ねて見ていたのかもしれない。
「理由くらい教えて下さい!」
せっかく勇気を振り絞って告白したのに、ゴメンナサイの一言で全て終わりだなんて可哀想過ぎる。自分がフられた理由くらい誰だって知りたいはずだ。それが納得のいく理由だったのならば、人はなら仕方がないと納得して自分を慰める事ができる。そうやって失恋の痛手を乗り越える事ができる。マルコに成り代わって僕が……と僕は中尉に詰め寄っていた。今思えば何て不躾で、傲慢な事をしたんだと反省している。でも、この時はただ夢中だった。
「彼がダメなんじゃないわ。ダメなのは私よ」
「え?」
僕の失礼な言動を咎めもせず、中尉は毅然としたいつもの口調で教えてくれた。
「私に恋をしている余裕がないの。ただ、それだけ」
僕は中尉の鳶色の瞳を見つめた。その色はどこまでも真剣だった。嘘やその場だけの誤魔化しを口にしている訳じゃないことは理解出来た。
「彼のように真っ直ぐに自分の気持ちをぶつけられる強さが、私には羨ましいわ」
すっと目を細めた中尉は、マルコが去っていった方角を見ている。ううん、違う。多分中尉が見ているのはもっと別の誰かだ。その時の僕は直感した。中尉がマルコをフったのは自分に余裕がないから。恋をするだけの余裕がないから。それはきっと本当だ。中尉は嘘を吐く人じゃない。だけどそれが全ての理由って訳でもないと思った。
――中尉にはきっともう好きな人が居るんだ……。
ぼんやりと僕はそんなことを思った。それが分かってしまったのならば、もう僕には何も言うことは出来なかった。マルコのために僕がしてやれることは、後はもう一緒にやけ酒にでも付き合ってやることくらいだ。だから僕は中尉に失礼を詫びてその場を後にしたのだけど。ただどうしても、この美しい人の心をこんなにも捕らえて離さぬ相手が気になって仕方がなかった。



「という訳で、皆さん驚かれるでしょうけど……何とホークアイ中尉には好きな人が居るようなんです! それで、とっても僕、気になって気になって……」
三人の僕よりも大きな男達(ついでに言えば階級も上だ)にしどろもどろになりながら、説明した。僕の話を聞いて彼らはまたお互いに顔を見合わせている。やがて、三人を代表してブレダ少尉が頭を掻きながら口を開いた。
「あのなあ、フュリー。……それ、俺らの前以外で言うなよ?」
「も、もちろんです! 僕はそんなに口の軽い男じゃありませんよ! 皆さんに打ち明けたのも、チームマスタングの一員として信頼しているからです!」
皆の心配も分かったので、僕は大きく頷いた。僕達チームマスタングの絆は固いものだ。だから同じチームの一員である中尉のゴシップを心配し、過敏になっているのだろう。僕は端からチーム外の人間にこの事を話すつもりは無い。そう、チーム外の人間には。そこで、僕は名案を思いついてあっと思わず声を上げてしまった。
「そうだ。大佐に相談してみましょうか? 女性のことを一番良く理解しておられる大佐ですから、きっとホークアイ中尉の好きな人のことも心当たりがあるかもしれませんよ!」
優秀な補佐官であるホークアイ中尉は大佐には無くてはならない人だ。チームマスタングのボスとして、大佐もホークアイ中尉の好きな人のことは気になるだろうしきっと把握しておきたいに違いない。そう思った。
だけど。
自信を持って皆に提案した僕だけれども、三人の反応は芳しくなかった。それぞれ微妙な顔をして、何と言うべきか言葉を探しているような表情をしている。
「あのう……僕、何かマズイこと言いました?」
「うん。……とりあえず、お前は黙っとけ。何も言うな、な? これ、上官命令な」
「へ!?」
突然の一方的な命令に僕は驚いてしまう。だっておかしい。僕は別に誰彼かまわず話すと言っている訳じゃないのに。大佐は信頼出来る僕らのボスだ。その大佐に相談するのが、そんなにマズイ事なんだろうか。そのまま疑問を口に出すと、三人は呆れ果てたような顔をして声を揃えて言った。
「そうだ、マズイ。激烈にマズイ。大佐には絶対に言うなよ」
「だからどうしてですか!?」
訳が分からず問いただしても、三人は微妙に視線を逸らして。結局誰も僕の疑問に答えてはくれなかったのだった。







by netzeth | 2014-10-25 01:58 | 日記